契約社員を辞めることを考えたとき、退職金がもらえるのかどうかが気になる方は多いでしょう。
労働者に対して退職金を支給するかどうかは、企業によって異なります。
よって、就業規則で退職金制度を定めている企業であれば、条件を満たすことで退職金を受け取ることが可能です。
しかし、契約社員は期間を決めて働く有期雇用契約であることから、支給の条件を満たさない可能性が高いため注意しましょう。
本記事では、契約社員の退職金について、支給の有無やもらえる場合の平均額を解説します。
退職金が出ないときの対処法も紹介しているため、退職を検討している契約社員の方は参考にしてみてください。
目次
契約社員は退職金なしの場合が多い
契約社員は退職金が出ない可能性が高いでしょう。
契約社員は正社員とは異なり、期間を定めて契約を結ぶ有期雇用であることがその理由です。
また、そもそも勤め先に退職金制度がない場合も考えられるため、就業規則を確認することをおすすめします。
契約社員の退職金が出ない理由
退職金制度のある企業では、自己都合の場合「3年以上の勤続年数があること」を支給条件としているケースが多くあります。
これに対し、有期雇用契約である契約社員の勤続年数は最長3年が基本です。
正社員のように雇用期間を定めず働き続けられるわけではないため、契約社員は勤続年数3年以上という退職金の支給条件を満たさない可能性が高いでしょう。
また、契約社員だけでなく、正社員に対しても退職金を支給しない企業は存在します。
厚生労働省が行った「平成30年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業の割合は80.5%でした。
この結果から、約20%の企業では退職給付制度を採用していないことがわかります。
契約社員の退職金が勤続年数3年以降に発生する場合もある
独立行政法人労働政策研究・研修機構が2019年にアンケートを実施した「パート・アルバイト」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に関する調査結果によると、契約社員やパート社員への退職金支給率は、大企業よりも中小企業の方が多い結果になりました。
フルタイムで働く有期雇用労働者に対し、従業員300人以上499人以下の大企業で退職金を適用しているのは12.2%です。
それに対し、従業員50人以上99人以下の小規模な企業では17.0%、30人以上49人以下の企業では16.8%がフルタイムの有期雇用労働者に退職金を支給していると回答しました。
契約社員で退職金をもらえる平均相場や計算方法
退職金制度を導入している企業で、なおかつ支給条件を満たしている場合には、契約社員であっても退職金を受け取れます。
退職金の計算方法には、以下2パターンなどが考えられます。
- 契約社員の退職金を勤続年数の規定に応じて支払うケース
- 勤続年数1年ごとに1万円の計算式で支払うケース
それぞれのケースで契約社員の退職金がいくらくらいもらえるのか、相場を解説します。
契約社員の退職金を勤続年数の規定に応じて支払うケース
契約社員の勤続年数に応じて、退職金の支給額を設定する企業もあります。
以下は、支給額の一例です。
勤続年数 | 退職金支給額 |
---|---|
3年以上~5年未満 | 5万円 |
5年以上~10年未満 | 10万円 |
10年以上~ | 20万円 |
上記の支給額はあくまでも例であり、企業によって規定はさまざまです。
東京都産業労働局による「中小企業の賃金・退職金事情」では、高卒の労働者が3年勤務した自己都合退職した場合の退職金は18万9,000円、5年で35万8,000円、10年で90万7,000円となっています。
ただし、このデータには正社員も含まれており、契約社員の退職金に関しては支給額が大幅に低くなる可能性もあるでしょう。
勤続年数1年ごとに1万円の計算式で支払うケース
契約社員の退職金は、3年以上の継続に対し「継続年数×1万円」といった形で計算する企業もあります。
つまり継続年数が5年であれば退職金は5万円となるでしょう。
あるいは、ポイント制で退職金を決定する企業もあります。
これは、勤続年数に加えて1年間の職能や仕事内容といった項目を基準とし、1ポイントにつき1万円などが支給される制度です。
勤続年数3年が10ポイントだとして、職能ポイント3ポイントを獲得していれば13万円が支給される形になります。
契約社員と正社員を同じ待遇にする「同一労働同一賃金」
勤め先に退職金があるにも関わらず、契約社員だからという理由で退職金の支給対象にならないのは同一労働同一賃金に反する可能性があります。
同一労働同一賃金は、非正規雇用の労働者と同じ企業で働く正社員とのあいだにある待遇差を解消するべく、厚生労働省が定めたガイドラインです。
「同一労働同一賃金」は待遇の差をなくす目的のガイドライン
同一労働同一賃金は、契約社員をはじめとした非正規雇用労働者と正社員のあいだにおける、不合理な待遇差をなくすための制度です。
短時間・有期雇用労働者に関して、正社員と同一業務で同一期間働くなど働き方が変わらない場合、雇用形態を理由に待遇を変えることは禁止されています。
この考え方に基づき、契約社員やパート・アルバイト、派遣労働者などが、企業内で正社員と同じ働きをしているのならば、同じだけの賃金を払われなければなりません。
業務内容や勤務期間などに違いがある場合には、その違いに応じた賃金の支払いが必要です。
契約社員のボーナスや退職金も待遇差が生じないように
同一労働同一賃金により、基本給はもちろん賞与なども、雇用形態に関係なく労働に応じた金額が支払う必要があります。
昇給やボーナス、福利厚生はもちろんのこと、退職金などの各種手当も同様です。
なお、契約社員の無期転換ルールを採用する場合、企業は就業規則で無期転換した社員の定年を定めることが可能です。
もし、契約社員の退職金規定がある企業で、契約社員が無期転換ルールにより定年まで働いたとしたら、勤続年数に基づき正社員同様に定年までの退職金を支給しなければなりません。
ただし、無期転換した社員には退職金を適用しない旨を就業規則で定めている企業もあります
無期転換後、正社員と同様の手当が適用されるのか契約時に確認しておきましょう。
契約社員で退職金がない場合の対処法
ここまで解説してきたとおり、契約社員には退職金が支払われない可能性があります。
もし勤め先に退職金制度自体はあるものの、契約社員には適用されないという場合、以下の対処法を試してみてください。
- 会社に説明義務を果たしてもらう
- 契約社員の退職金制度について根拠を探す
順に詳しく見てみましょう。
会社に説明義務を果たしてもらう
同一労働同一賃金により、非正規雇用の労働者が正社員と同様の仕事をしているにも関わらず待遇の差がある場合、会社側は相違の理由を具体的に説明する義務があります。
正社員にのみ退職金制度がある企業であれば、なぜ契約社員である自分には適用されないのか説明を求めてみましょう。
「就業規則だから」などの一遍の理由ではなく、実際の勤務状況や業務内容などの観点から、自分が納得できる合意的な説明を受けられるかどうかがポイントです。
契約社員の退職金制度について根拠を探す
退職金制度を設けるか否かについて法律上の義務はありませんが、企業が導入するのであれば就業規則や労働契約書などで明示する必要があります。
労働契約内容に退職金請求権が含まれている場合は、契約社員であっても退職金の支払いを求めることが可能です。
労働契約内容を確認できる書類としては、就業規則の他に労働契約書や退職金規定、労働協約などが挙げられます。
契約社員は退職金がもらえない可能性が高いことを理解しておこう
契約社員は一般的に期間を定めて契約を結ぶことから、企業の退職金制度の条件に当てはまりにくく、退職金をもらえない可能性もあります。
しかし、同一労働同一賃金の強化により、契約社員でも正社員と同じ賃金・賞与を支給する企業は増えてきました。
とはいえ、契約社員に対して退職金制度を設けている大企業はまだ少なく、待遇の改善はこれからともいえるでしょう。
また、これから契約社員として働き始めようと考えている方は、退職金など給与以外の労働条件も確認のうえで応募先を選ぶことも検討してみてください。