アルバイトで働いていると、気になるのが社会保険への加入条件です。
親や配偶者・親族の扶養に入っている場合、一定の条件を満たす働き方をしていると、扶養から外れて個別に社会保険に加入しなければなりません。
逆に、アルバイトであっても社会保険へ加入したい場合は、条件を満たす働き方をすれば社会保険に入れます。
アルバイトの社会保険の加入条件を確認し、目的に合った働き方を考えましょう。
今回は、アルバイトの社会保険の加入条件と、扶養範囲から外れない働き方を解説します。
目次
アルバイトでも社会保険に加入できる
社会保険は、労働者が加入できる公的保険の総称です。
雇用形態を問わず、条件を満たしていれば加入できるため、アルバイトでも社会保険に入れます。
社会保険の内容を、以下で詳しく解説します。
社会保険はセット加入
社会保険は、次の3つの保険がセットです。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
上記3つの保険料の半額を雇用者側、残り半額を加入者が支払います。
各保険の内容を、以下でご紹介しましょう。
健康保険
健康保険は、病院の治療費の自己負担が、本来の金額の3割になる保険です。
被保険者(健康保険に加入した人)と、その扶養に入っている人が対象で、怪我・病気・出産などで病院を利用したとき、状況に合わせた給付を受けられます。
被保険者は、収入に見合った金額を毎月の給与から差し引く形で保険料を支払います。
社会保険の場合、労使(雇用側と労働者側)が保険料を折半するため、給与から差し引かれる保険料は本来の金額の半額です。
厚生年金保険
厚生年金は、被保険者が高齢になったときや、障害で働けなくなったときに給付されます。
被保険者が死亡した場合、配偶者や子どもへの遺族年金として給付され、残されたご家族の生活を支えます。
厚生年金保険は、国民年金にプラスされる2階建て構造なので、国民年金よりも給付される金額が増えるのが特徴です。
介護保険
介護保険は、被保険者やその扶養に入っている人が要介護・要支援になった場合に、一定の金額が給付される保険です。
30代までは介護保険の加入義務はなく、40歳になると自動的に加入することになります。
被保険者やその扶養に入っている人が、65歳以上になって要介護・要支援状態になった場合や、40歳以上で特定疾病(末期ガン・関節リウマチなど)で介護・支援が必要になった場合に介護保険が給付されます。
社会保険とは別に労働保険も加入できる
アルバイトが加入できるのは、社会保険(健康保険・厚生年金保険・介護保険)だけではありません。
労働保険と呼ばれる、雇用保険・労災保険も加入対象です。
雇用保険に加入しておくと、失業したときに給付金(失業保険)を受け取れるほか、職業訓練への補助金もあります。
労災保険は、業務中や通勤中など、特定の条件下で負った傷病に適用される保険です。
そもそもアルバイトの社会保険の加入義務がある会社
社会保険の加入義務がある会社にアルバイトで入って加入条件を満たした場合、自動的に社会保険へ加入できます。
2020年10月から、パート・アルバイトを含む従業員数が101人〜500人の企業は、条件を満たしているパート・アルバイトの保険加入が義務化されました。
2024年10月以降は、パート・アルバイトを含む従業員数が51人〜100人の会社も、パート・アルバイトも保険加入義務が発生します。
最初から保険加入を考えている人は、加入義務がある会社を選ぶと良いでしょう。
アルバイトで社会保険に加入する4つの条件
アルバイトで社会保険に加入するためには、労働時間・雇用期間・収入の金額など、いくつかの条件を満たさなければなりません。
条件の詳細を以下で解説します。
1週間あたりの労働時間が20時間以上
アルバイトで社会保険へ加入する場合、1週間あたりの労働時間が20時間以上必要です。
労働時間に換算されるのは、あらかじめ定められている所定労働時間のみで、休日出勤や残業時間は含まれません。
例えば、1日8時間・週3日勤務の契約でアルバイトした場合、1週間の労働時間は24時間で、週20時間以上の条件を満たします。
2ヵ月以上雇用される見込みがある
2ヵ月以上の雇用が見込まれることも、アルバイトで社会保険に加入する条件の一つです。
最初から2ヵ月以内の短期契約アルバイトだった場合は、労働時間・労働日数の条件を満たしていても加入できません。
ただし、最初は短期契約でスタートし、働き出してから2ヵ月以上の雇用へ移行した場合は、長期契約が決定した時点から社会保険の加入条件を満たします。
月収8.8万円で年収106万円以上
労働時間・雇用期間の条件を満たしていても、月収が8.8万円以上で年収が106万円以上でなければ、社会保険に加入できません。
計算の対象になるのは基本給のみです。
通勤費・残業代などの各種手当や賞与は、年収に含まれません。
例えば年収が106万円だったとしても、通勤費・残業代・賞与が年間で10万円だった場合、
基本給のみの年収では96万円となり、社会保険の加入条件から外れます。
アルバイトで働きつつ社会保険へ加入したい場合は、各種手当や賞与は計算に入れず、月収・年収の概算を出して判断しましょう。
学生以外
基本的に、社会保険への加入対象は社会人のみです。
高校生・大学生といった学生アルバイトは、対象から外れるので加入できません。
たとえ労働時間・雇用期間・給与額の条件を満たしていても、基本的に学生は社会保険適用外です。
ただし、アルバイトをしながら定時制学校に通っている学生や休学中の学生、内定をもらった企業でアルバイトをする学生の場合、労働時間・雇用期間・年収の条件を満たしていれば、加入できる場合もあります。
アルバイトで社会保険に加入する4つのメリット
アルバイトで社会保険に加入するメリットは、次の4点です。
- 年金の受給額が増える
- 健康保険の内容に傷病手当・出産手当なども含まれる
- 保険料は会社と折半できる
- 障害がある状態になった場合に年金が増額される
以下で詳しく解説します。
年金の受給額が増える
社会保険に加入すると、厚生年金の金額が基礎年金に上乗せされるので、将来的に受け取る年金の受給額が増えます。
基礎年金とは、国民年金保険に加入している国民全員が受け取れる老齢年金です。
国民年金だけに入っていた場合、基礎年金の金額しか受け取れません。
社会保険に加入し厚生年金を払うと、2階建ての建物のように厚生老齢年金がプラスされるため、将来的な受給額を増やしたい人にはうれしいメリットです。
健康保険の内容に傷病手当・出産手当なども含まれる
社会保険の健康保険には、傷病手当・出産手当が含まれます。
例えば、病気や怪我で働けない期間があった場合、給与金額の3分の2が給付されるため、療養中の不安が和らぐでしょう。
出産の場合も、産前・産後の計約100日分、給与の3分の2を給付してもらえます。
医療給付は国民健康保険とさほど変わりませんが、健康保険では手当の内容が充実しており、万が一の備えという点で注目したいメリットです。
保険料は会社と折半できる
社会保険の保険料は、雇用する会社側が半分負担します。
国民年金や国民健康保険の場合、全額被保険者が負担しなければなりません。
社会保険の健康保険や厚生年金保険は会社側にも負担義務があるため、保険料は会社との折半になり、被保険者側の負担が半減されます。
保険料の折半は、家計の点から見るとかなり助けになるメリットといえるでしょう。
障害がある状態になった場合に年金が増額される
社会保険に加入しておくと、万が一障害がある状態になった場合も、障害基礎年金より増額した金額がもらえます。
国民年金の障害基礎年金は、障害の程度が1〜2級でなければ支給されません。
対して、社会保険の厚生年金は、障害の程度が1〜3級まで適用されるほか、3級より軽い場合にも障害手当金が支給されます。
障害を負った場合の金銭面の手厚いケアも、社会保険加入の魅力の一つです。
アルバイトで社会保険に加入する際の注意点
アルバイトで社会保険に加入する場合、次のデメリットを考慮した判断が大切です。
- 手取り額が減ってしまう
- 扶養者が扶養控除・配偶者控除を受けられなくなる
以下で詳しく見ていきましょう。
手取り額が減ってしまう
社会保険は、毎月の給与から自己負担金額が引かれるため、時給に基づいて計算した金額より手取り額が減る可能性があります。
厚生年金と健康保険の保険料は、以下の計算で割り出します。
標準報酬月額と保険料率は、毎年更新される全国健康保険協会の資料で確認できます。
標準報酬月額は毎年更新されますが、一度決定した金額が毎月差し引かれるため、アルバイトの出勤日数が少ない月は家計的に痛手を感じるかもしれません。
扶養者が扶養控除・配偶者控除を受けられなくなる
現在ご家族の扶養に入っている人が、アルバイト先で社会保険へ加入した場合、扶養内で働けなくなる可能性があります。
アルバイトが社会保険へ加入するためには年収106万円以上必要ですが、アルバイトの年収が103万円を超えると配偶者控除を受けられなくなり、130万円を超えると扶養から外れなければなりません。
総合的に考えると、金銭面でデメリットを感じる人もいるでしょう。
扶養内で働きたい人は雇用主に伝えておく
扶養内でアルバイトしたい人は、事前に雇用主へ伝えましょう。
面接の段階で、扶養内で働きたいと希望を伝えておけば、働く日数や時間を調整してもらえます。
例えば、週5日出勤でも3時間のショートタイムで働けば、一週間の勤務時間は15時間で収まります。
勤務時間と出勤日数を雇用主と相談し、お互いに納得してから雇用契約書を交わしましょう。
扶養内で働くためにかけ持ちする
アルバイトをかけ持ちし、収入を分散して加入条件から外れるのも良い方法です。
社会保険は各企業ごとに条件を当てはめるため、かけ持ちすれば労働時間・勤務日数が分散され、加入条件から外れやすくなります。
ただし、1点だけ注意しなければならないのが年収です。
扶養の判定において年収は、稼いだ金額の合算で判断されます。
アルバイトを2つかけ持ちした場合、合算した金額が130万円以上にならないよう気をつけましょう。
扶養内で働くために社会保険の加入条件に非該当の会社で働く
社会保険の加入条件に当てはまらない会社なら、アルバイトの社会保険加入条件を満たす場合でも扶養内で働けます。
例えば、法人でない小さな事業所や、事業所非該当承認申請している会社であれば、年収が130万円を超えない限り、社会保険への加入義務はありません。
また、社会保険の加入は2ヵ月以上の連続雇用が条件なので、1ヵ月未満の短期アルバイトで働けば、加入条件に該当しません。
扶養内で働きたい人は、社会保険の加入条件に当てはまらない企業や、雇用期間のアルバイトを選ぶのも良いでしょう。
アルバイトで社会保険に加入する働き方を選ぶかどうかは慎重に
アルバイトでも、加入条件をクリアしていれば社会保険に入れます。
社会保険は、年金の受給額や万一の保障、保険料負担などの面でメリットがあるため、入りたい人は加入条件を満たし、雇用主へ申請すると良いでしょう。
ただし、アルバイトの社会保険加入は、手取り金額が減少したり、扶養者が控除を受けられなくなったりといったデメリットもあります。
メリットとデメリットを比較して、自分の働き方に合うかどうか、慎重に見極めましょう。