「退職時に残っている有給休暇は使える?」
「有給消化を断られたらどうすれば良い?」
退職時に残っている有給休暇について、上記のような疑問を持つ人は少なくないでしょう。
有給休暇が残っている場合、退職までにすべて消化することができ、会社はそれを断ることができません。
本記事では、有給休暇を消化するタイミングや、会社に断られたときの対処法などを紹介していきます。
目次
有給休暇は退職時までにすべて消化できる
退職するとき残っている有給休暇はすべて消化できます。
有給休暇の取得は労働基準法によって定められた労働者の権利です。
よって、会社は原則として、労働者が有給休暇の取得を申し出た際に拒否することはできず、退職時であっても例外ではありません。
退職にともなう有給休暇消化のタイミングは、大きく分けると2つあります。
- 最終出社日後
- 最終出社日の前
最終出社日とは、文字通り「最後に出社する日」を指します。
雇用契約が終わる日を指す「退職日」とは意味合いが異なるのでご注意ください。
長期休暇を取得したい場合は、最終出社日後に有給休暇期間に入るのをおすすめします。
最終出社日後
一般的には、最終出社日後に有給休暇を消化するケースが多いでしょう。
最後に出社した日の翌日から有給休暇を消化し、休暇が終わると同時に退職となります。
最終出社日よりあとに有給休暇を取った場合は、最終出社日と退職日が異なります。
有給休暇の残り日数が20日以上あると、1ヵ月以上の期間を有給休暇にあてられます。
退職後に引越しを考えている方は、有給休暇を利用すると良いでしょう。
注意すべき点は、最終出社日までに引き継ぎや手続きを終わらせる必要があることです。
直属の上司と綿密に話し合ったうえで、無理のない退職スケジュールを立てましょう。
最終出社日の前
最終出社日より前に有給休暇をすべて消費していた場合、最終出社日と退職日が同じ日になります。
退職日まで出社するのだとしても、引き継ぎ作業は余裕を持って済ませ、最終出社日はデスクまたはロッカーの掃除や引き継ぎの最終確認、あいさつ回りなどに時間を使うと良いでしょう。
退職直前の余裕のないときに引き継ぎ業務をすると、通常の業務に支障をきたすおそれがあります。
退職時に有給休暇を消化する方法
退職するときに有給休暇を使い切るには、以下の手順を踏みましょう。
- 有給休暇の残り日数を確認する
- 早めに退職の意思を伝える
- 退職までのスケジュールを上司と相談する
- 業務の引き継ぎを行う
退職時の有給休暇は労働者の権利ですが、自分の都合だけでスケジュールを決めると会社の迷惑になります。
引き継ぎや人員補充にかかる期間を考慮し、計画的に行動しましょう。
有給休暇の残り日数を確認する
まずは有給休暇の残り日数を確認しましょう。
残り日数は、給与明細や会社の勤怠システムからチェックできることが一般的です。
有給休暇の残り日数がわかったら、引き継ぎにかかる期間や転職先への入社日を考慮したスケジュールを立てましょう。
有給休暇の残り日数が多い場合、退職日までに計画的に有給休暇を取る必要があります。
連休にこだわらず、少しずつ消化したほうが良いかもしれません。
早めに退職の意思を伝える
有給休暇の残り日数を確認したら、会社へ早めに退職の意思を伝えておきましょう。
退職することが早くわかるほど、会社は後任者の手配や人員補充に時間をあてられるからです。
退職の申し出が遅くなると、会社は後任者を手配する時間が少なくなり、自身も有休をすべて消化できなくなるおそれがあります。
退職までのスケジュールを上司と相談する
退職の意思を伝えたら、退職までの日程を上司と相談します。
有給休暇を申請する際は、最終出社日から引き継ぎにかかる期間を逆算して申請します。
業務をすべて洗い出し、各業務の引き継ぎにかかる時間を考えてみましょう。
退職までにかかるスケジュールを立てたら、以下の3点を上司に伝えます。
- 退職予定日
- 有給消化期間
- 引き継ぎの内容と計画
「この日に退職したい」などの希望があったとしても、会社の都合を考えずに退職日を決めるのは避けましょう。
業務の引き継ぎを行う
退職スケジュールが会社に承認されたら、業務の引き継ぎを行います。
引き継ぎが不十分なまま退職してしまうと、後任者が仕事内容を理解できず、業務に支障をきたします。
残された社員に迷惑をかけないためにも、引き継ぎは休暇期間の前に終わらせましょう。
引き継ぎの手順は以下のとおりです。
- 引き継ぎ資料を作成する
- 後任者に引き継ぐ
- 後任者からの質問・相談に答える
時間に余裕がある場合、引き継ぎ資料を上司に読んでもらい、追加情報や不要な点がないか確認しましょう。
退職時の有給休暇消化を断られたときの対処法
有給休暇の取得は労働基準法で定められた労働者の権利ですから、会社はこれを断ることはできません。
しかし、それでも断られた場合は、以下の方法で対処してみましょう。
- 有給休暇消化の日程をあらためて上司と話し合う
- 第三者(人事・労務担当や労働基準監督署など)に相談する
有給休暇消化の日程をあらためて上司と話し合う
有給休暇の消化を断られた場合、まずはあらためて上司と話し合ってみましょう。
会社は合理的な理由がないかぎり、有給休暇の申請を却下できません。
有給消化を拒否した理由を尋ねる
いったん断られた有休の消化について、上司とあらためて話し合う際には、拒否された理由から尋ねると良いでしょう。
退職時の有給休暇の消化は労働者の権利ですが、円満に取得するためには、会社や上司の言い分に耳を傾ける必要があります。
例えば、有給消化の時期が会社の繁忙期と重なるために断られたのであれば、繁忙期を考慮したスケジュールを組むことで双方が納得できる形になるかもしれません。
引き継ぎ期間が十分にあるか確認する
上司と話し合う際には、引き継ぎ期間が充分にあるかどうかも考慮してみましょう。
退職時の引き継ぎには短くても1ヵ月程度はかかります。
業務内容や後任者の経験が浅い場合には、さらに時間がかかることを想定しなければなりません。
また、不測の事態に備え、引継ぎは遅くても最終出社日の3日前までに完了する想定でスケジュールを組む必要があるでしょう。
上記を考慮しつつ、有給を消化できる退職スケジュールを、上司と相談しながら決めていければ理想的です。
第三者に相談する
上司が合理的ではない理由で有給消化を拒んでいる場合は、第三者に相談しましょう。
第三者とは、以下の機関を指します。
- 人事・労務担当
- 労働基準監督署
- 総合労働相談コーナー
- 弁護士
ハラスメントが疑われるケースは、録音やメールなどの証拠を残し、上記の機関に提出することをおすすめします。
特に労働基準監督署は、労働基準法上の違反行為があれば会社に立ち入り検査・指導をする場合があります。
人事・労務担当に相談する
直属の上司に有給休暇の消化を拒否されたときは、社内の人事・労務担当の部署に相談してみましょう。
人事や労務に携わる部署は、有給休暇に関する法律の知識に詳しいため、直属の上司に適切な指示をしてくれる可能性があります。
直属の上司は、複数の部下の管理をしているからこそ「今は人手が足りないから退職時に有給休暇を取らせられない」と考えているかもしれません。
上司一人の判断だけではなく、他部署が介入することで問題が解決する場合もあります。
労働基準監督署に相談する
人事・労務担当の部署に相談しても有給消化が認められないのであれば、労働基準監督署に相談しましょう。
労働基準監督署では、法律に基づくアドバイスを無料で受けることが可能です。
また、明らかな労働基準法違反があれば、会社に立入検査や指導が入ることもあります。
総合労働相談コーナー
検査・指導までは望まないものの、問題解決につながる情報が欲しい場合には、総合労働相談コーナーの利用がおすすめです。
全国の労働基準監督署内などにある労働相談コーナーでは、職場のトラブルに関する相談を無料ですることができ、事前の予約も必要ありません。
弁護士に相談する
弁護士に依頼すれば、代理人として会社とやり取りしてもらうことができます。
繰り返しになりますが、有給消化の消化は、労働基準法で認められた正当な権利です。
自分で相談したら言いくるめられてしまう場合も、弁護士を介することで、法律に基づいた結果が得られるでしょう。
有給休暇を消化する権利は退職時にも有効
有給消化は、退職の際にはすべて消化することができます。
これは労働基準法で認められた正当な権利です。
ただし会社側にも、退職によって業務が滞らないよう、余裕を持って後任者を確保したいという事情があります。
退職の意思を早期に知らせ、引継ぎを考慮したスケジュールを組むことで、円満な退職が可能になるでしょう。
有休の消化を拒否された場合は、日をあらためて上司に相談し、それでも許可されなければ人事・労務担当や労働基準監督署に相談してください。