基本的なビジネスマナーは、就職する前に身につけておくと良いでしょう。
なかでも言葉遣いは、相手に与える印象を左右する重要なポイントです。
今回は、ビジネスマナーにおける言葉遣いの基本、敬語の一覧、間違いやすい言葉などについて例文を交えて紹介します。
目次
ビジネスマナーにおける言葉遣いの基本
ここでは、ビジネスマナーにおける言葉遣いの基本と、注意すべきポイントを5つ紹介します。
クッション言葉で相手に配慮する
仕事は一人で完結するものばかりとは限らず、相手に依頼する場合もあります。
依頼やお断りをする場面では、クッション言葉を利用することで、会話を円滑に進められます。
クッション言葉+疑問形が、感じの良い話し方になるポイントです。
【例】
- 恐れ入りますが、少々お待ちいただけますでしょうか
- お手数おかけしますが、こちらにご記入いただけますでしょうか
- 勝手申しますが、至急確認していただけますでしょうか
- 大変申し訳ございませんが、欠席させていただきます
- 恐縮ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。
社外の人に対しては常に敬語
取引先やお客様など社外の人に対しては、常に敬語を使うことが基本です。
年齢や立場、取引状況などは関係ありません。
【例文】
自社の課長が取引先の新入社員を出迎えるシーン
- わざわざお越しいただきありがとうございます。
- いらっしゃいませ。ご案内いたします。
二重敬語に注意
二重敬語にならないよう注意しましょう。
二重敬語とは、すでに敬語表現を使っているにもかかわらず、さらに別の敬語表現を重ねる言葉遣いです。
丁寧に話したいという気持ちから使ってしまいがちですが、相手に違和感や不快感を与えてしまう恐れがあります。
【例文】
- ×:ご覧になられる
「ご覧になる」(「見る」の尊敬語) +「~れる」(「~する」の尊敬語)
○:ご覧になる - ×:拝見いたしました
「拝見」(「見る」の謙譲語) +「~いたす」(「~する」の謙譲語)
○:拝見しました - ×:おっしゃられる
「おっしゃる」(「言う」の尊敬語) +「~れる」(「~する」の尊敬語)
○:おっしゃる - ×:お伺いいたします
「お」+「伺う」(「行く」の謙譲語) +「~いたす」(「~する」の謙譲語)
○:伺います
社外の人に対して、自社の上司に敬語を使わない
社外の人との会話で、自社の上司について話す際は、上司に対して敬語を使ってはいけません。
また、ビジネスの場で、自分の家族 について話すときも、家族に 対して敬語を使うことは避けましょう。
身内ではない人に対して、身内のことを話す際は、身内に対して敬語にならないことが基本です。
【例文】
- ×:「○○部長が説明なさいます」
○:「弊社部長の○○が説明します」 - ×:「週末母が上京なさいます」
○:「週末母が上京します」
普段の口癖に気を付ける
ビジネスシーンでは、日常的に使っている口癖が自然に出てしまわないよう注意しましょう。
「とか」「~的には」「みたいな」などは稚拙で軽薄な印象を与えます。
特に、近年は「~になります」や「~のほう」などのぼかし言葉が目立ち、表現を曖昧にする傾向にありますが、こうした言葉はビジネスシーンに適しません。
相手に不快な思いをさせる可能性もあるため、要注意です。
【例文】
- ×:「こちらのほうが履歴書になります」
○:「こちらが履歴書でございます」 - ×:「ご依頼の資料はこちらでよろしかったでしょうか」
○:「ご依頼の資料はこちらでよろしいでしょうか」
ビジネスマナーの言葉遣い・敬語の基本
ビジネスマナーを守った言葉遣いをするためには、敬語の基本をおさえておきましょう。
敬語の種類や、よく使用する敬語の一覧を紹介します。
敬語はビジネスにおける言葉遣いの基本
正しい敬語を使った言葉遣いは、ビジネスシーンでお互いを理解し、関係を構築するために重要な役割を担います。
敬語とそうでない言い方では、同じ意味でも印象が異なります。
日常会話と同じ話し方をしている場合、非常識などと思われかねません。
しかし、ビジネスマナーを守った言葉遣いをしていると、相手から仕事相手として信頼されるきっかけにもなります。
敬語の種類
文化審議会が平成19年に示した敬語の指針によると、敬語には尊敬語・謙譲語・謙譲語(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類があります。
今回はその中でも日常的に使用頻度の高い尊敬語・謙譲語・丁寧語について概要を確認しましょう。
- 尊敬語
相手を敬う気持ちを表す敬語で、自分より立場が上の人を高める言い方です。
「社長がおっしゃったように」など、先生・上司など自分より目上の人が主語となります。
なお、家族や親戚は含まれません。 - 謙譲語
尊敬語が相手を高める言い方であるのに対して、謙譲語は自分がへりくだることによって相手を立てる敬語です。
「今私が申し上げたとおり」など、自分や家族、親戚などが主語になる場合に使用します。 - 丁寧語
言葉の語尾に「です」「ます」をつけて丁寧にした表現であり、誰に対しても使える敬語です。
ビジネスシーンで使う尊敬語・謙譲語・丁寧語の一覧
ビジネスシーンでよく使用する言葉を紹介します。
以下の言葉を覚えておき、ビジネスの場で応用できるようにしておきましょう。
尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 | |
言う | おっしゃる | 申し上げる | 言います |
見る | ご覧になる | 拝見する | 見ます |
聞く | お聞きになる | 拝聴する・うかがう | 聞きます |
読む | お読みになる | 拝読する | 読みます |
行く | いらっしゃる | 伺う、参る | 行きます |
会う | お会いになる・会われる | お目にかかる | 会います |
来る | いらっしゃる、お越しになる | 伺う、参る | 来ます |
する | なさる | いたす | します |
知る | ご存じ | 存じ上げる | 知っています |
いる | いらっしゃる | おる | います |
ビジネスマナーにおける間違いやすい言葉遣い
正しいと思って使っている言葉のなかには、ビジネスマナーとして実は間違っている言葉遣いも存在します。
間違いやすい言葉遣いと、正しい言い回しを紹介します。
- ×:僕、あたし、自分
○:私、わたくし - ×:あなたの会社
○:御社(口頭の場合)、貴社(メールや文書の場合) - ×:わが社
○:弊社、当社 - ×:すみません、ごめんなさい
○:申し訳ございません - ×:わかりました、了解です
○:かしこまりました、承知いたしました、承りました
「承りました」は取引先など社外に対して使うことが一般的です。 - ×:ご苦労さまです
○:お疲れさまです
「ご苦労さま」は目上の人から目下の人にかける言葉です。 - ×:なるほどです
○:おっしゃるとおりです
「なるほど」は感嘆詞のため、「です」をつけても間違いにあたります。 - ×:とんでもございません
○:恐縮に存じます、とんでもないことでございます
「とんでもございません」は慣用句として一般的になっていますが誤用です。 - ×:なるべく
○:できるだけ、できる限り、可能な限り、早急に
【例文あり】ビジネスシーン別の言葉遣い
ビジネスシーンでよく使う言葉遣いを社内・社外に分けて紹介します。
すぐに実践で活かせるよう、確認しておきましょう。
社内での敬語
- 上司に呼ばれたとき
×:今行きます
○:ただいま参ります、すぐ伺いますので少々お待ちいただけますか
自分自身の行動に対しては謙譲語を用いるため、「参る」を使います。 - 上司に話しかけるとき
×:少し良いですか
○:お時間いただけますか
謙譲語を使うことでビジネスシーンに適した言葉遣いになります。
さらに、「少し」ではどのくらい時間がかかるか分からないため、「○○について確認したいのですが」などを付け加えるとより丁寧な印象です。
社外での敬語
- 訪問先で伝言を頼まれたとき
×:○○課長にお伝えします
○:課長の○○に申し伝えます
役職は敬称のため、社外の人に話す際は上司であってもつけてはいけません。
また、「お伝えする」では社内の人間に敬語を使っていることになるため、謙譲語を使います。 - 訪問先の受付けにて
×:○○社長様と10時にお約束をしています
○:○○社長と10時にお約束をしています
名前の下に役職をつける場合は敬称になるため、「様」をつけることで二重敬語になってしまいます。 - 電話にて、取次ぎを依頼された相手が不在のとき
×:○○は本日お休みをいただいております
○:○○は本日休みをとっております
休みをとらせているのは自社であるため、「いただく」は自社に敬意を示す表現になり不適切です。
また、「お」を身内である社内の人に対して使うことも誤りとなります。
ビジネスマナーを守った言葉遣いを身につけよう
正しい言葉遣いは、ビジネスの場において信頼関係を築くポイントになります。
業種や職種関係なく、言葉遣いの基本をおさえておくことが大切です。
よく使う言葉や言い回しを覚えておき、応用することで、ビジネスマナーを守った言葉遣いができます。
二重敬語やクッション言葉など注意点をおさえ、実際のビジネスシーンで使っていきましょう。