
転職が決まったら、仕事内容の引き継ぎだけでなく、さまざまな事務手続きがあります。
なかでも健康保険証の手続きは、離職してから転職先へ入職するまでの日数によって手続き方法が変わるため、注意が必要です。
この記事では、保険証の切り替えがスムーズにできるように、全体の流れや気をつけるべき点を解説しています。
健康保険証が手元にないときの病院受診や、健康保険資格喪失証明書の要否にも触れているので、ぜひ参考にしてください。
目次
転職時の保険証に関する手続きの流れ
転職するときの保険証の手続きは、離職期間の有無により違いがあります。
特に、次の会社へ入社するまで期間が空く場合や、就職先がまだ決まっていない場合などは、保険の任意継続、もしくは国民健康保険に加入するなどの手続きが必要です。
迷わずに済むように、それぞれのケースについて解説します。
離職期間なしで転職する場合の流れ
離職期間なしですぐに転職する場合にすることは、次の2つです。
- 退職日までに健康保険証を返却
- 健康保険資格喪失証明書の発行
それぞれ見ていきましょう。
1.退職日までに健康保険証を返却
退職する日までに、健康保険証を会社に返す必要があります。
自分だけでなく、被扶養者の分もありますので、忘れないようにしましょう。
なお、退職日の当日に病院などで保険証を使用する場合などは、返却日の相談を会社にしてください。
2.健康保険資格喪失証明書の発行
健康保険資格喪失証明書は、保険の資格を脱退した日付を証明するための書類です。
書類の作成は勤務先により異なります。
発行の有無を聞かれる場合や、こちらから依頼をして発行してくれる場合など、対応はさまざまなので確認が必要です。
もし会社から発行されない場合でも、自身で申請ができます。
管轄の年金事務所窓口にて申請を受け付けているため、身分証明書(本人確認書類)を持参してください。
離職期間がある場合の流れ
退職日から次の転職先に入社するまで1日でも空白期間がある場合は、次に紹介する3つの方法を選択する必要があります。
- 国民健康保険に加入
- 任意継続
- 扶養家族になる
順番に解説していきます。
国民健康保険に加入
国民健康保険は、市区町村などの自治体が運営している健康保険です。
扶養制度がないため、ご家族全員分の支払いが必要になります。
前年度の所得と加入者数、年齢をもとに計算する仕組みです。
市区町村ごとに保険料の計算方法が異なるため、公式Webサイトなどで確認してください。
また、国民健康保険の加入期限は退職日の翌日から14日以内です。
手続きを滞りなく進めるために、在職中に健康保険資格喪失証明書または離職票が発行されるか確認しておきましょう。
任意継続
任意継続とは、退職後も今までと同じ健康保険を継続して利用することです。
退職後から最長2年間の継続ができますが、在職中は会社が負担していた費用の支払いも発生するため、退職前の約2倍の保険料が必要になります。
手続きの期限は、退職日から20日以内です。
国民健康保険と任意継続のどちらを選択したら良いか迷う方も多いでしょう。
保険料の計算方法が一律でないため、単純にどちらが安いかを比べるのも難しい場合があります。
ですが、扶養家族がいる場合は引き続き扶養に入れるため、ご家族が多い場合には任意継続を選択したほうが安く済むかもしれません。
扶養家族になる
次の転職先が決まるまで、ご家族が加入している健康保険に扶養家族として入れてもらう方法があります。
扶養家族に入ると、健康保険料の支払いがなくなります。
ただし、以下の条件を満たすことが必要です。
- 年間収入が130万円未満
- 被保険者の収入の1/2以下
保険証の切り替え時に注意すべきこと
保険証の切り替え時に注意すべきことは次の3つです。
- 失効後に誤って使用した場合
- 紛失に気付いた場合
- 被扶養者がいる場合
特に、退職後に前会社の保険証を誤って使用すると、返還請求など申請が必要になるため注意してください。
それぞれ解説します。
失効後に誤って使用した場合
健康保険証の失効後に誤って使用した場合は、失効した健康保険の保険者(協会けんぽまたは健康保険組合等)から後日、返還請求を受けることになります。
返還請求を受けたら、一時的に健康保険の負担分を立て替えて支払わなければなりません。
その後、新しく加入した健康保険の保険者(協会けんぽまたは健康保険組合等)へ療養費の申請を行うと、立て替えた費用が返ってきます。
しかし、新旧どちらの会社にも手続きをする手間が発生するので、誤って使用しないようにしましょう。
紛失に気付いた場合
普段から健康で保険証に縁のない方は、紛失していたことに返却時に気付くケースもあります。
退職日まで日数が少ないとしても、その期間に病気やケガをするかもしれないため、再発行するのが安全です。
再発行の手続きに関しては、会社に指示を仰いでください。
また、外で紛失した恐れのある場合は、安全のため警察に届け出ることも考えましょう。
被扶養者がいる場合
被扶養者がいる場合は、ご家族全員分の保険証の返却が必要です。
自身の保険証と合わせて忘れずに退職日までに返却しましょう。
特に一緒に住んでいないご家族がいる場合は、回収を忘れやすかったり、時間がかかったりしますので注意してください。
転職後に健康保険証がない期間の病院受診は?
転職後に保険証が届いていない場合でも、健康保険被保険者資格証明書を発行してもらうことで、3割の自己負担で病院を受診できます。
この証明書は保険証が届くまでの間、保険証代わりに使用できる書類です。
発行してもらう方法は、次の2通りです。
- 転職先の会社に相談する
- 最寄りの年金事務所で手続きをする
急に病院へ行くことになった場合でも、年金事務所であれば即日発行してもらえます。
持参する書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど写真付き証明書類等)
- 被保険者と被扶養者の「被保険者資格取得届」または「被扶養者(異動)届」
- 委任状(事業主または被保険者以外が申請を行う場合)
詳しい内容は日本年金機構のWebサイトで確認できます。
転職先が決まっていれば健康保険資格喪失証明書は不要?
健康保険資格喪失証明書は、転職先の入社に退職日からブランク期間がない場合のみ不要です。
このケースでは、転職先の担当者が手続きをしてくれるので、特にやることはありません。
しかし転職先が決まっていたとしても、退職日から入社までに1日でもブランク期間がある場合は、国民健康保険の加入が必要になります。
国民健康保険の加入には健康保険資格喪失証明書が必要で、保険証の返却日より14日以内に、自身で申請手続きを行わなければなりません。
今回の転職がどのような流れなのかを把握して、健康保険資格喪失証明書を準備しておくと良いでしょう。
保険証を切り替える流れを把握して、転職時に慌てないようにしよう
転職するときの健康保険証を切り替える流れは、離職期間の有無によって変わります。
離職期間がない場合は、他にすることは特にありません。
一方で、離職期間が1日でもある場合は、次のいずれかの手続きを行う必要があります。
- 国民健康保険に加入する
- 前職の健康保険を任意継続する
- ご家族の扶養に入る
前年度の年収や年齢、ご家族の構成により保険料が異なるため、何も考えずに国民健康保険の加入を選ぶことなく、自分にとって良い方法を考えてから選んでください。
転職後に保険証が届いていない場合でも、健康保険被保険者資格証明書を発行してもらうことで、3割の自己負担額で病院を受診できます。
急に病院へ行くことになった場合でも、年金事務所の窓口で即日発行が可能ですので安心してください。
保険証の切り替え方は、転職時の状況によりさまざまな選択肢があります。
転職時に慌てることがないよう、事前に手順を把握して準備しましょう。