諸事情により出社できない状態で退職を決めた場合、電話で退職を伝える方法があります。
しかし退職は口頭で直接伝えるのが一般的で、電話での申し出はマナー違反にはならないのか不安という方も少なくありません。
そこで今回は、電話でも退職はできるのかを法的な根拠も含めて解説します。
やむを得ず電話で退職する場合の伝え方や注意点、退職を申し出たあとにやるべきことについても確認しておきましょう。
目次
退職の申し出は電話でも良い?
退職の申し出を電話で伝えることは可能ですが、やむを得ない事情がない限りは直接伝えるのがマナーです。
退職の申し出を電話で伝えても良い理由を、法的な根拠もふまえて解説します。
一般的には直接伝えるのが常識
一般的に退職を申し出る際は、体調不良やパワハラなどのようなやむを得ない事情がない限り、上司に直接伝えるのが常識とされています。
一般的な退職の手続きは以下のとおりです。
- 直属の上司に退職の意志を伝える
- 退職届の提出
- 業務の引き継ぎ
- 挨拶まわり・私物の整理
就業規則にもよりますが、退職の意志は退職希望日の遅くとも1ヵ月前に伝えます。
業務の引き継ぎは、退職の3日前には終わるよう余裕を持ったスケジュールを立てましょう。
法的には電話でも可能
退職を伝える手段は法的に決められているわけではないため、退職の意志を電話で示すことも可能です。
民法では「退職の意志表示から2週間後に雇用契約は解除される」と定められており、これは退職者に保証された自由です。
入社3日目や試用期間中のような入社したてであろうと、労働契約が成立している以上はこの法が適用されます。
ただし、電話連絡での退職は非常識といわれることも多く、円満退職は厳しいことを覚悟しておかなければなりません。
入社したてでの退職は特に不安がつきものですが、以下の記事も参考にして不要なトラブルは避けるようにしましょう。
退職を電話で伝える際の注意点
退職を電話で申し出る際は、伝え方や誰に連絡するかなどいくつかの注意点があります。
できる限りスムーズに退職を進められるよう、以下のポイントを念頭に置いておきましょう。
最低限のマナーは守る
退職の連絡や相談を上司に電話でする場合、時間帯や話の切り出し方など、最低限のマナーを守ることが大切です。
上記でも触れたとおり、電話での退職は法的に問題がなくても一般的には非常識ととらえられます。
人間関係にわだかまりを残さないためにも、以下3点のことを徹底しましょう。
- マナー違反である電話での退職申し出を詫びる
- 連絡をするのは直属の上司
- 電話の時間帯に配慮する
基本的に退職の連絡は直属の上司にすべきですが、パワハラ上司のように退職の原因が相手にある場合は、人事や本社へ連絡して構いません。
また、電話は相手に時間を作ってもらうことになるため、退職の連絡をする際は忙しい時間帯を避けるなど配慮しましょう。
可能であれば、何時頃なら話せるかアポを取っておけるとベストです。
通話を録音する
退職を口頭で伝える場合、万が一のトラブルに備えて通話内容を録音しておくことをおすすめします。
電話で退職を伝えたあとすぐに退職届を出せるとは限らず、発言の証拠として録音しておくことで、万が一あとから揉めてしまっても自分を守れるためです。
退職に際して大事な話をされたときに聞き漏らしたり忘れたりしても、録音しておけばあとから確認もできます。
会社からの折り返し電話など、退職に関する連絡はすべて録音データとして残しておきましょう。
退職理由は大まかに伝える
病気やパワハラのようなやむを得ない事情での退職でない限り、退職理由については大まかに伝える程度で留めます。
理由をこと細かに話してしまうと、内容によっては交渉されたり話し合いを提案されたりと退職しにくくなりかねないため、「一身上の都合」と伝えるのが無難です。
退職の際に明確な理由を伝える義務はありません。
もし理由を聞かれても、会社への不平不満を正直に話すようなことは避けましょう。
派遣社員の場合は連絡先に注意
派遣社員の方が電話で退職を伝える場合、連絡すべきは実際に通勤している会社ではありません。
派遣社員と雇用契約を結んでいるのは派遣会社で、通勤している会社はあくまで派遣先の企業です。
そのため仕事を辞めたい場合は、雇用契約を結んでいる派遣会社に連絡をする必要があります。
また派遣社員で雇用期間に定めがある場合、「退職の意志表示から2週間後に解約」となる民法が原則適用されない点にも注意が必要です。
病気や怪我などやむを得ない事情がない限り、期間の満了まで会社を辞められないことがあるため注意しましょう。
【状況別】電話での退職の伝え方・例文
電話で退職をする際の基本的な流れは以下のとおりです。
- 時間をもらうことへのお詫びと伝えたいことがある旨を話す
- 一身上の都合で退職したいことを伝える
- 突然の話であること、電話で伝えることを謝罪する
退職の状況別に、電話で伝える際のポイントと例文を以下で紹介します。
病気・体調不良で退職する場合
病気や体調不良を理由に退職をする場合、病院での受診結果など体調に関する説明や、欠勤が続いていたときは併せてお詫びをする必要があります。
今後の勤務についてご相談があり、お電話いたしました。
今お時間いただけますでしょうか?
じつは体調の回復が見込めず病院で検査をした結果、長期的な治療が必要だと言われたため、退職をさせていただきたくご連絡いたしました。
突然のご連絡となり、大変申し訳ございません。
本来であれば直接お話ししなければならないことですが、体調が悪く出社が難しいためお電話という形になってしまいました。
欠勤が続いていたうえにこのような結果となり、本当に申し訳なく感じております。
人間関係で退職する場合
人間関係が理由で退職する場合も、基本的には出社できないことへのお詫びと一身上の都合で退職することを伝えます。
ただしハラスメントを受けたことが原因であれば、会社側に非があるため、正直に「ハラスメントによる恐怖で会社に行けない」旨を伝えても問題ありません。
直属の上司に伝えづらいときには、会社の人事か本社へ連絡しましょう。
会社自体に連絡することが難しい場合は、退職代行サービスを使うのも一つの手です。
入社したてでの退職の場合
入社したてで退職する場合も同様に、電話で伝えることへのお詫びと一身上の都合で退職したい旨を伝えましょう。
今後の勤務についてご相談があり、お電話いたしました。
今お時間いただけますでしょうか?
先日入社したばかりで大変心苦しいのですが、一身上の都合により退職をさせていただきたくご連絡いたしました。
本来であれば直接お話しすべきことを、電話という無礼な形でお知らせする結果となり、大変申し訳ございません。
入社したばかりの頃は環境の変化が大きく、精神的なストレスを訴える方もいます。
上司に引き止められる可能性もありますが、自分の心身を守るためにも退職が最善の選択肢であるなら「もう決めたことなので」と曲げない姿勢を示しましょう。
電話で退職を伝えたあとにやること
電話で退職を伝えたあとは、返却物の郵送や引き継ぎなどが必要となります。
滞りなく準備を進めるためにも、退職までのタスクをリストアップしておくと安心です。
会社に返却するものや退職届の郵送
退職の連絡をする際に、必要な書類や返却物をあらかじめ確認しておきましょう。
退職届は必須ではありませんが、意志表示の証拠となるため提出しておくと安心です。
内容証明郵便で送れば日付も証拠として残るため、直属の上司もしくは人事部担当者宛てに念のため郵送するのが良いでしょう。
また、社員証や健康保険証、制服など会社支給のものは返却の必要があります。
すべてがそろい次第郵送しましょう。
勤務していた担当部署が郵送先とは限らないため、電話で確認しておくことをおすすめします。
業務の引き継ぎをする
会社を退職する場合、退職を申し出た手段に関係なく業務の引き継ぎが必要です。
長期でお休みをしている方なら、引き継ぎがある程度済んでいることもあります。
業務引継書の作成を求められたときには、必要な項目などを電話で聞いてみましょう。
ただし、作成には手間もかかるうえに退職前は慌ただしくなりがちです。
会社を辞める可能性があるとわかった時点で、少しずつ引き継ぎに取りかかると無理のないスケジュールで進めやすくなります。
退職後に必要書類を受け取る
退職後には会社から必要書類が郵送されてくるため、不足のないように受け取りましょう。
これらの書類は失業保険の手続きや転職時に必要となるため、2週間経っても書類が届かない場合はまず会社に問い合わせてみてください。
退職後に郵送されてくる書類は、主に以下の5つです。
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 健康保険資格喪失証明書
- 年金手帳
- 厚生年金加入員証(厚生年金に加入していた場合)
万が一嫌がらせなどで故意に書類を送付してもらえない場合、ハローワークや税務署へ相談をしましょう。
電話で退職するなら適切な伝え方を
電話での退職は法的には可能ですが、一般的に対面での申し出が常識とされています。
そのため電話で伝える際は、直接話せないことをお詫びしたうえで相手に迷惑がかからないよう配慮するのが最低限のマナーです。
また、電話だけで退職手続きを済ませようとすると、後々トラブルに発展する可能性も否定できません。
自分を守るためにも、通話の録音と退職届の提出をおすすめします。
業務の引き継ぎも計画的に済ませて、気持ちの良い退職をめざしましょう。