派遣社員として働く人のなかには、産休が取得できるか不安に思っている人もいるでしょう。
この記事では、派遣社員の産休取得が可能かどうかを解説します。
取得できる日数や受け取れる手当の内容なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
派遣社員でも産休は取れる
派遣社員でも産休の取得は可能です。
産休の取得は労働基準法第65条に定めがあり、雇用形態による取得制限などはありません。
出産を控えた女性であれば派遣社員でも当然取得できるので、安心してください。
また、産休を取得している期間やその後30日間に解雇することも労働基準法違反となります。
したがって、産休を取得したからといって派遣契約を切られたり解雇されたりすることへの心配は無用です。
「産休を取得したら職場に戻れないかも」と不安に思う必要もありません。
派遣社員の産休制度はいつから利用できる?
派遣社員の産休がいつから取得できるかを解説します。
産休は産前と産後の2つの期間で取得でき、日数に違いがあるので把握しておきましょう。
産前休業は出産予定日の6週間前が基本
産前休業は、出産予定日の6週間前から取得できます。
多胎妊娠の場合は14週間前からです。
出産が遅れて6週間以上の休暇が必要となるケースでは、超過した分も産前休暇として扱われます。
例えば、出産予定日が7月21日であり7月23日に生まれたケースでは、22日と23日の2日間も産前休暇扱いになるので安心してください。
有給を消化したり欠勤扱いになることも当然ありません。
ただし、産前休業は強制的な休業ではない点には注意が必要です。
産前休業は労働者が任意で取得するかどうかを決められるものなので、取得する場合は上司に相談しましょう。
会社側は労働者側から取得の申し出を受けた際は断ってはいけない決まりになっているので、申請すれば必ず取得できます。
産後休業は出産の翌日から8週間
産後休業は出産日の翌日から8週間取得できる休業制度です。
産前休業とは違い、法律により出産後8週間は働いてはいけないと規定されているので、確実に休まなければいけません。
ただし本人が早めの復帰を希望して、医師の許可が取れている場合は、6週間に短縮が可能です。
また、この出産には死産や流産も含まれており、生まれた子どもの健康状態によって取得できないといったこともありません。
派遣社員が産休を取得できる条件
産休制度は就業形態に関わらず誰でも取得できる制度ですが、派遣社員の場合は特定の条件を満たす必要があります。
ここからは、派遣社員が産休を取得できる条件を紹介します。
妊娠中の女性で派遣契約中なら可能
派遣社員が産休を取得できる条件は、妊娠中の女性が産前休業の開始予定日までに派遣契約を結んでいることです。
つまり出産予定日の6週間前、多胎妊娠の場合は14週間前に派遣契約中である必要があります。
派遣社員としての契約が産前休業前に終了する場合には、産休の取得ができないので注意が必要です。
男性の場合は育休取得なら可能
産休は出産を控える女性のための制度なので、男性は取得できません。
ただし、育児休業(育休)や産後パパ育休という産後休業と同等の休業であれば、契約社員の男性でも取得可能です。
具体的な制度の内容は下表を確認してください。
制度名 | 内容 |
育児休業(育休) | 原則として、1歳未満の子を養育するために子どもが1歳になるまで取得可能。 派遣など有期雇用の場合は、子どもが1歳6ヵ月に達するまでに労働契約の期間が満了することが明らかでないことが条件。 |
産後パパ育休 | 産後休業をしていない労働者が、出生直後の子を養育するために取得できる休業制度。 子どもが生まれたあと8週間以内の期間に、通算4週間休業可能。 休業は2回に分けることができ、2週間ずつ取得もできる。 有期雇用で取得する場合は、子どもが生まれた日から8週間を経過した翌日から6ヵ月間に労働契約期間が満了して更新されないことが明らかでないことが条件。 |
参考:育児休業や介護休業をすることができる有期雇用労働者について
上記のとおり、どちらの制度も条件として一定期間までに契約が終了しないことや、契約更新しない旨が明らかになっていないことが挙げられているので注意してください。
ただし、条件さえ合えば男性でも育児のための休暇を取得できるので、上手に活用してご家族を支えましょう。
派遣社員は産休手当はいくらもらえる?
出産の際には産休を取得できる以外に、手当をもらうことも可能です。
ここでは、派遣社員が出産前後に受け取れる手当を紹介します。
出産育児一時金
出産育児一時金は、健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産した場合に受け取れる手当です。
令和5年4月1日以降は医療機関や妊娠週によって金額に違いがあるものの、おおむね1児につき50万円が支給されます。
また、出産育児一時金は利用する医療機関が産科医療補償制度に加入しているかどうかによって、支給される金額が変わります。
利用する医療機関や妊娠週による受け取れる金額の違いは、下表を参考にしてください。
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週以降に出産した場合 | 1児につき50万円 |
産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産した場合 | 1児につき48.8万円 |
産科医療補償制度に加入の医療機関等で妊娠週数22週未満で出産した場合 | 1児につき48.8万円 |
参考:子どもが生まれたとき _ こんな時に健保 _ 全国健康保険協会
出産育児一時金をより多く受け取る際には、産科医療補償制度に加入している医療機関を利用しましょう。
派遣会社によっては、独自に手当を用意している場合もあります。
出産手当金
健康保険に加入している派遣社員が出産で仕事を休んだ場合は、出産手当金の利用が可能です。(国民健康保険に出産手当金はありません。)
出産日の42日前から出産の翌日以後56日までの範囲内で会社を休み、給料の支払いのなかった期間が対象となり、おおむね給料の3分の2に相当する給付金を受け取れます。
具体的に受け取れる月額は、以下の方法で1日あたりの金額を算出して計算します。
【1日あたりの金額】
(支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額)÷30日×(2/3)
上手に活用すれば、出産前後で働けない期間も生活費を保証してくれるので安心です。
育児休業給付
育休の場合は、雇用保険より育児休業給付(出生時育児休業給付金)の支給が受けられます。
具体的な支給要件は下記を参考にしてください。
- 子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間(28日)以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した被保険者であること(2回まで分割取得可)。
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)完全月が12ヵ月以上あること。
- 休業期間中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること。
- (有期雇用の場合)子の出生日から8週間を経過する日の翌日から6ヵ月を経過する日までに、その労働契約の期間が満了することが明らかでないこと。
参考:育児休業給付の内容と 支給申請手続
また実際の支給額は、下記の計算方法で算出して決定します。
支給額=休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)
育休期間もお金の心配をせず育児に専念できるので活用しましょう。
派遣社員でも産休は取得できるから安心
産休は出産を控えた女性であれば誰でも取得できる制度であり、派遣社員でも当然取得可能です。
産前・産後という、体調的にも不安定な時期をゆったりと過ごせるので安心です。
ぜひ利用して、体と心を休めながら出産や育児に臨みましょう。
また男性の派遣社員であっても育休の取得は可能なので、積極的に取得すればご家族を支えることができます。
手当金なども上手に活用して、家庭を犠牲にすることなく安定して働き続けましょう。