「扶養」には、「税制上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。
それぞれの違いを明確に理解できていない人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、税制上・社会保険上の扶養の違いをわかりやすく解説しています。
扶養の概要や扶養に入れる対象者を知りたい方は、参考にしてみてください。
目次
扶養とは
扶養の意味
扶養とは、自分で生計を立てられない家族や親族に、経済的支援を行うことです。
支援する人を「扶養者」、支援される人を「被扶養者」と呼びます。
被扶養者には、配偶者や子、両親などが該当するのが一般的です。
扶養とは「税制上」と「社会保険上」の2種類がある
扶養には、「税制上」と「社会保険上」の2種類があります。
それぞれの概要は以下のとおりです。
- 税制上の扶養:所得税など税金の控除に関するもの
- 社会保険上の扶養:健康保険や年金に関するもの
2種類の扶養は、扶養家族となりえる範囲や、扶養家族となる上限年収が異なります。
また、扶養家族の呼び方もそれぞれ違っており、税制上の扶養家族は「扶養親族」、社会保険上の扶養家族は「被扶養者」です。
税制上の扶養の概要とメリット
税制上の扶養とは、扶養者の配偶者や子どもの年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は、給与収入が103万円以下)の場合に、扶養者の所得から一定金額の控除を受けられる制度です。
親や子どもは扶養控除、配偶者は配偶者控除や配偶者特別控除の対象となり、扶養者の納税負担額が軽減されます。
所得税の負担が軽減
納税者に税制上の扶養親族がいる場合は、所得控除である「扶養控除」を受けられます。
扶養控除の具体的な金額は、以下のとおりです。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
出典: No.1180 扶養控除|国税庁
住民税の負担が軽減
上記の扶養控除を受けると課税所得が減るため、住民税の負担も軽減します。
個人住民税の割合は課税所得の10%です。
つまり、扶養控除で38万円の控除を受けたとすると、個人住民税は10%の年間3万8千円軽減されます。
税制上の扶養に入れる範囲
扶養親族に該当する人の範囲となる一つに、以下の条件があります。
条件:配偶者以外の親族または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること
親族とは以下のとおりです。
- 6親等内の血族
- 配偶者
- 3親等内の姻族
血族とは、自分の両親や兄弟など血縁関係の人に加え、養子縁組による法定血族(法律上の血族)も含まれます。
また姻族とは、配偶者の一方と他方の血族のことで、夫からみた妻の兄弟や両親などです。
給与基準は103万円以下
扶養親族に該当する人の範囲となる一つに、以下の条件があります。
条件:年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は、給与収入が103万円以下)
給与所得があると最低でも55万円の「給与所得控除」を受けることが可能です。
つまり給与所得控除を考慮すると、合計所得金額が48万円を超えるのは103万円となるため、給与収入のみの場合は103万円以下が条件となります。
社会保険上の扶養の概要とメリット
社会保険上の扶養とは、扶養者が加入する社会保険(健康保険と厚生年金)の被扶養者となることです。
被扶養者は、扶養者が納めている社会保険料で扶養者と同じ社会保険に加入できるため、被扶養者の支払いはありません。
つまり、被扶養者も医療費控除を受けられ、一部負担で医療を受けられます。
年金保険料の支払いは不要
条件を満たした被扶養者は第3号被保険者となり、国民年金保険料の支払いは不要です。
第3号被保険者とは、会社員や公務員などの第2号被保険者(夫など)に扶養される配偶者(20歳以上60歳未満)を指します。
第3号被保険者であるメリットは、保険料を自ら納付する必要はなく、保険料納付済み期間としてカウントされるため、将来の年金額に反映されることです。
健康保険料の支払いは扶養者分のみ
健康保険料の支払いは、扶養者一人分のみです。
扶養家族が2人(妻・子)でも、4人(妻・子ども・両親)でも、支払う保険料は同額であり、扶養者の収入額によって決まります。
健康保険に加入すると扶養者と被扶養者の医療費の一部負担割合は、以下のとおりです。
- 75歳以上は1割負担(一定以上所得者は2割負担、現役並み所得者は3割負担)
- 70〜74歳は2割負担(現役並み所得者は3割負担)
- 70歳未満は3割負担(6歳未満は2割負担)
社会保険上の扶養に入れる範囲
社会保険上の扶養に入れる範囲は、以下のとおりです。
- 扶養者の直系尊属や配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として扶養者に生計を維持されている人
- 扶養者と同一世帯で主として扶養者に生計を維持されている次の条件に該当する人
- 扶養者の三親等以内の親族
- 扶養者の配偶者(事実婚)の父母と子
- 2.の配偶者が亡くなったあとの父母と子
給与基準は130万円未満
対象者の年間収入は、130万円未満でなければなりません。
つまり、年収が130万円以上になると扶養から外れます。
対象者が60歳以上、または障害厚生年金を受けられるほどの障がい者の場合は、180万円未満です。
また、扶養者と対象者が同一世帯に属しているか否かで、以下のように条件が異なります。
- 同一世帯に属している場合:扶養者の年収の2分の1未満
- 同一世帯に属していない場合:年間収入が扶養者からの仕送り額より少ない
扶養について正しく理解しよう
扶養には、「税制上」と「社会保険上」の2種類があります。
税制上の扶養と社会保険上の扶養では、扶養家族となりえる範囲や、扶養家族となる上限年収が異なるため注意が必要です。
それぞれの扶養について、正しく理解しておきましょう。