派遣社員として働いている方や働くことを検討している方のなかには、時給について悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
派遣社員の平均時給を知ることで、自分自身の労働条件を客観視できます。
今回の記事では、派遣社員の平均時給を職種別に紹介しつつ、時給を上げる方法も紹介しています。
時給を上げたいと思っている派遣社員の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
派遣社員の平均時給は?
厚生労働省の労働者派遣事業報告書によると、令和3年度の派遣社員の平均時給は1,962円であり、1日に8時間働いたとした場合の日給は15,698円です。
ただし、この平均時給には、医師や管理職の方など、高時給の職種も含まれています。
上図が示すように、派遣社員の時給は年々上昇傾向にあります。
さらに、政府が提唱している「同一労働同一賃金」が、派遣社員の労働条件や環境を改善する追い風となっている状況も見て取れるでしょう。
実際に、令和2年度から労働者派遣法が改正され、派遣社員であっても正社員と同等の業務内容を実施しているのであれば、同等の給料を支払わなければいけないと規定されています。
【職業別】派遣社員の時給比較
派遣社員の平均時給は、職種によっても変わります。
ここでは、職種別に派遣社員の時給を見ていきましょう。
営業系
営業系の派遣社員の時給平均は1,563円であり、日給の平均(1日8時間勤務した場合)は12,509円です。
年間休日が120日と仮定すると、想定年収は約306万円です。
営業職は営業成績次第でインセンティブが発生することもあるため、時給以上の給料がもらえる可能性もあります。
営業職の仕事は、顧客に対して自社製品を販売したり、契約を結ぶことによって会社の利益を確保することであり、コミュニケーション能力が必要とされます。
事務系
事務系の派遣社員の時給平均は1,429円であり、日給の平均(1日8時間勤務した場合)は11,435円です。
年間休日が120日と仮定すると、想定年収は約280万円です。
おもな仕事内容としては、パソコンでの書類作成やデータ入力、メール・電話対応、来客対応などがあります。
暦どおりの勤務であり、かつ残業も少ないことから、プライベートとの両立もしやすく、未経験でも応募可能な求人もあることが特徴です。
医療系
医療系の派遣社員の時給は、職種によって大きく異なります。
<職種別 医療系派遣社員の時給平均>
職種 | 時給 | 日給 |
医師 | 7,332円 | 58,658円 |
薬剤師 | 2,953円 | 23,628円 |
看護師 | 2,000円 | 16,002円 |
臨床検査技師 | 2,089円 | 16,712円 |
社会福祉専門従事者(ケアマネ、保育士など) | 1,375円 | 11,007円 |
介護サービス職業従事者(介護士、ホームヘルパーなど) | 1,301円 | 10,414円 |
※日給は、1日8時間働いた場合
職種によって、派遣社員の平均時給よりも高い職種がある一方で、低い時給となってしまう職種もあることがわかるでしょう。
また、医師や歯科医師、薬剤師、看護師など特定の職種は、病院や診療所、介護老人保健施設などへの労働派遣事業が、以下の場合を除いて認められていません。
- 派遣期間後に社員として働くことを前提とした紹介予定派遣
- 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した方の代わりとなる派遣
- 医師の場合、厚生労働省が定める場所で働く派遣
こうした職種の方が派遣での働き方を希望する際は、働く場所や条件を踏まえて派遣先を検討する必要があります。
飲食系
飲食系の派遣社員は、調理を行う場合と接客サービスを行う場合に分かれます。
調理などのキッチン業務を行う飲食物調理従事者の時給平均は1,211円であり、日給(1日8時間勤務した場合)は9,688円です。
一方で、接客などのホール業務を行う接客・給仕職業従事者の時給平均は1,294円であり、日給(1日8時間勤務した場合)は10,359円です。
派遣社員の時給傾向
雇用形態の種類は派遣社員以外にも、パート・アルバイトや正社員などさまざまあります。
では、派遣社員の時給は、他の雇用形態の時給と比較して、どのような特徴があるのでしょうか。
派遣社員はパート・アルバイトよりも所得が高い傾向
派遣社員は、パート・アルバイトと比較して所得が高い傾向です。
パート・アルバイトを雇うためには、人材募集広告の掲載などにより、一定のコストがかかってしまいます。
しかし、派遣社員の場合は派遣会社に依頼すれば厳選された人材の紹介を受けることができ、人材募集にコストをかける必要がありません。
その削減された費用が、派遣社員の時給に反映されていると考えられます。
また、派遣社員はボーナスや昇給がなく、それらが時給に上乗せされることも時給が高い要因となっているでしょう。
派遣先地域の最低賃金を適用
派遣社員の時給は、雇用されている派遣元企業がある地域の最低賃金ではなく、実際に働いている派遣先企業がある地域の最低賃金が適用されます。
例えば、雇用されている派遣元企業が群馬県にあり、東京都にある企業に派遣されている場合を考えてみましょう。
この場合、令和5年の群馬県の最低賃金は935円ですが、東京都の最低賃金である1,113円が適応されるため、時給は1,113円以上でなければいけません。
ご自身が働き始める際に時給を確認するときは、派遣先企業の所在都道府県の最低賃金を把握するようにしましょう。
給料は横ばい
正社員は昇給があるため年々給料が上がっていきますが、派遣社員は昇給がないことから給料は生涯を通して横ばい傾向です。
以下の表は、雇用形態別に年代ごとの時給を示しています。
この表からも、正社員は年齢が上がるにつれ時給も上昇していくのに対し、派遣社員やパート・アルバイトなどの短時間労働者は時給が横ばいであることがわかるでしょう。
派遣社員の時給を上げる方法
派遣社員として経験を積むと、仕事の能力に合わせて時給を上げて欲しいと思うこともあるのではないでしょうか。
ここでは、派遣社員の時給を上げる方法を2つ紹介します。
時給の高い派遣先に変更する
派遣先の企業を変えても良い場合は、登録している派遣会社に今の派遣先よりも時給の高い求人に変更できないか相談してみましょう。
1つの派遣会社にしか登録していないと、その派遣会社が取り扱っている求人しか見ることができません。
ご自身が登録している派遣会社で納得のいく時給の求人が見つからない場合は、複数の派遣会社に登録して多くの求人のなかから時給の高い求人を探してみましょう。
ただし、一度派遣先を決めたら、すぐに派遣先を変えることは避けたほうが良いです。
ご自身が納得のいく求人を探しましょう。
派遣会社に時給交渉を行う
今の派遣先企業のまま働き続けたいと感じている場合は、時給を上げてもらえるよう交渉を行うことも一つの手段です。
給与や福利厚生をはじめとした派遣社員の労働契約を取り扱っているのは、登録している派遣元企業です。
時給交渉は、ご自身が登録している派遣元企業の担当者に相談しましょう。
時給交渉を行う場合は、以下の3点を意識しましょう。
契約更新時に交渉する
一般的に契約更新の約1ヵ月前に、登録している派遣会社から契約更新の意思を確認されます。
契約更新の際は、契約内容を確認するチャンスです。
時給交渉を行いたい場合、契約更新のタイミングでトライしてみましょう。
派遣先企業にとってのあなたの貢献度が高くならないと、時給を上げることにはつながりません。
働き始めてすぐに時給交渉を行うのではなく、一定の期間が経過し業務にも慣れてきた頃に、時給交渉を行いましょう。
希望時給を具体的に伝える
時給交渉する際には、希望時給を具体的に伝えるようにしましょう。
具体的な金額を示すことで、派遣会社にも時給交渉の本気度が伝わります。
また、派遣会社もあなたの希望に対する答えを出しやすくなったり、提示する時給を検討しやすくなります。
あまりにも現実的ではない金額を希望時給として伝えてしまうと、印象が悪くなってしまうため、他の求人の時給相場を参考にして決めましょう。
資格・実績をアピールする
派遣会社が時給を検討する際の材料として、今までのあなたの勤務状況や業務内容、会社に対する貢献度があります。
派遣元企業は、あなたの勤務状況や実績について把握できていないこともあるかもしれません。
時給交渉の際には、派遣先企業での実績や貢献度など、時給を上げる理由となる要素をアピールしましょう。
より良いアピールの方法として、具体的な数字を使うと派遣元企業の担当者も状況をイメージしやすくなります。
例えば、「入職当初よりデータ入力のスピードが上がった」と漠然と伝えるのではなく、「入職当初はデータ入力に5時間かかっていたが、今は3時間でできるようになり、他の業務も任されるようになりました」などと伝えましょう。
また、新たに今の業務内容に関係する資格の取得もアピールの材料となります。
派遣社員の時給相場を知り勤務条件を見直そう
派遣社員の時給は、派遣先を変えたり、派遣元企業に交渉することによって、上げていくことが可能です。
職種や地域によって、派遣社員の時給相場は異なるため、時給相場の情報収集を行い、あらためてご自身の勤務条件を見直してみましょう。