退職を申し出る際に心配なことが、上司からの引き止めです。
退職を申し出た際にこじれるとスムーズに退職できない場合もあります。
そこで、今回は退職引き止めへの対策を見ていきましょう。
退職を引き止める理由や、引き止めの防止策、引き止められた場合の対処方法を解説します。
目次
会社側に退職を引き止められる理由
退職を申し出た際に、上司から引き止められることは少なくありません。
そもそもなぜ、会社側は従業員の退職を引き止めるのでしょうか。
主な理由を4点解説します。
人手不足になる
会社は余分な人材を雇うことはしません。
そのため、一人退職することで人手不足になり、辞めた人が担っていた仕事を他の社員が抱えることになってしまいます。
特に、もともと人手不足の場合や、少ない人数で回している場合は、一人の退職で店舗や事務所が閉鎖になるケースもあります。
退職する本人は「自分一人が辞めても問題ない」と考えるかもしれませんが、従業員一人の退職であっても、会社に大きな影響を与えるのです。
上司の責任が問われる
部下の退職が、上司の評価に悪影響を及ぼす場合があることも、退職を引き止められる理由の一つです。
退職者が出ると、上司の管理責任能力が不足しているとみなされ、減給など評価に影響すること があるからです。
くわえて、使い勝手の良い部下を置いておきたいと考えているパターンもあります。
日常的に担当業務を押しつけられる、成果を横取りされるなどの場合には、上司が自己都合のために引き止めている可能性があるため、注意が必要です。
新たな人材採用や教育にはコストがかかる
退職者が出ると人手不足になってしまうため、人員が補充されます。
しかし、新たに人を採用するためには、求人広告を掲載し応募者と面接するなど、コストがかかります。
また、採用できたからといって、すぐ前任者と同じように働けるわけではありません。
育成や教育にも時間と人を割かなければならず、スキルを身につけるまでにどれだけの時間がかかるかも不透明です。
新たな採用や教育の手間を考えると、会社としては退職者を出したくはないでしょう。
社員のキャリアを考えてくれている
会社や上司自身のためではなく、退職する部下の将来を考えて引き止めてくれるケースもあります。
理由が曖昧な場合や、難易度が高すぎる計画を立てている場合、退職後を心配してくれていることも考えられます。
上司が人間的に尊敬でき、普段から親身になってくれる人物ならば、一度退職を客観的に考え直してみても良いでしょう。
退職の引き止めにあわないためには事前準備が大切
退職を申し出る際にはまず引き止められる要素をなくしておくことが重要です。
事前に確認し、おさえておくべきポイントを紹介します。
繁忙期を避ける
退職希望日と繁忙期が重ならないようにすることがポイントです。
お互いが納得して退職に至るためには話し合いが必要になりますが、繁忙期に話し合いの場を設けることは簡単ではありません。
むしろ退職手続きがなかなか進まずに、トラブルに発展しやすくなります。
さらに、繁忙期の場合は退職が決定しても、引継ぎ作業に苦労するでしょう。
職場に迷惑をかけてしまう恐れがあるため、繁忙期は避けることが無難です。
転職先・退職日を決めておく
転職先と期日が決まっていない場合、会社側は残るように説得を試みます。
そのため、スムーズに退職するには転職先と退職日を決めておくことが必要です。
退職後の転職先が決まっていれば、退職の意思を強く示せるほか、退職の流れに転職先も関わってくるため、会社の一存では引き止めにくくなります。
上司に伝える前の段階で、今後の計画を詳しく決めておき、確定事項として伝えることが大切です。
1.5ヵ月~2ヵ月前に伝える
退職の意思を固めたら、余裕を持って引継ぎをするため、1.5ヵ月~2ヵ月前には上司に伝えましょう。
民法では、退職の旨を申し出てから2週間が経過すれば退職できると規定されていますが、円満退職のためには、 後任が仕事を覚えスキルを身につけるだけの期間を設けておく必要があります。
また、引継ぎや有給消化なども考慮し余裕を持って伝えることがポイントです。
なお、就業規則によっては「退職日の1ヵ月前に申し出ること」などの内容が定められている場合もあります。
事前に規則を確認してから退職を申し出ましょう。
交渉可能な退職理由にしない
退職を申し出た際、一般的には退職理由を尋ねられます。
その際に不満をぶつけるだけにとどめると、不満の原因を解消すれば退職しないと思われてしまい、交渉や引き止めが行われる恐れがあります。
そうならないためには、会社側が納得する退職理由を伝えることが大切です。
例えば、業務量が多すぎると伝えた場合、調整するなどといって引き止められることが考えられます。
しかし、「特定の分野でスキルを活かしたいが、今の会社では扱っていないため対応できない」などの前向きで具体的な内容ならば、上司も引き止めにくいでしょう。
自身のキャリアアップなどポジティブな退職理由を用意しておくことで、交渉はされにくくなります。
退職願・退職届を書面で提出する
退職の旨を口頭で伝えるだけでは、「聞いていない」などトラブルになる可能性が懸念されます。
こうした問題を回避し円満に退職するためにも、退職願や退職届を書面で残しておくことが重要です。
退職願は会社側に退職を願い出る書類であり、却下されることがあります。
それに対して退職届は、自分の退職を会社に届け出るための書類で、会社に退職の可否は問いません。
唐突に退職届を出すと、会社側とのトラブルに発展する危険性があるため、まずは退職願で退職の意思と退職予定日を申し出て、そのあと退職届を提出することが一般的な流れです。
情報収集をしておく
すでに退職している先輩や同僚に相談すると、有益な情報を得られる可能性があります。
どのような理由で退職を申し出たか、どのように引き止められたかなどを具体的に聞いておくことで、自分が退職を切り出す際に役立てられるでしょう。
また、申し出てから実際に退職するまでのスケジュールも聞いておくと、退職までのスケジュール管理をより正確に組むことができます。
【ケース別】退職を引き止められた際の対策
会社側も大切な人材に退職してもらいたくはないため、どうにか退職を思いとどまらせようとさまざまな方法で説得してきます。
そうした場合に備え、退職を引き止められた際の対策をケース別に見ていきましょう。
退職時期を引き延ばされる
「後任が決まるまで待ってほしい」「もう少し働いてみてから考えてみてはどうか」などさまざまな理由をつけて退職時期を引き延ばそうとする場合があります。
こうしたケースでは、心変わりに期待している、引き延ばしたままなかったことにしようとしているなどの可能性が濃厚です。
退職延期を打診されないよう、退職日と退職後のプランを明確に決めて伝えましょう。
引き延ばされそうになった場合でも延期する必要はないため、退職の意思を強く持ち、誠意を示しながらもしっかりと断ることが大事です。
ただし、引き延ばそうとしている理由が必ずしも会社都合だけとは限りません。
なお、在籍期間や退職日によってはボーナスや退職金が変わる可能性があるため、引延しの意図や就業規則を確認しておきましょう。
待遇改善・異動を提案される
退職理由として会社への不満を挙げた場合、待遇改善や異動を提案されるかもしれません。
例えば、給料が低いことを理由にすると、「来期から給料を上げるから残ってくれ」と打診される場合があります。
しかし、これではただの口約束であり、信頼性はありません。
書面で残っていなければ、退職を取り消したあとに曖昧にされ、元の状態で働かなければならない可能性もあります。
そのため、待遇改善や異動を提案された場合は、それ以外に改善しようのない理由を伝えることが必要です。
現職では、異動や待遇改善があっても叶えられないことを、退職理由として伝えましょう。
転職のデメリットを諭される
「転職したら年収が下がる」「他で活躍するには経験不足」など、退職によるデメリットを主張し不安をあおって引き止めようとするパターンです。
なかには、実際に見通しが甘かったり、上司が心配してくれていたりする可能性もありますが、退職の不安をあおることで自信を失わせ、会社に縛りつけることを目的としている場合は要注意です。
相手のネガティブな発言は気にせずに、「ここではやりたいことができない」などの退職意思と理由を明確に伝えましょう。
情に訴えかけてくる
「期待している」「辞められたら困る」「あなただから残ってほしい」など、感情に訴えかけてくることも、引き止めの場面で想定されるケースです。
一緒に働いてきた人からこのように言われると、退職することが申し訳なくなってしまう場合もあります。
しかし、情に訴えかけてくるケースでは、逆に感情ではなく理性で判断することがポイントです。
なぜ退職したいのか、今後のキャリアなどについて自分の意思を論理的に示しましょう。
脅される
上司がパワハラ気質である場合、「退職すると会社と顧客に迷惑がかかる」「損害賠償請求をする」などと脅されるケースもあります。
こうした脅しによる引き止めは、立場が弱い部下を萎縮させ、意見を封じることが目的です。
しかし、民法では退職を申し出てから2週間経過した時点で退職が可能なため、 退職を認めないこと自体が違法です。
くわえて、懲戒処分や損害賠償などの言葉を使った脅しは、パワハラに該当する可能性もあります。
こうした場合は一人で抱え込まず、上司よりも上の役職者や労働基準監督署に相談することが解決につながるポイントです。
退職を引き止められて迷ったときの考え方
退職したいと申し出ても、お世話になった上司から説得されると気持ちが揺らぐケースもあるでしょう。
しかし、一時の感情だけで判断することはリスクのある行動です。
最後に、退職を引き止められて迷ったときの考え方を解説します。
退職を思いとどまるべきケース
待遇・条件や人間関係に不満があり、その改善を提案された場合には検討の余地があるでしょう。
例えば、人間関係に不満があり、別の支店に異動すれば問題が根本から解決されるなら、会社に残ることを選択しても良いかもしれません。
ただし、待遇改善の提案によって退職を思いとどまるのであれば、それが口約束にならないように書面で内容を残しておくことが必要です。
なお、一度退職を申し出てから残る決断をした場合、居心地が悪くなるケースもあります。
周囲から「退職を切り札に待遇改善してもらったらしい」などのうわさが流れたり、仕事へのモチベーションを疑われたりする可能性もあるため、要注意です。
退職すべきケース
退職を考えた根本的な問題が解決しない場合、引き止められても応じるべきではありません。
今の会社内では異動してもやりたい仕事ができない、理想とするキャリアプランが実現できないなど、現職では問題が解決しないのであれば、退職の意志を貫くことが大切です。
引き止められて会社に残っても、根本的な問題は変わっていないため、また退職したいと思う可能性があるでしょう。
自分が退職したい理由を客観的に考え、冷静に判断することがポイントです。
退職は引き止められると心得てしっかり事前準備をしよう
会社に余計な人材はいないため、なんの引き止めもされずに退職することは難しいでしょう。
そのため、引き止められても円満に退職できるよう、準備しておくことが大切です。
退職理由の伝え方やタイミングを、自分の状況や会社の繁忙期などに照らし合わせて考えておきましょう。
そのうえで、引き止められ方別に対処してください。