失業保険(雇用保険)の受給条件には何があるのか、どうやって手続きすれば良いのか、と疑問を持っている人も多いでしょう。
失業保険(雇用保険)とは、労働者が失業した場合などに労働者の雇用と安定、就職の促進のために給付金を支給する制度です。
本記事では、失業保険(雇用保険)のなかでも特に「基本手当」に着目し、受給条件や期間などをわかりやすく解説します。
目次
失業保険(基本手当)の条件は?
失業保険(基本手当)を受給するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 条件1.ハローワークが定める失業の状態に当てはまる
- 条件2.ハローワークで求職を申し込み就職活動をしている
- 条件3.一定期間雇用保険に加入している
一つずつ見ていきましょう。
条件1.ハローワークが定める失業の状態に当てはまる
雇用保険における基本手当とは、失業中で仕事を探している間に生活が困窮しないように支給される、失業者の再就職をサポートする制度です。
ハローワークでは「積極的に就職しようと思っていて、いつでも就職できる能力があるのに、本人やハローワークの努力によっても就職できない」状態にあることを失業状態と定めています。
以下のように、失業の条件を満たしていない人は、基本手当を受給できません。
- 退職後の転職先が決まっている人
- 就職するつもりがない人
- 怪我や病気、妊娠、出産、育児、結婚による家事専念などですぐに就職できない人
条件2.ハローワークで求職を申し込み就職活動をしている
ハローワークで求職の申し込みを行って再就職の意思を示すことも、受給要件の一つです。
求職の申し込みは、基本手当受給のために最初に行うことともいえます。
また、求職の申し込みを行ったあとは、積極的に就職活動を行わなければなりません。
条件3.一定期間雇用保険に加入している
失業状態であり、再就職の意思を明確にしても、基本手当を受給できないケースもあります。
基本手当を受給するには、離職日以前に一定期間の雇用保険への加入が必要だからです。
離職理由ごとに定められた加入期間の条件があり、それを満たしていないと受給対象外になります。
【ケース別】失業保険(基本手当)の受給条件|受給額・受給期間
ここからは基本手当の内容として、以下の3つを見ていきましょう。
- 1日あたりの基本手当日額
- ケース別の給付日数
- 失業保険を受給するまでの流れ
1日あたりの基本手当日額
基本手当の支給額を具体的に知りたい人も多いのではないでしょうか。
支給額は、離職前の給与や年齢によって異なります。
また、支給される総額を算出するためには、以下の3つの計算をしなければなりません。
①賃金日額の計算
賃金日額とは、離職前6ヵ月間の毎月きまって支払われた賃金(賞与等は除く)の合計を180で割ったものです。
賃金日額には年齢によって異なる上限額と、年齢によらず一律の下限額があります。
②基本手当日額の計算
基本手当日額とは、1日あたりの基本手当の支給額で、賃金日額と給付率で算定します。
給付率は年齢と賃金日額により異なり、45〜80%です。
なお、基本手当日額には上限があり、年齢区分ごとに6,835~8,355円に分けられます。
③支給総額の計算
支給総額とは最終的に支給される金額の合計であり、基本手当日額に所定給付日数を乗じて計算します。
所定給付日数とは、失業保険(基本手当)を受けられる上限の日数のことで、離職理由・加入期間・離職時の年齢によって異なります。
出典:雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和4 年8月 1 日から~
ケース別の給付日数
上記でも紹介したように、所定給付日数は一人ひとりの状況によって異なります。
ここでは、以下の3つのケースを紹介しましょう。
- ケース1:自己都合で退職した一般受給資格者
- ケース2:特定理由離職者
- ケース3:会社都合で退職した特定受給資格者
ケース1:自己都合で退職した一般受給資格者
まずは一般受給資格者であり、自分の意思で退職した自己都合離職者の給付日数について説明します。
上記の人が基本手当を受給するには、離職日以前の2年間に被保険期間が通算で12ヵ月以上必要です。
上記の場合、所定給付日数は最低で90日、最長で150日になります。
ただし、150日の受給には雇用保険加入期間が20年以上必要です。
自己都合の退職における失業保険について詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
ケース2:特定理由離職者
次に、特定理由離職者について見ていきましょう。
特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約の期間が満了し、当該労働契約の更新がないことにより離職した人や、正当な理由があって自己都合退職した人を指します。
例えば、出産や育児、病気、配偶者の転勤などは、正当な理由があって自己都合退職した人に当てはまります。
上記の人が基本手当を受給するには、離職日以前の2年間に被保険者期間が通算で12ヵ月以上あること、もしくは離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上必要です。
特定理由離職者の場合、所定給付日数は90〜330日になります。
ケース3:会社都合で退職した特定受給資格者
会社都合で退職した人は、特定受給資格者に該当します。
例えば、会社の倒産やリストラを受けた人などが当てはまるでしょう。
上記の人が基本手当を受給するには、離職日以前の2年間に被保険者期間が通算で12ヵ月以上、もしくは、離職日以前の1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上必要です。
つまり、特定理由離職者と同じ条件になります。
会社都合で退職した特定受給資格者の場合の所定給付日数は90〜330日です。
失業保険のもらえる期間について詳しく知りたい人は、次の記事を参考にしてください。
失業保険(基本手当)を受給するまでの流れ
基本手当を受給する流れは、以下のとおりです。
- 離職前の職場から離職票を受け取る
- ハローワークで離職票を提出し、求職の申し込みを行う
- 7日間の待期期間を経て、雇用保険受給説明会に出席し、雇用保険受給資格者証を受け取る
- 失業認定日にハローワークで求職活動を報告
- 失業保険(基本手当)を受給する
自己都合により退職した場合、7日間の待期期間終了後、給付制限のためさらに2ヵ月または3ヵ月間基本手当が支給されません。
失業保険(雇用保険)の各手当を受け取る条件
失業保険(雇用保険)には、前述した基本手当以外にもさまざまな手当があります。
ここからは、以下の手当を受け取るための条件を解説します。
- 受講手当
- 通所手当
- 傷病手当
- 再就職手当
出典:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険制度の概要
職業訓練受講の「受講手当」「通所手当」を受け取る条件
ハローワークでは再就職のための職業訓練を用意しており、これを受講した人に対しては受講手当と通所手当が支給されます。
受講手当と通所手当を受け取るには、職業安定所長による訓練受講の指示を受けて、訓練を受ける必要があります。
所定給付日数内の支給残日数が一定以上あることも条件です。
「傷病手当」を受け取る条件
傷病手当を受け取る条件は、求職の申し込み後に、15日以上にわたり怪我や病気で仕事に就けない状態にあることです。
ハローワークで傷病の認定を受ける必要があります。
傷病手当は基本手当の支給ができない間の生活を維持するために支給されるため、両方を同時に受給することはできません。
傷病手当の日額は、基本手当と同額になります。
「再就職手当」を受け取る条件
雇用保険受給資格者が早期に再就職した場合に受け取れる手当が、再就職手当です。
再就職手当を受け取る条件には、以下のようなものがあります。
- 基本手当の受給資格者が安定した職業につく
- 基本手当の支給日数が所定給付日数の3分の1以上残っている
- 前と同じ会社に就職していない
- 雇用保険の被保険者になっている
- 過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていない
- 求職申し込み前から決まっていた仕事ではない
- 7日間の待期期間満了後に就職、または事業を開始したこと
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 再就職手当の支給決定の日までに離職していないこと
失業保険の条件に関するよくある質問
ここでは、失業保険の条件に関する質問として、以下の3つを紹介します。
- パート・アルバイトは失業保険受給の条件に関係ある?
- 扶養は失業保険の受給条件に関係ある?
- 公務員は失業保険を受け取れる?
パート・アルバイトは失業保険受給の条件に関係ある?
失業保険を受給中でも、ちょっとしたパート・アルバイトで収入を得たいと思う人もいるでしょう。
もしくは、少しだけ働いてほしいなどと頼まれることもあるかもしれません。
以下の条件を満たせば、失業保険受給中のパート・アルバイトは可能です。
【パート・アルバイトができるケース】
- 求職の申し込みをする前
- 給付制限期間中
- 基本手当の受給中
【パート・アルバイトができないケース】
- 7日間の待機期間中
ただし、パート・アルバイトではなく就職しているとみなされると、基本手当の受給ができなくなります。
そのため、雇用保険の対象にならないように注意して働くようにしましょう。
扶養は失業保険の受給条件に関係ある?
基本手当を受給しながら扶養に入れるか否かには、基本手当日額が関係してきます。
基本手当日額が3,611円以下の場合は、扶養に入ることが可能です。(60歳以上は5,000円以下)
また、基本手当日額が上記の金額を超えている場合でも、給付制限期間中は無収入になるため扶養に入れます。
給付制限期間中のみ扶養に入り、受給期間になったら扶養を外れることも可能です。
公務員は失業保険を受け取れる?
公務員には雇用保険法が適用されないため失業保険は支給されず、代わりに退職手当が支給されます。(国立大学法人などの雇用保険の適用事業所に勤務している場合は除く)
また、退職手当が失業保険相当額より低い場合には、差額を受け取ることも可能です。
諦めずにハローワークで確認すると良いでしょう。
差額を受け取れる条件は、以下のとおりです。
- 勤務期間が12ヵ月以上
- 離職日の翌日から起算して1年以内の失業
- 退職手当が失業保険相当額より少ない
- 所定の待期日数を超えて失業している
退職前に失業保険がもらえる条件を確認しておこう
失業保険(基本手当)は、収入がない間に生活が困窮して仕事を探せないという状況を回避するための制度ですが、受給するためにはさまざまな条件があります。
また、受給条件を満たした場合でも、受給される金額や日数は人によって異なります。
この記事では、失業保険がもらえる条件を解説し、受給される期間や金額についても紹介しました。
自分が受給対象者に当てはまりそうな場合はハローワークで確認し、失業保険受給の手続きを行いましょう。