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退職にともなう保険証手続きは?退職後に加入する保険の種類や注意点を解説

退職にあたって必要となる手続きの一つが、健康保険に関するものです。
退職後の健康保険では、国民健康保険への加入やご家族の扶養に入るなどいくつかの選択肢があり、状況に応じて選び、手続きを行う流れです。

今回は、退職にともなう保険証の手続きを解説します。
退職後に加入する保険の種類、注意点などをチェックしていきましょう。

会社を退職したら健康保険証はどうする?

会社を退職したら健康保険証はどうする?

会社を退職した場合、健康保険証は使えなくなってしまいます。
退職にあたって健康保険証を返却する方法や、注意点を確認していきましょう。

最終日に返却する

会社が加入している健康保険は退職の翌日から使用できなくなるため、最終勤務日に会社へ返却しなければなりません。
返却場所は人事など担当部署となるため、事前に確認し返却の準備をしておきましょう。

また、ご家族の扶養者となっている場合、配偶者や子ども、両親といった被扶養者の保険証もまとめて返却します。
単身赴任などご家族と離れて暮らしているケースでは、事前に保険証を回収しておくことが必要です。

なお、有給消化などの理由で最終出勤日に返却できなかった場合には、郵送で速やかに返却しましょう。
会社は、従業員が退職した翌日から原則5日以内に、健康保険組合に健康保険証を返却しなければなりません。
そのため、最終出勤日から退職日までに一定の期間があれば、退職日までに届くように郵送します。
退職日以降に使用してはいけないため、早めに郵送することが基本です。

最終日に保険証を使いたい場合

健康保険の資格喪失日は退職日の翌日であるため、退職日当日は健康保険証の使用が可能です。
どうしても退職日に保険証を使わなければならない場合は、退社後に使用しても問題ありません。

この場合、後日郵送で速やかに返却する必要があります。
なお、扶養家族の分も同様の対応です。

保険証を紛失した場合

病院にかかることが少ない方などは、返却時に保険証を探しても見つからないケースもあります。

保険証の紛失が発覚した場合、速やかに人事など担当者へ報告しましょう。
退職日まで日がある場合は再発行も可能です。
また、外でなくした可能性がある場合は、警察に届け出る必要があります。

退職直前でのトラブルを避けるためにも、退職前の早い段階で保険証を準備しておき、管理を徹底しておくことがポイントです。

退職後の健康保険手続き4パターン

退職後の健康保険手続き4パターン

退職後の健康保険手続きは、退職してからの状況によって変わってきます。

  • すぐに転職する場合:転職先の健康保険に加入
  • 失業期間がある場合:健康保険任意継続を利用
  • 失業期間がある場合:国民健康保険に加入
  • 失業期間がある場合:ご家族の扶養に入る

上記の4パターンについて、詳しく見ていきましょう。

転職先の健康保険に加入

退職後すぐに転職する場合は、転職先の健康保険に加入することになります。

退職した会社から郵送または退職時に渡される「健康保険資格喪失証明書」を転職先へ提出すると、転職先が保険加入手続きを行ってくれます。
そのため、自分で事務手続きをする必要はありません。

健康保険証は一般的に手続き後1~3週間程度で届きます。
もし届かない場合は、担当部署へ問い合わせましょう。

健康保険任意継続を利用

健康保険任意継続とは、会社を退職し被保険者資格を喪失したあとであっても、条件を満たしていれば被保険者の資格を継続できる制度です。
ただし、保険料は会社との折半ではなくなるため、全額自己負担となります。

被保険者期間が退職日までに継続して2ヵ月以上あれば、最長2年間は利用が可能です。

任意継続を利用する場合、資格喪失日から計算して20日以内に任意継続被保険者資格取得申出書を提出します。
提出先は居住地を管轄する協会けんぽ、または加入していた健康保険組合です。

加入条件 退職日までに被保険者期間が継続して2ヵ月以上あること
切り替え期間 資格喪失日から20日以内
利用期間 2年間
保険料 退職時の標準報酬月額に、居住地の保険料率をかけた額
(標準報酬月額30万円以上の場合は上限額の30万円で算出)
必要書類 任意継続被保険者資格取得申出書
手続き場所 居住地域の協会けんぽまたは加入していた健康保険組合

国民健康保険に加入

国民健康保険(国保)は居住地の都道府県や市区町村が保険者となる健康保険で、退職後に任意継続を利用せず、ご家族の扶養にも入らない場合にはこれに加入することになります。

保険料は前年の収入や年齢、家族構成、世帯資産などによって算出され、居住自治体によって金額は異なります。
なお、社会保険とは違ってご家族を扶養に入れることはできません。

切り替え手続きは、資格喪失日から14日以内に行うルールです。
それを過ぎて手続きを行った場合も、保険料は資格喪失日まで遡って請求されます。

切り替え期間 資格喪失日から14日以内
保険料 自治体により異なる
必要書類 健康保険資格喪失証明書、退職証明書、雇用保険の離職票など退職日が確認できるもの
手続き場所 居住地の市区町村役所

ご家族の扶養に入る

年収が130万円未満であるといった条件を満たすことで、同居しているご家族が被保険者となっている健康保険の扶養に入れます。
被扶養者になると、保険料が免除されることが特徴です。

なお、扶養に入りながら働く場合は収入に制限が生まれます。
収入が130万円未満で、かつ被保険者の2分の1未満でなければなりません。

年収が基準以上になる場合は、審査に通らず加入ができない可能性もあります。
詳しい条件はご家族の勤務先が加入している健康保険組合に確認しましょう。

加入条件 年収130万円未満かつ被保険者の2分の1未満
※詳細は加入の健康保険組合に確認
切り替え期間 扶養に入る事案発生から5日以内
保険料 支払いなし
必要書類 健康保険被扶養者(異動)届、雇用保険受給資格証や離職票など収入が確認できる書類、続柄が確認できる書類
手続き方法 加入の健康保険組合に申請

退職したときの保険証に関する注意点

退職したときの保険証に関する注意点

退職した翌日からはそれまでの保険証が使えなくなってしまいますが、切り替えのタイミングにはいくつかの注意点があります。
主な注意すべきポイントを確認していきましょう。

新しい保険証が届くまでは医療費をいったん全額負担する

転職してすぐに新しい健康保険証を手にできるわけではなく、新しい保険証が届くまでの期間で医療機関を受診する可能性もあります。
その場合はいったん医療費を全額自己負担し、保険証が届いてから医療機関で手続きを行うことで、自己負担分を差し引いた7割が払い戻されます。

また、一時的であっても医療費の全額負担が厳しいケースでは、「健康保険被保険者資格証明書」を使用することで、保険証の使用時と同様の自己負担額で受診が可能です。
年金事務所の窓口で発行してもらえ、事前に受診の予定が決まっている場合は、発行により受診時の自己負担額を抑えることができます。

保険証の切り替えは期限内に

健康保険の切り替えには、それぞれ以下のとおり期限が設けられています。

  • 健康保険任意継続を利用:資格喪失日から20日以内
  • 国民健康保険に加入:資格喪失日から14日以内
  • ご家族の扶養に入る:事案発生から5日以内

上記の期間内に手続きが必要となるため、遅れないようにしましょう。

なお、国民健康保険に加入する場合、遅れても加入手続きは可能ですが、保険料は退職日の翌日まで遡っての請求となり、手続きをしていなかった期間の保険料が加入後にまとめて請求されます。
金銭的な負担が大きくなる可能性もあり、期限を超過しても加入できるからといって遅れることは避けましょう。

年金の切り替えも必要

退職後にすぐ転職せず離職期間がある場合は、健康保険だけでなく年金の切り替えも必須です。

会社に在職している間は第2号被保険者に該当しますが、退職後は以下のどちらかに切り替わります。

  • 第1号被保険者:
    20歳以上60歳未満で、農業・自営業・学生・無職など第2号・第3号に該当しない方
  • 第3号被保険者:
    20歳以上60歳未満で、第2号被保険者に扶養されている年収130万円以下の配偶者

年金の切り替え期間は、国民健康保険の切り替えと同様に14日以内です。
年金手帳など年金番号を確認できるもの、離職票や退職証明書など退職日を確認できる資料、本人確認書類を持って、最寄りの役所で手続きを行います。

なお、収入が少ないために年金保険料の支払いが難しい場合、免除申請を行うことも可能です。

退職時の保険証に関してよくある質問

退職時の保険証に関してよくある質問

保険証を切り替える際は、保険料のことなどさまざまな疑問が浮かんでくるでしょう。
そこで、最後によくある質問3つにお答えします。

任意継続と国民健康保険はどちらが良い?

任意継続を利用するか、国民健康保険に加入するかを迷う方も多いかもしれません。
しかし、保険料は状況によって異なるため、どちらが良いかは個人の状況次第です。

任意継続では、在職時の標準報酬月額に定額の保険料をかけ合わせて算出されます。
ただし、会社との折半にはならないため、保険料は在職時の約2倍になる可能性があります。

対して国民健康保険の場合は、被保険者の年齢や前年の収入だけでなく、家族構成も影響するため、個人によって保険料は大きく異なることも特徴です。

任意継続は加入時期が20日以内に限定されている ため、事前に任意継続の保険料をシミュレーションし、そのうえでどちらが良いかを判断しましょう。

途中で任意継続から国民健康保険へ変更できる?

以下5点のいずれかに該当する場合は、任意継続の資格喪失が認められます。

  • 加入者が就職し、健康保険などの被保険者資格を取得したとき
  • 保険料を期限までに納付しなかったとき
  • 加入者が後期高齢者医療制度の被保険者資格を取得したとき
  • 加入者が任意継続被保険者ではなくなることを希望し、申し出たとき
  • 加入者が亡くなったとき

ただし、原則として2年間は任意継続の加入期間となり、上記以外の理由で国民健康保険への切り替えやご家族の扶養に入ることはできません。

保険料の支払いが厳しい場合は?

国民健康保険の場合、退職理由によっては保険料の減額措置を受けることが可能です。

倒産や解雇、雇止めなど事業主の都合によって離職したケースや、雇用期間満了など特定の理由によって離職したケースでは、支払いが減額されることがあります。

なお、実際に対象になるかどうかは、雇用保険受給資格者証の離職理由コードで確認ができます。
お住まいになっている市区町村のホームページを確認、または窓口へ問い合わせて確認しましょう。

退職後の状況によって保険手続は異なる

退職にともなう健康保険の手続きでは、離職期間がないのであれば転職先の保険へ加入することになります。
対して、離職期間がある場合は任意継続の利用や国民健康保険への加入、また収入条件によってはご家族の扶養に入ることも選択肢の一つです。

それぞれ条件や切り替え期間などが決まっており、自身の状況によって必要な健康保険の手続きは異なります。
今後の働き方を考え、保険料をシミュレーションしてから決めることが必要です。

執筆者について

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