仕事探しをするにあたって、正社員と派遣社員のどちらを選ぶべきか迷っていませんか。
雇用形態ごとの待遇差が改善されつつある近年、「正社員として働くのが望ましい」という風潮は薄くなり、派遣社員という働き方を選ぶ方も増えています。
正社員と派遣社員ではそれぞれ異なるメリット・デメリットがあるため、違いを理解したうえで自分に合った働き方を考えてみましょう。
本記事では、正社員と派遣社員の違いやメリット・デメリットを解説するとともに、派遣社員から正社員になる方法も紹介します。
目次
正社員と派遣社員の違いは?
正社員と派遣社員は、「雇用主」と「雇用契約期間」の2点で大きく異なります。
いずれも自身の働き方に関わるため、違いを理解しておきましょう。
雇用主
正社員と派遣社員でまず異なるのが、勤め先となる企業に直接雇用されているか否かです。
正社員は勤務先の企業に直接雇用されており、給与も勤務する企業から支払われます。
給与のほかに、社会保険手続きや休暇管理なども勤務先の企業が行います。
一方の派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結び、実際に働く派遣先企業とのあいだでは雇用契約を結びません。
給与の支払いや社会保険手続き、休暇管理もすべて派遣会社が行います。
雇用契約期間
正社員と派遣社員は、雇用契約期間の有無にも違いがあります。
正社員は無期雇用契約を結び、自ら退職しない限りは定年まで勤務可能です。
派遣社員は有期雇用契約のため、派遣先企業で働ける年数があらかじめ決まっています。
労働基準法の定めるところにより、有期雇用契約の期間は原則3年までです。
ただし、有期雇用契約が5年を超えて更新された場合、 派遣社員からの申し込みによって無期雇用契約に転換できます。
無期雇用契約への転換を希望する場合は、派遣会社に申請しましょう。
正社員と派遣社員のメリットは?
安定性を重視して正社員を選ぶ方がいる一方で、派遣社員としてライフワークバランスを大切にする方もいます。
正社員と派遣社員のメリットを知り、自分に合った働き方を考える際の参考にしてください。
正社員のメリット
正社員のメリットと考えられるのは、大きく以下の3つです。
- キャリアアップをめざせる
- 収入が高くなりやすい
- 雇用が安定している
正社員は、長く働いてスキルを身につけることを期待されています。
このため正社員の教育制度に力を入れる企業は多く、仕事に関するスキルが身についた結果キャリアアップにつながったり、収入が高くなったりするでしょう。
キャリアアップをめざせる
正社員は、働くなかでキャリアアップをめざせるというメリットがあります。
資格取得支援や研修・学会など、正社員はスキルを身につける機会に恵まれている場合が多く、キャリアアップの環境が整っているためです。
企業は正社員が長く自社に所属し、戦力として成長してくれることを期待するからこそ、教育に十分な時間とコストをかけます。
また、正社員は責任をともなう仕事を任されやすい傾向にあります。
仕事で成果を出すことで、大きなやりがいや達成感を得られたり、評価につながったりするのもメリットです。
収入が高くなりやすい
正社員は、派遣社員と比較して収入が高くなりやすいといえます。
厚生労働省の調査によると、正社員の平均月収は328,000円で、正社員以外の221,300円と比較して約1.5倍です。
正社員は基本的に月給制であるため、基本給と各種手当で月収が安定しています。
同じ企業に長く勤め続けるほか、昇進によっても収入は上がるでしょう。
さらに企業によってはインセンティブ制度を設けている場合もあり、業務で何かを成し遂げると業績に応じた報酬がもらえます。
ほかにも賞与や退職金、福利厚生など、待遇面において正社員は優遇されていることが多いため、収入が高くなりやすいのです。
雇用が安定している
正社員は派遣社員と比較して、雇用が安定している点もメリットに挙げられます。
無期雇用契約を結ぶ正社員は、リストラや倒産に遭わない限り職を失わないためです。
労働基準法では、解雇について以下のように定めています。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
このように、正社員は非合理的な理由では解雇されないことが約束されています。
雇用が安定している分、仕事に専念しやすいともいえるでしょう。
また、正社員は安定した雇用と収入があることから社会的信用を得やすく、ローンやクレジットカードの審査に通りやすい点もメリットです。
家や自動車など高額な買い物をする場合、派遣社員よりも正社員のほうが有利になります。
派遣社員のメリット
派遣社員のメリットは、以下の3つです。
- 仕事とプライベートを両立させやすい
- さまざまな業界を経験できる
- 仕事のミスマッチが少ない
派遣社員は有期雇用契約を結ぶため、半年や1年単位で労働期間が決められています。
したがって正社員と比較して仕事の範囲が限定的で、働く時間や仕事内容をある程度選べるでしょう。
仕事とプライベートを両立させやすい
派遣社員は、仕事とプライベートの両方を充実させたい人に適した働き方です。
勤務地や勤務日数・時間、職種、仕事内容などの条件を叶えやすく、働きたい・働けない時間帯についても比較的融通が利きます。
空いた時間をスキルアップのための勉強や習い事、また家事・育児、介護に使うなど、プライベートな時間を持ちやすいでしょう。
さらに、派遣社員はパート・アルバイトと比較して時給が高いため、プライベートな時間を確保しつつも、ある程度の収入を得られます。
さまざまな業界を経験できる
派遣社員は、さまざまな企業で働けるチャンスがあるのが特徴です。
多くの企業で経験を積み、スキルアップしながら働くことで生涯続けていきたい仕事が見つかるかもしれません。
また、派遣社員であれば未経験でもさまざまな職種にチャレンジできるでしょう。
なかにはマスコミやファッション業界、クリエイティブ系、研究職など、正社員での採用が難しい職種も含まれます。
希望している職種がある一方で「自分に向いているかわからない」と悩んでいる方は、派遣社員から始めてみるのも一つの方法です。
仕事のミスマッチが少ない
派遣社員は、正社員と比べて仕事のミスマッチが少ない傾向にあります。
派遣社員は担当する仕事の範囲が限られるため、自分の希望する業務を選んで応募すれば、やりたくないことや苦手な業務に関わることはありません。
派遣会社では、仕事内容の詳細や必要なスキルなどをふまえ、一人ひとりのキャリアに合わせた就業プランを提案してくれる担当者が付きます。
派遣社員として仕事を探す際は、今までに取得したスキルや資格、経験をできる限り詳しく担当者に説明すると、自分により適した仕事が見つかるでしょう。
正社員と派遣社員のデメリットは?
正社員と派遣社員には上記のようなメリットがある一方で、デメリットも存在します。
正社員の働き方は自由度が低いと感じる方もいれば、派遣社員は雇用や収入が不安という方もいるかもしれません。
働き始めてから後悔しないよう、デメリットも知ったうえで選びましょう。
正社員のデメリット
正社員のデメリットは以下のとおりです。
- 異動・転勤を命じられる可能性がある
- 仕事への責任が重い
大きな企業に勤める場合、馴染みのない地方や国に転勤を命じられる場合もあります。
さらに正社員は責任のある仕事を任されるため、人によってはストレスに感じるかもしれません。
異動・転勤を命じられる可能性がある
勤務地限定の採用でなければ、異動や転勤の可能性があります。
全国展開している企業であれば日本全国、海外展開している企業の場合は海外への転勤もあるでしょう。
ご家族と同居している場合は単身赴任するか、ご家族も一緒に引っ越すことになります。
異動・転勤の辞令は基本的に受け入れる必要があり、勤め先によっては自分の意思で働く場所や部署を選びにくいかもしれません。
仕事への責任が重い
前述のとおり正社員は責任ある仕事を任せられるため、人によってはその責任が重荷に感じることもあります。
責任のある仕事は成長やスキルアップにつながるものの、少なからずプレッシャーを背負わなければならないでしょう。
正社員としての経験や勤続年数が上がるにつれて部下・後輩を育てたり、大きなプロジェクトに参加したりする機会も訪れます。
そうした仕事はやりがいや達成感を得られると同時に、ストレスを抱えてしまう方がいることも事実です。
派遣社員のデメリット
派遣社員のデメリットは以下の2つです。
- 雇用が不安定
- 収入が少なくなりやすい
派遣社員は最長3年間同じ企業で働けるものの、実際は1年半程度で雇用契約が終了するケースが多い傾向にあります。
また、派遣社員は時給制であるため、休みが多い月には収入が減りやすい点にも注意しましょう。
雇用が不安定
派遣社員のデメリットは、正社員より雇用が不安定という点です。
厚生労働省の調査によると、同じ派遣先・業務で派遣社員として働いた通算期間の平均は19.2ヵ月であり、約20%の方が半年以下で雇用契約を終了しています。
能力が評価されれば契約が更新される一方で、派遣社員自身のスキルが不足していたり、企業が派遣社員を必要としなかったりすると雇用契約は終了となります。
収入が少なくなりやすい
派遣社員は、働き方によっては収入が低くなりやすいのもデメリットの一つです。
派遣社員は時給制であることが多く、働かない日が増えればそれだけ手取りも減ってしまいます。
さらに、派遣社員は正社員ほど責任のある業務を任されず、補助業務や指示にしたがって仕事を進める場合がほとんどでしょう。
さまざまなことに挑戦して成果報酬につなげるといった働き方はしにくいため、仕事で収入アップをめざしたい人にとっては物足りなさを感じるかもしれません。
派遣社員から正社員になるには?
派遣社員から正社員になるには、次の3つの方法があります。
- 紹介予定派遣で働く
- 派遣先の企業で正社員登用される
- 派遣先以外の企業で正社員をめざす
紹介予定派遣とは、派遣先の企業で最長6ヵ月勤務したあと、本人と派遣先の双方が合意のうえで直接雇用契約を結ぶ制度です。
直接雇用される前に企業の雰囲気を把握し、職場の人ともコミュニケーションを取れるため、入社後のミスマッチを防げるメリットがあります。
正社員登用は、派遣社員が派遣先企業と直接雇用契約を結んで正社員になる制度です。
ただし、正社員登用が設けられているかどうかは企業によって異なるため、派遣先企業に確認しましょう。
この2つの案が難しい場合、派遣先以外の企業で正社員をめざす方法もあります。
すべての企業が紹介予定派遣や正社員登用を導入しているとは限らないため、いざというときは自分で気になる企業を探して応募することも視野に入れてみてください。
正社員と派遣社員は働き方を比較して選ぼう
正社員と派遣社員は、「雇用主」「雇用契約期間」の2点に大きな違いがあります。
企業に直接雇用される正社員に対し、派遣社員は実際に働く企業ではなく派遣会社と契約を結ぶのが特徴です。
また、正社員は合理的な理由がない限り定年まで解雇されることはありませんが、派遣社員は雇用期間が半年、2年などあらかじめ決められています。
こうした特徴から、正社員はキャリアアップをめざしやすく、安定した雇用と収入が見込めるのがメリットです。
派遣社員はライフワークバランスを重視したい方に適しており、仕事のミスマッチが少ない点が魅力といえるでしょう。
両者のメリット・デメリットを天秤にかけ、自分の希望を叶えられる働き方はどちらか検討してみてください。