社会保険という言葉にはさまざまな定義がありますが、企業に属して働き、雇用形態や勤務状況に応じて加入する保険の総称として使われています。
雇用保険・厚生年金・医療保険・介護保険・労災保険を指し、企業に属して働いている期間は、それぞれの会社を通じて加入できます。
しかし、企業を退職した場合はこれらの社会保険を抜けることとなり、必要な保険は個別に手続きをしなければなりません。
手続きを誰がするのか、いつ行うかは個人や状況で異なるため、注意が必要です。
各種保険の手続きには期限があるので、自分の状況に合わせて、タイミング良く行いましょう。
今回は、退職にともなう社会保険の手続きを、詳しく解説します。
目次
退職時、社会保険について本人が必要な手続き
社会保険は、会社に属している人が加入できる保険なので、退職したら個人で手続きをしなければなりません。
しかし、退職後の状況は人によって異なり、いつ・どのような手続きを行うべきかを知っておくことが大切です。
退職にともなう社会保険の手続きを、以下で状況別にご紹介しましょう。
退職日の翌日に新しい会社へ転職する場合
退職日の翌日から新しい会社へ転職する人は、個人で手続きする必要はありません。
前職から転職先へ日を置かずに移行するため、新しい会社が社会保険への移行手続きを行ってくれます。
一点だけ注意しなければならないのが、健康保険証の返却です。
勤めていた企業が手続きした保険証は、退職日には職場へ返却しなければなりません。
滞りなく手続きしてもらえるよう、扶養家族分も含めた保険証の返却を忘れないようにしてください。
再就職をめざすもブランクが空いてしまう場合
転職先が決まるよりも早く退職してしまい、次の社会保険加入までブランクがあるときは、国民年金・国民健康保険への移行手続きが必要です。
どちらの手続きも、住んでいる地域の市区町村役場の窓口で行いますが、切り替え期間に注意しましょう。
国民年金・国民健康保険への移行手続きは、いずれも前職の退職日から14日以内に本人が行わなければなりません。
また、手続きには「健康保険資格喪失証明書」が必要となるため、退職時に忘れずに職場から受け取ってください。
健康保険について
健康保険の切り替え手続きには3つの選択肢があり、いずれの選択肢を取るとしても、退職後には速やかな手続きが必要です。
- 国民健康保険へ加入する
- 前職で入っていた健康保険を任意で継続する
- 家族の扶養に入る
国民健康保険は、個人で加入する保険です。
退職日の翌日から14日以内に役所の窓口へ行き、速やかに手続きしましょう。
前職で入っていた健康保険を、任意で続ける方法もあります。
任意継続を選択する人は、退職日の翌日から20日以内に加入していた健康保険組合へ継続申請が必要です。
3つ目の選択肢は、家族の扶養に入る方法です。
例えば、共働きの夫婦で妻が退職し、次の仕事先がまだ決まっていないとします。
このとき、夫が社会保険に加入しており、妻を扶養家族として申請すれば、夫の健康保険へ加入することもできます。
退職後の社会保険の継続について、もっと詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
「退職 社会保険 継続」の記事へ内部リンク
年金について
厚生年金からの移行手続きには、次の2つの選択肢があります。
- 自分で国民年金に入る
- 家族の扶養に入る
厚生年金から国民年金の第1号被保険者へ移行する場合は、居住区域の役場窓口で手続きをしましょう。
ご家族の扶養に入る場合、次の条件を満たさなければなりません。
- 会社員・公務員として働いている配偶者に扶養されている
- 年収が130万円未満
- 国内に住んでいる
国民年金には、第1号・第2号・第3号の種別があり、会社員・公務員は第2号被保険者に該当します。
第2号被保険者の配偶者で、年収130万円以下、同居もしくは別居でも国内居住なら、ご家族の扶養に入れるでしょう。
事前に条件をよく確認してから検討してください。
退職時の各種社会保険の手続き方法
退職するにあたり、前職で入っていた社会保険から、速やかに移行手続きを行わなければなりません。
しかし、手続きをする場所や行わなければならない時期がわからないと、手続きが滞る可能性があります。
退職時の各種社会保険の手続き方法を、以下で詳しく解説します。
健康保険の手続き
社会保険の健康保険証は、退職日の翌日から失効します。
健康保険証がないと、実費で医療費を払わなければなりません。
また、社会保険からの切り替えを速やかに行わないと、資格失効日から加入していなかった期間の保険料を、最長2年分請求される可能性もあります。
健康保険の手続きには、個人で加入するか扶養に入るかの2つの選択肢があるので、どちらにするか退職前に決めておき、期限内に手続きを行いましょう。
国民健康保険への加入手続きと、社会保険の健康保険で扶養に入る手続きでは、提出する書類や手続き先が異なります。
それぞれの加入手続きの方法を、以下で詳しく解説しましょう。
国民健康保険への加入手続き
国民健康保険への加入手続きは、居住地の市区町村役場で行います。
手続きの期限は社会保険の資格を喪失した日、つまり退職日の翌日から14日以内です。
速やかに手続きを行わないと保険が適用されず、万が一病院にかかった場合、実費を支払わなければなりません。
手続きに必要な書類は、前の勤務先から受け取る「健康保険資格喪失証明書」と「マイナンバーカード」です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバーが記載されている住民票や、その他の書類でも問題ありません。
また、手続きに行くときは、運転免許証やパスポートなど、顔写真付きの身分証明書を持参してください。
顔写真付きの身分証明書がない場合は、住民票や介護保険証など、2点以上を用意しましょう。
扶養に入る手続き
ご家族の扶養に入る手続きは、被保険者が勤務する会社に申請し、会社が扶養手続きを行います。
例えば、妻が夫の扶養に入るなら、夫が勤め先に申請して手続きをしてもらいましょう。
資格喪失日、つまり退職日の翌日から、5日以内が申請期間です。
ただし、扶養に入るためには、条件を満たしていなければなりません。
被保険者と同居している場合、年収が130万円以下で被保険者の2分の1未満、扶養対象者が60歳以上、もしくは障がい者の場合は、年収180万円未満の人が該当します。
必要な書類は、以下のとおりです。
- 被扶養者(異動)届
- 被扶養者との続柄がわかる書類(住民票など)
- 収入が確認できる書類
- 仕送りが確認できる書類
- 内縁関係が証明できる書類
国民年金への加入手続き
ご家族の扶養に入らない人は、国民年金への加入手続きも必要です。
国民年金の手続きは、居住区域内の市区町村役場の窓口で行いましょう。
手続きの期限は、退職日の翌日から14日以内です。
納付が滞ると、あとからまとめて納付が求められたり、年金の支給額が減額されたりします。
国民年金の納付は義務なので、できるだけ期間内に手続きを済ませましょう。
手続きに必要な書類は、以下のとおりです。
- 基礎年金番号がわかる書類(年金手帳・基礎年金番号通知書・マイナンバーカード・マイナンバーが確認できる書類のいずれか)
- 離職票もしくは退職日がわかる書類
- 扶養者がいる人は、扶養者の年金手帳・基礎年金番号通知書・マイナンバーカード・マイナンバーが確認できる書類のいずれか
- 顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)もしくは住民票や介護保険証など、顔写真がない身分証明書を2つ
会社を月の途中で退職したら社会保険料の請求はどうなる?
社会保険料の支払いには、日割りがありません。
社会保険料は、資格喪失日の前月分までが給与から差し引かれます。
したがって、退職日が月末の場合は社会保険料の支払いに影響が出るため注意しましょう。
よく「キリが良いから」と月末まで働くケースが見られますが、月の最終日に退職した場合、社会保険の資格喪失日は翌月の1日です。
社会保険料は、資格喪失日がある月の前月まで支払いが必要となるため、月末に退職するとその月の社会保険料も支払わなければなりません。
例えば、6月半ばの退職と6月末日の退職の人がいた場合、月の半ばの退職なら資格喪失日も6月中なので、控除は5月分までです。
しかし、6月末日に退職する人は資格喪失日が7月1日なので、6月分まで社会保険料が給料から天引きされます。
退職にあたり、社会保険料の支払いが気になる人は、仕組みを良く理解して退職日を決めましょう。
退職時に必要な社会保険の手続きは忘れずに
退職時には、厚生年金や健康保険などの社会保険を、速やかに移行手続きしなければなりません。
移行方法には、現在入っている保険を継続する・国民年金や国民健康保険に個人で入り直す・扶養に入る、の3つの方法がありますが、どの方法を取るかで手続き先や申請期限が変わるので注意しましょう。
わからないときは、申請先に直接手続きの内容や、必要書類を尋ねるのも良い方法です。
少しでも不安を感じたら、申請先へ質問しましょう。
各手続きの期限と申請先は下記のとおりです。
申請先 | 期限 | |
---|---|---|
国民健康保険への加入申請 | 居住区域の市区町村役場 | 退職日の翌日から14日以内 |
国民年金の加入申請 | 居住区域の市区町村役場 | 退職日の翌日から14日以内 |
扶養届の申請 | ・国民健康保険への扶養届けは居住区域の年金事務所または事務センター ・社会保険への扶養届は被保険者の勤務先を経由して日本年金機構 |
退職日の翌日から5日以内 |