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初めて正社員として採用するときや、新しい仕事に転職する人材を迎える際に、試用期間を設けている企業は少なくありません。
試用期間とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
期間や待遇、通常の雇用契約との違いなど、試用期間について詳しく解説します。
目次
試用期間とは
試用期間とは、企業が新しく採用した社員の適性や能力を、見極めるために設けられる期間のことです。
本採用前の仮採用の状態であり、この期間中に社員としての資質があるかどうかを判断されます。
試用期間の必要性
企業が人材を採用する際、面接だけで社員の能力や適性を完璧に見抜くことは困難です。
そこで、仕事ぶりや会社への適応力などを評価するために、試用期間が設けられることがよくあります。
試用期間は、長期の正社員雇用を前提に仮採用している状態であり、期間終了後に本採用へと移行するのが通常です。
試用期間中の待遇
試用期間中も、他の労働者と同様に、労働の対価として給与の支給を受けます。
ただし、労働者との合意が得られれば、試用期間中のみ本採用時よりも給与を低く設定することも可能です。
一方、賞与については、法律で支給が義務付けられているわけではなく、企業側が就業規則や賃金規定で支給の有無や条件を定めています。
そのため、試用期間中は賞与が支給されないケースもありうるのです。
試用期間と通常の雇用契約の違い
試用期間中の扱いも通常の雇用契約と大きな違いはありませんが、平均賃金の算定対象外になる点で異なります。
平均賃金とは、基準日以前3ヵ月間に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で割ったものを指します。
これは、休業手当などの計算に用いられますが、労働基準法第12条第3項第5号により、試用期間中は算定に含まれないと規定されているのです。
ただし、試用期間中にやむを得ない事情で休業手当や傷病手当を受ける場合は、同法第12条第5項第6号に基づき、雇用された日の直前の賃金締切日から起算することになります。
試用期間の長さはどれくらい?
試用期間の一般的な長さは、1ヵ月から3ヵ月程度で、長くても6ヵ月を超えることはあまりありません。
この程度の時間があれば、新入社員の適性や業務能力を十分に見極められると考えられているためです。
ただし、試用期間が不当に長い場合には、公序良俗違反として無効になる可能性もあります。
試用期間中に解雇されることはあるのか
試用期間中でも、労働契約が結ばれている以上、会社側の一方的な理由で解雇することはできません。
ただし、「雇用されてから14日以内」であれば、即時解雇をすることができますが、基本的には、解雇する場合は解雇する旨の予告を行ってから解雇が行われます。
解雇が認められるのは、「継続雇用するのが適当でないと判断できる正当な理由」がある場合に限られます。
例えば、遅刻や欠勤が多いことを理由に解雇する場合、企業側は試用期間中のタイムカードなどの記録を提示し、本採用が困難であることを証明しなければなりません。
通常、業務に従事しているにも関わらず解雇されるケースは考えにくいでしょう。
試用期間中の退職は可能か
一方で、労働者側から試用期間中に退職を申し出ることは可能です。
仕事内容が思っていたものと違っていたり、人間関係や社風が合わなかったりと、やむを得ない理由で退職せざるを得ないこともあるでしょう。
ただし、自由に辞められるわけではなく、労働基準法の規定により、退職の2週間に申し出が必要ですが、最近では解雇予告との兼ね合いで30日を就業規則に採用している企業もあります。
試用期間の注意点
試用期間中に退職して転職する際は、履歴書にその旨を記載する必要があります。
試用期間中に退職した事実を隠しても、社会保険の履歴などから発覚することもあるため注意しましょう。
やむを得ない事情があった場合は、事実に基づいて正直に記載するほうが、ネガティブな印象を与えにくいでしょう。
試用期間に関するよくある疑問
ここからは、試用期間に関してよく寄せられる質問について見ていきましょう。
社会保険への加入義務や、試用期間の延長、業務内容の違いなど、気になるポイントを解説します。
試用期間中は社会保険に加入できる?
試用期間中であっても、社会保険への加入が義務付けられています。
正社員以外の場合でも、一定の条件を満たせば加入が必要となるため、よく確認しておきましょう。
試用期間が延長されることはある?
試用期間の延長は、労働者本人の同意なしには行えません。
したがって、会社側から一方的に延長を求められた場合は、必ず指摘するようにしましょう。
労働契約書に延長についての明記があり、正当な理由と常識的な期間であれば認められる場合もあります。
契約内容をよく確認し、不明な点は明らかにしておくことが大切です。
試用期間の業務内容は異なる?
一般的に、試用期間中の業務内容が通常の業務と異なることはありません。
実際の業務内容が求人票の記載と違う場合は、労働基準法第15条違反に当たる可能性があります。
もし労働契約書に記された内容と、試用期間中の業務が大きく異なるようであれば、労働契約を即時解除することができます(労働基準法15条2項)。
試用期間の仕組みを知ってトラブルなく過ごそう
試用期間は、企業と労働者の双方にとって重要な意味を持つ期間です。
企業は適切に人材を評価し、労働者は自分に合った環境かどうかを見極めることができます。
労働者としても、給与や社会保険の扱い、解雇や退職の可否など、試用期間ならではの注意点をしっかりと理解しておきたいものです。
試用期間の仕組みをよく知り、納得のいく就職となるよう、適切に対応していきましょう。