
公務員の仕事は、残業が少なくプライベートを充実させやすいイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?
公務員の仕事にも残業はあるのか?職種ごとに残業時間は異なるのか?これらの疑問にお答えします。
本記事では、国家公務員と地方公務員の平均残業時間を紹介し、職種別の残業事情についても詳しく解説します。
公務員をめざしている方や、公務員の労働環境に関心がある人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
公務員にも残業はある?
公務員の仕事には、残業が少なくプライベートが充実しているというイメージを持つ人が多いかもしれません。
しかし、実際には公務員にも残業が発生することがあります。
近年では、むしろ公務員の長時間労働が問題視されているほどです。
総務省が令和2年に実施したアンケート調査によると、メンタルヘルスの不調を理由に休職する地方公務員は、10万人あたり2,258人いるという結果が出ています。
そのうち、長時間労働が原因で休職に至った割合は7.1%ということがわかりました。
これらを見て、長時間の残業がメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことがあることは、おわかりいただけたかと思います。
公務員の残業時間は?
では、公務員の残業時間は実際どれくらいあるのでしょうか。
国家公務員と地方公務員に分けて、それぞれの残業時間を見ていきましょう。
国家公務員の場合
国家公務員の平均残業は、おおむね20時間未満とされています。
人事院が発表している「国家公務員の平均年間超過勤務時間数、国家公務員の超過勤務時間の時間階層別職員割合」によると、国家公務員の平均年間残業時間は以下のようになっています。
調査年 | 年間平均残業時間(時間) |
令和6年 | 230 |
令和5年 | 219 |
令和4年 | 217 |
令和3年 | 213 |
令和2年 | 219 |
令和6年の年間平均残業時間をもとに、月の平均残業時間を算出するとおおむね20時間程度です。
ただし、「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等(令和3年度)について」では、「原則として1箇月について45時間かつ1年について360時間の範囲内」を超えて超過勤務を命じられた職員の割合は他律部署※1 で15.6%、自律部署※2 で6.8%もいるため、所属部署によって残業時間に差があることがわかります。
※1 他律部署…業務量や時期、遂行に関する事項などを自ら決定することが困難な業務の比重が高い部署
※2 自律部署…社内の権限をそれぞれの社員に分散し、自らの意思で主体的に行動できる組織形態
地方公務員の場合
地方公務員の年間平均残業時間は、総務省の「令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」によると、149.6時間です。
月平均では、約12.5時間の残業が発生していることがわかります。
しかし、全体の5%の職員には月45時間以上、さらに0.6%の職員には月100時間以上の残業が発生しています。
国家公務員よりは平均残業時間が短いものの、部署や人によって残業時間が多くなることは変わりありません。
公務員の残業時間は職種によって変わる
公務員の残業時間は、職種によって大きく異なります。
例えば、市役所や区役所の一般職と、教職員や警察官・消防士などでは残業の実態に大きな違いがあります。
各職種の仕事内容や勤務環境によって、求められる労働時間や残業の頻度が異なるためです。
市役所や区役所の場合
市役所や区役所の場合は、総務省「令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果」によると、以下のとおりとなっています。
団体 | 平均年間残業時間 | 平均月間残業時間 |
指定都市 | 156.4時間 | 13時間 |
市区町村 | 137時間 | 11.4時間 |
上記を見る限りは、残業時間が決して多いとはいえません。
教職員の場合
一方、教員や警察官、消防士などの一般職以外の公務員は残業時間が多くなる傾向にあります。
例えば、令和4年の教員勤務実態調査によると、教師の1日あたりの在校時間はおおむね11時間程度でした。
このデータから、平日でも毎日2時間以上の残業が発生していることがわかります。
さらに、教員は土日に部活動があることが多く、その分、労働時間が増える傾向にあります。
令和5年に日教組が行った調査では、3割以上の教員が毎日4時間以上の時間外労働をしており、月の残業時間が80時間を超えるケースが多いことが明らかです。
過労死ラインとなる80時間を越えて働く教員がいることは、深刻な問題となっています。
警察官・消防士の場合
警察官や消防士に関しては、残業時間を適切に計測した公的なデータは存在しません。
緊急出動などもある職種なので、時間外労働事態の把握が難しく、実際の残業時間の実態が明確にわかりづらい状況にあります。
公務員の残業時間は部署や職種によって異なる
公務員の残業時間は、一概には語れません。
国家公務員と地方公務員では平均残業時間に差があり、地方公務員のほうが比較的短い傾向にあります。
しかし、市役所や区役所といった一般職と、教員や警察官・消防士などの特殊職種では残業時間に大きな違いがあるのです。
例えば教員の場合、部活動や行事などがあるため、平日でも毎日2時間以上の残業が常態化しています。
また警察官・消防士は、緊急出動が多いため残業時間の把握自体が難しく、実際の残業時間が不透明な場合が多いのが現実です。
このように、公務員の残業時間は職種や部署によって大きくばらつきがあるのです。
公務員全体が残業が少ないわけではなく、職種によっては過酷な労働環境に直面しているケースもあります。