派遣社員という働き方には、自分の希望を叶える職場が見つけやすい、未経験の業種にもチャレンジできるといったメリットがあります。
ただし、どれだけ理想的な職場に巡り合えても「派遣の3年ルール」が適用される点に注意が必要です。
本記事では、派遣の3年ルールの仕組みやポイントを解説します。
派遣の3年ルールに関する疑問やルールの活用方法も紹介しているため、派遣社員として働いている方・今後働きたい方は参考にしてみてください。
目次
派遣社員の3年ルールとは?
派遣社員は基本的に、同じ事業所で3年以上働くことはできません。
これを派遣の3年ルールと呼び、派遣労働者のすべてがその制限の対象です。
3年ルールは、個人単位と事業所単位のそれぞれに期間の制限が課せられます。
いずれも労働者自身に関係してくるため、念頭に置いておきましょう。
3年を超えて同一派遣先で働くことは不可
個人に適用される派遣の3年ルールとして、特定の派遣社員が3年を超えて同一事業所の同一部署で働くことは禁じられています。
例えば、Aさんが派遣先である企業の総務課で3年就業したら、そのまま派遣先を変えず総務課で働くことはできません。
派遣労働は派遣先1社につき、組織単位(部署など)で最長3年間までの契約と定められています。
同一派遣先での就業期間は1社につき31日以上、最長で3年となります。
事業所側の受け入れ条件にも注意
事業所単位での派遣の3年ルールとは、派遣会社は特定の事業所への派遣を3年単位で切り替える必要があるというルールです。
例えば、ある派遣先でAさんが1年間働いた場合、のちに派遣されるBさんは配属される部署などに関わらず2年間しか働くことができません。
ただし、過半数労働組合などの意見をもとに、さらに3年を限度として派遣できる期間が延長される場合もあります。
個人単位の3年ルールは適用されなくても、事業所単位の制限によって派遣期間が左右される可能性があることを覚えておきましょう。
派遣社員でも3年を超えて働くには?
派遣社員には3年ルールが適用されると上述しましたが、以下の場合は3年を超えて同一事業所で働くことが可能です。
- 部署異動する
- 派遣先で直接雇用契約を結ぶ
それぞれ詳しく解説します。
部署異動する
同一事業所であっても、部署異動することで3年を超えて就業が可能です。
例えば、総務課の事務として3年間働いたあとに、営業課へ移動して営業事務として働く場合は派遣先を変更する必要はありません。
3年を超えて現在の派遣先で働きたいと考えている方は、部署異動を申し出てみるのも良いでしょう。
派遣先で直接雇用契約を結ぶ
派遣先の企業で直接雇用契約を結ぶことも一つの方法です。
3年ルールが適用されるのは派遣労働者のみなので、企業と直接雇用契約を結ぶことができれば、期間制限を解消できます。
正社員や契約社員、パート・アルバイトなどの雇用形態で、派遣先企業と直接契約を結ぶことにより、3年ルールで別の派遣先へ異動する必要がなくなります。
派遣社員3年ルールだと3年経ったらどうなる?
3年ルールが適用されたあとの派遣社員には、次のような働き方が考えられます。
- 新しい派遣先で働く
- クーリング期間後に同じ派遣先で働く
詳しく見てみましょう。
新しい派遣先で働く
3年ルール適用後は、希望する条件で新しい派遣先を見つけ、環境を変えて働くことができます。
派遣の仕事には未経験でも挑戦できるものも少なくありません。
さまざまな職場を経験することで、柔軟性や幅広い知識が身につくでしょう。
クーリング期間後に同じ派遣先で働く
3年ルールで一度契約を解除後、クーリング期間を経て同じ派遣先で働く方法があります。
クーリング期間は3ヵ月と1日以上と決められており、3ヵ月と1日まで待機すれば再度同じ派遣先企業の同部署で働くことも可能です。
ただし、派遣先で継続して働きたくても派遣会社との契約が一度解除になってしまうかもしれませんし、再契約をしてくれない可能性もあります。
通算で5年労働契約の更新があると、有期動労契約から無期転換の申し込みができます。
しかし契約期間に空きがあると、その5年ルールによる無期雇用契約への転換も難しくなってしまうかもしれないといった、派遣社員のキャリアに影響を及ぼす可能性がある点に注意しましょう。
派遣社員3年ルールのメリット・デメリット
派遣社員の3年ルールには、メリットとデメリットがあります。
自身のキャリアプランをふまえて、メリットとデメリットのどちらが大きくなるか慎重に検討しましょう。
メリット
派遣社員の3年ルールのメリットは、派遣先で直接雇用してもらえる可能性があることです。
期限を気にせず同一の派遣先で働けるようになるため、新しい環境が苦手な方や今の職場が気に入っている方には大きな利点といえるでしょう。
デメリット
派遣社員3年ルールのデメリットの一つに、3年以内に契約解除される可能性を高めてしまう点があります。
特に派遣元が無期雇用契約を避けたいと考えている場合、3年目を前に契約更新を行わない場合もあるかもしれません。
また無期労働契約になった場合は、かえって直接雇用されにくくなる点もデメリットです。
無期労働契約はあくまでも派遣社員として期限を定めずに契約することを指し、派遣先企業に直接雇用されるわけではありません。
正社員として雇用されるチャンスを遠ざける可能性のある契約と理解したうえで、自分にとって最適な選択か考えてみてください。
派遣社員の3年ルールに関するよくある悩み
派遣社員の3年ルールについて解説してきましたが、2年目で派遣切りにあってしまった場合はどう対処すれば良いのでしょうか。
ここからは、派遣社員の3年ルールに関する気になる疑問や悩みに回答します。
2年目で派遣切りにあったら?
2年目で派遣切りにあってしまった場合は、離職日から遡ること2年間に12ヵ月月以上雇用保険に加入していれば、雇用保険の基本給付(失業給付)を受けることができます。 例えば、契約期間中に派遣先企業の都合で離職する場合は会社都合となるため、失業保険の受給申請後、早急に給付金を受け取れます。
急な派遣切りで生活に困っている場合は、ハローワークや地方自治体に相談してみましょう。
契約満了後に失業保険はもらえる?
契約満了後であっても失業保険をもらうことは可能です。
例えば会社都合により、派遣社員本人が働く意思があるにも関わらず1ヵ月以上、次の派遣先が決まらない場合は、会社都合の退職となります。
給付制限なく、すぐに失業保険を受け取れるでしょう。
自己都合退職でも失業保険はもらえるものの、受給申請後7日経過した翌日から2ヵ月の給付制限がかかる点に注意が必要です。
抵触日がいつかわからない
労働者派遣法が定める抵触日とは、3年ルールにおける派遣期間制限の次の日のことで、派遣契約した日から3年と1日後を指します。
2020年4月1日に派遣先で就労を開始した場合は、2023年4月1日が抵触日ということです。
上記のケースでは、2023年4月1日以降は同一組織内で働けない決まりとなっているため気をつけましょう。
自分の抵触日がわからない場合は、契約書類の日付などから確認可能です。
60歳以上の派遣社員は3年ルールがないって本当?
60歳以上の場合は例外的に、派遣社員の3年ルールは適用されません。
事業所単位・個人単位のどちらの3年ルールも適用外となるため、60歳以上であれば派遣社員であっても同じ事業所で年数を気にせず継続的に働くことが可能です。
派遣社員の3年ルールは有効活用しよう
派遣社員の3年ルールを上手に活用すれば、さまざまな派遣先を経験しながら柔軟にキャリアを形成していけるでしょう。
また、部署異動などで3年を超えて契約し5年ルールを適用できれば、経済状況が安定しやすくなるとともに派遣切りなどの不安材料もなくなります。
3年ルールを正しく理解して、同じ職場で働くか心機一転違う職場へ移るか、自分の希望に合わせて選んでください。