失業保険には給付制限が設けられており、離職者全員がすぐに受け取れるわけではありません。
正当な理由なく自己都合退職をした場合や重責解雇された場合などは、制限の対象になります。
この記事では、失業保険の給付制限が設けられている理由や、具体的な期間について詳しく見てみましょう。
給付制限によって生活が困窮した場合の対処法についても解説します。
目次
失業保険の給付制限とは?
失業保険の給付制限とは、退職の事由により待機期間の満了後であっても基本手当の支給が行われない期間のことです。
ここでは、失業保険の給付制限を詳しく解説します。
給付制限の期間
給付制限の具体的な期間は、退職の事由によって変わります。
通常、正当な理由のない自己都合退職による給付制限期間は、令和2年10月1日以降に退職した場合であれば2ヵ月です。
しかし、5年間の間に3回以上自己都合退職した場合は、3ヵ月に延長されるので注意しましょう。
例えば次のように就職・離職を繰り返した場合、表のとおりに給付制限が設けられます。
就業期間 | 給付制限期間 |
令和2年10月1日~令和3年10月31日 | 2ヵ月 |
令和3年11月1日~令和5年11月31日 | 2ヵ月 |
令和5年12月1日~令和7年1月31日 | 3ヵ月 |
また正当な理由のない自己都合退職以外にも、以下のケースでは給付制限が設けられることがあります。
- 重大な過失を犯したり、就業規則違反などで解雇されたいわゆる重責解雇の場合、待機期間終了から3ヵ月間の給付制限
- 公共職業安定所の職業紹介や指示された公共職業訓練を不当に拒んだ場合、その拒んだ日から1ヵ月間の給付制限
上記のように重責解雇やハローワークからの就業先・職業訓練の紹介を拒んだ場合は、給付制限が設けられる可能性が高いでしょう。
給付制限があるのはなぜ?
失業保険に給付制限がある理由について、厚生労働省など公的機関からの明言はありません。
ただし、失業保険の性質が会社の倒産などでの失業に対する雇用の安定にあることを考えると、自己都合退職に対する保証が後回しになるのも致し方ないでしょう。
実際に、会社都合での退職の場合は給付制限がかかりません。
やむを得ない事態に早急に対応するため、自己都合退職には給付制限を設けているとも考えられます。
自己都合退職でも給付制限がかからないケース
自己都合退職であっても、正当な理由がある場合は特定理由離職者と判断され、給付制限なく失業保険を受け取ることが可能です。
特定理由離職者に該当する正当な事由での自己退職としては、以下が挙げられます。
- 病気や怪我、事故などによる体調不良・障がいで離職した場合
- 妊娠や出産・育児を理由に受給期間延長措置を受けた場合
- 父や母の扶養・介護のために離職した場合
- 配偶者や親族との同居のために離職した場合
- 結婚・育児・交通機関の廃止などで通勤困難となり離職した場合
- 企業の人員整理などに際し希望退職者として応募した場合
上記のような事由で退職した場合は、自己都合退職であっても給付制限がかからない可能性があります。
自己都合退職での失業保険の扱いについては、こちらの記事もご参照ください。
失業保険の給付制限中に生活が苦しい場合は?
自己都合退職では失業保険の給付まで2ヵ月間の給付制限があるため、生活が困窮するケースも考えられます。
そのような場合は、パート・アルバイトをしても問題ありません。
しかし、給付制限期間中にパート・アルバイトを行うと、失業保険の初回認定の際に収入の有無に関わらず実際に働いた日をハローワークに申告する必要があります。
また、給付制限期間中に以下の条件をどちらも満たして働いた場合は、就職したと判断され就職手続きが必要になるので注意しましょう。
- 原則、週の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みあり
自己都合退職は給付制限を意識して計画的に
自己都合退職をすると2ヵ月ないし3ヵ月の給付制限期間があるため、場合によっては生活が困窮するケースも想定されます。
このことも踏まえて、自己都合退職する際は計画性を持ち行動することが大切です。
今後退職を控えている方は、給付日までの生活費をあらかじめ貯蓄しておくなど、今のうちから退職後の生活も意識しましょう。