働き方改革をきっかけに、従業員の柔軟な働き方を容認する企業が増えました。
これを受け、自身も正社員として働きながら副業を始めたいと考える方もいるでしょう。
とはいえ企業と直接雇用契約を結んでいる以上、副業をしても問題はないのかが気になるところです。
本記事では、正社員が副業を始めても良いのか、また副業を行う際の注意点を解説します。
正社員として副業をするメリット・デメリットも把握しておきましょう。
目次
正社員は副業しても良い?
正社員の方が副業を行うことは問題ありません。
ただし勤め先の就業規則によってはその限りではないため、あらかじめ確認しておきましょう。
法律上は正社員であっても副業して良い
法律上、正社員の副業を制限するものはありません。
厚生労働省も副業・兼業を推奨しており、正社員をしながらパート・アルバイトとして働くことも可能です。
しかし、就業規則で副業を禁止している会社もあります。
厚生労働省による「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、従業員の副業に関する判断は事業主にゆだねられているのが実情です。
法律上問題がなくとも、企業の就業規則で副業が禁止されている場合はそれに則るべきといえます。
正社員でも副業できない場合がある
正社員のなかでも、公務員の方は副業ができません。
国家公務員法第103条・104条、そして地方公務員法第38条にて、公務員による営利目的の経営・兼業は禁止されています。
公務員でありながら副業を行った場合、減給や停職、最悪の場合は免職などの処分が下されるため注意が必要です。
副業が禁止される理由
正社員の副業が禁止される理由として、大きく以下の4つの理由が挙げられます。
- 本業への支障が懸念される
- 副業先が競合他社もしくは取引先の場合は、利益相反・情報漏洩につながる
- 問題が起こった場合のブランドイメージ毀損のリスク
- 社員の労働時間の管理・把握が困難で、長時間労働を助長してしまう
副業を禁止する主な理由は、社員の健康面への懸念や管理の難しさです。
また、情報漏洩などの会社として損失が出ないようにすることも理由にあります。
日本経済団体連合会が行った「2020年 労働時間等実態調査」によると、従業員の副業を認めている企業の割合は22%程度でした。
現状、副業に対する企業の考え方や仕組みの変更が追いつかないこと、先行事例が少ないことから、副業容認には慎重になっている企業が多い状態です。
しかし、副業を条件つきで許可する企業も徐々に増えてきました。
特に働き方改革改革のミッション・事業を展開する企業は、従業員の多様性を尊重するべく副業を認める傾向にあります。
正社員が副業をするときに気をつけること
正社員の方が副業をする際は、以下の3点に気をつけましょう。
- 会社の就業規則を確認する
- 仕事量やスケジュール、体調の自己管理
- 秘密保持に努め、情報漏洩を行わない
どのような点に注意が必要なのか詳しく解説します。
会社の就業規則を確認する
副業を開始するにあたって、会社の就業規則の確認は必須です。
就業規則に副業に関する記載がない場合、労働契約書に記載されていることもあるため、どちらも確認しておくと良いでしょう。
また、個人事業主として副業をするのではなく、パート・アルバイトなどとして他の企業に雇われる場合は副業先の就業規則にも目を通しておきます。
仕事量やスケジュール、体調管理をしっかり行う
副業によって本業へ支障が出ないよう、仕事量やスケジュール、体調管理をしっかり行うことも大切です。
副業に関しては、本業の繁忙期でも対応できる業務量を目安に調整する必要があります。
仮に副業の仕事が多くてノルマをこなせない、または残業要請に対応できなかった場合、収入が減る結果となりかねません。
スケジュールについても本業と副業の予定が重ならないように、それぞれの勤務時間を計算して計画を立てていきます。
仕事量やスケジュールの管理がしっかり行えていないと、多忙のせいで体調を崩す恐れもあるでしょう。
体調不良で欠勤が増えれば社内での評価も下がってしまうため、スケジュールにはある程度の余裕を持たせておくのが望ましいです。
就業先で知り得た情報を外部に漏らさない
副業をするうえで、就業先で知り得た情報を外部に漏らさないことは大前提です。
情報漏洩は懲戒処分の対象となります。
例えば社外秘の情報やファイル、マニュアル、顧客データなどの扱いには要注意です。
正社員やアルバイトなどの雇用形態に関わらず、業務上知り得た情報を外部に漏らすことは許される行為ではありません。
正社員が副業をするメリット
正社員の方が副業を始めることには多くのメリットがあります。
収入が増えることはもちろん、キャリアアップしたい、人脈を広げたいというときにも副業の経験が役に立つかもしれません。
新たなスキルが身につく
副業では、新たなスキルを身につけることが可能です。
あるいは本業に役立つスキルを副業で磨くこともできるでしょう。
副業の仕事内容として多くの割合を占めるのが、エンジニアやプログラミングといった専門的・技術的職業です。
もともとIT業界で働く方がこのようなスキルを磨けば、キャリアアップをめざせるほか将来的には独立といった選択肢も広がります。
異業種であっても、違う分野のスキルを磨くことで、より条件の良い職場へ転職できる可能性もあるでしょう。
特にプログラミングは、働きながらスクールに通ってスキルを取得できます。
人とのつながりができる
仕事を通して人とのつながりが広がることも、副業のメリットです。
本業と副業が同じ業界の場合は、これまでに関わりのなかった同業者と副業を通して知り合うことができ、新しい人脈が本業に役立つ可能性を秘めています。
本業と副業が異業種であったとしても、副業先の業界を知るきっかけになるでしょう。
これにより新たなビジネスチャンスをつかめるかもしれません。
収入が増える
副業を開始することで収入が増えることも、大きな利点です。
平日は本業がある方も、土日にできる副業なら隙間時間を活用して利益を作れます。
また、収入源が複数できる点でリスクヘッジにもなるでしょう。
万が一本業としていた企業が倒産しても、副業があれば収入がゼロになることはありません。
終身雇用が崩壊した現代において、定年まで安定した収入を得られる保障はないといえます。
さらに定年後の年金に対して不安を抱く方も多いでしょう。
こうしたとき、副業をしていることで将来への不安が軽減できます。
正社員が副業を始める場合の流れ
ここからは、正社員が副業を始める際の流れについて説明します。
大まかな流れは以下のとおりです。
- 就業規則の確認
- 仕事を探す
- 副業先との契約を交わす
ステップごとに詳しく見てみましょう。
就業規則の確認
上記でも触れたとおり、副業を行う前にまずは就業規則の確認を行います。
確認すべきことは、主に次の3点です。
- 副業、兼業が認められているか
- 副業、兼業をする際に承認が必要なのか
- 副業、兼業をするうえで条件はあるか
現在働いている会社、そして副業先のどちらの就業規則もしっかりと確認しておきましょう。
場合によっては、入社時の誓約書や労働契約書に副業のルールが記載されていることもあります。
違反のないようきちんと目を通したうえで、必要に応じて副業承認手続きを行ってください。
クラウドソーシングサイトなどを活用する
副業を探す際は、クラウドソーシングサイトの活用が便利です。
クラウドソーシングサイトでは、プログラミングや記事ライティング、データ入力、マーケティングなどの仕事が見つけられます。
SNSで見受けられる副業の勧誘は詐欺の可能性もあり、見極めが難しいかもしれません。
安全のためにも、大手クラウドソーシングサイトを通して信頼できる仕事を受注しましょう。
契約書を交わす
興味のある副業が見つかったら、契約前に仕事の進め方や報酬について相互確認を行います。
契約内容にお互いが納得できた段階で、副業先と契約書を交わしましょう。
少額の案件では契約書を作成しない場合もありますが、口約束はトラブルの元となります。
念のため、副業先とやりとりをしたメッセージやメールなどは保管しておくのがベターです。
確実に継続収入を得たいならパート・アルバイト
クラウドソーシングサイトを利用した在宅ワークなどは、こなした業務量に対して対価が支払われる場合が多く、安定した収入は保障されていません。
自分で仕事を見つけ出し、その都度条件をすり合わせる手間もあるでしょう。
継続収入を確実に得たい方は、副業でパート・アルバイトをするのも手です。
社会人向けのダブルワーク求人は「副業・兼業・ダブルワーク可」などと書かれているため、これらのキーワードがある仕事を探してみてください。
副業だけでなく転職という方法もある
現在勤めている会社の収入が希望額より少ない、なかなかキャリアアップさせてもらえないという場合、副業を始めるだけでは解決が難しいこともあります。
景気や会社の業績不振などが理由で一時的に収入が減っているのであれば、それを補うために正社員の方が副業を始めるのは有効な手立てです。
しかし、今後も収入・キャリアアップが見込めない場合は、この限りではありません。
年齢を重ねると転職のハードルは高くなりやすいため、早いうちに行動へ移したほうが良い可能性もあります。
また、副業自体禁止されているものの昇給が期待できない場合なども、転職を視野に入れてみて良いでしょう。
副業を始めるときは、就業規則を確認し、無理のない計画を立てよう
正社員の方が副業を始めるメリットや、副業を始める流れについて解説しました。
従業員の副業を認める企業は増えてきているものの、定着にはまだ時間がかかるかもしれません。
そもそも勤め先では副業が認められているのか、就業規則を確認しておくことが大切です。
また副業を開始したあとは、本業に影響が出ないよう無理のないスケジュールで自己管理を行いましょう。
副業という収入源を確保することは、将来へのリスクヘッジにもなります。
あるいはキャリアアップやスキルアップなど、理想の実現に副業を役立ててみてください。