家族や親戚がいる場合、扶養義務が発生するケースがあります。
この記事では、扶養義務とはそもそも何かを詳しく解説しています。
民法上の規定なども参考に、扶養義務の範囲も紹介しているので参考にしてください。
目次
扶養義務とは?
扶養義務の範囲を確認する前に、まずは扶養義務の意味や内容を知っておきましょう。
ここでは扶養義務に関する基礎的な知識を紹介します。
扶養義務の意味
扶養義務とは、幼少や老齢、傷病などで自分の資産や能力だけでは生活できない状態である人を、一定の関係性がある人が援助する義務です。
扶養が必要となる人には、国や地方自治体から生活保護などの公的扶助が実施されます。
しかし、親族などの一定の関係にある人がいる場合は、その親族に対して扶養義務が課されるのです。
扶養義務が課された人は、社会保険上あるいは税法上の控除が受けられ、社会保険料や所得税・住民税などが減免されます。
扶養義務の内容とは?
扶養義務が課された家族の扶養の程度や方法は、基本的には当事者間で協議して決定します。
しかし、この協議での決定が難しい場合は、間に家庭裁判所が入り、扶養権利者の必要としている援助や経済状況を考慮して決められます。
実際に、民法においても下記のように記載があるので、参考にしてください。
第八百七十九条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。
出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)
扶養義務者の範囲はどこまで?
親族のなかでどの範囲まで扶養義務が発生するのかは、民法上で詳しく定義されています。
ここでは、図を交えて扶養義務の範囲を紹介します。
扶養義務がある親族
扶養義務が発生する親族は、直系血族および兄弟姉妹、配偶者、特別の事情がある場合は3親等内までです。
実際に民法877条では、以下のように規定されています。
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
出典:民法(明治二十九年法律第八十九号)
直系血族とは、祖父母・父母・子・孫など、自分と直接血のつながりがある一族のことです。
また、第3親等内には本人の叔父や叔母、兄弟、姉妹、甥、姪、そして配偶者の父母や兄弟などが含まれます。
3親等内でも要件に該当しないケースも
民法では、扶養義務は3親等内に対して発生するとされています。
しかし、加入している社会保険によっては、特定の要件をすべて満たさない場合は、3親等内であっても扶養義務のある家族として認められないケースもあるため、確認が必要です。
実際に協会けんぽで定められている被扶養者の範囲は、以下のとおりです。
被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として被保険者に生計を維持されている人
※これらの方は、必ずしも同居している必要はありません。
被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている次の人
※「同一の世帯」とは、同居して家計を共にしている状態をいいます。
① 被保険者の三親等以内の親族(1.に該当する人を除く)② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子
※ただし、後期高齢者医療制度の被保険者等である人は、除きます。
出典:被扶養者とは?こんな時に健保 _ 全国健康保険協会
上記の要件を1つでも満たしていない場合は、たとえ3親等内であっても被扶養者として認められないケースもあるのです。
扶養義務を正しく理解して履歴書に書こう
履歴書などに扶養家族を書く欄も設けられているので、扶養義務の正しい理解は大切です。
転職の際にも、会社は手続き上正しく扶養家族の有無を確認する必要があるので、事前に確認して正しく履歴書を作成しましょう。