「有給休暇が消滅する期限を知りたい」「有給休暇が無駄にならないか不安」、このような疑問や不安のある方はいませんか?
有給休暇が消滅するタイミングは、労働基準法で定められています。
そのため、期限内に使用しなければ、取得した有給休暇が無駄になってしまうのです。
本記事では有給休暇の消滅期限や、未消化分の取り扱いについて解説します。
上手に消化する工夫も紹介するので、計画的に有給休暇を使いましょう。
目次
有給休暇は2年で消滅する
有給休暇は会社に雇われた日から6ヵ月継続して勤務し、所定の勤務日の8割以上出勤した労働者に対して与えられます。
勤続年数に応じて取得日数が定められており、1年ごとに毎年与えられる休暇です。
ただし、与えられた有給休暇には有効期限があります。
労働基準法115条で、有給休暇は2年と期限が定められているのです。
起算日は付与日として、そこから2年の間に使用しないと消滅してしまいます。
例えば、入社日から3年6ヵ月後に有給休暇が13日付与されたとします。
2年間はこのとき取得した有給をいつでも使用できますが、入社から5年6ヵ月の時点で10日しか使用できなかった場合、残りの3日は消滅してしまうのです。
有給休暇消滅の前に知っておきたい繰越期限
有給休暇は1年の繰越期限があります。
また、1日単位の有給休暇だけでなく、時間単位年休の繰り越しも可能です。
それぞれの仕組みを詳しく解説します。
有給休暇は1年の繰り越しが可能
有給休暇は1年間繰り越しができます。
労働基準法における有給休暇の最大付与日数は20日です。
例えば、1年前に有給休暇20日分を与えられ、まるまる1年繰り越すと、当年に与えられる有給休暇20日と合わせて40日の有給休暇を保有できます。
また、有給休暇を取得した際に繰り越し分を保有している場合は、繰り越し分から優先的に消化される仕組みです。
なお、10日以上の有給休暇が付与されている場合は、年間に5日以上取得することが義務付けられています。
時間単位年休の繰り越しも可能
時間単位年休も繰り越しができます。
時間単位年休は労使協定を提携した場合に、年5日を上限として、時間単位で有給休暇が取得できる制度です。
1日の勤務時間が8時間の場合は、「8時間×5日」で40時間の時間単位年休が使えます。
時間単位年休を繰り越した場合は、繰り越し分含めて5日以内になるよう保有可能です。
例えば、1年前に取得した時間単位年休を年間で20時間使用したとします。
次年度には残りの20時間が繰り越され、時間単位年休を取得したときは繰り越し分が優先的に消化されます。
有給休暇消滅の具体例
有給休暇が消滅するケースの具体例を紹介します。
想定されるケース | 2022年の繰り越し分が15日ある状態で、2023年10月1日に15日の有給休暇を取得して、2024年10月1日までに10日の有給休暇を消化した場合。 |
有給休暇消滅の具体例 | 2023年10月1日に15日の有給休暇を付与 →保有している有給休暇:15日+15日=30日 2024年10月1日に16日の有給休暇を付与 →保有している有給休暇:15日+16日=31日 |
上記のケースでは、2024年10月1日の時点で、2022年から保有している有給休暇は消滅してしまいます。
細かく見てみると、2023年10月1日から1年間で取得した10日の有給休暇は、2022年分から繰り越されていた15日分から優先的に消化されるので、2022年の有給休暇は5日未消化です。
そのため、2024年10月1日で2022年10月1日に取得した有給休暇のうち、5日が消滅します。
有給休暇消滅に関して知っておきたい決まり
会社が有給休暇の取り扱いを間違っている場合、せっかく取得した有給休暇が無駄になってしまう可能性があります。
そこで、有給休暇消滅に関する決まりを紹介します。
会社は有給休暇の有効期限を短縮できない
有給休暇の有効期限である、2年という期間を会社が勝手に短縮できません。
これは、労働基準法で定められているため、上記のように労働者に不利になる決まりを勝手に作ると違法になるためです。
例えば、会社が有給休暇を早めに取得させたり消滅させたりするのに、有効期限を1年にするのは不可能となります。
ただし、有効期限の延長期限に取り決めはありません。
有効期限が2年以上になるのは、労働者にとって利益になる変更なので、認められています。
有給休暇を会社が指定して消化させることはできない
有給休暇を会社が勝手に消化するのは違法です。
前述のように、会社の事業継続に支障が出るなどの特別な理由を除き、有給休暇は労働者が自由に取得できます。
例えば、閑散期で従業員の数を減らすために、勝手に有給休暇を消化させてシフトを組むような行為は認められません。
ただし、会社が労働者の代表と労使協定を締結して、あらかじめ有給休暇の取得日を決める計画年休は認められています。
また、会社独自で法律で定められた日数以上の休暇を与える場合などは、指定して取得させることができます。
さらに、会社は労働者が保有する有給休暇のうち、年5回は時季を指定して取得させなければいけません。
この場合、会社は労働者に取得時季の意見を聴いたうえで、時季を指定して消化させます。
労働者が自ら5日以上の有給休暇を取得する場合は、時季の指定は必要ありません。
どちらにせよ、会社が一方的に有給休暇を消化できない点は知っておきましょう。
有給休暇の買い取りは原則違法
有給休暇の買い取りは原則違法です。
労働者にとって、金銭的にはメリットがあるため、違法にならないのではと思われるかもしれません。
しかし、有給休暇は労働者に心身の疲労を回復して、ゆとりある生活を送ってもらうためのものとして定められています。
そのため、買い取りは有給休暇の趣旨に反するため違法になるのです。
ただし有給休暇の買い取りには以下の例外があります。
- 退職時に余る場合
- 労働基準法で定められた以上の有給を会社が付与している場合
- 消滅の時効を迎える場合
これらに当てはまる場合は、有給休暇の買い取りは認められます。
買い取りについては会社によって異なり、金額に決まりはありません。
また、買い取りした場合のトラブルを避けるために、同意書や契約書などで双方が同意している点を書面に残しておく必要があります。
有給休暇の消滅を避けるための工夫を紹介
有給休暇を確実に消化するためには、以下の3つの工夫が大切です。
- 取得時期を計画しておく
- 閑散期に取得する
- 周りのことを気にしすぎない
それぞれ詳しく解説するので、有給休暇の消滅を避けるために参考にしましょう。
取得時期を計画しておく
有給休暇の取得時期をあらかじめ計画しておきましょう。
何気なく有給休暇を取得していると、「気がついたらあと10日の有給休暇が消滅するまで1ヵ月しかない」というケースになりがちです。
可能であれば年初に1年間のイベントを計画するついでに、1年分の取得時期を決めてしまいましょう。
そして、計画をしているところはできる限り動かさないようにしましょう。
なぜなら、簡単に動かせる気持ちでいると、結局無計画に取得するのと同じになり、消化できない事態に陥ってしまうからです。
もちろん、絶対に動かしてはいけないわけではありません。
もし動かす必要が出てきた場合は、予定がわかった時点ですぐに動かすようにして、あくまで計画的に取得する意識を保ちましょう。
閑散期に取得する
有給休暇を計画的に取得をしていっても、どうしても未消化になりそうな場合があります。
そのような場合は、職場の閑散期をうまく活用しましょう。
繁忙期と閑散期がある会社では、繁忙期に取得の計画を立てづらいかもしれません。
そのような職場では、リフレッシュの意味も込めて閑散期をうまく活用し、未消化分の有給休暇を取得しましょう。
有給休暇は労働者から請求された時季に与えなければならず、基本的に自由に取得時季を決められます。
そのほうが、自分自身の業務の不安も少なくなり、気持ちよく有給休暇を取得できるでしょう。
しかし、事業運営の妨げになる場合は、ほかの時季になることもあるので注意が必要です。
周りのことを気にしすぎない
周りに迷惑がかかることを気にしすぎないようにしましょう。
周りの同僚もできれば有給休暇を消化したいと考えています。
有給休暇を取得しやすい雰囲気を作るためにも、積極的に有給を使ったほうが良いです。
もちろん、自分ばかり取得するのではなく、ほかの職員が取得したときは積極的にフォローして、みんなが取りやすい空気にしましょう。
上司の目が気になる方も多いかもしれません。
しかし、上司や会社側もできれば、有給休暇を取得してもらう必要があります。
働きやすい企業、みんなが有給をとりやすい職場は上司にとっても良い職場です。
繁忙期など最低限の範囲で取得が難しい時季を上司に相談しながら、有給休暇を取得しましょう。
上司が忙しくて有給を取得していない場合は、なかなか自分から言いづらいかもしれません。
同僚と協力して上司の業務をフォローし、「お先にどうぞ」の精神で、上司に有給を取得してもらうのも一つの方法です。
有給休暇が消滅するタイミングを把握して計画的に取得しよう
有給休暇は1年は繰り越しが可能ですが、2年たつと消滅してしまいます。
計画的に取得をして、無駄がないようにしましょう。
また、消滅するからといって、会社が勝手に取得させたり、期限の短縮や買い取りをするのは認められていません。
もし、思い当たる場合は、違法なのですぐに会社に相談してみましょう。
有給休暇は労働者に与えられた権利ですので、本記事を参考にして消滅する前に取得するよう心がけましょう。