「失業保険はいくら受け取れるのだろう」
「支給される目安金額を知りたい」
退職を目前に、こう思う方もいるでしょう。
失業保険(基本手当)は生活費の不安を軽減させるためにも、活用したい制度です。
本記事では、失業保険の計算式を3STEPで詳しく解説します。
例も交えながら紹介しており、計算の手順や目安金額がわかるようになるでしょう。
目次
失業保険(基本手当)の計算の仕方:3STEP
失業保険(基本手当)の計算方法は、以下の3STEPで行います。
- 離職前6ヵ月の給与を180日で割って賃金日額を出す
- 賃金日額に給付率をかけて基本手当日額を求める
- 基本手当日額に給付日数をかけて総支給額を出す
それぞれ、手順ごとに詳しく解説します。
失業保険の受け取り方を詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
離職前6ヵ月の給与を180日で割って賃金日額を出す
残業代や交通費を含めた直近6ヵ月の額面給与を合算し、180で割ったものが賃金日額です。
この際、賞与は含めずに計算します。
ただし、賃金日額には離職時の年齢に応じて上限額と下限額が決まっており、令和5年8月以降は下記のとおりです。
毎年8月1日に見直されるため、最新の情報をご確認ください。
離職時の年齢 | 賃金日額の上限額 | 賃金日額の下限額 |
29歳以下 | 13,890円 | 2,746円 |
30~44歳 | 15,430円 | |
45~59歳 | 16,980円 | |
60~64歳 | 16,210円 |
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5年8月1日から~」
退職時の年齢:25歳
額面給与:月額22万円(交通費を含む)
賃金日額:22万円×6ヵ月÷180日=7,333円
賃金日額に給付率をかけて基本手当日額を求める
以下の表による自身の離職時の年齢と賃金日額に当てはまる給付率を、先ほど求めた賃金日額にかけると、基本手当日額を算出できます。
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5年8月1日から~
給付率は離職時の年齢や賃金日額によって、45〜80%で定められています。
一般に賃金日額が低いほど給付率は高くなりますが、計算方法は複雑であるため、正確な金額はハローワークにお問い合わせください。
基本手当日額は雇用保険受給資格者証にも記載されているので、受け取ったら確認しましょう。
また、基本手当日額にも、年齢に応じて上限額と下限額が決まっています。
離職時の年齢 | 基本手当日額の上限額 | 基本手当賃金日額の下限額 |
29歳以下 | 6,945円 | 2,196円 |
30~44歳 | 7,715円 | |
45~59歳 | 8,490円 | |
60~64歳 | 7,294円 |
出典:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5年8月1日から~」
退職時の年齢:25歳
賃金日額:13,000円
基本手当日額:13,000円×50%=6,500円
基本手当日額に所定給付日数をかけて総支給額を出す
上記で求めた基本手当日額に、所定給付日数をかけると失業保険をフルに受け取った場合の総支給額を出せます。
給付日数は退職理由によって異なるため、以下のとおり分けて解説します。
- 自己都合退職
- 会社都合退職
自己都合退職
自己都合退職の所定給付日数は、離職時の年齢に関わらず、被保険者期間に応じて90~150日と定められています。
被保険者であった期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
全年齢 | ー(※) | 90日 | 120日 | 150日 |
出典:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
※特定理由離職者の一部(正当な理由のある自己都合退職者)については、被保険者期間が6ヵ月以上あれば所定給付日数は90日です。
仮に、離職時の年齢が25歳で被保険者期間が3年、基本手当日額が5,000円であった場合には、以下の金額を受給できます。
退職時の年齢:25歳
被保険者期間:3年
基本手当日額:5,000円
総支給額:5,000円×90日=45万円
失業保険の自己都合退職について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご参照ください。
会社都合退職
会社都合退職の所定給付日数は、自己都合退職よりも長めに設定されており、90〜330日です。
離職時の年齢や被保険者期間によって、細かく分かれているのが特徴です。
被保険者であった期間 | |||||
1年未満 | 1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
出典:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」
退職時の年齢:25歳
被保険者期間:3年
基本手当日額:5,000円
総支給額:5,000円×90日=45万円
上記の例では被保険者期間が3年であるため、自己都合退職と同じ90日分が給付されます。
被保険者期間が5年以上あれば、同じ25歳での退職でも所定給付日数が120日となり、5,000×120日=60万円と総支給額が増えます。
失業保険の計算シミュレーション
ここからは、離職前の給与額別に、失業保険の計算シミュレーションを紹介します。
あくまでも目安金額であり、また対象を60歳未満に設定して算出した額であるため、ご注意ください。
- 月給20万円
- 月給25万円
- 月給30万円
詳しい給付額を知りたい場合は、ハローワークに相談するのが確実です。
失業保険の金額を詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
月給20万円
離職前月給20万円の場合、受け取れる失業保険基本手当日額の計算方法は、以下のとおりです。
給付率:50~80%
基本手当日額:6,666円×50~80%=3,333~5,332円
いずれの年代でも賃金日額・基本手当日額は上限額に達していないため、そのままの金額が適用されます。
支給額が最低となる「給付率50%、30歳未満、被保険者期間1年以上5年未満、自己都合退職」の条件で試算すると、所定給付日数は90日であり、総支給額は29万9,970円です。
よって、月給20万円の場合は、少なくとも30万円程度は支給されると考えて良いでしょう。
月給25万円
続いて、月給25万円の場合のシミュレーション結果は次のとおりです。
給付率:50~80%
基本手当日額:8,333円×50~80%=4,166~6,666円
月給25万円でも、賃金日額・基本手当日額ともに上限額以下に収まります。
支給額が少ない「給付率50%、30歳未満、被保険者期間が1年以上5年未満、自己都合退職」の条件で試算すると、所定給付日数は90日であり、総支給額は37万4,940円です。
よって、月給25万円の方は、総額で37万円以上は支給されます。
月給30万円
最後に、月給30万円のシミュレーション結果を見ていきましょう。
給付率:50~80%
基本手当日額:10,000円×50~80%=5,000~8,000円
年齢によっては基本手当日額が上限額を超えるため、計算する際は注意してください。
基本手当日額が5,000円で給付日数が最も少ない90日の場合では、総支給額は45万円です。
よって、月給30万円の場合、失業保険の総額は45万円以上となることが予測できます。
65歳以上の失業保険の計算方法は?
65歳以上で退職した場合は、失業保険(基本手当)の代わりに高年齢求職者給付金を一時金で受け取れます。
高年齢求職者給付金の受給条件は、以下のとおりです。
- 離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上ある
- 失業の状態にある
前提として、働く意思がなければ受給できません。
また、支給日数が少なく設定されているため、受け取れる金額は少なめです。
※高年齢求職者給付金の額は、基本手当の下記日数分です。
被保険者であった期間 | 1年未満 | 1年以上 |
高年齢求職者給付金の額 | 30日分 | 50日分 |
出典:厚生労働省「「離職されたみなさまへ」<高年齢求職者給付金のご案内>」
計算方法は、年齢に関係なく同じ手順です。
- 離職前6ヵ月分の給与÷180日=賃金日額
- 賃金日額×給付率=基本手当日額
- 基本手当日額×所定給付日数=総支給額
退職時の年齢:65歳
被保険者期間:1年以上
額面の給与:月額15万円
賃金日額:15万円×6ヵ月÷180日=5,000円
給付率:80%
基本手当日額:5,000円×80%=4,000円
4,000円×50日=20万円
受給できる金額は少なめですが一括で受給でき、年金と併給が可能です。
詳しくは、厚生労働省のリーフレットをご確認ください。
失業保険を正しく計算して目安金額を把握しよう
失業保険の支給額は、退職時の年齢や被保険者期間、退職理由によって変わります。
離職前の給与額から算出した基本手当日額に所定給付日数をかけると、失業保険をフルに受け取った場合の総支給額を算出可能です。
所定給付日数は、被保険者期間や退職理由などによって変わります。
失業保険の計算方法を確認して、受給できる目安金額を把握しておきましょう。