高年齢者雇用安定法の改正により、65https://changejob.karu-keru.com/wp-admin/themes.php歳までの雇用確保の義務化と70歳までの雇用確保の努力義務化が実施されています。
しかし、定年退職の年齢の拡大にともない「人事や企業全体ですべきことはあるの?」「65歳に引き上げが義務化されるってこと?」と、悩む方もいるのではないでしょうか。
本記事では、定年退職の年齢の平均から法改正の詳細、定年延長にともない人事がすべきこと、企業に求められることまでを解説します。
人事担当の方はぜひ参考にしてください。
目次
定年退職の年齢は何歳が多い?
2013年4月に高年齢者雇用安定法が改正されて、希望者は原則65歳まで働けるようになりました。
近年の定年状況は、厚生労働省の令和4年就労条件総合調査の概況を参考にすると、次のとおりです。
一律定年制を定めている企業 | 60歳 | 61歳 | 62歳 | 63歳 | 64歳 | 65歳 | 66歳以上 | |
2022年 | 96.9% | 72.3% | 0.3% | 0.7% | 1.5% | 0.1% | 21.1% | 3.5% |
2017年 | 97.8% | 79.3% | 0.3% | 1.1% | 1.2% | 0.3% | 16.4% | 1.4% |
出典:一律定年制における定年年齢の状況|令和4年就労条件総合調査の概況|厚生労働省
一律に定年制を定めている企業96.9%のうち、定年が最も多い年齢は60歳72.3%で、次に多いのは65歳21.1%です。
2022年と2017年の調査を比較すると、定年退職の年齢を延長する人が増えていることがわかります。
定年退職の年齢は法改正でどう変わった?
定年退職の年齢は、法改正で次のように変わっています。
- 2013年4月施行:65歳までの雇用確保を義務化
- 2021年4月施行:70歳までの雇用確保を努力義務化
ここからは、定年退職の年齢に関する法改正の詳細を解説します。
2013年4月~65歳までの雇用確保を義務化
2013年4月に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳までの雇用確保を義務化しました。
定年を65歳未満と定めている企業は、次の措置のいずれかを実施する必要があります。
- 65歳まで定年を引き上げる
- 定年制を廃止する
- 65歳までの継続雇用制度を導入する
これらの法改正は、高年齢者を65歳まで雇用確保するための措置です。
現在は経過措置期間ですが、2025年4月からは義務となります。
【注意】65歳に引き上げることが義務化されるのではない
2013年4月の法改正は、「定年の年齢を65歳に引き上げること」が義務化されるわけではなく、「継続して雇用を希望する65歳までの労働者の雇用」を義務化するものです。
つまり、労働者が60歳で退職を希望すれば定年退職することは可能です。
あくまで、60歳以降の継続雇用を希望する労働者に対して、雇用の機会を与えることが義務化されます。
雇用確保の具体的な取り組みを実施せず、ハローワークの指導を繰り返し受けている企業には勧告書が発行されます。
勧告に従わないと企業名が公表されるため、注意してください。
2021年4月~70歳までの雇用確保を努力義務化
2021年4月の法改正により、65歳までの雇用確保に加えて、65歳〜70歳までの就労機会を確保する努力義務が生じました。
定年の年齢を65歳以上70歳未満としている企業と継続雇用制度を導入している企業は、次のいずれかの措置を取る努力義務があります。
- 70歳まで定年を引き上げる
- 定年制を廃止する
- 70歳までの継続雇用制度を導入する
- 70歳まで業務委託契約を継続締結できる制度を導入する
- 70歳まで該当事業に従事できる制度を導入する
該当事業とは、企業が実施する社会貢献事業や、企業が出資・委託する団体が実施する社会貢献事業のことです。
定年退職の年齢延長により人事が確認すべきこと
定年退職の年齢延長により、人事担当は次の点を確認する必要があります。
- 雇用契約
- 就業規則
- 賃金制度
- 退職金制度
- 早期退職制度
それぞれ解説します。
雇用契約
定年の引き上げや継続雇用後は、労働条件などの見直しが必要です。
再雇用後の労働条件が変更される場合は、新たな雇用契約書や労働条件通知書の作成が必要です。
雇用契約書は、法的な作成義務はありませんが、労働者の保護とトラブル防止の観点から作成をおすすめします。
労働条件通知書は、労働基準法により労働契約を締結した際に、労働条件を明示した書面を交付することが義務付けられているため、作成が必要です。
就業規則
定年の引き上げや継続雇用後は、労働基準法の退職に関する項目に該当するため、就業規則の作成または変更をする必要があります。
退職に関する項目とは、就業規則の絶対的必要記載事項のことです。
就業規則を作成または変更したあとは、所轄の労働基準監督署に届け出ましょう。
また、高年齢者の働きぶりを正当に評価する仕組みを就業規則に記載することで、公平性や納得性を高めることができます。
賃金制度
定年の引き上げや継続雇用後は、高年齢者だけでなく全労働者の賃金制度を見直すことが望ましいとされています。
公平性や納得性の高い賃金制度は、労働者の意欲向上などにつながるためです。
一例を挙げると、次のような内容で検討が必要でしょう。
- 現行の賃金制度を維持する
- 高年齢者の労働者に適用する新たな賃金制度を設ける
- 全労働者それぞれの成果に応じた賃金制度を設ける
いずれにしても、労働者が納得する賃金制度を構築しましょう。
退職金制度
定年の引き上げや継続雇用にともない、退職金を支給するタイミングを選択してもらう必要があります。
退職金制度の一例を挙げると、次のとおりです。
- 打ち切り支給:60歳で退職金を支給する。退職所得に該当させるには、「相当な理由」が必要である
- 支払い延長:退職金の支払い時期を延長後の定年までに変更する
いずれの方法でも、労働者のライフプランを考慮しながら、一人ひとりの希望に応じた選択ができるようにしましょう。
早期退職制度
早期退職制度では、一般的に最低勤続年数や適用開始年齢などの条件を定めます。
定年の引き上げや継続雇用にともない、これらの条件の見直しが必要です。
早期退職制度には次の種類があります。
- 早期希望退職制度:経営状態が悪化した際に人件費を削減するために実施される
- 選択定年制度:人員の循環や労働者の希望を尊重するために実施される
定年延長の方針や社内体制など、自社の経営状況に沿った制度を検討しましょう。
定年退職の年齢延長にともない企業側に求められること
定年延長にともない、企業に求められることは次のとおりです。
- 年齢制限を禁止する
- 職業能力の維持・向上させる
- 作業施設を改善する
- 職業の範囲を拡大させる
- 経験・知識を活用する
それぞれ解説します。
年齢制限を禁止する
高年齢の労働者が均等に雇用される機会を得られるように、年性制限を設けないように努めましょう。
そもそも、雇用対策法により労働者を募集・採用する際の年齢制限は禁止されています。
やむをえない理由で65歳未満の年齢制限が必要な場合は、労働者にその理由を示す必要があると高年齢者雇用安定法で定められています。
職業能力の維持・向上させる
高年齢者の能力が維持・向上できるように職業訓練を実施しましょう。
国は次のような施設を積極的に活用するよう推進しています。
- 公共職業能力開発施設:再就職を支援するための職業訓練や人材育成などの支援を行っている
- 民間教育訓練機関:民間組織または個人で業務や就職のための職業訓練を提供している
高年齢者の雇用環境を整備するための65歳超雇用推進助成金なども存在します。
受給要件を確認して利用の検討をしても良いでしょう。
作業施設を改善する
高年齢者が職場での能力を発揮できるように、作業施設を改善しましょう。
作業施設の改善の一例を挙げると、次のとおりです。
- 可能な限り業務内容を簡易化する
- 作業補助具を導入する
- 福利厚生施設を用意する
高年齢者は体力面への配慮が必要です。
高年齢者が職場でこれまでの経験やスキルを活かせるように、施設の改善に努めましょう。
職業の範囲を拡大させる
高年齢者の経験やスキルが活用できるように、職業の範囲を拡大することも必要です。
一般社団法人日本人材紹介事業協会の高齢者雇用推進ガイドラインによると、60歳以上の労働者に活躍してもらおうと考えている職域の一例は、次のとおりです。
- 第一線のカウンセラー
- 若手指導やサポート
- 役員や顧問
- 管理職
- 事務職
- 補助的な業務
高年齢者の経験やスキルに応じた職域の提案を実施しましょう。
経験・知識を活用する
高年齢者に活躍してもらうために、若手にはない経験・知識を活用しましょう。
企業は活躍している高年齢者の特徴をとらえる必要があります。
活躍している高年齢者の特徴の一例は、次のとおりです。
- 人脈:高年齢者には長いキャリアのなかで築き上げてきた人脈がある。新規顧客を開拓する際などにこの強みは発揮される
- サポート力:過去の経験・知識を活かして若手からシニア層まで、的確なアドバイスを実施できる
高年齢者の培ってきた経験・知識を活かせる処遇や配置を検討しましょう。
定年退職の年齢は70歳までに拡大|雇用環境を整えて活躍してもらおう
少子高齢化が進んでいる現代では、労働者不足が問題となる可能性があります。
退職年齢の拡大は、人材不足に悩んでいる企業にとって解決策の一つです。
しかし、高年齢者に活躍してもらうには、雇用環境を整える必要があります。
職業訓練や職域の拡大、作業施設の改善など、高年齢者の経験やスキルを活かせる環境づくりを実施していきましょう。