
正社員として入社する際に、試用期間を設定している企業は多く存在します。
しかし、試用期間を正しく理解できていない人もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、正社員の試用期間の定義と合わせて、試用期間の長さ、待遇などを具体的に解説しているため、就業規則や企業との労働契約内容を確認する必要性を理解できます。
新卒や転職で正社員として入社を控えている人は、参考にしてみてください。
目次
正社員の試用期間とは
正社員の試用期間とは、本採用を決定する前の「見極めの期間」です。
正社員雇用を前提とした仮採用試用を経て、本採用に移行するのが一般的な流れとなります。
試用期間中の契約は、法律上は「解約権留保付労働契約」と解されており、採用した社員を解雇する権利を留保した労働契約です。
つまり、企業と社員は正式な労働契約を締結しており、試用期間中であろうと正社員として扱われます。
しかし正社員ではあるものの、労働者は入社前の面接だけでは詳しく判断されなかった人物や能力、勤務態度などを試用期間中に評価され、本契約に至らないケースもあります。
また、労働者にとっても、勤務を継続できるかを見極める重要な機会です。
試用期間の長さはどれくらい
試用期間の長さに関して、以下の3点を紹介します。
- 試用期間の長さは法律では決まっていない
- 一般的な試用期間は3ヵ月
- 試用期間の延長には合意が必要
試用期間の長さは法律では決まっていない
試用期間の長さには、法律で決まりはありません。
期間の長さは企業が自由に決めることができ、職種によって適格性判断の期間が異なるため、職種ごとに期間を定めることも可能です。
ただし、試用期間は労働者の地位が不安定となるため、厚生労働省のモデル就業規則によると、あまり長い試用期間は好ましくないとされています。
一般的な試用期間は3ヵ月
一般的な試用期間は、3ヵ月程度です。
2014年の「従業員の採用と退職に関する実態調査」では、3ヵ月程度の企業が最も多く、大半の企業は1〜6ヵ月程度に設定していました。
1年以上の試用期間は適切ではないとされているため、長くても6ヵ月以内に収めるのが良いでしょう。
試用期間の延長には合意が必要
試用期間を延長するためには、雇用者と労働者の間で合意が必要です。
期間の延長は、就業規則などで延長の可能性や理由、期間などが明記されていない場合は、原則認めるべきではないとされています。
しかし、病気やけがなどによって、労働者の勤務態度を十分に判断できない場合などでは、両者の合意のもと試用期間を延長することも可能です。
試用期間中の待遇は?
試用期間中の待遇に関して、以下3点を紹介します。
- 試用期間の労働条件
- 試用期間の給与・ボーナス
- 試用期間の社会保険・労働保険
試用期間の労働条件
試用期間の労働条件は、開始前に締結する労働契約により定められます。
労働契約の締結は、必ずしも書面で行う必要はなく、口頭のみでも可能です。
試用期間の労働条件に関するトラブルを回避するためには、書面での契約締結が勧められます。
また、試用期間中でも就業規則は遵守しなければならないため、労働条件だけでなく就業規則も確認しておきましょう。
試用期間の給与・ボーナス
試用期間の給与の額は、就職する企業によりますが、正社員と比較して少ないのが一般的です。
ボーナスの支給も企業によって異なり、ボーナス査定期間中に一定日数の出勤履歴があれば支給されるケースがあるのに対し、試用期間中にはボーナスを支給しない企業も少なくありません。
試用期間中の給与やボーナスは、求人票などに記載されていますので、期間と合わせて確認するようにしましょう。
試用期間の社会保険・労働保険
試用期間中も労働契約を締結しているため、健康保険や厚生年金保険の社会保険には加入できます。
また、雇用保険と労災保険の労働保険も同様です。
企業は、加入条件を満たしている従業員を、必ず社会保険や労働保険に加入させなければなりません。
もし試用期間中に各種保険に加入できない場合は、会社に相談してみましょう。
試用期間中に解雇されることもある?
試用期間中でも労働契約は結ばれており、労働契約法第16条によって、漠然とした理由では従業員は解雇されないようになっています。
しかし、以下のような相応の理由がある場合は、試用期間中に解雇されることもあります。
- 履歴書や職務経歴書に詐称がある
- 勤務態度の不良が勤怠履歴として残っている
- 企業の指導によっても改善の余地がない
企業が試用期間中に従業員を解雇するには、就業規則に「労働契約書で試用期間の雇用契約である」「試用期間中の解雇事由」「解雇の30日前に予告する旨」などが記載されており、それらの条件に該当していなければなりません。
試用期間中に退職することは可能?
正社員の試用期間中でも、従業員の意向で退職は可能です。
法的には退職の2週間前に会社へ申し出をすれば良いですが、ルールは企業によっても異なります。
就業規則に明示されていますので、試用期間中に退職を検討している方は、確認してみてください。
試用期間中に退職する場合の一般的な手順は以下のとおりです。
- 直属の上司に退職の意向を伝える
- 退職に必要な書類を会社へ提出する
- 退職に向けた具体的な準備をする
また、試用期間中に退職する場合でも労働契約が結ばれているため、働いた分の給与は支払われます。
正社員の試用期間を終えたあとに待遇が変わることはあるのか
正社員の試用期間を終えたあとに待遇が変わることがあるのか?という疑問に関連して、以下の2つの問いに応えます。
- 試用期間を終えて本採用を拒否されることはある?
- 試用期間を終えてから賃金が下げられることはある?
試用期間を終えて本採用を拒否されることはある?
やむを得ない事情があると、試用期間を終えて本採用を拒否されることがあります。
やむを得ない事情とは、業務遂行能力が極めて低かったり、勤務態度が著しく悪かったりなどです。
誠実な態度で会社に求められている業務を遂行していれば、試用期間後の本採用を拒否される可能性は低く、過度に怯える必要はありません。
本採用を拒否されないように、自分に与えられた業務を着実に前に進めていきましょう。
試用期間を終えてから賃金が下げられることはある?
試用期間を終えてから賃金を下げるなどの条件変更には、労働条件の変更が必要であり、企業と従業員において同意が必要です。
試用期間を終えて本採用となっても、労働契約は変わりません。
試用期間を終えて本採用となるということは、会社は必要な人材であると判断したことになります。
もし本採用時に賃金を下げる通告を受けた場合には、労働条件の変更に同意しないようにしましょう。
入社を控えている企業の試用期間について確認しておこう
試用期間中は、企業と労働契約を結んでいるため、従業員は正社員の扱いとなります。
試用期間とは、従業員としての人物や能力、勤務態度などを評価される、本採用に向けた大切な期間です。
試用期間中の待遇や期間の長さなどは、企業によってさまざまです。
新卒や転職者の方は、これから入社を控えている企業の試用期間について確認しておきましょう。