
休職は、けがや病気などにより仕事ができない状態が続くときに、雇用契約を維持したまま仕事を休む制度です。
休職を検討しつつも、その間の収入が気になっている人もいるでしょう。
休職期間中は、どのように生活していけば良いのでしょうか。
休職中の収入がどうなるのか、給与以外にどのような経済的支援があるのかを解説します。
目次
休職中に給与は支給される?
休職中の給与は、原則として支払われません。
会社員の給与は、労働の対価として受け取るものであるため、仕事をしていない休職期間中は給与を受け取る権利がないのです。
民法第624条1項でも、労働者は労働が終わったあとでなければ、賃金を請求してはならないと定められています。
(報酬の支払時期)
第六百二十四条 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
引用:民法|e-Gov法令検索
ただし、企業によっては給与補償制度を独自に設けている場合もあります。
休職中の給与の有無について知りたい場合は、会社の就業規則を確認してみましょう。
休職中の給与以外の経済的支援
休職中に給与が支払われないからといって、経済的な不安を感じる必要はありません。
休職者を支援する公的制度が、いくつか用意されているからです。
具体的には、傷病手当金、労災保険、障害年金などが利用できます。
それぞれの制度について見ていきましょう。
傷病手当金
傷病手当金は、業務外の病気やけがで会社を休んだ場合に、健康保険から支給される手当金です。
以下の条件を満たすと、標準報酬月額の3分の2の金額が、最長1年6ヵ月の間、支給されます。
- 業務外の病気やけがによって働けない状態にあること
- 連続する3日間を含んで4日以上仕事を休んでいること
- 休んでいる期間に給与が支払われないこと
連続する3日間には、土日祝日や有給休暇も含まれます。
例えば、12月1日から12月3日まで連続して休み、12月4日以降も休職する場合は、4日目から傷病手当金の対象となるのです。
また、休職中に給与が支払われている場合は傷病手当金は支給されませんが、給与額が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。
労災保険
労災保険は、業務上や通勤途中の事故でけがをしたり、病気になったりした場合に使える制度です。
正社員だけでなく、アルバイトやパートも加入が義務付けられています。
休業(補償)給付は、けがや病気のために仕事を休んだ場合に、労災保険から支給される手当です。
休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。
また、業務や通勤が原因で医師の治療を受ける場合は、療養(補償)給付の対象となり、治療費が全額公費負担になります。
労災保険の申請窓口は、勤務先を管轄する労働基準監督署です。
必要書類を揃えて、労働基準監督署に提出しましょう。
障害年金
病気やケガが原因で障害が残ってしまい、一定の障害状態にある場合は、障害年金の対象となります。
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。
それぞれの受給要件は、以下のとおりです。
障害基礎年金 | 障害厚生年金 | |
初診日 | 初診日が以下のいずれかの間にあること
● 国民年金加入期間 |
初診日が厚生年金加入期間内にあること |
障害の状態 | 以下のいずれかの日に、障害等級が1・2級に該当すること
● 病気やけがの初診日から1年6ヵ月を過ぎた日 |
病気やけがの初診日から1年6ヵ月を過ぎた日に、障害等級が1・2・3級に該当すること |
保険料納付済期間 | 初診日の前日に、初診日の前々月までの被保険者期間で、保険料納付済期間と保険料免除期間が3分の2以上あること |
参考:障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
参考:障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額
障害厚生年金の申請は、病院で診断書を書いてもらい、年金事務所または年金相談センターに提出します。
障害基礎年金の申請の提出先は、お住まいの市区町村役場の窓口です。
ただし、初診日が国民年金第3号被保険者の期間中である場合は、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターが窓口となります。
診断書は障害の状態を1年6ヵ月にわたって記録する必要があるため、初診日から1年6ヵ月経過後でないと申請できません。
受給が決まれば、認定された障害等級に応じた年金が支給されます。
会社独自の給与補償制度
労働基準法には企業が休業中に手当を支払うよう定められてはいませんが、会社独自の制度で休職中の収入を補償しているケースがあります。
休職期間中の給与支払いについては就業規則に記載されているため、自分の会社の規定を確認してみましょう。
ただし、休職中も給与全額が支払われるケースはまれです。
休職期間や等級によって、減額されたり無給になったりすることが一般的です。
国家公務員の場合は、業務外の病気やけがでも、休職期間の最初の90日間は全額支給されるなど、民間企業よりも手厚い補償を受けられる傾向にあります。
休職を考えている場合、事前に貯金しておく
冒頭で紹介したとおり、休職中は無収入になったり収入が減ったりするケースが多いです。
いざというときに困らないよう、ある程度の資金は、貯めておくことをおすすめします。
具体的には、最低でも3ヵ月分の生活費は用意しておきたいところです。
家賃、光熱費、食費など、毎月の固定費が賄えるくらいが目安です。
子育て中の方なら、教育費なども含めて6ヵ月分を貯金しておくと安心でしょう。
休職中に使える公的支援は、申請から給付までにタイムラグがあります。
まずは貯蓄で頑張ってやりくりし、その後に公的支援に頼るくらいの心積もりが必要でしょう。
万が一に備えて、日頃から計画的にお金を貯める習慣をつけておきましょう。
休職中の経済的支援を知っておこう
休職中は会社から給与が支払われないケースがほとんどですが、経済的に困ったときに使える制度は複数用意されています。
傷病手当金や労災保険は、業務外・業務上のけがや病気を理由に休職したときに利用可能です。
障害年金は、けがや病気で一定の障害状態と認定された場合に受給できます。
会社によっては、独自の休業補償制度を設けているところもあります。
しかし、いずれの制度も申請から受給までにはタイムラグがあるため、計画的に貯蓄をしておくことが休職中を乗り切る鍵となるでしょう。