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派遣社員は確定申告が必要?自分で確定申告するケースとよくある質問を紹介

この記事の監修者
西岡 秀泰
【資格】
社会保険労務士

【プロフィール】
同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして保険販売を行う。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポート。日本年金機構にて年金相談員を兼務。

派遣社員は、基本的に確定申告は不要です。
ただし、個人の状況によっては確定申告が必要なケースもあります。

この記事では、派遣社員が確定申告をする必要がない理由や確定申告が必要なケースを解説したうえで、よくある質問への回答も紹介します。

派遣社員として働いている方や、これから派遣社員で働こうと考えている方は参考にしてください。

派遣社員の確定申告は基本的に不要

派遣社員の確定申告は基本的に不要

冒頭で述べたとおり、派遣社員の確定申告は基本的に必要ありません。
派遣社員は、契約している人材派遣会社で年末調整を受けられるためです。

派遣社員は、人材派遣会社と雇用契約を結び給与を支給されています。所得税法では「給与等の支払をする者は……その支払に係る金額につき源泉徴収をする義務がある」と定められているため、人材派遣会社が源泉徴収と年末調整をしてくれます。

確定申告は、年末調整を受けられない自営業者などがその年の所得に応じた所得税額を計算したうえで納税したり、源泉徴収された税額と実際の税額に差異が発生した場合に、過不足を精算したりするために行います。

しかし、派遣社員の場合、所得税法に基づき、雇用主である人材派遣会社によって所得税が源泉徴収され、過不足があった場合は年末調整によって精算してもらえます。

年末調整を受けられる人は、一般的に確定申告は必要ありません。
しかし、個人の状況によっては確定申告が必要な場合があります。
次項でケース別に紹介していきます。

アルバイトの確定申告について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

派遣社員で確定申告が必要なケース

派遣社員で確定申告が必要なケースとして、以下の4つのパターンを見ていきましょう。

  • 年末調整時期に人材派遣会社との契約を終えている
  • 派遣以外での所得が年間20万円以上ある
  • 医療費控除・住宅ローン控除がある
  • 5団体を超える自治体にふるさと納税をした

年末調整時期に人材派遣会社との契約を終えている

人材派遣会社は、年末調整時期に雇用している社員に対して年末調整を行います。
そのため、年末調整時期よりも前に退職した人は、年末調整を受けられず、確定申告が必要です。

また、年末近くに入社した場合、会社によっては年末調整時期に雇用されていても、年末調整をしてくれない場合があります。会社で年末調整が受けられない場合は、自分で確定申告をする必要があります。

派遣以外での所得が年間20万円以上ある

派遣以外の所得が年間20万円以上ある場合は、確定申告が必要です。
派遣以外の所得の一例を挙げます。

  • 株取引の利益(特定口座で源泉徴収されている場合は原則確定申告不要)
  • FXや暗号資産での利益
  • ブログやYouTubeでの広告収入
  • フリマアプリでの収益
  • 講演料・執筆料 など

上記などで20万円以上の所得があるなら、確定申告が必要です。

医療費控除・住宅ローン控除がある

住宅ローン控除を初めて申請する方や医療費控除を利用する方は、確定申告が必要です。
人材派遣会社で年末調整を行っていたとしても、自分で確定申告をしなければ控除が受けられません。

住宅ローン控除は最初の年だけ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整での所得控除が可能です。
医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円を超える場合、確定申告を行えば所得控除が受けられます。

5団体を超える自治体にふるさと納税をした

5団体を超える自治体にふるさと納税をした場合は、ワンストップ特例制度が使用できないため、確定申告が必要です。
確定申告をしないと、2,000円を超える部分の所得控除が適用されず節税できません。

ふるさと納税を行った自治体が5団体以下で、ワンストップ特例制度を利用した場合は確定申告不要です。

派遣社員の確定申告に関するよくある質問

ここでは、派遣社員の確定申告に関するよくある質問として、以下の3件に回答していきます。

  • 申告義務のある派遣社員が確定申告をしないとどうなる?
  • 複数の人材派遣会社で働くと確定申告が必要?
  • 派遣の時給に交通費が含まれている場合は確定申告をすれば返還される?

申告義務のある派遣社員が確定申告をしないとどうなる?

申告義務のある派遣社員が確定申告をしないと、無申告加算税が課されます。
無申告加算税は、本来納付するべき税額に以下の割合で金額を加算し納付しなければいけません。

納付すべき税額 割合
50万円まで 15%
50万円以上の部分 20%

※2024年1月1日以後に法定申告期限が到来するもの(2023年分以降)については、300万円を超える部分の加算割合は30%に変更されます。

例えば80万円分の納税をしなかった場合、加算は以下のとおりです。

  • 50万円までの加算額の計算
    50万円×15%=7万5,000円
  • 50万円以上の部分の加算額の計算
    30万円×20%=6万円
  • 本来の納税額と各加算額を足す
    80万円+7万5,000円+6万円=93万5,000円

確定申告が必要な方は、原則翌年2月16日から3月15日までの間に済ませましょう。

複数の人材派遣会社で働くと確定申告が必要?

複数の人材派遣会社で働いた場合、年末調整時期に働いていた人材派遣会社で年末調整を行えば確定申告は不要です。
1年を通して複数の人材派遣会社で働いていた場合は、以下のとおり年末調整が受けられます。

1~3月 4~6月 7~10月 11~12月
人材派遣会社A 人材派遣会社B 人材派遣会社C 人材派遣会社Dで年末調整

上記の場合は人材派遣会社A~Cから源泉徴収票をもらうので、年末調整を受ける人材派遣会社Dへ提出するのを忘れないようにしましょう。

ただし、年末調整時期に2社以上の人材派遣会社で働いている場合は、メインの収入を得ている人材派遣会社で年末調整をするのが一般的です。メインではない人材派遣会社からの収入が20万円を超えている場合は、確定申告をする必要があります。

派遣の時給に交通費が含まれている場合は確定申告をすれば返還される?

人材派遣会社から「通勤交通費証明書」を作成してもらい確定申告をすれば、交通費に対してかかった税金を取り戻せる可能性があります。
所得税法第九条において、交通費や通勤手当は非課税所得として定められていますが、派遣の時給に交通費が含まれている場合は、交通費分の給与も源泉徴収されています。

確定申告の手間を省くためには、初めから交通費が別途支給される派遣の仕事を選んだほうが良いでしょう。

派遣社員は確定申告不要だが必要なケースもある

派遣社員は基本的に確定申告が不要ですが、以下のケースでは確定申告が必要です。

  • 年末調整時期に人材派遣会社との契約を終えている
  • 派遣以外での所得が年間20万円以上ある
  • 医療費控除・住宅ローン控除がある
  • 5団体を超える自治体にふるさと納税をした など

上記に当てはまらない場合、確定申告の必要はありません。
ただし、確定申告が必要なのに忘れていたり意図的にしなかったりした場合は、所得控除を受けられなかったり無申告加算税が課せられたりする可能性があります。

確定申告が必要な方は、原則翌年の2月16日から3月15日までに行いましょう。

執筆者について

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