転職先が決まったあと、退職から転職先に入社するまでの期間にはさまざまな事務手続きが発生します。
退職後、転職までに期間が空く場合には、区役所や市町村役場・ハローワークなど公共機関へ出向いて手続きしなければなりません。
各種手続きをスムーズに済ませるには、やるべきことや必要な書類を把握したうえでスケジュールを組み、効率的に進めましょう。
本記事では、退職から転職先入社までに行う事務手続きの種類と一連の流れを、ケース別に詳しく解説します。
目次
転職が決まったら行う手続き【退職までの流れ】
転職にまつわる手続きは、やるべきことと行う時期をセットにして覚えておくと、スムーズに進めやすくなります。
どのような手続きをいつ行うのか、転職先が決まってから退職までの流れを時系列に沿って見ていきましょう。
【1ヵ月以上前】退職届を提出して退職を申し出る
転職先が確定したら、現職へ退職届を提出し、正式に退職の意思表示をします。
退職日の相談や人員補填にかかる時間もふまえて、1ヵ月以上の余裕を持って提出しましょう。
企業によっては退職の申し出時期を就業規則で定めているため、事前に確認してください。
【残りの1ヵ月】引き継ぎや挨拶
正式な退職日までの1ヵ月は、仕事の引き継ぎや顧客への挨拶回りなど、現職で済ませておくべき仕事を行います。
引き継ぎや挨拶の時間が十分に取れないと、退職後に迷惑をかけたり、自身の印象が悪くなったりする可能性もあるでしょう。
現職の上司と相談しつつ、仕事に影響が出ない日程に調整することが大切です。
【最終日】備品返却や書類の受け取り
現職の最終日、つまり退社当日は、備品や書類を会社へ返すほか書類の受け取り・挨拶状の送付を行う必要があります。
会社へ返却するものの例は以下のとおりです。
- 社員証
- 制服
- 社用車の鍵
- 貸し出しのノートパソコン
- 業務で使っていた電子機器や資料など
挨拶状は基本的に手書きの手紙やはがきが望ましいですが、親しい関係を築いている人ならメールでも問題ありません。
これまでお世話になったお礼を丁寧に綴りましょう。
最終日に受け取る書類については、のちほど詳しくご紹介します。
転職先が決まっている場合の手続き【退職~入社の間がない場合】
転職先が決まっている状態で現職を退職する場合、やることが多くなるため効率良く手続きを進めなければなりません。
必要な手続きをリスト化して確認しながら進めると、抜け漏れが起こりにくくスムーズです。
退職時と入社時、それぞれの手続きリストと必要なものを見ていきましょう。
【退職時】返却が必要な書類チェックリスト
退職時には、現職の会社に属する書類をすべて返却します。
返却書類の例は以下のとおりです。
- 社員証・IDカード・その他身分証明できるもの
- 自分の名前が入った名刺や取引先の名刺
- 会社から現物支給された通勤用の定期
- 健康保険証
- 顧客リスト・企画書などの会社のデータ
上記のうち、取引先の名刺に関しては現職の会社から求められなければ返却しなくても問題ありません。
返却すべきか迷う場合は、現職の上司に相談しましょう。
【退職時】会社から受け取る書類チェックリスト
退職するとき、現職の会社から受け取る書類のチェックリスト例は次のとおりです。
- 離職票
- 源泉徴収票
- 年金手帳
- 雇用保険被保険証
- 退職証明書
各書類の詳細を以下で解説します。
離職票
離職票は、失業給付金の受給手続きに必要な書類です。
事務手続きが間に合えば退職日に受け取れますが、間に合わない場合は後日自宅に郵送されます。
離職票がないと失業給付金を受け取れないため、退職から転職まで期間が空く場合は特に気をつけましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票は、転職先で年末調整してもらうときに必要な書類です。
例えば6月末に退職し7月1日から転職した場合、1月〜6月までは前の会社が、7月〜12月までは転職先の会社が、給与から所得税を差し引いています。
つまり、転職した年の年末調整には前職の源泉徴収票も必要です。
源泉徴収票をもらったら、年末調整まで大切に保管しましょう。
転職した場合の源泉徴収票については、以下のページでも詳しく解説しています。
気になる方はこちらもご参照ください。
年金手帳
年金手帳は、転職先で厚生年金の加入手続きを行うときに必要です。
マイナンバーで確認してもらう方法もありますが、年金手帳自体が個人の重要書類であるため、前職の会社から返却してもらいましょう。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、前職で雇用保険に加入していたことを証明する書類です。
正社員には雇用保険の加入義務があり、契約社員やパート・アルバイトでも条件が整っていれば加入できます。
手続きと雇用保険被保険者証の保管は、会社側が行うケースがほとんどです。
転職するときは事前に確認し、受け取って転職先へ引き継ぎましょう。
退職証明書
退職証明書は、その名のとおり前職の退職を証明する書類です。
転職先から求められたり、次の入社まで期間が空くために健康保険を切り替えたりするケースで使用します。
退職時に受け取れなかった場合、会社に発行を依頼しておきましょう。
【入社時】提出が必要な書類チェックリスト
転職先に入社するときは、主に次のような書類が必要です。
- マイナンバー
- 源泉徴収票
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 扶養控除等(異動)申告
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 給与振込先届出書
- 健康診断書
- 退職証明書
- 入社承諾書
- 身元保証書
- 免許の証明
リストにある書類は、企業によって提出を求められるときと必要ないときがあります。
また、上記以外の書類提出を求められるケースもあるため、事前の確認は欠かせません。
例えば扶養の関係で、ご家族の所得証明書やマイナンバーが記載された住民票の提出を求められるケースもあります。
以下で各書類の詳細を確かめるとともに、必要に応じて企業への事前確認も行いましょう。
事前に用意➀マイナンバー
マイナンバーは各種保険への加入に必要になるため、事前に用意しておきます。
マイナンバーカードのコピーや、マイナンバーが記載された住民票でも問題ありません。
ただしマイナンバーの提示方法を会社側から指定された場合は、その指示に従ってください。
事前に用意②源泉徴収票
前職の源泉徴収票は、転職先で年末調整するときに必要です。
退職した年の年末までに転職先へ入社しない場合、自分で確定申告を行うことになるため、転職先から源泉徴収票を求められることはありません。
事前に用意③年金手帳
転職先で社会保険へ加入するときに、年金手帳が必要になります。
正社員から正社員へ転職するケースのほか、非正規雇用でも社会保険へ加入する場合に必須の手続きとなるため、用意しておきましょう。
会社によっては、年金手帳を預かったままになるケースもあるので、前職で会社に預けていた場合は忘れずに受け取ってください。
事前に用意④雇用保険被保険者証
雇用保険証は、前職の会社から受け取ったあと、転職先の会社に提出して引き継ぎます。
会社側が保管することもありますが、いったん会社が確認したあと自分で保管するケースも少なくありません。
会社によって対応が異なるため、指示に従いましょう。
転職先から貰って用意➀扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告の書類は、扶養家族の有無に関わらず提出しなければなりません。
配偶者控除や扶養控除を受ける場合、必要事項を記入して転職先の会社に申請しましょう。
転職先から貰って用意②健康保険被扶養者(異動)届
自分の健康保険にご家族を入れる場合は、健康保険被扶養者(異動)届の書類を転職先の会社へ提出します。
配偶者や子ども・両親など、扶養に入れたいご家族がいるときは、転職先から書類をもらって手続きしましょう。
転職先から貰って用意③給与振込先届出書
給与振込先届出書は、転職先の給与を振り込む金融機関を知らせるための書類です。
転職した会社から受け取り、任意の金融機関の口座番号を記載して提出します。
強制ではありませんが、企業によっては振込先を指定するケースもあるため、気になる場合は事前に尋ねてみてください。
転職先によって必要➀健康診断書
健康診断書は、転職する会社が提出を求めたときに用意します。
労働安全衛生規則第43条で雇入時の健康診断が義務付けられていますが、これは常時使用する労働者を雇入れた場合に、適正配置や入社後の健康管理に役立てるためのものです。
この場合、健康診断を受けて書類を受け取り、転職先へ提出しましょう。
転職先によって必要②退職証明書
退職証明書も、転職先に求められた場合に用意しなければならない書類です。
前職での実務経験や賃金を参照し、採用トラブルを防ぐ目的で用いられます。
求められるか否かは会社次第なので、気になる方は事前に転職先へ確認しておくのがおすすめです。
転職先によって必要③入社承諾書
入社承諾書とは、簡単にいえば入社の意思表示するための書類です。
内定宣誓書とも呼ばれ、虚偽の経歴を申請していないことや労働条件に同意する旨が記載されています。
転職先が求める場合は、必要事項を記入して提出しましょう。
転職先によって必要④身元保証書
身元保証書は、入社予定の人が問題なく働けることを証明するとともに、万が一何かしらの問題を起こしたとき、本人の代わりに対応できる人を明らかにする書類です。
多くのケースでは、ご家族・親族が身元保証人を務めます。
転職先から提示を求められたとき、身近に該当する人物がいない場合は、転職先の人事部などに相談するのも手です。
転職先によって必要⑤免許の証明
特定の免許が必要な会社に転職する場合、免許の証明を求められるケースがあります。
例えば調剤薬局に薬剤師として転職する場合や、看護師として転職する場合などは、資格を証明する免許証のコピーを提出しなければなりません。
免許証を紛失してしまった方は、早めに再発行手続きを済ませておきましょう。
転職に必要な書類について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
転職先が決まっていない場合の手続き一覧【退職~入社で間がある場合】
まだ転職先が決まっていない状態で退職する場合、退職から入社まで期間が空くことになるかもしれません。
この場合は会社関係以外にも、公的機関へ出向いていくつかの手続きを行う必要があります。
手続きの場所と内容をリスト化し、やり残しがないよう気をつけましょう。
退職から転職先入社まで期間が空く方に向けて、各種手続きの流れを解説します。
失業給付手続き(ハローワーク)
転職先が決まるまでに時間がかかりそうなときは、失業保険の給付手続きをしましょう。
前職の離職票を持って最寄りのハローワークへ出向き、手続きをして失業状態と認定されれば失業保険の給付を受けられます。
会社都合なら7日間の待期期間、自己都合退職なら7日間の待期期間と2ヵ月の給付制限を経たのちに、給付金を受け取ることが可能です。
健康保険の加入手続き
前職で社会保険に加入していた方は、健康保険を変更するための手続きをします。
健康保険の切り替えには以下3つの選択肢が考えられるため、自身の状況に適したものに加入しましょう。
- 国民健康保険へ切り替える
- 今までの健康保険を任意継続する
- ご家族の扶養に入る
以下で詳しく解説します。
国民健康保険への切り替え(役所)
最寄りの市町村役場へ出向き、国民健康保険へ切り替える方法です。
退職日から14日以内に手続きを行いましょう。
14日を過ぎて手続きが遅れると、最長2年までさかのぼって保険料を納めなければならない場合があります。
健康保険の任意継続手続き
任意継続手続きをして、今まで入っていた健康保険に入り続けることも可能です。
ただし、以下の条件を満たしている必要があるため注意しましょう。
- 退職日から20日以内に申請する
- 退職日の前日からさかのぼって、過去2ヵ月以上の継続加入期間がある
加入している健康保険組合で手続きが必要です。
被扶養者への加入
ご家族が加入している健康保険へ被扶養者として入ることも可能です。
被保険者の配偶者や直系の父母、子どものほか、生計をともにしている人などが対象に該当します。
同居しているか否かによっても条件が異なるため、加入を検討している方は確認してみましょう。
加入は、被保険者が勤務する会社を通じて行います。
国民年金への切り替え手続き
退職して厚生年金から抜けた場合、最寄りの市町村役場で国民年金の切り替え手続きをしましょう。
国民年金には1号保険者・2号保険者・3号保険者の3種類があり、年齢や就業状況などに応じていずれかに振り分けられます。
この手続きは退職翌日から14日以内に行わなければなりません。
納付しない期間が長引くと、将来受け取れる年金額が減少する可能性もあるため注意しましょう。
住民税の納付
これまで給料から自動的に引かれていた住民税も、退職日以降は自分で支払うことになります。
ただし1月~5月の間に退職した場合は、退職月の給料からまとめて天引きされることを覚えておきましょう。
6月から12月の間に転職した方は、退職した次の月から自身で払う必要があります。
転職の手続きに関する注意点
転職の際には、辞める会社にも転職先の会社にも失礼がないよう配慮することが大切です。
転職の手続きを進めるなかで注意したいポイントを解説します。
退職時のマナーに注意する
退職時には、上司を通して退職届を出すのが一般的です。
なお退職届は希望ではなく「退職の意志」を示すものであり、会社側は拒否できません。
ただし退職届の提出が繁忙期や人事異動の時期と重なってしまうと、手続きが進みにくくなる可能性もあります。
業務の引き継ぎにも十分な時間を取れなくなるため、お互いに落ち着いて話し合えるタイミングを見計らいましょう。
必要書類を紛失しないように保管する
転職時に必要な書類は、紛失しないよう保管の仕方に注意が必要です。
書類自体は再発行が可能でも、そのぶん手間が増えるうえに、手続きの時間を長引かせる可能性があります。
転職先に対して「書類を紛失したので再発行してほしい」と依頼してしまうと、管理能力の甘さを疑われかねません。
スムーズに手続きを進められるよう、わかりやすく書類をまとめておくなど工夫して保管することをおすすめします。
転職前と転職先の所属が重ならないようにする
転職手続きが終わってない段階で転職先へ正式に所属し、仕事を始めてしまうのはマナー違反です。
会社によっては、就業規則で他社との「二重労働契約」を禁止している場合もあります。
就業規則に反する行為が発覚すれば、有給消化ができなくなったり懲戒免職になったりする恐れもあるでしょう。
二重労働契約は前職の会社にも転職先にも迷惑をかける可能性があるので、所属時期が重ならないよう手続きを進めてみてください。
転職の手続きは会社側も自分も困らないよう周到に行おう
転職にあたっては、在職中の退職届提出から転職先に入社するまで、さまざまな手続きをこなさなければなりません。
退職から転職までに時間がない方は、入社までにやるべきことと必要なものを書き出し、リスト化しておくと安心です。
まだ転職先が決まっていない場合、通常の退職手続き以外に失業保険や年金・税金に関する手続きを行う必要があります。
特に失業保険の申請時は、退職時に受け取る離職票が必須です。
各種書類はきちんと保管しておくようにしましょう。
会社側と自分のお互いが気持ち良く退職・転職準備を進めるためにも、余裕を持ったスケジュールで行動するよう心がけてみてください。