
人生には、さまざまなアクシデントが起こりうるものです。
会社勤めをしているなかで、体調を崩したり、やむを得ない事情で長期の休みが必要になった際は、休職を検討することもあるでしょう。
休職にはさまざまな理由があり、それぞれ申請方法や必要な書類が異なります。
今回は、休職の主な理由と、理由ごとの申請のポイントを解説していきます。
休職を検討している人は、自分がどの理由に当てはまるのかを確認しながら、参考にしてみてください。
目次
休職を申請する際の主な理由とは?
休職の理由は、大きく体調不良による傷病休職とそれ以外の理由に分類されます。
ここからは、よくある休職の理由を見ていきましょう。
人間関係によるストレス
職場の人間関係のストレスから、適応障害やうつ病などの精神疾患を発症し、休職を余儀なくされるケースは少なくありません。
上司や同僚との不和や、コミュニケーション不全が重なることで、徐々にメンタルヘルスが悪化してしまうのです。
人間関係の悩みはストレス源となりやすく、放置すると心身の不調として表れてきます。
心の病は自覚症状が出にくいため、気付かないうちに重症化してしまうこともあるでしょう。
そうなると、業務の継続が難しくなり、私傷病休職を選ばざるを得なくなります。
私傷病休職の申請方法については、このあと詳しく説明します。
長時間労働による心身の不調
業務量の多さや慢性的な人員不足から、長時間労働を強いられるケースもあります。
サービス残業や休日出勤が常態化すると、心身へ大きな負担がかかります。
長時間労働で疲労やストレスが蓄積することにより、身体の不調や精神疾患を患うリスクが高まるのです。
体調を崩して出勤できなくなれば、私傷病休職の対象となります。
時間外労働の上限規制や、年間で10日以上有給休暇が付与された方に対して最低5日以上の年次有給休暇の取得を義務化するなど、働き方改革関連法の施行により一定の歯止めはかかっているものの、中小企業を中心に長時間労働の実態は依然として残っているのが現状です。
ボランティア活動への参加
災害復興支援や途上国での支援活動など、ボランティアに参加するために休職する人もいます。
また、青年海外協力隊に参加して、開発途上国の支援に携わるケースもあるでしょう。
社会貢献活動を通じて視野を広げ、さまざまな経験を積むことは、その後の仕事に活かせる可能性があります。
語学力の向上に加え、異文化コミュニケーション力を身につけることができるでしょう。
ボランティア活動を理由に休職する場合、基本的には自己都合休職扱いになります。
ただ、なかにはボランティア休暇制度を設けている企業もあるので、自社の制度を確認してみると良いでしょう。
自己都合休職の詳細は後述します。
留学
グローバル人材への需要が高まるなか、留学を理由に休職することも可能です。
留学では、語学力が向上するだけでなく、海外の文化や価値観を学ぶことで視野が広がります。
休職して留学すれば、帰国後はもとの職場に復帰できるというメリットがあります。
会社にとっても、グローバルな感覚を身につけた人材を確保できるため、留学制度を設けているところもあるのです。
会社に留学休職制度がある場合は、給与の一部支給や留学費用の補助を受けられることもあります。
資格取得
業務に役立つ資格取得のために、休職を申請するケースもあります。
特に、合格率の低い難関資格は、仕事をしながらの勉強では合格が難しいものです。
そのため、一定期間仕事を離れ、資格取得に専念したいと考える人は少なくありません。
会社にとっても、高度な専門性を持つ人材を確保できるメリットがあります。
ただ、資格によっては、業務への貢献度が低いと判断され、休職が認められないケースもあります。
前もって上司に相談し、会社の方針を確認しておくことが大切です。
しかし、高度な専門性を有する資格だと会社が判断した場合は助成金がもらえることもあるため、一概に休職扱いをする必要がないケースもあります。
理由別の休職の種類と申請のポイント
休職の理由によって、適用される休職制度は異なります。
自分の状況がどの休職制度に当てはまるのか確認し、必要な書類を準備しましょう。
ここからは、以下のそれぞれについて、詳しく見ていきます。
- 私傷病休職
- 労災による休職
- 事故欠勤休職
- 自己都合休職
- その他の休職
私傷病休職
私傷病休職は、一定期間の療養を必要とする心身の不調が理由となる休職です。
申請時に注意すべきポイントがいくつかあるので、確認しておきましょう。
該当する理由
業務外で発症した病気やケガが悪化し、勤務の継続が困難になった場合に、私傷病休職の対象となります。
身体疾患で入院が必要になったり、うつ病などの精神疾患で自宅療養が必要な場合などです。
私傷病休職は、会社によって、休職の期間や休職中に支給される給与額などが異なるため、社内規定をしっかりと確認しておく必要があります。
休職を申請する際のポイント
私傷病休職を申請する際は、医師の診断書が必要不可欠です。
診断書には、傷病名、療養の必要性、休職期間の見込みなどが記載されます。
会社は診断書の内容をもとに、休職の承認を判断します。
申請の際は、提出期限に間に合うよう、余裕を持って診断書を準備しましょう。
伝える際の例文
【例文】
以前より不眠や食欲不振の症状があり、精神科を受診したところ、適応障害と診断されました。
業務に支障をきたす可能性が高く、医師からは仕事を休んで療養するように言われています。
体調が回復するまで、休職させていただくことは可能でしょうか。
診断書を添付しますので、ご確認ください。
ご検討のほど、よろしくお願いいたします。
労災による休職
労災による休職は、業務中に発生した事故や疾病が原因で療養を必要とする場合に適用されます。
労災休職を申請する際には、特有の手続きや必要書類があるため、しっかりと確認しておきましょう。
該当する理由
労災休職は、業務中の事故や作業によるケガや病気、または、通勤途上において発生したケガや病気が原因で、勤務の継続が困難になった場合に適用されます。
例えば、仕事中の転倒や通勤中の事故、過労による健康問題などが該当します。
休職を申請する際のポイント
労災休職を申請するためには、まず労災認定を受ける必要があります。
労災の認定を受けたあと、医師の診断書を添えて会社に申請しましょう。
この診断書には、病名や療養の必要性、休職期間などが記載されています。
申請の際は、労災の手続きを正確に行うために、しっかりとした準備が必要です。
伝える際の例文
【例文】
先日、業務中に発生した〇〇事故について、ケガの状態が思わしくなく、療養を余儀なくされております。
現在、医師の診断を受けており、療養期間が必要とのことです。
つきましては、当面の間、業務に従事することが難しいため、労災による休職をお願い申し上げます。
診断書を添付いたしますので、詳細をご確認いただけますでしょうか。
お手数をおかけいたしますが、何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
事故欠勤休職
傷病以外の理由で出社ができなくなったときに、取得する休職が事故欠勤休職です。
申請の方法など、詳しく見ていきましょう。
該当する理由
業務に起因しない事由のうち、事故や災害など予測不可能な出来事により出社できない場合は、事故欠勤休職の対象になります。
事故や災害に加え、本人の逮捕・勾留、子どもの学校の学級閉鎖などが該当するケースです。
ただし、会社によって、事故欠勤休職の対象となる理由は異なります。
社内規定で定められた事由に当てはまるかどうかを、確認しましょう。
休職を申請する際のポイント
事故欠勤休職の申請時は、状況を証明する書類の提出が求められます。
逮捕・勾留の場合は、拘置所からの連絡票などを提出します。
伝える際の例文
【例文】
以前よりお伝えしていた〇〇事件について、このたび逮捕・勾留されることになりました。
弁護士とも協議しているものの、公判期日など詳細は未定です。
当面の間は、業務に従事することが難しい状況ですので、事故欠勤休職をお願いしたいと考えております。
経緯を記した書面と、拘置所からの連絡票を添付いたしますので、ご確認ください。
大変恐縮ですが、事情をご賢察いただき、事故欠勤休職の承諾をいただきますようお願い申し上げます。
自己都合休職
本人の意思で申し出る休職が、自己都合休職です。
以下で、理由や申請の注意点について確認しておきましょう。
該当する理由
家族の介護や看護、ボランティア活動、留学など、個人的な理由で休職する場合は、自己都合休職に当てはまります。
キャリアアップを目的とした語学留学などで、会社の承認を得て休職に入る場合は、留学休職と呼ばれることもあります。
自己都合とはいえ、明確にしておくべき点があるので、内容をチェックしましょう。
休職を申請する際のポイント
家庭の事情など、業務とは関係性が低いと判断された場合は、休職を認められないケースも多いです。
一方で、留学・ボランティア休職制度を設けるなど、休職者の事情を考慮する企業もあります。
親族の不幸を理由に休職する場合は、忌引休暇の対象になるので、まずはそちらの取得を検討しましょう。
それでも休みが足りないようであれば、自己都合休職の申請に切り替えるのが良いでしょう。
伝える際の例文
【例文】
〇〇地震に際し、復興支援ボランティアに参加したいと考えております。
復興が進むまでボランティア活動に専念したいため、1ヵ月ほど休職させていただくことは可能でしょうか。
期間中の活動内容と、復帰後の業務への意欲についてまとめた書面を添付いたします。
ご確認いただき、ご検討くださいますようお願い申し上げます。
その他の休職
ここまで触れてきた私傷病休職、事故欠勤休職、自己都合休職以外にも、休職の種類はいくつか存在します。
例えば、社員が公職に就くことを理由に取得する公職就任休職は、国会議員や地方議会の議員、知事、市区町村長などに就任する際に取得するものです。
また、労働組合の専従職員として職務に当たるため取得する組合専従休職では、労働組合からの申し入れにより、会社との間で協定の締結が必要になります。
他にも、企業の人事戦略の一環で社員を他社へ一時的に転籍させる出向休職や、刑事事件で起訴され拘留・公判にかかる期間に適用される起訴休職などがあります。
理由を伝えてもスムーズに休職できない場合
正当な理由があるにも関わらず、休職を認めてもらえないケースもあります。
休職制度が不当に運用されている可能性もあるので、自分の権利は主張するようにしましょう。
申請時に提出した書類を再度確認し、不備がないか見直してみてください。
休職事由を裏付ける客観的な証拠を揃え、再度申請することで、休職が認められるかもしれません。
それでも休職が認められない場合は、企業体質に問題がある可能性も疑われます。
休職制度の不当な運用は、労働基準法や労働契約法に抵触する恐れがあります。
こうしたケースでは、労働組合や労働基準監督署に相談するのも一つの手です。
状況によっては、退職や転職を視野に入れることも検討しましょう。
自分がどの休職理由に該当するか確認しよう
休職にはさまざまな理由があり、理由によって必要な証明書類や手続きなどが異なります。
休職を検討する際は、まず自分の理由がどの休職制度に当てはまるか確認することが大切です。
私傷病休職、事故欠勤休職、自己都合休職など、それぞれについて理解を深めておきましょう。
また、正当な休職理由があるにも関わらず、申請が認められないケースもあります。
再度、必要書類を揃えて根気強く交渉することも大切です。
それでも休職が認められない場合は、第三者機関に相談するなど、毅然とした態度で臨むことも必要でしょう。