退職を決めた際、会社にいつ申告すれば良いのか迷う人は少なくありません。
今回の記事では、退職を申告する時期を定める、就業規則と民法について、それぞれ解説します。
退職を検討している方は参考にしてください。
目次
会社の就業規則は1~3ヵ月前の申告が一般的
一般的に、会社の就業規則には、退職の申告時期についての記述があります。
会社によって異なりますが、退職の1〜3ヵ月前と規定されている場合が多いでしょう。
退職を何日前に申告するか、法律と就業規則のどちらが優先される?
退職の申告時期を定める決まりには、就業規則と民法の2つがあります。
就業規則では一般的に1〜3ヵ月前、民法では正社員の場合14日前と、それぞれ異なる時期が指定されていますが、原則として就業規則を優先するようにしましょう。
円満退職のためには業務規則を遵守する
会社にとって従業員の退職は、退職届を受け取って終わりというわけにはいきません。
退職後も事業に支障がでないよう、後任の選定や引き継ぎを行うための猶予が必要です。
そのため、民法で許されているからといって、会社への申告を業務規則よりも遅らせてしまうと、会社に迷惑をかけ、円満な退職が難しくなります。
法的拘束力があるのは民法
会社が辞めさせてくれないなどの事情がある場合は、民法に則って対応しましょう。
民法の規定では、正社員は14日前までに申し出ることで退職することができます。
たとえ就業規則で1〜3ヵ月前と定められていても、就業規則には法的拘束力はないため、法律である14日前の退職申告が優先されます。
退職を何日前までに申告すべきかは雇用形態による【民法】
ここからは、民法が規定する退職の申告時期について詳しく見ていきましょう。
【月給制正社員の退職】原則14日前には申告
民法第627条1項には、雇用期間に定めがない人の退職の申し入れについて以下のように定めています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
このことから、月給制の正社員など無期雇用の方の場合は、原則退職日の14日前に退職申告をする必要があります。
また、雇用契約の解約はいつでも可能であることも明記されています。
一方で、給与の規定方法によって退職の申告期日が異なる場合があるため、この法律が適応されるのは無期雇用かつ月給制の場合であることを頭に入れておくと良いでしょう。
月給制正社員以外の退職は何日前にいう?
先述 のように、民法における退職の申告期日は給与の規定方法によって異なります。
以下では、次の3つのパターンをそれぞれ見ていきましょう。
以下では、
- 年俸制
- 完全月給制
- 契約社員
について解説していきます。
【年俸制】退職3ヵ月前までに申告
年俸制の退職申告時期は、以下の民法第627条3項を参照しましょう。
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
1年間の給与額が定められている年俸制は、上記の「6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合」に該当するため、退職の3ヵ月前に退職の申告を行う必要があります。
【完全月給制】退職月の前半までに申告
月の給与が固定されている完全月給制は、 以下の民法第627条2項の「期間によって報酬を定めた場合」に該当します。
期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
そのため、完全月給制は退職を申告した日にちによって、実際に退職可能な日にちが変動します。
たとえば、月末締めの場合、前半である1〜15日の間に退職の申告をすればその月末で退職できますが、16日以降に申告するとその次の月末での退職となります。
【契約社員】契約期間により異なる
契約社員の場合は有期雇用の契約になるため、正社員のように民法627条1項は適応されません。
契約期間中は退職をしないのが原則ですが、契約期間中の退職の可否については労働基準法第137条に記載されており、契約期間によって異なります。
労働基準法第137条には以下のように記載されています。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
【契約期間が1年未満】契約期間中の退職は不可
契約期間が1年未満の場合は、基本的に契約期間中の退職はできません。
万が一、契約先の合意なしで退職してしまうと、場合によっては損害賠償金を請求されてしまうので注意しましょう。
ただし、民法第628条によって、やむを得ない事情がある場合に限り退職が認められています。
民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
「やむを得ない事情」とは、社会的に労働を続けることができないと認められるような事情のことで具体的には以下のようなものです。
- 労働者本人の怪我や病気
- ご家族の介護
- 業務内容の契約違反
- ハラスメント
【契約期間が1年以上】いつでも退職が可能
契約期間が1年以上の場合は、労働基準法第137条により、いつでも契約を解除し退職することが可能です。
契約期間や雇用契約の内容・会社の就業規則などを確認し、直属の上司に誠意を持って退職の意思を伝えましょう。
会社側からの解雇は30日前には通達が必要
会社から解雇する場合は、30日前までに、従業員に対して通達する必要があります。
通達せずに解雇する場合は、30日分の賃金を支払わなければなりません。
労働基準法第20条には、以下のように定められています。
労働基準法第20条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
また、労働契約法16条によって、社会的に解雇が合理的だと判断される様な事例以外による解雇は無効とされています。
労働契約法第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
これらのことから、特に理由もなく突然解雇されるような状況になる可能性は低いことがわかるでしょう。
退職の意思を会社に伝える前に、法律や就業規則の申告規定を確認しよう
退職を考えた際には、早めに就業規則を確認し、無理のないスケジュールで会社に申告することで、円満退職をめざしましょう。
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