会社に退職届を提出する際、理由の記入に悩む人もいるのではないでしょうか。
自己都合での退職であれば、「一身上の都合」と記載しますが、会社都合の場合は記載内容が異なります。
今回は、退職届に記入する退職理由について、パターン別に書き方と例文、注意すべきポイントを紹介します。
目次
退職届に書く「理由」は自己都合と会社都合の2種類
退職の理由は、大きく分けて自己都合と会社都合の2種類です。
退職理由によって、退職届に記載する内容も変わります。
自己都合は「一身上の都合」で問題ない
自己都合による退職の場合、理由は転職や家庭の事情による転居など、さまざまなものがあるでしょう。
しかし、退職届には詳細な理由を記載する必要はなく、「一身上の都合」とだけ記載すれば問題ありません。
「一身上の都合」とは?
「一身上の都合」とは、自分の境遇や身の上に関する事柄における都合のことです。
退職届においては、転職、結婚や介護といった家庭の事情、業務とは関係ない病気や怪我など、自分の希望で退職する場合に使用します。
ただし、上司に退職の意思を伝える際には退職理由を尋ねられるものです。
その際に納得してもらえるよう、伝えるときの理由は用意しておきましょう。
「一身上の都合」を使う理由
退職を考える具体的な理由には、人間関係の悪化、給与が低い、業務内容への不満などさまざまな本音があります。
しかし、そうした具体的な理由を率直に伝えることは得策ではありません。
内容によっては会社の雰囲気を悪くしてしまったり、自分や同僚にマイナスイメージを与えてしまったりする恐れがあります。
「一身上の都合」は、自己都合における退職理由の幅広い内容をカバーできます。
トラブルを避けるためにも「一身上の都合」を使うのが無難です。
会社都合の場合は理由を詳しく記載する
人員整理や倒産など、会社側の事情によって退職を余儀なくされた場合は、会社都合での退職となります。
この場合、退職届の理由に「一身上の都合」は使用できません。
会社都合であるにも関わらず「一身上の都合」と記入すると、会社側に自己都合退職として処理される恐れがあります。
自己都合と会社都合では、失業保険の給付額や給付開始までの期間に違いが生じます。
自己都合退職では失業保険の給付まで2ヵ月と7日間待たなければなりませんが、会社都合退職では退職して7日後から受け取ることが可能です。
以上のことから、会社都合の場合は「貴社、倒産のため」など実際の理由を記しましょう。
なお、退職届の書き方や用紙、手書きでの書き方については、以下の記事をご参照ください。
また、退職願の封筒に関する詳細は、以下の記事をご参照ください。
【例文あり】自己都合による退職理由の書き方
自己都合退職の場合、退職届には「一身上の都合」と記入しますが、会社や上司によっては詳しい理由を尋ねられる場合もあるでしょう。
さまざまなパターンの概要と例文、また書き方の注意点をチェックしていきましょう。
「一身上の都合」とする場合
先述のとおり、自己都合退職の場合は「一身上の都合」と記し、具体的な理由を書く必要はありません。
細かい内容は書かず、「一身上の都合」に日付のみを添えた最小限の内容を記入しましょう。
例文このたび、一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします
理由を詳しく求められた場合
詳細な理由を求められた場合でも、具体的な理由を書かないこと自体に問題はありません。
しかし、正直な理由を説明したい場合もあるでしょう。
理由別に例文とポイントを紹介します。
転職
入社当時とは考え方が変化し、やりたい仕事が変わることは不自然なことではありません。
そのため、転職をする場合は正直に伝えることも具体策の一つです。
転職することを伝える際は、自身の将来を見据えたポジティブな内容にしましょう。
スキルアップなどキャリアプランを踏まえた内容にすることがポイントです。
例文このたび、技術職において新分野への挑戦をしてみたいと考え、令和○年○月○日をもって退職いたしたく存じます
健康上の理由
仕事とは関係なく、持病の悪化などによって就業の継続が困難になった場合には、正直に「健康上の理由」であると伝えて問題ありません。
例文このたび、健康上の理由により、令和○年○月○日をもって退職いたします
ただし、長時間労働や上司のパワハラなど、仕事が原因で体調不良に陥ったケースでは、会社都合になることがあります。
会社に起因する体調不良の場合は、会社側に非があることを明確に示しておくことが必要になるため、内容を詳しく記載しましょう。
家庭の事情
家庭の事情には、さまざまなパターンがあります。
退職の旨を伝える際は現状を説明し、退職届に記載を求められた場合は簡潔に記入しましょう。
このたび、家族の転勤が決まり転居するため、退職いたします結婚:
このたび、結婚することになったため、退職いたします家族の介護:
このたび、家族の介護に専念するため、退職いたします
その他:
このたび、両親が高齢となり家業を継ぐことになったため、退職いたします
書き方の注意点
退職理由を詳しく求められたとしても、本当の理由を正直に書かないほうが良いケースもあります。
自己都合による退職の理由は、人それぞれです。
家庭の事情など、続けたくてもやむを得ず退職する場合もありますが、会社への不満がたまり退職を考えることもあります。
会社内の人間関係や待遇に関する不満などのネガティブな内容は、トラブルや引き止めにつながるため、書かないほうが良いでしょう。
例えば、部署内の人間関係悪化を理由とした場合、部署異動を提案される、「どこの会社でも同じだ」と言われるなど、引き止めにあう可能性があります。
スムーズに円満退職するためにも、理由によっては本音と建前を使い分けることが重要です。
【例文あり】会社都合による退職理由の書き方
会社都合での退職の場合、基本的に退職届を出す必要はありません。
ただし、就業規則で定められていることを理由に要求されるケースもあります。
この場合、自己都合退職として手続きがなされる可能性もあるので、慎重に対応しましょう。
会社都合による理由には、倒産や希望退職といった内容だけでなく、会社による違法行為があった場合や、パワハラなども含まれます。
会社による違法行為としては、給与未払い、長時間労働や残業の強要などが具体的な事例です。
また、パワハラやセクハラなどハラスメント案件も説明が必要です。
なお、ハラスメントの場合は、口頭で具体的な事実確認をされることがあります。
貴社、事業部縮小にともなう○○支部閉鎖のため、退職いたします倒産:
貴社、業績不振にともなう倒産のため、退職いたします希望退職:
貴社、希望退職のため、退職いたします
退職推奨:
貴社、退職推奨にともない、退職いたします
長時間労働:
長時間労働に起因する体調不良のため、退職いたします
パワハラ:
パワハラとそれにともなう会社の対応が不十分であったため、退職いたします
セクハラ:
セクハラが原因で精神疾患を患ったため、退職いたします
退職届の理由は、自己都合・会社都合によって適切に書こう
退職届に記入する理由は、自己都合か会社都合かによって異なります。
自己都合退職の場合、詳細は書かず「一身上の都合」で問題ありません。
しかし、会社や上司によっては詳細な理由を求めてくる場合があるため、会社への不満などネガティブな内容は避けながら、状況によって適切な理由を記入しましょう。
反対に、会社都合では「一身上の都合」を使うと自己都合退職として処理され、失業保険の受給に影響する恐れがあります。
そのため、会社都合であれば倒産など具体的な理由の記入が必須です。