
試用期間中に退職したことは、履歴書に書くべきでしょうか。
なかには、「短期間の雇用だったから、履歴書に書かなくても良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。
特にアルバイトやパートなど短期雇用の場合は、履歴書に書かなくても問題ないと考える人もいるでしょう。
しかし、正社員に限らず、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトでも、雇用後に社会保険に加入していた場合は、試用期間中の退職であっても履歴書に書く必要があります。
ここでは、試用期間中の退職を履歴書に書くべき理由と、適切な書き方について解説します。
目次
試用期間中に退職したことは履歴書に書くべき?
試用期間中に退職したことは、履歴書に書くべきでしょうか。
結論からいうと、試用期間中の退職であっても、履歴書に書くべきです。
なぜなら、入社手続きの際に退職の事実が発覚する可能性が高く、故意に職歴を隠して職歴を詐称しているとみなされるリスクがあるからです。
アルバイトやパートなどでも、雇用保険などの社会保険に加入していた場合は、書く必要があります。
試用期間中の退職を履歴書に書くべき理由
なぜ、試用期間中の退職を履歴書に書くべきなのでしょうか。
ここでは、その理由について詳しく解説します。
入社手続きで判明する可能性が高い
試用期間中に退職した事実は、転職先企業が社会保険の加入手続きを行う際に発覚する可能性が高いです。
前職で社会保険に加入していた場合、その加入履歴から試用期間中の短い在籍期間がわかってしまいます。
特に雇用保険の場合、加入期間は転職先企業に伝わる情報となるため、発覚するリスクが高まります。
転職者にとって、面接時に伝えていない退職歴が発覚するのは望ましくありません。
事前に履歴書で正直に伝えておくことで、入社手続き時のトラブルを防ぐことができるでしょう。
職歴詐称とみなされる可能性がある
履歴書において、故意に誤った職歴を書いたり、都合の悪い情報を隠したりすると、職歴詐称とみなされる恐れがあります。
職歴詐称は、転職先企業からの信頼を大きく損ねる行為です。
採用担当者からすれば、経歴を偽る人物は組織に不誠実であり、負の影響を与える可能性があるとみなされかねません。
職歴詐称が発覚した場合、内定取り消しや、入社後の解雇といった重大な不利益を被るリスクがあるのです。
たとえ短期間の退職であっても、正直に伝えることが求職者としての誠実さを示すことにつながります。
試用期間中の退職を履歴書に書かないことは、将来的に大きなマイナスになる可能性があることを心得ておきましょう。
【パターン別】試用期間中の退職を履歴書に書く際の例文
試用期間中の退職を履歴書に書く際は、「学歴・職歴」の欄に書くことが一般的です。
その場合、自己都合、会社都合、契約期間満了と退職理由によって書き方が異なりますが、理由を記載する必要はありません。
短期間で退職したことを補足説明したい場合や、応募先から記載を求められた場合などは記載しておくと良いでしょう。
また、面接では必ず退職理由を聞かれます。
ここでは、パターン別に例文を紹介するので、参考にしてみてください。
労働条件が入社前の説明と異なっていた
入社前の説明や求人情報で提示されていた労働条件と、実際の労働条件が大きく異なるケースがあります。
給与や勤務時間、残業の有無など、雇用契約の重要な部分が食い違っていると、納得して働くことが難しくなるでしょう。
労働条件の相違により、早期退職を選択せざるを得なくなった場合は、履歴書にその旨を記載しましょう。
企業側の説明不足や、採用プロセスの不透明さを伝えることで、求職者側に非がないことを補足することもできます。
「入社後、実際の業務内容が事前の説明と大きく異なることが判明し、自身のキャリアプランとの不一致を感じたため、転職を決意いたしました」
「就業時間や勤務形態について、採用時の条件から変更が生じ、私生活との両立が困難となったため、やむを得ず退職を選択いたしました」
「配属部署の実態が事前説明と異なり、期待していた専門知識・経験を活かせる機会が限られていたため、キャリア形成の観点から退職を決断いたしました」
「入社後に担当業務の範囲が大幅に変更となり、自身の志向との間に齟齬が生じたため、新たなキャリアを模索することといたしました」
「試用期間中に職務内容と待遇面において想定と相違があることが判明し、慎重に検討した結果、退職させていただくことを決意いたしました」
会社都合
試用期間中であっても、本人の適性や能力に関係なく、会社都合による退職は起こり得ます。
会社の業績悪化や事業方針の転換、部署の縮小や統廃合など、やむを得ない事情で退職を迫られることがあるのです。
会社都合の退職は、求職者本人の責任ではないという理由を明確に伝えることが重要です。
「会社都合」という言葉だけでは、具体的な状況が伝わりにくいので、簡潔に経緯を説明しましょう。
「企業の事業再編にともなう組織改革により、配属予定であった部署が統合されることとなり、やむを得ず退職となりました」
「会社の経営方針の転換により、新規事業部門の縮小が決定し、試用期間中ではございましたが契約を終了することとなりました」
「企業全体の構造改革により、所属部門が本社統合の対象となったため、試用期間満了前に退職となりました」
「会社の事業戦略の見直しにより、担当予定であったプロジェクトが中止となり、その結果退職となりました」
「経営環境の変化にともなう事業計画の修正により、新規採用枠が見直しとなり、契約終了となりました」
体調の悪化
試用期間中に体調を崩し、継続して勤務することが困難になるケースもあるでしょう。
身体的な問題や、精神的なストレスなどが原因で、早期退職を選択せざるを得ないこともあります。
その場合は、履歴書に正直に事情を記載することが大切です。
ただし、体調不良を理由に退職したことを伝えるだけでは、採用担当者に「この先も同じことが起きるのでは」と不安を与えてしまいます。
そのため、現在は回復し、就業には支障がないことを添えて説明すると良いでしょう。
「体調を崩し療養が必要となったため、試用期間中ではありましたが退職いたしました。その後、適切な治療により完全に回復し、現在は健康に就業可能な状態です」
「持病の一時的な悪化により、継続勤務が困難となり退職を選択いたしました。現在は定期的な通院により症状が安定し、通常勤務に支障のない状態です」
「入社直後に予期せぬ健康上の問題が発生し、やむを得ず退職となりました。その後、十分な療養期間を経て体調は完全に回復し、就業への意欲も高まっております」
「医師の診断により一定期間の療養が必要となり、退職を決意いたしました。現在は治療を終え、心身ともに健康な状態で新たなキャリアに挑戦する準備が整っております」
「一時的な体調不良により職務の遂行が難しくなり、退職させていただきました。その後、生活習慣の改善と適切な治療により健康を取り戻し、就業に支障のない状態となっております」
家庭の事情
結婚や出産、育児、介護など、家庭の事情により試用期間中に退職しなければならない場合もあります。
家族の転勤にともなう引越しや、家族の介護が必要になったなど、どうしても働き続けることが難しい状況もあるでしょう。
履歴書には、家庭の事情などを簡潔に記載し、退職せざるを得なかった経緯を伝えましょう。
プライベートな内容だからこそ、控えめながらも正直に伝えることが重要です。
「家族の介護が必要な状況となり、急遽対応が必要となったため、試用期間中ではございましたが退職いたしました。現在は介護環境が整い、就業可能な状態となっております」
「配偶者の転勤にともなう転居により、通勤が困難となったため、退職させていただくことになりました。現在は新居での生活も落ち着き、就業の準備が整っております」
「予期せぬ家庭環境の変化により、一時的に家事・育児に専念する必要が生じたため、退職を選択いたしました。その後、サポート体制も整い、フルタイムでの就業が可能となっております」
「家族の体調不良により、一時的な支援が必要となったため、やむを得ず退職いたしました。現在は家庭環境も安定し、仕事に専念できる態勢が整っております」
「出産・育児のため一時的に仕事を中断する必要が生じて、退職させていただきました。現在は育児環境も整い、新たなキャリアにチャレンジする準備が整っております」
試用期間中の退職を履歴書に書く際の注意点
試用期間中の退職を履歴書に書く際の注意点をまとめました。
適切な退職理由を説明できれば、不利にはならないので参考にしてください。
嘘なく正直に伝える
履歴書に嘘の情報を書くのは、絶対に避けなければなりません。
面接で矛盾が発覚したり、入社後に真実が判明したりすれば、信用を失墜することになるでしょう。
単に印象が悪くなるだけでなく、内定取り消しや懲戒解雇などの重大なペナルティを受けるリスクもあります。
自身にとって不本意な内容でも、正直に事実を伝えることで、かえって誠実さをアピールすることができます。
たとえネガティブな理由であっても、包み隠さず説明する姿勢が重要です。
履歴書の内容について、面接でしっかりとフォローできるよう、整理しておくことも大切でしょう。
退職先の批判をしない
試用期間中の退職の理由を説明する際は、前職の企業や上司、同僚への批判をしないようにしましょう。
ネガティブな感情をあらわにしたり、相手の悪口を言ったりすることは、人事担当者に好ましくない印象を与えます。
客観的な事実を淡々と伝えることを心がけ、状況を冷静に説明するよう意識してください。
前の職場の悪い部分を強調するのではなく、自分に合わなかった点を振り返る姿勢が大切です。
「上司とうまくいかなかった」などの表現よりも、「コミュニケーションの取り方が合わなかった」など、建設的な言い回しを選ぶと良いでしょう。
転職に向けて前向きな姿勢を示す
試用期間中の退職を履歴書に書く際は、「この人は仕事が長続きしない」と思われないよう注意が必要です。
単に「合わなかったから辞めた」という説明では、転職先でも同じことが起こるのではないかと不安を与えてしまいます。
退職理由を丁寧に説明したうえで、その経験を生かして新しい職場で活躍したいという意欲を示すことが大切なのです。
前向きな姿勢をアピールすることで、採用担当者に安心感を与えることができるでしょう。
「前職での経験を通して、自分に合う仕事環境が明確になりました」など、退職を通じて得た学びを強調するのも効果的です。
試用期間中の退職も適切に伝えれば不利にはならない
試用期間中に退職したからといって、履歴書に書かないのはNGです。
入社手続きで発覚したり、職歴詐称とみなされたりするリスクがあります。
退職理由を記載する必要がある場合は、例文を参考にして正確に履歴書に書くようにしましょう。
嘘をつかず、退職先の批判をせず、前向きな姿勢を示すことを心がけてください。
試用期間中の退職も、適切に伝えれば不利にはなりません。
ぜひ参考にして、転職活動に役立ててください。