退職手当は、退職金、退職慰労金とも呼ばれます。
一般的に退職時に会社から支払われるものですが、必ずもらえるものではありません。
また、退職手当は退職時に一括で受け取るイメージが強いと思いますが、年金で受け取ることもできます。
この記事では、退職手当について、相場や種類、受け取ったときにかかる税金などを解説していきます。
目次
退職手当とは?
退職手当とは、企業が退職した労働者に支払うものです。
詳細な計算方法については後述しますが、支払われる金額は、勤務年数、基本給、役職などをもとに算出されます。
また、退職金の受け取り方法は、一括で受け取る他にもさまざまな受け取り方が可能です。
退職手当は必ずもらえる?
退職手当はもらって当たり前と考える方がいるかもしれませんが、なかには退職手当がない企業もあります。
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、退職給付がある企業はすべての企業のうち約80%です。
つまり、2割の企業は退職給付がないということになります。
また企業規模で見てみると、1,000人以上の従業員がいる企業では約92%と高く、従業員が100人以下の企業では約78%と低くなっていることがわかります。
また、勤続年数が短すぎる場合は、退職金を受け取れないかもしれません。
退職金を受け取るために必要な勤続年数は企業ごとに異なり、半数以上の企業が「3年以上」と規定しています。
退職手当の相場
ここからは、退職手当の相場について見ていきましょう。
会社員、国家公務員、地方公務員の3つの場合に分けて解説していきます。
会社員の場合
退職手当は企業規模、勤続年数、退職理由などによって計算される退職手当の金額が異なります。
中央労働委員会が実施している「令和3年賃金事情等総合調査」によると、退職手当の金額は、定年退職の場合が1,873万円、会社都合の場合は1,197万円、自己都合の場合は447万円でした。
また、男性定年退職者に限定した場合、大学卒で勤続35年が1,903万円、満勤勤続が2,230万円という結果でした。
国家公務員の場合
国家公務員の退職手当は、退職する時点の俸給月額、退職する理由などで計算されます。
内閣府のホームページに記載されている計算式は、以下のとおりです。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額
ここでいう基本額とは、俸給表の額と俸給の調整額との合計です。
また、定年前に早期退職する人は上記の計算式ではなく、以下の方法によって計算されます。
基本額の算定の基礎となる額=退職日の俸給月額×{1+(3%×定年年齢までの残年数)}
地方公務員の場合
地方公務員の場合は、国家公務員の制度等に準じることとなっています。
よって国家公務員と同じく、以下の計算式を用いて金額を導き出します。
退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率×調整率)+調整額
支給率を見てみると、自己都合や定年など退職理由によって異なっており、例えば自己都合の場合、10年で6.0月、20年で23.5月、30年で41.5月です。
支給率は勤続年数1年ごとに計算されます。
退職手当の4つの種類
退職手当は退職時に一括で受け取ることが多いかと思いますが、他にも年金で受け取ることができるものもあります。
ここでは、退職手当の4つの種類を見ていきましょう。
退職一時金制度
退職一時金制度とは、退職時に一括で退職手当を受け取る方法です。
支給のタイミングは、それぞれの企業の就業規則に明記されていることもありますが、おおむね退職から1~2ヵ月後になることが多いです。
もらった退職手当は、所得税、住民税が課税の対象となりますが、退職所得控除として定められている範囲内であれば税金はかかりません。
確定給付企業年金制度
確定給付企業年金は大きく2つに分かれています。
規約型企業年金と基金型企業年金です。
規約型は企業が保険会社や銀行などと契約を結び、掛け金の管理はそのような受託機関が行います。
基金型は、別の法人である企業年金基金を設立し、そこで管理や運用を行います。
確定給付企業年金のメリットは、確実に年金を受け取れることです。
確定給付企業年金は、年金だけではなく一括、あるいは年金と一時金を併用で受け取ることもできます。
一括で受け取った場合は退職所得控除の対象となり、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象となります。
企業型確定拠出年金制度
企業型確定拠出年金は、企業が退職金制度に基づいて掛金を拠出し、従業員が運用する制度のことです。
このタイプの退職金は、従業員が自分で商品を選んで運用するため、その運用成績によって将来受け取る額が変動することが特徴です。
60歳以降に運用してきた年金を一括または年金、あるいは一時金と年金を併用で受け取ることができます。
逆にいえば、原則60歳まで引き出すことができません。
運用できる額は、他の企業年金があるかないかで変わってくるため、勤め先に確認すると良いでしょう。
中小企業退職金共済制度
中小企業退職金共済制度では、企業と中小企業退職金共済事業本部(中退共)が契約を結び、毎月の掛け金を全額企業負担で金融機関に支払います。
退職者は、中退共に請求することで退職手当を受け取れる仕組みです。
退職手当は、基本退職金と付加退職金の合計額となります。
付加退職金とは、運用利回りが予定よりも上回った場合に基本退職金に上乗せして支払われるものです。
退職手当には税金がかかる?
退職手当は、一時金として受け取った場合は退職所得となり、年金で受け取った場合は雑所得の区分で課税されます。
退職手当は報酬的な給与として支払われるため、所得税などとは異なり、退職所得控除や分離課税など税負担が軽くなるよう配慮された仕組みです。
例えば一時金として受け取った場合は、「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出すれば源泉徴収が適用されることになります。
退職所得控除額の参考として、勤続年数が20年以下の場合は40万円×勤続年数、20年超えの場合は800万円+70万円×(勤続年数ー20年)です。
退職手当の内容は企業や職場によって異なるため確認しておこう
退職手当の相場や種類などを解説しました。
退職手当は基本的に勤続年数が長ければ長いほど額が大きくなるため、退職時に受け取る際一括で受け取るか年金で受け取るか迷うことがあるかもしれません。
また、受け取り方によってかかる税金も変わってきます。
企業によって年金の種類も受け取り方も異なるため、退職前に勤務先に確認しておくと良いでしょう。