特定社会保険労務士／AFP／2級ファイナンシャル・プランニング技能士／第一種衛生管理者
やまもと社会保険労務士事務所 代表
【プロフィール】
企業の情報システム、ならびに人事部門で28年の実務経験あり。クラウドソフトなどを推進している「システムのわかる社会保険労務士」です。
労働相談、人事労務管理、就業規則作成、給与計算が得意です。労働相談は、労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができます。各種手続きは電子申請対応ですので全国対応可能です。 また、各種サイトでの人事労務関係記事の執筆や監修も行っています。
試用期間中に仕事を辞めることを考えているけれど、気まずさを感じてためらってしまう人もいるでしょう。
しかし、試用期間とは企業と労働者の双方が適性を見極める期間であり、辞めることを気まずく思う必要はありません。
本記事では、試用期間中に辞めるのを気まずく思わなくて良い理由や、気まずくても辞めるべき会社の特徴、気まずさを感じたときの対処法などを詳しく解説します。
試用期間中の退職に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
試用期間に仕事を辞める際、気まずい思いはしなくて良い
試用期間中に仕事を辞めることは、決して企業に迷惑をかけることだけではありません。
試用期間とは、採用過程では見えてこない適性を確認し、企業と労働者の双方が良好な雇用関係を続けられるかを判断する期間です。
むしろ、試用期間を乗り越えて本採用されたあとに辞めるほうが、企業側に大きな迷惑がかかってしまうでしょう。
試用期間中に辞めるのを気まずく思わなくて良い理由
試用期間中に仕事を辞めることを、気まずく思わなくて良い理由があります。
ここでは、その代表的な理由を3つ紹介します。
両者が適性を見極める期間だから
試用期間は、企業と労働者の双方が適性を見極める大切な期間です。
面接や書類選考ではわからなかった、実際の業務内容や職場環境、人間関係などを確認し、自分に合っているかどうかを判断する機会として設けられたものです。
企業側と労働者側の双方にとって、必要不可欠な期間といえるでしょう。
採用した人物が組織にフィットするかどうかを見極めるために設けられている期間でもあり、企業側も試用期間中に退職されることをある程度想定しています。
もし自分に合わないと感じたら、気まずいからと無理して仕事を継続する必要はありません。
法的に問題がないから
試用期間中に会社を退職することは、法的に規制されるものではありません。
民法では、退職までの期間について、「前の給料支払い日から起算して2週間前に予告すれば、いつでも退職できる」と規定されています。
つまり、従業員には、法律で認められた自由な退職の権利があるのです。
試用期間中の退職は、法的には何の問題もないことを理解しておきましょう。
企業側にとっても都合が良いから
試用期間中の退職は、企業側にとってもデメリットばかりではありません。
むしろ、早い段階で退職の意思を伝えてもらったほうが、企業側も次の人材を探しやすいというメリットがあります。
一方で、本採用したあとに退職されると、代わりの人材を補充するのが難しくなります。
また、教育にもコストがかかっているため、試用期間中の退職のほうが、企業側の負担が小さいのです。
さらに、適性のない人材を無理に雇用し続けることは、企業にとっても大きなリスクになりかねません。
したがって、試用期間中の退職は、労働者だけでなく企業側にとっても、ある意味で望ましい選択肢だといえるでしょう。
気まずくても試用期間中で辞めるメリット
気まずさを感じながらでも、試用期間中に仕事を辞めることにはメリットがあります。
ここでは、そのメリットを2つ紹介します。
次のステップに早く進める
試用期間中に退職することで、次のキャリアステップに早く進むことができます。
自分に合わない職場で働き続けることは、貴重な時間とエネルギーの浪費につながります。
せっかくのキャリアを無駄にしないためにも、早めに判断して行動に移すことが大切です。
特に、転職活動を行う場合、試用期間中であれば、スムーズに次の職場に移ることができます。
本採用されたあとでは、業務の引継ぎなどが必要となり、退職するまでに時間がかかる可能性があるのです。
キャリアアップをめざす人にとって、試用期間中の退職は賢明な選択肢といえるでしょう。
ストレスから解放される
自分に合わない職場で働くことは、大きなストレスになります。
仕事内容や会社の雰囲気、人間関係など、さまざまな要因がストレスに影響します。
特に、試用期間中は、新しい環境に適応するための緊張感もあるため、通常よりもストレスを感じやすい時期です。
そのようなストレスが長期間続くと、心身の健康を損なう恐れがあります。
不眠や頭痛、消化器系の不調など、さまざまな症状が現れることもあるでしょう。
心身の健康を守るためにも、合わないと感じたら早めに決断することが大切です。
ストレスから解放されることで、心身ともに健康的な状態を取り戻せるでしょう。
気まずくても試用期間中で辞めるべき会社の特徴
試用期間中であっても、辞めるべき会社の特徴があります。
ここでは、その特徴を5つ紹介します。
内定時と労働条件が違う
内定時に提示された労働条件と、実際の労働条件が大きく異なる場合は要注意です。
給与や勤務時間、休日、福利厚生など、労働条件は働くうえで重要な要素です。
にも関わらず、入社後に聞いていた内容と違うことが判明するのは、企業側の説明不足か、意図的な偽りの可能性があります。
特に、給与が低い、残業代が支払われない、ないと聞いていた休日出勤を強要される、職種や勤務地が違うなど、労働者にとって不利益になるような労働条件の違いがある場合は、早めに退職を考えるべきでしょう。
入社後も、不公平な扱いを受けたり、約束が反故にされたりする可能性が高いからです。
労働環境が悪い
職場の労働環境が劣悪な場合も、試用期間中の退職を検討すべきです。
長時間労働や過度な残業、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどが横行している職場は、労働者の心身に大きな負担をかけます。
また、安全面での配慮が不十分で、労働災害のリスクが高い職場もあります。
コンプライアンス意識の低さは、企業の体質的な問題を示しているかもしれません。
一時的な我慢では、問題の根本的な解決にはつながりません。
自分の安全と健康を守るためにも、早めに判断することが賢明です。
働き続けることで、取り返しのつかない事態に陥る前に、行動に移しましょう。
離職率が高い
離職率の高さは、職場の問題点を示唆する重要なサインです。
人手不足が慢性的に続いている状況は、働きにくい職場環境の表れかもしれません。
仕事のストレスや人間関係の問題など、さまざまな理由で多くの人が退職しているのです。
離職率の高い職場では、常に人材が入れ替わるため、業務の引継ぎもスムーズにいきません。
結果として、自分の担当業務が増えて、負担が大きくなる恐れがあります。
また、先輩社員から十分な指導を受けられない、同僚とのコミュニケーションが取りづらいなどの問題も生じます。
離職率の高さは、職場の問題点を示す警告サインです。
早めに気付いて、行動に移すことが大切でしょう。
人間関係が悪い
職場の人間関係の悪さは、仕事のパフォーマンスや意欲に大きな影響を与えます。
上司や同僚との関係がうまくいかない状況では、ストレスを感じやすく、仕事への集中力も低下するでしょう。
特に、パワーハラスメントやいじめなど、深刻な人間関係の問題がある場合は注意が必要です。
職場の人間関係の改善は、個人の努力だけでは難しいことが多いものです。
社内の派閥争いや、根深い人間関係の問題は、簡単には解決できません。
自分の心身の健康を守るためにも、早めに退職を考えることが賢明でしょう。
人間関係の悪化が、仕事への意欲や自信を奪ってしまう前に、行動に移すことが大切です。
仕事内容があっていない
仕事内容が自分には合っていないと感じた場合、試用期間中の退職を検討するのも良いでしょう。
入社前の説明と実際の業務内容が大きく異なっていたり、自分のスキルや経験を活かせる仕事でなかったりすると、モチベーションが低下します。
また、自分に合わない仕事を無理に続けることは、ストレスの原因にもなります。
せっかくのキャリアを、自分に合わない仕事で無駄にしてしまうのは避けたいものです。
仕事内容が合わないと感じたら、自分に合った仕事やキャリアの方向性を見直すチャンスだととらえましょう。
試用期間中であれば、柔軟に方向転換ができます。
自分に合った仕事を見つけることで、キャリアの可能性を広げることができるでしょう。
試用期間中に辞めるのが気まずい場合の対処法
試用期間中に仕事を辞めるのが気まずいと感じる人もいるでしょう。
ここでは、そんなときの対処法を3つ紹介します。
退職代行を使う
退職代行サービスを利用することで、退職手続きをスムーズに進めることができます。
退職代行とは、専門家が代わりに会社との退職の交渉や手続きを行うサービスです。
退職の意思を伝えるのが苦手な人や、人間関係の問題から直接言いづらい人におすすめです。
退職代行を利用すれば、自分で上司や人事部と交渉する必要がなくなります。
また、退職までの流れや必要な書類についても、専門家がアドバイスしてくれます。
退職代行サービスを上手に活用することで、気まずさを感じることなく、円滑に退職手続きを進めることができるでしょう。
ただし、サービスによって料金や対応範囲が異なるので、事前に確認しておくことが大切です。
退職理由を明確に伝える
退職の際は、理由を明確に伝えることが大切です。
自分なりの理由をしっかりと整理して、誠実に伝えるようにしましょう。
「仕事内容が自分には合わない」「労働環境に問題がある」など、具体的な理由を述べることで、相手の理解を得やすくなります。
曖昧な理由や、嘘をついて誤魔化すのは避けたいものです。
正直に伝えることで、会社側も改善点に気付くことができるでしょう。
また、退職理由を明確にすることは、自分自身の振り返りにもつながります。
なぜその職場が合わなかったのか、自分に合った仕事はどのようなものかを考えることで、今後のキャリアプランにも活かせます。
退職の際は、ネガティブな感情に支配されずに、冷静に理由を伝えることを心がけましょう。
転職先の内定をもらってから退職を伝える
転職が決まっている場合は、次の職場から内定をもらってから退職の意思を伝えるのも一つの方法です。
次の職場が決まっているという事実は、退職の正当な理由になります。
会社側も、転職という明確な理由があれば、納得しやすいでしょう。
また、内定をもらっているということは、求職活動が順調に進んでいる証拠です。
次の仕事への期待や意欲を示すことで、前向きな姿勢を伝えることができます。
ただし、試用期間中は現在の職場で働きながら、転職活動を進める必要があります。
体力的にも精神的にも負担が大きくなるので、自分の状態をよく見極めることが大切です。
無理をし過ぎないように、計画的に行動しましょう。
試用期間の退職は気まずいと思わず適切な判断を
試用期間中に仕事を辞めることを、気まずく思う必要はありません。
試用期間とは、企業と労働者の双方が適性を見極める期間だからです。
法的にも問題はなく、企業側にとってもメリットがあります。
労働者側も気まずさを感じながらでも、次のステップに進めるというメリットもあるでしょう。
一方で、入社前後での労働条件の違いや労働環境の悪さなど、辞めるべき会社の特徴もあります。
退職代行を使ったり、退職理由を明確に伝えたりするなど、対処法もあるので参考にしてください。
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