住民税は、学校や福祉など、居住する地域の行政サービスに充てられる税金です。
会社員として働いている場合は給料から天引きされます が、退職後はどのように納税したら良いかわからない人もいるでしょう。
退職後の住民税の支払い方法は、退職時期によって異なります。
本記事では、退職時期ごとの納付方法や金額の目安を紹介しているので、参考にしてください。
目次
退職後の住民税の納付方法
会社員として住民税を納める場合は、前年の所得から計算された税額を12等分し、その年の6月から翌年5月までの給料より毎月天引きされます。
しかし退職した場合は、退職時期によって納付方法が異なります。
ここでは、退職時期ごとに納付方法を見ていきましょう。
退職時期が1月~5月|一括徴収
退職時期が1月〜5月の場合は、最後に勤めた月の給料から残りの住民税が一括で天引きされます。
例えば、2023年1月に退職するケースでは、2023年1月~2023年5月分までの住民税を1月の給料から差し引く形です。
しかし、住民税の計算は前年度の所得をもとに行われるため、退職する月の給料よりも1月から5月までの住民税のほうが高い場合もあるでしょう。
万が一、退職する際の給料よりも住民税のほうが高い場合は、2月~5月の月ごとの納付書が送られてくるので、毎月に分けて支払うことも可能です。
退職時期が6月~12月|普通徴収
退職時期が6月~12月の場合は、退職する翌月以降の住民税が普通徴収となることが一般的です。
普通徴収では、自治体から年4回にわけて納付書が送付される ので、期限までに支払いを行います。
それぞれの納期は以下のとおりです。
- 第1期:6月末日
- 第2期:8月末日
- 第3期:10月末日
- 第4期:翌年1月末日
納期は自治体によって異なる場合もあります。
詳しくはお住まいの自治体のホームページなどで確認してください。
ただし、本人が希望した場合は、退職月から翌年5月までの残りの住民税を一括で納付することも可能です。
また、最後の給与や退職金から天引きさせることも できるので、経済状況に合わせて選択すると良いでしょう。
退職後にすぐ就職した場合
退職後すぐに就職した場合は、残りの住民税を就職した会社の給与から天引きする特別徴収に切り替えることも可能です。
普通徴収から特別徴収に切り替える場合は、勤務先から「特別徴収切替依頼書」を各自治体の特別徴収センターに提出する必要があります。
特別徴収切り替え依頼書は、新しい勤務先の給料担当者に相談すれば対応してくれるでしょう。
対応自体は勤務先の担当者が行ってくれるので、自分から特別徴収センターに問い合わせる必要はありません。
退職後の住民税の計算方法
住民税は前年の所得に10%をかけることで、おおよその金額を求めることが可能です。
しかし、退職後の住民税は生活にも大きく関わるため、正確な金額が気になる人も多いでしょう。
ここでは、正確な住民税を計算するための3つのステップを紹介します。
ステップ①所得金額から課税所得金額を求める
正確な住民税を計算するためには、まず、所得金額をもとに課税所得金額を求めます。
所得金額と課税所得金額の具体的な計算式は、以下のとおりです。
- 所得金額=(前年度の収入)-(必要経費)
- 課税所得金額=(所得金額)-(所得控除)
例えば、前年度の収入が450万円で、必要経費が50万円の場合、所得金額は400万円です。
また、課税所得を求める場合は、所得金額から所得控除を差し引きます。
所得控除とは、扶養家族の有無や病気や災害による出費の有無によって、納税義務者の税金を軽くするための控除です。
具体的には、下記の種類があります。
控除の種類 | 控除を受けられるケース |
---|---|
雑損控除 | 災害や盗難、横領などで損害を受けた場合に受けられる |
医療費控除 | 自分または生計を共にする配偶者や親族が1年間に一定以上の医療費を支払った場合に受けられる |
社会保険料控除 | 自分または生計を共にする配偶者や親族の社会保険料を支払った場合に受けられる |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済に加入している場合、掛金を控除できる |
生命保険料控除 | 生命保険や介護保険、個人年金を支払っている場合、一部を控除できる |
地震保険料控除 | 地震保険の掛金の一部を控除できる |
障害者控除 | 自分や扶養家族、同一生計の配偶者が障害者に当てはまる場合受けられる 扶養控除の適用がない16歳未満の扶養家族を有する場合も適用 |
寡婦控除 | 自分が寡婦の場合で、以下の条件に当てはまり、年収500万円以下の際に受けられる控除
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ひとり親控除 | 自分がひとり親である場合に受けられる控除 生計を一にする子がいる状態で、下記条件のいずれかに該当かつ、年収500万円以下の場合に適用
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勤労学生控除 | 自分が勤労学生の場合に受けられる控除 勤労学生とは、下記3つの条件に当てはまる人が該当
(出典:No.1175 勤労学生控除) |
配偶者控除 | 配偶者の所得金額に応じて控除が受けられる 配偶者の所得上限は48万円 |
配偶者特別控除 | 配偶者に48万円以上の所得があったとしても、特定の条件を満たしている場合は一定の金額が控除される |
扶養控除 | 扶養親族がいる場合、一定金額の控除が受けられる |
基礎控除 | 43万円の控除 |
つまり、専業主婦(主夫)がいる場合や子どもがいる場合などは、相当の所得額が所得金額から引かれることになります。
ステップ②課税所得金額から所得割額を計算する
課税所得金額を求めたら、次にその金額を使って所得割額を計算します。
所得割額を求めるための計算式は、以下のとおりです。
- 所得割額=(課税所得)× 10% - (税額控除額)
税額控除額とは、団体への寄付や株式の配当によって差し引かれる控除のことです。
例えば、ふるさと納税の寄付やiDeCoへの積み立ては、税額控除として所得から差し引かれます。
ステップ③算出した所得割額から税額を出す
最後に算出した所得割額に、均等割額である5,000円をプラスした額が住民税となります。
均等割とは、住民税が「地域社会の会費」として負担を求める性格であることを反映している、一定所得以上の人が均等に出さなければいけない金額です。
所得の高低に限らず、全員平等 に5,000円を支払います。
上記の計算により算出した税額は住民税の総額なので、そこから1回ごとの支払い額を計算できます。
普通徴収の場合は年4回の支払いとなっているため、算出した住民税総額を4で割れば1回ごとの支払い額を求めることが可能です。
退職後の住民税に関するよくある疑問
最後に退職後の住民税に関して、よくある疑問を紹介します。
退職後の住民税について「支払えない場合はどうすれば?」「納付書が届く時期は?」など、疑問の解消に役立ててください。
退職後に住民税が支払えない場合は?
退職後に住民税が支払えない場合は、猶予手続きを取ることが可能です。
ただし、猶予手続きを取るには、自治体によって決められた要件に該当する必要があるので事前に確認しておきましょう。
例えば、大阪市の場合は以下の要件に該当するケースでは、納税の猶予手続きを行えるようになっています。
1. 財産につき災害を受け、または盗難にあったとき
2. 本人または生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したとき
3. 事業を廃止し、または休止したとき
4. 事業につき著しい損失を受けたとき
5. 1~4のいずれかに該当する事実に類する事実があったとき
6. 法定納期限から1年を経過した後に納付(納入)すべき税額が確定した場合
出典:納税の猶予制度
住民税は支払いが滞ると、財産が差し押さえられる可能性もあります。
支払いが難しい場合は、各地方自治体に相談したほうが良いでしょう。
納付書が届く時期はいつ?
住民税の納付書は、退職後すぐに送られてくることが一般的です。
ただし、各自治体は納付書の作成手続きを、勤務先から退職の報告があったあとから開始します。
そのため、前の勤務先からの退職連絡が遅れた場合は、退職後数ヵ月たってから納付書が届くこともあります。
引越した際の住民税の扱いは?
住民税はその年の1月1日現在に住んでいる市町村で課税されるものです。
したがって、2022年の場合は、2022年1月時点で住んでいた市町村に納めることになります。
例えば、2022年1月時点で東京都新宿区に住んでおり、2022年3月に埼玉県さいたま市に引越した場合、2022年度分の住民税を納める先は東京都新宿区です。
退職後の住民税は退職時期によって納付方法が違うので注意が必要
退職後の住民税について解説しました。
退職後の住民税は、退職する時期によって一括や分割といった形で納付方法が変わります。
万が一支払いが難しい場合などは、早めに自治体に連絡を取るようにしましょう。