体調不良で退職するときは、伝え方の工夫をすると退職がスムーズに進みます。
体調不良で退職するときと他の理由で退職するときは、基本的な手続き自体は変わりません。
しかし、周囲の業務量などの負担や、自分の心身の負担を考えると、できる限り早めの行動をしたほうが良いでしょう。
この記事では、退職の伝え方や退職届の書き方、働くことができない場合に利用できる公的制度を説明します。
目次
体調不良で退職する意志の伝え方
体調不良で退職の意志を伝えるのは、言い出しにくく、勇気がいることです。
伝えるタイミングや伝え方を間違ってしまうと、会社へも迷惑がかかってしまうことにつながりかねません。
とはいえ、少しの工夫と周囲への配慮で、円満に退社へと進めることもできます。
体調不良で退職するときのポイントを、手順に沿って説明します。
体調不良であることは周囲に早めに伝えておく
まず、周囲に業務量や労働時間の増加による負担が急激にかかるのを防ぐために、体調不良であることを早めに伝えましょう。
体調不良であることは、周囲に迷惑をかけたくないという思いから伝えにくいことです。
とはいえ、突然体調不良で退職すると告げると、退職に至った経緯などをはじめから伝えることになり、場合によっては、もっと早く言ってくれればと周囲に悪い印象を与えるかもしれません。
体調不良であることを早めに伝えておけば、周囲はあなたが仕事ができなくなった場合を想定して、業務体制や時間管理など、事前に準備できます。
あわせて、あなたも体の不調が深刻になる前に、退職に備えて業務の引き継ぎなどができます。
円満退社のためにも、体調不良が生じたら、周囲に早めに伝えることが大事です。
退職の意思は直属の上司に伝える
周囲に体調不良であることは伝えても、退職の意思はまず直属の上司に伝えましょう。
退職を告げるのは大事なことであり、重要度が高い内容は上司に伝えるのが一般的です。
オープンな場で話すと周囲の仕事の妨げになるため、事前に上司に話したいことがある旨を伝え、話すための時間を確保してもらいます。
退職を伝えるときは、体調不良で仕事が継続できないことを理解してもらうために、状況をしっかりと言語化し、伝えるべきポイントをおさえておきます。
また、上司から聞かれることが想定される質問があれば、答えを用意しておきましょう。
上司に退職を伝えることは緊張するかもしれませんが、事前に準備をしておくと心に少し余裕ができ、落ち着いて話すことができるでしょう。
また、どうしても会社へ行けないほど体調が優れない場合には、その旨を上司に電話で伝えたうえで、あらためて話す時間を確保してもらいます。
電話より直接退職を伝えたほうが表情もわかり、伝わりやすいですが、会社へ行けるのがいつになるかわからないような場合には、電話で早めに伝えておくと、周囲も業務のフォローを早めにできます。
そして、上司に退職届は郵送で提出しても良いか確認し、許可を得たら簡易書留などで送りましょう。
追跡できる郵便サービスを利用したほうが、万が一紛失したときの備えになります。
診断書はあったほうが良い
退職の意思を伝えても、体調不良を信用してもらえなかったり、次の人材育成に時間的コストがかかるなどの理由から、退職を引き止められたりする可能性もあります。
退職を引き止められないように、先手を打つ手段として、医療機関からの診断書の準備をしておくことがおすすめです。
診断書には、正しい名称で病名が記載されており、仕事を継続することが困難であると証明してもらえれば、エビデンスをつけることができます。
ただし、診断書は体調不良で退職をするときに必要なものではありません。
そして、診断書は保険適用外なので基本的に自費です。
コストがかかっても良い方や、必要と感じる方は準備をすると良いでしょう。
体調不良で退職するときの退職届の書き方【例文あり】
退職が決まったら次に必要なものは退職届です。
体調不良で退職する場合は、一身上の都合を理由とした一般的な書き方でも問題ありません。
今回は、退職届の一般的な書き方と、具体的な体調不良を理由にした書き方を、横書きで紹介します。
一身上の都合で退職と書いても良い
一般的な退職届の書き方です。
体調不良であっても、一身上の都合となるのでこの書き方でも問題ありません。
退職届 令和◯年◯月◯日 株式会社▲▲▲▲ 代表取締役社長 ×× ××様 ▲▲部▲▲課氏名 印私儀 このたび、一身上の都合により、令和◯年◯月◯日をもって退職いたします。 以上 |
体調不良を理由にした退職届の書き方
具体的な体調不良を理由に書く場合も、一般的な書き方と同様、短くまとめます。
詳しく事情を記載する必要はありません。
退職届 令和◯年◯月◯日 株式会社▲▲▲▲ 代表取締役社長 ×× ××様 ▲▲部▲▲課氏名 印私儀 このたび、令和◯年◯月◯日をもって退職いたします。 以上 |
体調不良で退職するときに利用できる制度
体調不良で働けない期間が続くと、収入が途絶えてしまうと懸念されるのではないでしょうか。
働けない期間を保証してくれる、傷病手当金と失業手当があるので安心してください。
ただし、要件に当てはまる場合に限るので確認しましょう。
傷病手当金は退職後でも支給される
傷病手当を受け取る要件と支給期間、支給額は下記の表のとおりです。
働くことができなくなった日を起算日として、連続して4日目からが支給対象日になります。
働くことができない日が3日以上あっても、連続して3日間が経過しなければ支給対象にならないので注意してください。
給付要件 | 被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった 日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、支給される。 |
支給期間 | 同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間 |
支給額 | 1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額 (休業した日単位で支給) |
出典:傷病手当金について
また、退職後の期間も下記の要件を満たしていれば傷病手当金を受け取ることができます。
・被保険者の資格喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間 (健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
・資格喪失時に傷病手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
(なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後 (退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。)
出典:傷病手当金について|よくあるご質問
失業手当の受給延長手続きをする
体調不良で仕事が30日以上連続してできない場合は、失業保険の受給期間を延長することができます。
本来の受給期間は1年のところ、申請をすれば最長4年まで延長可能です。
失業手当の支給額は勤続年数や退職理由などによって算出され、1日ごとの支給額が決定し、ひと月ごとに支給されます。
手続きを忘れても通達が来ることはないため、忘れずに受給延長手続きをしましょう。
申請期間 | 離職の日(働くことができなくなった日)の翌日から 30 日過ぎてから早期に申請いただくことが原則ですが、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請は可能 | 離職の日の翌日から2か月以内 |
延長期間 | (本来の受給期間) 1年 + (働くことができない期間)最長3年 |
(本来の受給期間) 1年 + (休養したい期間)最長1年 |
体調不良でもしっかり準備してスムーズに退職を
体調不良で業務に支障を来す恐れがある場合は、周囲に体調不良であることを早めに伝えましょう。
退職の意思は直属の上司に伝え、退職届を適切に準備して提出します。
医療機関の診断書は必ずいるものではありませんが、エビデンスを提示することができるため、引き止められるのを防げる可能性があるでしょう。
公的制度では、会社から傷病手当や失業手当の説明を受けることがある場合と、そうでない場合があります。
手続きに困ったときは、傷病手当は加入している保険者へ、失業手当は管轄の職業安定所へ問い合わせると良いでしょう。
体調不良でもしっかり準備をすることで、円満退社につながります。