失業保険は退職後の生活の安定に役立つ制度ですが、もらえないこともあります。
もらうための要件がいくつかあるほか、ハローワークでの手続きが必須です。
これらの要件や手続きをスキップしてしまい失業保険を受け取れなかった場合、どう対処すれば良いのでしょうか。
本記事では、失業保険がもらえないケースについて詳しく解説します。
失業保険以外の制度を利用できる可能性もあるため、退職後の生活に不安がある方は参考にしてみてください。
目次
失業保険がもらえないケース
失業保険は、会社を退職した誰しもが受け取れるわけではありません。
受給には一定の要件があり、この要件を満たしていない場合は失業保険をもらえないため注意が必要です。
まずは失業保険が受け取れないケースを紹介します。
働く意思がないと判断された
離職後、再就職して働く意思がない場合は、失業保険を受給できる要件を満たしていないと判断される可能性が高いでしょう。
実際に厚生労働省が発表している失業保険の給付要件には、「積極的に就職しようとする意思があること」という記載があります。
したがって、退職後はしばらく休みたいといった場合や、留学を計画しているなどの場合は、失業保険が給付されにくくなるかもしれません。
また、失業保険の要件を満たすには積極的に就職活動を行っていることも必要です。
そのため、たとえ就職の意思があっても就職活動を行っていない場合は失業保険が受給できない可能性があります。
具体的な求職活動実績の判断基準は、以下のとおりです。
1. 求人への応募
2. ハローワークが行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、各種講習、セミナーの受講など
3. 許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講など
4. 公的機関等((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、地方自治体、求人情報提供会社、新聞社等)が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等の受講、参加など
5. 再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験
失業保険は、あくまで再就職の意思を持って実際に行動している人の生活を支援する制度と認識しておきましょう。
病気・怪我などですぐに働けない
失業保険を受給するためには、いつでも就職できる健康状態や環境にあることが必要です。
したがって妊娠や出産、育児、病気、怪我などで就職できない場合は、受給要件を満たさないと判断されます。
ただし、上記のような事情があって離職した場合は、特定理由離職者の認定を受けられるかもしれません。
特定理由離職者の認定を受けられれば、問題なく失業保険を受け取れます。
特定理由離職者に認定されるには、妊娠や怪我などで業務の遂行などが不可能になったことの証明が必要です。
医師の診断書などが提出できない場合は、受給できないケースもあるので注意しましょう。
雇用保険の加入期間が12ヵ月未満
失業保険を受給するためには、離職前の2年間に雇用保険の加入期間(被保険者期間)が12ヵ月以上必要です。
よって、就職後12ヵ月未満で自己都合退職した場合、失業保険は受け取れません。
自己都合退職における失業保険に関する詳しい解説は、以下の記事もご参照ください。
また、倒産や解雇などやむを得ない事情があれば、離職前1年間の被保険者期間が通算して6ヵ月以上あることと要件が緩和される点を覚えておきましょう。
さらに病気や妊娠、育児といった理由で30日間以上賃金を受け取れなかった方は、その日数分を加えた期間で被保険者期間を満たしているのかどうかが判断されます。
例えば、以下のような就業期間や休養期間で働いていたケースで考えてみます。
- 就業期間:2022年4月1日~2023年3月31日
- 病気による休職期間:2022年6月1日~2022年8月31日
上記のようなケースでも、休職期間の3ヵ月分が被保険者期間として加味されます。
このため失業保険を受給できる可能性は高いでしょう。
ハローワークで認定の手続きを行わなかった
ハローワークで認定手続きを行わなかった場合も、失業保険を受給できません。
失業保険を受けるためには、4週間に一度ハローワークで認定の手続きを行うことが必須です。
具体的な手続き方法としては、指定された日に管轄のハローワークに行き、「失業認定申告書」に求職活動の状況を記載して「雇用保険受給資格者証」とともに提出します。
4週間に一度この手続きを行わなければ、失業保険は支給されないので注意しましょう。
副業などで収入がある
副業などで収入がある場合は、失業状態にあるとみなされず失業保険がもらえないかもしれません。
ただし、以下2点の雇用保険の加入条件を満たしていない場合は、申請することで失業保険が認められます。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 同一の事業主に31日以上雇用されることが見込まれる
上記の要件を満たしていない状態で副業をしている人は、ハローワークへ申請しましょう。
ただし上記の条件を満たし、失業状態であることが認定された場合は、4週間に一度の認定手続きの際に副業で得た収入や働いた日の申請が必要です。
万が一申請を行わなかった場合は、今後一切失業保険が受け取れなかったり、返還や不正受給額の3倍の納付が命じられたりするケースもあります。
年金を受給している場合は注意
失業保険の認定を受けた場合は、一時的に年金の支給はストップされます。
失業保険はたとえ年金を受給していたとしても、要件を満たしていれば受給可能です。
ただし失業保険と年金の両方を同時に受け取ることはできません。
場合によっては、受け取る年金よりも失業保険の金額のほうが低くなることもあるでしょう。
年金を受給中で失業保険を受け取る場合は、どちらがより自分のメリットになるのかを考えてからの申請が大切です。
失業保険がもらえない場合はどうする?
失業保険をもらうには、さまざまな要件を満たす必要があるため、なかには失業保険が受け取れない人もいるでしょう。
ここでは失業保険がもらえない場合の対処法を解説します。
求職者支援制度を使う
失業保険がもらえない場合は、求職者支援制度を利用する方法があります。
求職者支援制度は再就職や転職、スキルアップをめざす方が毎月10万円の生活支援を受けながら、無料の職業訓練を受講できる制度です。
ハローワークが職業訓練から求職活動までサポートしてくれるほか、離職中の方だけでなくパート・アルバイトなど幅広い方の利用が可能です。
対象となる具体的な条件は、下記を参考にしてみてください。
離職の場合の条件 | ・雇用保険が適用されない離職者 ・フリーランスや自営業を廃業 ・雇用保険の受給期間が終了 |
在職の場合の条件 | 一定額以下の収入でパート・アルバイトをしながら正社員をめざしている |
また、上記の人のなかでも以下の要件を満たしていることが必要になります。
① 本人収入が月8万円以下
② 世帯全体の収入が月30万円以下
③ 世帯全体の金融資産が300万円以下
④ 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
⑤ 訓練実施日全てに出席する(やむを得ない理由により欠席し、証明できる場合(育
児・介護を行う者や求職者支援訓練の基礎コースを受講する者については証明ができ
ない場合を含める)であっても、8割以上出席する。)
⑥ 世帯の中で同時に給付金を受給して訓練を受けている者がいない
⑦ 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていない
⑧ 過去6年以内に、職業訓練受講給付金の支給を受けていない
引用元:制度活用の主な要件|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク
上手に活用すれば生活を安定させながら次の就職先を探せるでしょう。
生活困窮者自立支援制度を使う
生活困窮者自立支援制度を利用する方法もあります。
生活困窮者自立支援制度は、働きたくても働けない方や住む場所がない方に対して、一人ひとりに最適な支援プランを作成してくれるサービスです。
就労支援だけでなく以下のような事業も併せて行っています。
事業名 | 内容 |
自立相談支援事業 | 必要な支援の計画を行政職員がともに作成し、自立に向けた支援を行う |
住居確保給付金の支給 | 離職などで住居を失った、あるいは失う恐れのある人に就職活動を行うことなどを条件に一定期間家賃の補助を行う |
就労準備支援事業 | 社会との関わりやコミュニケーションに不安のある方など、すぐには就労ができない方に6ヵ月~1年にわたって就労の能力を培うプログラムを実施 |
家計改善支援事業 | 家計状況を見える化し、家計管理ができるよう支援計画の作成や相談支援、関係機関への取次ぎを行う |
就労訓練事業 | すぐには就労が難しい方に対して作業機会を提供し、就労に向けた中長期的な訓練を実施する |
生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業 | 生活困窮世帯の子どもに対して、学習支援や望ましい生活習慣の作成、仲間との出会いの場を提供する |
一時生活支援事業 | 住居を持たない、インターネットカフェなどの不安定な住居形態にある方に一定期間、宿泊場所や衣食を提供する |
就業だけでなく生活基盤を安定させる支援を行っているため、いざというときの助けになるかもしれません。
失業保険がもらえない場合は他の制度を利用できることもある
失業保険は退職すれば誰でももらえるものではありません。
受給には一定の要件を満たす必要があるため、なかには失業保険を受給できない方もいるでしょう。
失業保険が受給できず、生活が困窮するような事態になった際は、失業保険以外の制度を利用できないか検討してみましょう。
生活や就業に関する支援制度を上手に活用すれば、安定して求職活動に励むことができます。