人間関係を理由に転職を考えたとき、焦って次の職場を選ぶと後悔する恐れがあります。
転職を成功させるには、人間関係以外にも待遇や給料などさまざまな面を考慮しなければならないためです。
かといって、日々のストレスを我慢するのにも限界があるでしょう。
本記事では、人間関係を理由に転職するときの注意点や転職すべき判断基準を紹介します。
転職を迷っている方は、記事の内容を参考に、自分にとって最善の選択肢は何かを考えてみましょう。
目次
仕事の人間関係が原因で転職したいと考える人は多い
職場の人間関係が原因で、転職を視野に入れる方は珍しくありません。
2021年3月に日本労働調査組合が行ったアンケート調査によると、「現在の仕事を辞めたい、または転職を検討している」と答えた会社員は全体の35.8%でした。
その理由の第1位は、職場の人間関係と評価・待遇への不満です。
詳細としては上司・同僚など職場の人間関係、コミュニケーションなどが原因に挙げられています。
指示が具体的でなく業務に取り組みづらい、休日にも関わらず上司に招集されるなど、対人ストレスを感じる場面は人それぞれです。
しかし上記のデータからも、仕事において人間関係が与える影響は大きいことが読み取れるでしょう。
人間関係を理由に転職するときの注意点
人間関係を理由に、転職を検討する人は多くいます。
しかし、人間関係の良し悪しだけにとらわれて転職をすると後悔しかねません。
人間関係を理由に転職する場合、以下のような点に注意が必要です。
- 転職先の人間関係が今より良いとは限らない
- 転職回数が多いと不利になる可能性もある
- 転職活動で金銭的な負担がかかる
- 仕事を続けながら転職活動をするのは大変
- 人間関係以外のミスマッチが起こる可能性がある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
転職先の人間関係が今より良いとは限らない
転職先の人間関係が、満足できるレベルに向上するという保証はありません。
もちろん上司や同僚に恵まれる可能性もありますが、転職先でも人間関係の構築に失敗してしまった場合、早期退職のリスクもあります。
厚生労働省が発表した「平成27年転職者実態調査」によると、転職後の人間関係に不満がある人の割合は12.0%、どちらでもない人が28.5%でした。
約4割の人が、転職先の人間関係に満足しているとはいえない状態です。
転職の結果、状況が改善されない可能性もあることも心に留めておきましょう。
転職回数が多いと不利になる可能性もある
転職回数が多くなると、採用面において不利になる可能性があります。
企業によってとらえ方は異なりますが、一般的に3~4回以上の転職歴があると、入社してもすぐに辞めてしまう人材だと敬遠されてしまうかもしれません。
また、業種を変えながら何度も転職していると、突出したスキルや実績が身についていないと判断される恐れもあります。
スキルアップ・キャリアアップのための転職であればプラス評価になり得るものの、それでも短期間で転職を繰り返すのは避けたほうが良いでしょう。
転職活動で金銭的な負担がかかる
転職活動には、金銭的な負担がかかります。
厚生労働省の調査によると、転職活動スタートから離職までの期間としては1ヵ月~3ヵ月かかる方が多数派でした。
働きながら転職活動を進める場合、収入を心配する必要はありませんが、退職してから転職活動を始める方には金銭面の負担が大きく感じるかもしれません。
転職活動中は、生活費のほかに交通費やスーツのクリーニング代、面接会場の立地によっては宿泊費などが発生します。
転職を検討する際は、これをふまえて金銭的に余裕があるかどうかを確認しましょう。
仕事を続けながら転職活動をするのは大変
現在の職場で仕事をしながら、同時並行で転職活動を進めるのはなかなかハードです。
例えば土日休みの企業で働いている場合、転職先も同様の営業スケジュールであれば平日の面接を受けるには有給を取る必要があるかもしれません。
休みを取りにくい職場なら、面接や説明会に出向くことすらままならない可能性もあります。
このことから在職中の転職活動は長期化しやすく、スケジュール調整に苦労することもあるでしょう。
人間関係以外のミスマッチが起こる可能性がある
人間関係の良し悪しを重要視した結果、労働環境のミスマッチが起こる恐れもあります。
人間関係をリセットすることに重きを置いてしまい、年収や労働条件などの条件が緩くなってしまうことがその理由です。
たとえ上司や同僚に恵まれても、給与が悪かったり労働環境がひどかったりすると、結果的に転職を後悔するかもしれません。
人間関係以外の部分にも、最低限求める条件をきちんと定めておくことをおすすめします。
職場の人間関係を転職以外の方法で改善するには
現在の職場で人間関係の問題が解決できるなら、金銭的な負担や転職回数が増えることを心配せずに済みます。
職場の人間関係を改善する方法には、転職以外では次の2つが考えられるでしょう。
- 適度な距離感を保つ
- 苦手な人への対処を決めておく
詳しく解説します。
適度な距離感を保つ
あくまでも仕事だけの関わりだと割り切って、適度な距離感を保つのも一つの方法です。
気の合わない上司や同僚、部下がいたとしても「他人なのだからわかり合えなくて当然」と考えて仕事に集中します。
会社の飲み会はできる限りスルーする、社内に派閥がある場合は中立を保つなど、広く浅い付き合いで自分の心を守りましょう。
業務上で必要なコミュニケーションをとっておけば、相手へ迷惑をかけることもありません。
苦手な人への対処を決めておく
会社にはさまざまな立場の人がいて、関わりを避けられない場合もあります。
日々業務で接する相手が苦手な場合は、その人への対処法を決めておくと良いでしょう。
上司・同僚・部下や後輩それぞれのケースでの対処法を紹介します。
上司の場合は性格を割り切って接する
上司の性格が受け入れられなくとも、ある程度は従わざるを得ないと割り切りましょう。
反発することで、さらに状況が悪くなる恐れもあります。
上司から嫌われてしまったがために、業務にも支障が出てしまっては意味がありません。
適当に話を合わせる、あるいは礼儀正しく接するのがベターです。
理不尽な上司に対しても真摯に接していれば、周囲が味方についてくれる可能性もあります。
同僚の場合は仕事上の関係と割り切って接する
苦手な人が同僚の場合は、仕事上だけの関係と割り切って接します。
苦手な同僚からプライベートな内容の会話を振られた際には、必要最低限の相槌のみに留めるのも良いでしょう。
ただし、他の同僚と明らかに態度を変えるのは周囲からの信頼を失いかねないため、注意します。
仕事上の関わりにはきちんと向き合い、あくまでもプライベートは踏み込ませないという距離感を保ってみてください。
部下・後輩の場合はメリットを考えて接する
部下・後輩が苦手な場合、「関わることで自分が得られるメリット」に注目してみましょう。
その部下・後輩が社内全体で扱いづらい人材とされているなら、自分が一人前に教育することで好評価につながります。
また、どのような部分に問題があるのかを見極め、それを補完するよう指示をするのも一案です。
業務効率が悪い部下なら優先すべきタスクを順に箇条書きにして渡す、小さなミスが多い部下ならダブルチェックを促すなどの工夫が挙げられます。
自分の行動を変えてみる
職場の人間関係を良くするために、自分の行動から変えてみるのも良いでしょう。
他人を自分の思惑どおりに動かすのは困難ですが、自分の行動はいつでも変えられます。
例えば、次のような行動を徹底してみてはいかがでしょうか。
- 報連相の徹底
- 笑顔での挨拶を意識する
- 愚痴や陰口を言わない
人間関係が気に入らないからと卑屈になるより、ポジティブであることを意識しましょう。
自分が相手の立場ならどう感じるか、どのように振る舞えば職場の雰囲気が良くなるかなど、思いやりを持って行動した結果、社内評価が高まるメリットも期待できます。
人間関係以前に転職すべき会社の判断基準
人間関係がきっかけで軽率に転職するのにはリスクがありますが、転職を検討すべき状況にいる方であれば話は別です。
例えば社内でパワハラを受けている、ブラック企業に勤めているという場合、早めに行動に移したほうが良いかもしれません。
人間関係以前に、転職を視野に入れるべき会社の判断基準を紹介します。
職場でいじめ・パワハラを受けている
いじめ・パワハラが日常化した職場において、根本的な解決はなかなか難しいでしょう。
仕事の些細なミスを大人数の前で非難されたり、自分だけ業務の負担が大きかったり、人間性を否定されるなど、状況は違えどいずれも精神的苦痛につながります。
上司からの指摘の場合、周囲からすると正当な指導なのかパワハラなのか断言しにくいこともあります。
とはいえ、その指導に暴力がともなっているなら明確なパワハラです。
安心して働くためにも、転職を検討して良いでしょう。
ブラック企業体質で人間関係が悪い
ブラック企業体質の職場も、自分の力での改善は難しく、転職を検討したほうが良いケースです。
以下の項目に当てはまる場合、ブラック企業の可能性があります。
- 長時間の残業や休日出勤が日常化している
- ノルマが達成できるまで帰れない
- 給与の未払いがある
- 有給取得が認められない
ブラック企業に長く勤めていると感覚が麻痺し、こうした劣悪な労働環境が当たり前のように感じられてくるかもしれません。
心身を壊してしまう前に、転職に向けて行動したほうが良いでしょう。
人間関係を理由に転職する前に冷静に考えてみよう
人間関係を理由に転職を考えたとき、その選択が自分にとって最善なのか一度冷静になって考えることが大切です。
働きやすい職場には、人間関係だけでなく給与や労働環境などいくつもの条件があります。
このことも考慮したうえで、転職先選びは慎重に行いましょう。
現在の職場に人間関係以外の不満がないのであれば、苦手な相手との付き合い方を見直すのも一つの手です。
ただし、いじめやパワハラ、ブラック企業体質などの根深い問題が潜んでいる場合、我慢して働き続けた結果、体調を崩してしまう恐れもあります。
自分の力ではどうにも改善できない問題は、転職による解決をめざしても良いでしょう。