退職代行を利用しようと考えたことはありませんか。
会社を辞めたいと考えたとき、自分で意志を伝えるのはとてもストレスで、言い出しにくいこともあるでしょう。
そのようなとき、退職代行は心強い味方となり、退職の意志を代わりに伝えて手続きを進めてくれます。
しかし、退職代行を利用しても退職がスムーズにできなかったり、条件が合わなかったりとトラブルが起こる場合もあります。
本記事では、退職代行で起こる可能性のあるトラブルと注意点を解説します。
ぜひ参考にして、賢く退職代行を利用しましょう。
目次
退職代行でトラブルが起こる要因と問題
退職代行とは、労働者の退職希望を第三者を通して会社に伝え、手続きを代行するサービスです。
数年前からメディアで取り上げられる機会が増加し、退職代行業者数も急増中です。
利用者と業者の増加にともない、トラブルが起こるケースも報告されています。
ここでは、それらのトラブルを要因で分類し、その事例を解説します。
会社に原因があるトラブル
まずは、会社に原因があるケースについて、トラブルの内容ごとに解説します。
給料を支払ってくれない
企業が労働者に賃金を支払う義務は、労働基準法第24条で定められています。
退職のタイミングや方法に関わらず、労働に対する賃金を支払う義務があることは変わりません。
しかし企業によっては、何らかの事情で給料の支払いを渋ることがあります。
手渡しで給料を渡す会社などでは、退職後に会社に出向いて受け取ったり、支払い方法の変更を交渉したりすることが必要です。
受け取り方変更の交渉は、退職代行に依頼することもできるでしょう。
有給をとらせてくれない
本来、退職代行を使ったとしても、有給をとる権利には直接関係ありません。
しかし、突然退職した場合、引き継ぎが不十分などの不当な理由で有給の取得を拒否される可能性があります。
有給とは正しくは年次有給休暇といい、一定期間以上勤続した労働者に対して、ゆとりをもって労働できるよう定められた休暇制度であり、労働者の権利です。
ただし、6ヵ月以上勤続していない、勤務日の8割以上出勤していない場合は有給をとる権利を与えられないため注意しましょう。
実績やノウハウのある退職代行サービスを利用すれば、会社に退職を申請したあともサポートを受けられ、間接的に有給取得の交渉を行うことが可能です。
法律上、退職申請から2週間後に雇用契約を解除できることになっていますが、退職の意志を伝えてから有給を取得すれば、実質即日で勤務を停止できる可能性もあります。
退職までにパワハラやいじめを受ける
退職の意志を伝えたあと、退職日までにいやがらせやパワハラを受けることがあります。
以下はその例です。
- 会社をやめるといったら罵倒される
- 人手不足なのに無責任だと他の社員の前で怒鳴られる
- 退職が決まってから連絡が回ってこなくなる
たとえハラスメントを受けたとしても、退職を取りやめるという選択はしないほうが良いでしょう。
退職者へのいやがらせを放置するような会社は優良な会社とはいえません。
最悪の場合、ハラスメントに対する慰謝料を請求する事態に発展することもあります。
退職代行サービスを利用する場合には、優良なサービスを選択し、問題解決を依頼するのがおすすめです。
退職までに手続き書類を送ってくれない
退職後、離職票、雇用保険被保険者証、年金手帳、退職証明書、健康保険資格喪失証明書などの書類を会社から受け取る必要があります。
本来であれば、直接受け取りに行かなくとも、郵送で受け取ることが可能です。
しかし、一部の企業では必要書類をなかなか送ってくれないことも考えられます。
退職代行サービスを利用する際には、書類が遅れた場合の状況確認や発行依頼も頼める代行サービスを選ぶと良いでしょう。
依頼者に原因があるトラブル
依頼者の状況により、退職にあたって特殊な条件がある可能性もあります。
注意すべき条件を確認しましょう。
有期雇用契約を結んでいる
有期雇用契約では、企業と労働者があらかじめ期間を決めて労働契約を結んでいます。
やむを得ない事情があったり、会社が合意していたりしていなければ契約期間中の退職はできません。
派遣社員や契約社員の場合、有期雇用契約となっていることが多いですが、基本的に退職代行サービスを利用することは可能です。
業者と相談のうえ、やむを得ない理由をもとに会社と交渉してもらう必要があります。
ただし、退職代行業者によっては有期雇用契約の方が利用できない業者もあるため、注意しましょう。
無断欠勤や就業規則違反をしている
職場でトラブルを抱えた場合、出勤しにくくなることもあるでしょう。
しかし、無断欠勤を続けた挙句に退職を申請すれば、退職時の減給や懲戒解雇にもなりかねません。
出勤できない状況にあり退職を視野に入れている場合には、無断欠勤を繰り返す前に退職代行に依頼するほうが良いでしょう。
会社から金品を借りている
借りている金品は、たとえ退職代行を利用したとしても郵送などで返却する必要があります。
のちのトラブルを避けるため、退職を考えているなら早めに返却しておきましょう。
国家公務員の場合は注意が必要
公務員でも、第三者に退職手続きを依頼することは可能です。
ただし、公務員の場合、退職手続きを行う相手は国や自治体です。
第三者に対する対応を拒否されたり、手続きの方法が民間企業と異なるため時間がかかったりする可能性もあります。
そのため、民間業者による退職代行サービスでは、公務員を対象外にしている業者もあります。
退職代行サービスを選ぶ時点で確認が必要です。
退職代行に原因があるトラブル
退職代行業者の対応が不十分で、最後まで手続きを行ってもらえないことによるトラブルもありえます。
交渉が必要な場面で対応してもらえないという状況です。
例えば、有給消化に関する交渉を行うには、弁護士資格が必要です。
代行業者にどのような範囲の交渉を頼めるのかを、事前に整理しておく必要があります。
退職代行で揉める事例
退職代行を利用しても、会社側との交渉が難航したり、トラブルに発展したりすることがあります。
会社側が、退職代行を利用して退職する方の対応に慣れていないこともあるでしょう。
本章では、退職代行で辞める際の交渉がうまくいかない事例を解説します。
トラブルが起こると、最悪の場合どのような事態に陥る可能性があるかを理解しておきましょう。
辞められない
本来、あらかじめ雇用期間が決まっていない場合には、退職の意志を伝えれば退職できると法律で定められています(民法第627条第1項)。
したがって、本人が辞める意志を曲げなければ辞められないことはありません。
しかし、会社から「退職代行とは話さない」「本人が来て欲しい」などと言われてしまい、退職しづらくなってしまう可能性は考えられます。
損害賠償を請求される
退職にあたって労働者側に何らかの注意義務違反があり、会社に具体的な損害が生じている場合は、損害賠償を請求されるかもしれません。
例えば、労働者が退職前に長期間の無断欠勤を続け、必要な引継ぎをせず、代行業者を通じて退職を申請して本人が一切出てこないという場合、労働者の会社に対する義務違反にあたる可能性があります。
このような行為のために取引先との契約解消などの実害が生じている場合、会社の労働者に対する損害賠償請求が成立するかもしれません。
退職代行サービスを利用したかどうかは、損害賠償請求には直接関連しません。
懲戒解雇される
懲戒解雇とは、会社の秩序を著しく乱したり、規律違反をしたりした労働者に対するペナルティとして行われる解雇です。
日本では法律で労働者が保護されており、会社が労働者を簡単に解雇することはできません。
そのなかでも懲戒解雇が認められるような重大な問題としては、以下のような例が挙げられます。
- 業務上の地位を利用した犯罪行為
- 会社の名誉を著しく傷つける重大な犯罪行為
- 長期間の無断欠勤
- 重大なセクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント
上記に該当しそうな場合、たとえ退職代行を使ったとしてもトラブルになる可能性があります。
退職代行のトラブルを回避するための注意点
退職代行を利用した際に起こりうるトラブルに関して解説してきました。
このように退職代行を依頼するときには、契約条件や運営組織に注意を払う必要があります。
本章では、トラブルを回避するための注意点について解説します。
顧問弁護士がいるかどうかを確認する
退職の意志を伝えることは誰でもできますが、本人に代わって退職条件の交渉をできるのは弁護士のみです。
弁護士資格のない人が、報酬を得ることを目的として弁護士のみに認められた法的手続きを行う行為は、非弁行為として違法となる可能性があります。
そのため、弁護士が所属していない代行業者を利用すると、退職日、給与や退職金、有給休暇取得の交渉ができなくなってしまいます。
サービスを利用する前に、自分の場合弁護士が必要かどうか、訴訟に巻き込まれるリスクがないか、などの注意点を調べておくことが大切です。
実績や費用を確認して業者を決める
近年、退職代行業者の数は急速に増加傾向にあります。
退職代行業者を選ぶ際には、実績のある業者を選択するとスムーズに手続きできる可能性が高くなります。
また、費用の相場は2〜5万円です。
相場とかけ離れていない値段設定かどうか、確認することが重要です。
退職代行でトラブルに巻き込まれないため確認が必要
退職代行を利用する際に起こりやすいトラブルと注意点を解説しました。
自分で退職の意志を伝えにくい場合、退職代行は強い味方となりますが、交渉可能な範囲が限られていたり、弁護士が所属しない組織があったりするため注意が必要です。
退職代行を利用する際には、依頼する交渉の内容や自分の契約状態を確認して、トラブルに巻き込まれないよう気を付けましょう。