定年退職をしたあとも、体が健康であればまだまだ働きたいと考える人は多いのではないでしょうか?
一般的に、退職後に求職活動をしている間に使える制度として「失業保険」があります。
失業していること・求職活動をしたいことを証明すれば、基本手当を一定期間受け取りながら、生活に対する不安を減らして求職活動を行うことができます。
この失業保険は定年退職者も対象になるのか、疑問を感じている人も多いでしょう。
今回の記事では、定年退職された方に向けて、失業保険の対象となるかを確認する方法や手当のもらい方・注意点について紹介します。
目次
65歳未満の定年退職なら失業保険の対象
65歳未満の方は、失業保険の給付対象者です。
よって、定年退職していても、65歳未満であれば以下の2点の条件を満たすことで、ハローワークの失業認定により基本手当をもらうことができます。
- 就業能力・意欲があること
- 離職以前の2年間で被保険者期間が12ヵ月以上あること
こちらの2点について見ていきましょう。
就業能力・意欲があること
基本手当とは、これから仕事をしたいと思っている方が、生活の心配を減らしながら自分に合った仕事を探せる環境を補償するための手当です。
そのため、自分に合った職場が見つかればすぐに働くことができる就業能力や意欲があることが、基本手当をもらう必須条件です。
失業保険を受給すると、正しく就職活動を行っているかや、すぐに働ける状態かを確認するため、定期的に失業認定を行わなければなりません。
「定年退職後はゆっくりしたいから、すぐには就職活動を行いたくない」「将来的にはもう一度働きたいけど、今は体調が悪くすぐに働けない」などの場合は、基本手当をもらうことができないので注意しましょう。
離職以前の2年間で被保険者期間が12ヵ月以上あること
離職する前月の2年間で被保険者期間が12ヵ月以上あることも、失業保険を受け取るための条件です。
被保険者期間が少しわかりにくいため、以下で説明します。
正社員やアルバイトなどの労働の形態に関係なく、1週間の労働時間が20時間以上であり、31日以上働く見込みがあると「雇用保険の被保険者」となります。
「雇用保険の被保険者」の期間のうち、離職日から1ヵ月ごとに区切っていき、以下に該当する期間が「被保険者期間」です。
- 賃金の支払いとなる日数が11日以上ある月
- 賃金の支払いとなる時間数が80時間以上ある月
なお、被保険者期間が1ヵ月に満たない場合に、2分の1ヵ月としてカウント出来る場合もあります。
1ヵ月未満の期間が15日以上あり、さらにその期間内に賃金が支払われた日が11日以上あるケースです。
以下の場合は、2分の1ヵ月の要件が満たされず期間は11ヵ月になるため、12ヵ月未満なので失業保険の対象とはなりません。
期間については要注意です。
●1月1日から働き始めて、退職前に3週間休職したのち、次の年の1月10日で退職したケース
定年退職者の基本手当の内容は?
定年退職者の基本手当の金額や給付期間は、どうなっているのでしょう。
ここでは、定年退職者がもらえる支給額や給付期間、延長可能期間について解説していきます。
定年退職者の基本手当上限
給付手当の上限は、年齢によって異なります。
30歳未満 | 6,835円 |
30歳以上45歳未満 | 7,595円 |
45歳以上60歳未満 | 8,355円 |
60歳以上65歳未満 | 7,177円 |
※令和4年8月1日現在
上の表より、定年退職者の基本手当の上限は7,177円です。
基本手当の所定給付日数
定年退職者の失業保険の所定給付日数は、90~150日です。
日数は以下のように、被保険者期間によって異なります。
被保険者期間 | 失業保険給付日数 |
1年未満 | なし |
1年以上5年未満 | 90日 |
5年以上10年未満 | |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
定年退職後なら1年間の給付時期延長が可能
失業保険を受け取ると、求職活動により仕事先が見つかった場合はすぐに働かなくてはいけません。
定年退職した方のなかには、すぐに働かずにゆっくりと自分の時間を過ごしてからまた働き始めたいと思う方もいるでしょう。
60歳〜65歳未満の定年退職後の場合、失業保険の給付時期を1年間延長することが可能です。
例えば、2023年3月に退職された場合は、2024年3月まで失業保険を受け取らずにゆっくりと過ごし、2024年の4月から失業保険を受け取りながら、新しい仕事先を探すことができます。
一方で、失業保険の延長申請は、離職日の翌日から2ヵ月以内に行うことが必須となっています。
今すぐには失業保険を受け取らない場合でも、延長手続きはすぐに行っておかないと、失業保険を受け取ることができなくなってしまうため注意しましょう。
【定年退職】失業保険のもらい方
失業保険は、退職してからすぐに受け取ることができるものではありません。
ハローワークで失業申請を行った日を起点として、7日間は失業保険をもらえない待機期間となります。
自己都合の場合は、待機期間のあとに2ヵ月の給付制限期間がありますが、定年退職の場合は給付制限期間はありません。
基本手当を受け取るまでの流れはこちらです。
ここからは、失業保険のもらい方を具体的に紹介します。
必要書類の準備を行う
失業保険を申請する際には、以下の書類が必要になるため、準備していきましょう。
- 雇用保険被保険者証
雇用保険に加入していることを示すものであり、入職の際に雇用保険の手続きを行うために勤務先に提出する書類です。
退職するまで預かっている会社もあれば、手続きが終了したら本人に渡す会社もあります。
退職までに勤務先から受け取っていなければ、一度会社に確認してみましょう。 - 雇用保険被保険者離職票1・2
どちらの書類も会社がハローワークに退職の申請をすることで発行される書類になるため、まずは会社に離職票の発行を依頼しましょう。
会社が発行する離職証明書に退職者が必要事項を記入・押印し、会社は退職日翌日から10日以内にハローワークに提出します。
離職票の発行には、手続きの関係で2週間程度かかります。
ハローワークで求職申し込み・失業保険受給資格決定
次に、ハローワークに行き求職の申し込みを行いましょう。
求職の申し込みの流れは以下のとおりです。
- パソコンで求職情報を入力、または求職申込書に記入
- ハローワークの相談窓口にて求職申し込みに必要な手続きを実施
求職の申し込みには以下の書類が必要になるため、前もって準備しておきましょう。
- 雇用保険被保険者離職票1・2
- 個人番号が確認できる書類(マイナンバーカード、住民票、通知カードなど)
- 身元確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
- 写真(マイナンバーカード持参の場合は不要)
- 預金通帳またはキャッシュカード
求職の申し込み後、ハローワークにて失業保険の受給資格の決定と、離職理由の判定が行われます。
雇用保険受給者初回説明会に参加
ハローワークから指定された日時に雇用保険受給者初回説明会に参加します。
この雇用保険受給者初回説明会では、雇用保険に関する重要事項の説明があり、手当の給付を希望するなら参加が必須です。
また、失業認定の際に必要な「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が配布されます。
これらはのちほど提出する必要があるので、失くさないようにしましょう。
※現在、新型コロナウイルスの影響で雇用保険受給者初回説明会を中止し、Web上で行っているハローワークも一部あります。
居住地を管轄するハローワークの体制を確認しましょう。
失業認定
失業認定は4週間に1回開催され、初回失業認定の場合は、ハローワークで失業保険の受給資格が決定してから約3週間〜1ヵ月後に実施されます。
失業認定日は、本人の体調不良や求職活動の面談など特別な事情がない限り変更不可能であり、決められた日にちにハローワークに行かないと失業保険をもらうことができません。
日にちは確認しておきましょう。
失業認定では、持参した失業認定申告書の記載をもとに、求職活動の状況や就労の意思の確認などをハローワークの担当者との面談を通して行い、失業状態を確認します。
失業認定から次の失業認定の間では、原則2回の求職活動が求められます。
計画を立てて、求職活動を行いましょう。
基本手当受給開始
失業認定が終了したのち、基本手当の給付が開始されます。
預金口座への振込は認定を行った日から、通常5営業日です。
【定年退職】失業保険の注意点
定年退職者が失業保険を受給するにあたっての注意点を、一緒に確認していきましょう。
65歳以上の場合は高年齢求職者給付金の対象に
失業保険の対象は65歳未満のため、65歳以上で退職した方は失業保険を申請することはできません。
65歳以上は失業保険ではなく、高年齢求職者給付金の対象となります。
高年齢求職者給付金も、失業保険と同様にハローワークで受給手続きを行うことによって給付を受けることができます。
給付を受け取れる条件は以下のとおりです。
- 就業能力・意欲があること
- 離職前の1年間に賃金が支払われた日が11日以上の月、または賃金の支払いが行われた時間数が80時間ある月を1ヵ月として、その月が6ヵ月以上あること
このような条件に当てはまる65歳以上の方は、安心して求職活動を行うためにも、ハローワークで求職の申し込みをしておくと良いでしょう。
失業保険と年金の同時受給は不可
失業保険をもらっている期間は、年金の支払いが停止されることを念頭に置いておきましょう。
ただし、失業保険を申請していても、失業保険の受給が開始されていない期間や、給付延長により失業保険の受給を停止している期間は、年金の支払いが行われます。
しかし、そのような場合の年金給付は約3ヵ月後の支払いとなります。
申告は正確に
失業保険を受けるためには、定期的に失業認定を受け、その間の労働や給与の発生を失業認定申告書を用いて正確に申告しなければいけません。
「本当は給与をもらったが、どれくらい貰ったか忘れてしまったから申告しなくても良いか」
「求職活動が必要回数分行えなかったから、面談を行ったことにしておこう」
などと安易な気持ちで虚偽の申告をしてしまうとペナルティを課されてしまいます。
失業保険の支給停止に加え、不正に受給した3倍の金額の返還が求められてしまうため、注意しましょう。
定年退職後でも失業保険を活用しよう
定年退職後も就業の希望があれば、失業保険の給付を受けながら次の職場探しを行うことができます。
ハローワークでは失業保険の認定だけでなく、希望される方には職業相談や希望している業界の求人の提供、求職活動に役立つ各種セミナーを実施しています。
失業保険やハローワークを上手に活用し、定年退職後も自分自身の希望に合う職場を探していきましょう。