退職後は、年金受給に関する適切な手続きが必要です。
場合によっては手続きに期限が設けられていますが、種類や条件が複雑でよく理解できていないという方も多いでしょう。
本記事では、退職後に必要な年金の手続きや注意点を詳しく解説します。
1日以上の離職期間がある場合やご家族の扶養に入る場合などケース別に紹介しているため、自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
参考:転職・退職された方|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
目次
退職後の年金手続きは条件によって異なる
退職後の年金に関する手続きは、状況によって異なります。
大きく以下3つのケースが想定できるでしょう。
- 1日以上の離職期間がある場合
- 配偶者の扶養に入る場合
- 退職した翌日に入社する場合
それぞれどのような手続きが必要になるのか解説します。
1日以上の離職期間がある場合の手続き
退職後に離職期間が1日以上ある場合は、国民年金(第1号)への加入手続きが必要です。
手続きは、退職の翌日から14日以内に被保険者本人が行います。
手続きに必要な書類は下記のとおりです。
- 基礎年金番号がわかる書類(基礎年金番号通知書、年金手帳など)
- 退職日を確認できる書類
手続きは住所地の役所の年金窓口、または年金事務所で行います。
マイナポータルから電子申請することも可能です。
月の途中に退職して翌月1日に入社する場合の手続き
月の途中で退職し、翌月1日に入社する場合は、退職月の国民年金を自身で納めなければなりません。
例えば、3月15日に退職してその翌日3月16日以降に就職しない場合は、3月16日に国民年金第1号の資格取得となります。
それと同時に、3月16日で厚生年金の資格は喪失している状態です。
この場合、翌月4月1日からは転職先に就労しているため、4月分の厚生年金は天引きされます。
多少面倒かもしれませんが、3月分については国民年金への切り替え手続きをし、自身で忘れず納めるようにしましょう。
月末に退職して翌月の途中に入社する場合の手続き
月末に退職して翌月の途中で入社する場合、退職末日まで厚生年金が給与から天引きされます。
退職月の国民年金保険料を納める必要はありません。
また、翌月初日から途中入社までは厚生年金の資格を喪失することになりますが、翌月分は新たな就職先で厚生年金に加入し、保険料が給料から天引きされることになります。
配偶者の扶養に入る場合の手続き
退職後に配偶者の扶養に入る場合、国民年金保険料を支払う必要はありません。
配偶者の被扶養者は第3号被保険者として扱われますが、この資格取得手続きは配偶者の勤務先を通して行います。
第3号被保険者の資格取得要件は、原則以下のとおりです。
- 日本国内に居住している
- 20歳以上60歳未満
- 年収130万円未満
要件を満たしている場合は「被扶養者(異動)届」の作成後、配偶者の勤務先から日本年金機構に手続きをしてもらいましょう。
ただし、厚生年金保険の加入要件に該当していると扶養に入れないケースがあるため注意してください。
退職した翌日に入社する場合の手続き
退職した翌日に入社する場合、国民年金への切り替え手続きは不要です。
新たに厚生年金に加入する必要はありますが、原則として転職後の会社が手続きをしてくれます。
手続きの際に必要となるのは基礎年金番号通知書(旧年金手帳)、またはマイナンバーカードです。
保険料は給与によって異なります。
退職する際の年金切り替えについて、より詳しい情報はこちらをご覧ください。
iDeCoに加入している場合の退職後の手続き
iDeCoに加入している場合の退職後の年金手続きは、以下6パターンに分けられます。
- 就職(転職)先で企業型確定拠出年金に加入する場合
- 就職(転職)先で企業型確定拠出年金に加入しない場合
- 就職(転職)先に確定給付企業年金がある場合
- 国民年金第1号被保険者(自営業者など)になる場合
- 国民年金第3号被保険者(専業主婦・主夫など)になる場合
- 国民年金任意加入被保険者になる場合
それぞれどのような手続きが必要になるのか見てみましょう。
就職(転職)先で企業型確定拠出年金に加入する場合の手続き
iDeCoに加入している方が就職(転職)先にて企業型確定拠出年金へ加入する場合、就職(転職)先に移換できます。
移換後は個人型確定拠出年金の加入者資格を喪失するため、「加入者資格喪失届」を作成したうえで運営管理機関に提出しましょう。
ただし、就職(転職)先での移管後も、iDeCoの加入者として掛金を拠出することは可能です。
その場合は国民年金の被保険者種別、または登録事業所の変更手続きが必要となります。
「加入者被保険者種別変更届」に「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を添付のうえ、運営管理機関に提出してください。
就職(転職)先で企業型確定拠出年金に加入しない場合の手続き
就職(転職)先にて企業型確定拠出年金へ加入しない場合は、iDeCoに引き続き加入できます。
国民年金の被保険者種別、または登録事業所の変更手続きを行いましょう。
第1号加入者、第3号加入者または第4号加入者の方が厚生年金保険を適用する事業所に就職した場合、「加入者被保険者種別変更届(第2号被保険者用)」に「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を添付して運営管理機関に提出します。
第2号加入者が厚生年金保険の適用事業所に転職した場合は「加入者登録事業所変更届」に「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を添付のうえで、運営管理機関に提出しましょう。
就職(転職)先に確定給付企業年金がある場合の手続き
就職(転職)先に確定給付企業年金がある場合、移換できる可能性があります。
移換条件は確定給付企業年金の規約に記載されているため、希望する方は事前に確認しておきましょう。
実際に移換できるかどうかについては、就職(転職)先の担当部署に問い合わせてみるのがベターです。
国民年金第1号被保険者(自営業者など)になる場合の手続き
国民年金第1号被保険者(自営業者など)になる場合は、iDeCoに引き続き加入できます。
引き続き加入したい方は「加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)」を運営管理機関に提出しましょう。
国民年金第3号被保険者(専業主婦・主夫など)になる場合の手続き
国民年金第3号被保険者(専業主婦・主夫など)になる場合も、iDeCoに引き続き加入可能です。
加入し続けたい方は「加入者被保険者種別変更届(第3号被保険者用)」を運営管理機関に提出してください。
ただし共済組合員は取り扱いが異なることもあるので、事前に確認しておくと安心です。
国民年金任意加入被保険者になる場合の手続き
国民年金任意加入被保険者になる場合も、iDeCoに引き続き加入できます。
これまでどおり加入したい方は「加入者被保険者種別変更届(任意加入被保険者用)」を運営管理機関に提出しましょう。
企業型確定拠出年金に加入していた場合の退職後の手続き
ここからは「退職前に企業型確定拠出年金へ加入していて、就職(転職)先では加入しない場合」の手続きを詳しく紹介していきます。
この場合、以下2パターンが考えられるでしょう。
- iDeCoに移換する
- 手続きをしなかった場合は自動移換
それぞれ詳細を解説します。
iDeCoに移換する
企業型確定拠出年金からiDeCoへの移換が可能です。
手続きが必要となるケースには、次のようなものが挙げられます。
- 企業型確定拠出年金に加入していていて企業型確定拠出年金のない企業に転職した
- 役員就任などで企業型確定拠出年金の対象者から外れた
- 退職して国民年金の第1号被保険者(自営業者など)、第3号被保険者(専業主婦・主夫など)または任意加入被保険者になった
手続きを行える場所は、iDeCo公式サイトの運営管理機関一覧から確認できます。
取り扱い機関から一つを選び、そちらへ「個人別管理資産移換依頼書」を提出しましょう。
手続きをしなかった場合は自動移換される
企業型確定拠出年金に加入していて6ヵ月以内に移換・請求手続きをしなかった場合は、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)へ自動で移換されます。
自動移換には以下のようなデメリットがあるため、注意が必要です。
- 資産が運用されない
- 管理手数料が発生する
- 受給可能年齢が遅くなることがある
これらのデメリットを避けるためにも、各種手続きを忘れないようにしましょう。
厚生年金基金、確定給付企業年金に加入していた場合の退職後の手続き
厚生年金基金、確定給付企業年金に加入していた方が退職した場合、以下の要件を満たせばiDeCoへの移換手続きができます。
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者である
- 厚生年金基金や確定給付企業年金の終了日から1年以内に移換を申し出る
運営管理機関のいずれかへ、「個人型年金加入申出書」に必要書類を添付のうえ提出しましょう。
併せて「厚生年金基金・確定給付企業年金移換申出書」に厚生年金基金や各年金の清算人から証明を受けたうえで、運営管理機関に提出してください。
一部の機関はオンラインでの手続きも可能です。
退職後の年金手続きを事前に把握しておこう
退職後の年金手続きは、状況によって必要な手続きや用意する書類は異なるため、自身のケースを十分に確認のうえ計画的に進めてみてください。
国民年金への切り替えだけではなく、iDeCoに関する手続きも忘れないようにします。
事前に手続きの詳細を確認しておき、退職後に慌てることのないようにしましょう。