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正社員の残業代の計算方法は?勤務形態別に具体例を交えて解説

この記事の監修者
山本 務
【資格】
特定社会保険労務士/AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/第一種衛生管理者
やまもと社会保険労務士事務所 代表

【プロフィール】
企業の情報システム、ならびに人事部門で28年の実務経験あり。クラウドソフトなどを推進している「システムのわかる社会保険労務士」です。
労働相談、人事労務管理、就業規則作成、給与計算が得意です。労働相談は、労働局での総合労働相談員の経験を生かした対応ができます。各種手続きは電子申請対応ですので全国対応可能です。 また、各種サイトでの人事労務関係記事の執筆や監修も行っています。

正社員の残業代は一律ではありません。
残業の種類によって割増率が定められており、当てはまる残業に合わせて計算する必要があります。
勤務形態によっても労働時間や残業の取り扱いが違うため、転職先の勤務形態を確認しましょう。

本記事では正社員の残業代について、残業代の発生に関する基本的なルールから、割増率や勤務形態の違いによる計算の具体例までを紹介します。
転職先の残業代で後悔しないために、しっかり把握するようにしましょう。

正社員で残業代が発生するルール

正社員で残業代が発生するルール

正社員で残業代が発生するケースには、いくつかルールがあります。
残業代の計算方法を理解するためにも、残業代が発生するルールを知っておきましょう。

どのような場合に残業代が発生するのか、基本的なルールを解説します。

残業代は法定労働時間を超えて働いた時間に発生

残業代は、法定労働時間を超えて業務をした場合に発生するものです。
法定労働時間は労働基準法で定められており、「週40時間、1日8時間」となっています。

間違えやすいのは、「定時=法定労働時間」ではない点です。
一般的に定時とは所定労働時間を指します。

所定労働時間は企業ごとの就業規則で定められた労働時間で、法定労働時間より長くは設定できませんが、短く設定することは可能です。
所定労働時間が法定労働時間より短い場合は、所定労働時間を超えても法定労働時間内であれば残業代の割増賃金が発生しません。

例えば、所定労働時間が休憩1時間込みで8時から16時まで(7時間)の企業で8時から17時まで働いた場合、所定労働時間より1時間長く働いていますが、法定労働時間内であるため残業代として割増賃金は発生しないのです。

労働時間に含まれないケースに注意

以下のケースは労働時間に含まれません。

  • 休憩時間
  • 遅刻や早退をした時間
  • 私用で外出した時間
  • 有給休暇

「労働時間に含まれない時間」を知らないと、残業代がもらえると勘違いしやすいため注意しましょう。
例えば9時から18時(休憩1時間)の労働時間で働く場合、2時間遅刻して20時まで働いたとします。
2時間の遅刻分は法定労働時間に含まれないため、合計8時間の労働で法定労働時間内となり残業代は発生しません。

残業代の割増率

残業代の基本ルールとともに知っておきたいのが、残業代の割増率です。
割増率がわかれば、法定労働時間以上の労働をした時間と合わせて残業代を計算できます。

基本的な割増率と、基本の割増率より多くなるケースをそれぞれ見ていきましょう。

残業代の割増率は25%が基本

法定労働時間を超えた場合に支払われる残業代は、25%の割増率を基本として計算します。
つまり、残業代は1時間あたりの賃金に25%上乗せした金額に残業時間をかけた金額になり、以下の計算式で計算が可能です。

1時間あたりの賃金×1.25×残業時間=残業代

具体的なケースとして「1時間あたり2,000円の賃金で3時間残業した場合」の残業代の計算式を以下に示します。

2,000円×1.25×3時間=7,500円

1時間あたりの賃金の考え方については、のちほど残業代の計算方法を解説するときに詳しく紹介します。

残業代の割増率が25%より多くなるケース

残業代の割増率は、以下のようなケースでは基本の25%よりも多くなります。

残業代の割増率が多くなるケース 割増率
法定労働時間外の労働が1ヵ月60時間を超えている場合 50%
休日労働(法定休日に出勤した場合のみ) 35%
法定労働時間外の労働+深夜労働 50%
法定労働時間外の労働(1ヵ月60時間を超えている場合)+深夜労働 75%

22時から翌朝5時までの時間帯に働く深夜労働への報酬は、25%の割増率で計算されます。
そのため、法定労働時間外労働と合わせると上記のように50%以上の割増率です。

休日労働は法定休日に出勤した場合のみ、35%の割増率になります。
法定休日とは労働基準法で定められた「週1日または4週間を通じて4日以上」与えられる休日です。

法定休日以外の休日に残業した場合は、通常の勤務日に残業した場合と同じ割増率になります。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

正社員の残業代(割増賃金)の計算方法【種類別】

正社員の残業代(割増賃金)の計算方法【種類別】

残業代は「1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間」で計算できます。
1時間あたりの賃金とは、月給から以下の諸手当を引いた賃金を月内の所定労働時間で割った額です。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当

前述の割増率を参考に、残業の種類別に計算方法を紹介します。

通常の時間外労働の場合

通常の時間外労働の割増率は25%です。
基本給28万円(手当は含まず)、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の正社員が、法定労働時間を超えて2時間の労働を行った場合の残業代を以下に示します。

1時間あたりの賃金=28万円÷(8時間×20日)=1,750円
残業代=1,750円×1.25(割増率)×2時間=4,375円

月60時間以上の時間外労働を行った場合

月に60時間を超える分の時間外労働に対する割増率は50%です。
基本給22万円(手当は含まず)、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の正社員が、月64時間の残業を行った場合の残業代を以下に示します。

1時間あたりの賃金=22万円÷(8時間×20日)=1,375円
残業代(月60時間まで)=1,375円×1.25(割増率)×60時間=103,125円
残業代(月60時間以上)=1,375円×1.5(割増率)×4時間=8,250円
残業代(合計)=103,125円+8,250円=111,375円

深夜に時間外労働を行った場合

22時から翌朝5時までの時間帯に働く深夜労働は割増率が25%となり、時間外労働の割増率と合わせると50%の割増率になります。
基本給20万円(手当含まず)、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の正社員が、3時間の残業(うち深夜労働1時間)を行った場合の残業代を以下に示します。

1時間あたりの賃金=20万円÷(8時間×20日)=1,250円
残業代(通常の残業)=1,250円×1.25(割増率)×2時間=3,125円
残業代(深夜の残業)=1,250円×1.5(割増率)×1時間=1,875円
残業代(合計)=3,125円+1,875円=5,000円

休日に労働を行った場合

休日に時間外労働を行った場合は以下の点で注意が必要です。

  • 所定休日に勤務した場合は通常の時間外割増と同じ
  • 法定休日に勤務した場合は全勤務が35%以上割増だが時間外割増は適用されない

それを踏まえた事例として、基本給20万円(手当含まず)、所定労働時間8時間、所定労働日数20日の正社員が、所定休日に2時間の残業、法定休日に2時間の勤務をした場合の賃金を以下に示します。

1時間あたりの賃金=20万円÷(8時間×20日)=1,250円
所定休日の残業=1,250円×1.25(割増率)×2時間=3,125円
法定休日の勤務=1,250円×1.35(割増率)×2時間=3,375円
合計=3,125円+3,375円=6,500円

法定休日の勤務には、時間外割増が適用されない点に注意しましょう。

正社員の残業代の計算方法【労働形態別】

残業の種類によって割増率が変わるだけでなく、労働形態によっても残業代の計算方法が異なります。
正社員として働く場合に想定される労働形態としては、以下の形態があります。

  • フレックスタイム制
  • 変形労働時間制
  • 裁量労働制(みなし残業)

それぞれのケースにおける残業代の計算方法を解説します。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、始業と終業の時間を従業員が自分で決められる労働形態です。
フレックスタイム制では、基本的に労働時間が1日8時間、週40時間を超えても、残業代が発生しません。

しかしフレックスタイム制には労働時間を集計する「清算期間」が設けられており、清算期間に設定された労働時間を超えて働いた場合に、超えた分の労働には割増賃金が発生します。

清算期間が1ヵ月の場合は、以下のような法定労働時間が定められています。

● 1ヵ月が31日の場合=177.1時間
● 1ヵ月が30日の場合=171.4時間
● 1ヵ月が29日の場合=165.7時間
● 1ヵ月が28日の場合=160.0時間

この場合、1ヵ月の労働時間で上記の時間を超えた部分に対して、残業代が支払われます。

変形労働時間制

変形労働時間制は、繁忙期や閑散期など業務に必要な時間に差がある場合に、日ごとや月ごとで労働時間を変えられる制度です。
1ヵ月の変形労働時間制を採用した場合、対象の1ヵ月で1週間あたりの平均労働時間が40時間になるよう調整すれば、所定労働時間が40時間を超える週を作ることが可能です。

例えば、月の後半に繁忙期が来る場合、週の労働時間を第1週目と第2週目が35時間、第3週目と第4週目が45時間と設定できます。
この場合は、以下のようなケースで残業代が発生します。

   第1週目 第2週目 第3週目 第4週目
所定労働時間 35時間 35時間 45時間 45時間
実労働時間 42時間 36時間 41時間 47時間
残業代が発生する時間 2時間 なし なし 2時間

所定労働時間を超えた場合でも、法定労働時間内の1日8時間以内の業務、つまり週40時間以内であれば残業代は発生しないので注意しましょう。

裁量労働制(みなし残業)

裁量労働制は、企業があらかじめ決めた時間を働いたとみなす制度です。
実際に働いた時間が決められた時間より短くても、長くても決められた時間働いたこととして扱われます。

裁量労働制で法定労働時間を超えた時間が設定された場合は、超えた時間の残業代が加算されます。
例えば1日9時間の労働時間が設定された場合、1時間の残業代を加えた賃金が支払われるのです。

また深夜労働や休日労働も割増の対象になります。

正社員の残業代計算にはツールやアプリの活用が便利

残業代の計算をするにはツールやアプリの活用が便利です。
計算式があらかじめ準備されており、働いた時間を入力するだけで簡単に計算できます。
できるだけ手軽におおよその残業代が知りたいという場合には、簡易計算が可能なwebサービスなどを利用するのがおすすめです。

手間が少しかかっても良い場合は、細かい数値を記入して残業代を細かく計算できるソフトやアプリもあります。
自分の目的に合わせて、ツールを使い分けましょう。

正社員の残業代を計算するには割増率や勤務形態の確認が必要

正社員の残業代は、割増率や勤務形態によって計算方法が異なります。
まずは自分がどのような労働条件で働くのか、正確に把握するところから始めましょう。

できるだけ早く残業代を計算したい場合は、アプリやツールの活用を検討しましょう。
残業代の有無を把握するのは、転職先を希望するうえでも大切な要素です。
正しい計算方法を知り、自分の希望する転職先を検討できるよう、本記事を参考にしてみましょう。

執筆者について

転職情報かる・けるは、転職や就職を目指している人の「知りたい」に応えるメディアです。 全国71,000件以上の求人を扱う弊社スタッフが、編集部として情報発信! “いい仕事が見つかる・いい仕事を見つける”ための、有益なコンテンツをお届けします。 https://x.com/karu_keru

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