ビジネスマナーとは、職場の人や取引先の人を不愉快な気持ちにさせず、気持ち良く働くための社会人のマナーです。
しかし、社会人になったばかりでは、ビジネスマナーを十分に習得できていない場合もあるのではないでしょうか。
この記事では、まずビジネスマナーに必要な挨拶がどのようなものなのかに着目し、相手や状況に合わせた作法を細かく解説します。
挨拶やお辞儀の仕方、紹介の順番などに加え、好印象を与える挨拶のポイントも紹介します。
ビジネスマナー初心者の方や、ビジネスマナーを復習したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ビジネスマナーにおける挨拶の礼儀作法
ビジネスシーンは、丁寧な対応と感じの良い人柄だけで乗り切れるものではありません。
挨拶一つとっても、ビジネスの場では慣習として正しいとされるやり方や作法があり、社会人のマナーとしても浸透しているのです。
まずは、ビジネスマナーの挨拶の基本として以下の3つを紹介します。
- 自分から挨拶をする
- 語先後礼(ごせんごれい)を守る
- 挨拶で紹介する順番を心得る
自分から挨拶をする
ビジネスマナーでは挨拶の作法が大切ですが、作法以前にまずは自分から挨拶をすることが重要です。
挨拶はただ儀礼的な言葉を並べただけのものではなく、以下のような意味合いを持っています。
- あなたに会えてうれしいです
- 今日はよろしくお願いします
つまり、挨拶は良好な関係を築くために欠かせないものなのです。
好印象を与えるためには、相手の挨拶を受けてから挨拶を返すのではなく、まずは自分から挨拶をするように心がけましょう。
語先後礼を守る
語先後礼(ごせんごれい)は、まず言葉を先に伝えてからお辞儀をすることです。
お辞儀をしてから「おはようございます」などと挨拶の言葉を発したり、言葉と同時に頭を下げたりするのではなく、まずは相手の目を見て明るく言葉を発し、そのあとにお辞儀をするようにしましょう。
語先後礼は一般的な挨拶のマナーとして浸透しているため、正しくできていないと相手に違和感を与える可能性があります。
ビジネスシーンに限らず普段から語先後礼を習慣づけて、とっさの際にも正しく使えるようにしましょう。
挨拶で紹介する順番を心得る
挨拶は自分から行うと述べましたが、挨拶の際に人を紹介するのには、決まった順番があります。
取引先で同行者を紹介する場合は、自社の人を先に紹介します。
同行者が自社と他社の人の場合も自社の人が先です。
基本的に身内から紹介すると覚えておきましょう。
ここでは、紹介する順番を以下のケース別に見ていきましょう。
- 性別が違う場合
- 立場が違う場合
- 年齢が違う場合
- 一人と複数人を互いに紹介する場合
- 複数の企業の人を紹介する場合
性別が違う場合
以前は男性を先に紹介するのが原則でしたが、現在は性別で挨拶の順番を決めることが減っており、状況によって使い分ける傾向です。
ただし、勤務先によってルールがある場合は、それに従うようにしましょう。
立場が違う場合
ビジネスの場で人を紹介するときは、役職などの立場によって順序が決まります。
基本的には、立場が下の人を先に紹介し、それから上の人を紹介します。
年齢が違う場合
年齢が異なる人を紹介する場合、年少者から紹介します。
ただし、年齢が同じくらいの場合は、自分と関係の深い人を先に紹介しましょう。
一人と複数人を互いに紹介する場合
営業職などでは、一人と複数人が同席した状況で、お互いを紹介するケースがあります。
その場合は、原則として一人を先に紹介しましょう。
複数の企業の人を紹介する場合
会議などで複数の企業からメンバーが集まった際には、関係が深い企業を先に紹介します。
また、目上の人物があとになるように紹介するのも一つの方法です。
ビジネスマナーのお辞儀の仕方
ビジネスマナーでは挨拶と礼、いわゆるお辞儀がセットとされています。
ここでは、ビジネスマナーにおいて基本的なお辞儀である会釈と中礼、最敬礼の3種類と、広く浸透している目礼を解説します。
会釈
会釈はビジネスマナーの挨拶のなかで、最もカジュアルで軽い挨拶です。
社内で目上の人とすれ違うときや、遠くにいる相手と目が合ったときなどに使います。
会釈のやり方は以下のとおりです。
- 背筋を伸ばし、腰から上半身を前方へ15度ほど倒す
- 目線は自分の足元から1.5mほど先に向けるようにする
首を少し傾けるだけでは会釈とはいえず、失礼な印象を与える可能性があります。
挨拶のなかではカジュアルな部類ですが、正しい会釈の仕方を身につけ、相手に失礼な態度をとらないようにしましょう。
中礼
中礼は普通礼や敬礼ともいわれており、一般的なお辞儀を指します。
ビジネスシーンで頻繁に使うお辞儀であるため、いつでも正しく使えるようにしておきましょう。
取引先や顧客との挨拶、訪問客へのお迎え・お見送り、打ち合わせ終了後など、あらゆる場面で使用します。
中礼のやり方は以下のとおりです。
- 姿勢を正し、腰から上半身を前方へ30度ほど倒す
- 目線は足元の先に落とす
会釈に比べて深いお辞儀になるため、会うたびに行うと相手の負担になる可能性もあります。
相手と頻繁に会う場合は、中礼は最初や最後のみに留め、ほかは会釈で対応するのも良いでしょう。
最敬礼
最敬礼とは一番丁寧なお辞儀であり、丁寧礼と呼ばれることもあります。
深々と頭を下げて行うお辞儀であり強い印象を与えるため、普段から頻繁に使用するのではなく、状況に合わせて適切に使う必要があります。
使用場面は、相手への謝罪や感謝を伝えるとき、何かをお願いするときなどです。
また、冠婚葬祭のときにも使います。
最敬礼のやり方は以下のとおりです。
- 腰から上半身を前方へ45度ほど倒す
- 目線は足元の先に落とす
- 一呼吸おいてからゆっくりと身体を起こす
普段から使用すると相手に違和感を与えたり、恐縮させてしまう可能性があります。
また、何度も行うとすぐに頭を下げる人というイメージを持たれてしまい、信頼が減少することも考えられるので注意しましょう。
目礼
ビジネスマナーの基本的なお辞儀は会釈と中礼、最敬礼ですが、他には目礼というお辞儀があります。
目礼とは、相手と目を合わせ、状況によっては軽く頭を下げる、目線を用いた挨拶のことです。
会釈と似ていますが、会釈に正しいやり方があるのに対し、目礼にはそこまで厳密なやり方がありません。
離れた距離でお互いに気付いたときや、たまたま目が合ったときなどに、気軽に使用できる挨拶です。
厳密なやり方はありませんが、以下のポイントに注意すると印象が良くなるでしょう。
- 相手と目を合わせる
- すぐに目を逸らさない
- 笑顔を向ける
普段のちょっとしたときにも使える挨拶であり、適度に使うと印象アップにもつながるので意識して使用してみましょう。
ビジネスマナーの挨拶のポイント
正しい挨拶をしても、なぜか印象が良くならない場合はどうしたら良いのでしょう。
相手に好印象を与えられる挨拶のポイントを2つ紹介します。
相手の名前を呼ぶ
挨拶をするときに、ただ「おはようございます」と言うのではなく、相手の名前を呼ぶことで、印象が良くなることがあります。
ネームコーリング効果という、名前を呼ばれることで相手に親近感を覚えさせる心理効果です。
緊張をしていて表情がうまく作れない場合でも、名前を呼ぶだけでぐっと距離が近づき好印象を与えられるため、ぜひ使いたいテクニックです。
最初は気恥ずかしいかもしれませんが、習慣化することで名前を呼ぶことに抵抗感がなくなるケースもあるので、毎日続けてみましょう。
明るくはっきりと声を出す
明るくはっきりと声を出して挨拶をすると、相手に好印象を与えられます。
ビジネスマナーを習得しておらず不安な時期は、小さく控えめな挨拶になってしまうこともあるでしょう。
だからこそ、明るく明瞭な挨拶で好印象を与えるよう努めることが大切です。
円滑な人間関係を構築できるように、できるだけまわりを明るくするような挨拶を心がけましょう。
ただし、静かな場所で大きな声を出すとまわりの迷惑になり、不快感を与える可能性もあります。
声の大きさは状況に応じて使い分けましょう。
状況別のビジネスマナーの挨拶
ここからは状況に応じたビジネスマナーの挨拶を紹介します。
すぐに使えるものばかりなので、ぜひビジネスマナーを使う際の参考にしてください。
社内の人に挨拶する場合
まずは社内の人に挨拶する場合を見ていきましょう。
出社したとき
出社したときに適切な挨拶は「おはようございます」です。
できるだけ明るく元気に相手の名前を呼びかけ、自分から先に挨拶しましょう。
親しい人や関係の深い人には、挨拶のあとに日常会話を一言つけ足しても良いでしょう。
離席・外出するとき
離席や外出をするときには、まわりの人に席を外すことを知ってもらうために挨拶をする必要があります。
適切な挨拶は「〜へ行ってまいります」です。
また、社内の人にいつ戻ってくるのかを把握してもらうために、席に戻る予定時間や出かける理由を伝えておくようにしましょう。
帰社したとき
外出先から帰ったときに適切な挨拶は「ただいま戻りました」「戻ってまいりました」「遅くなりました」などです。
帰ってきた人には「おかえりなさい」と声をかけましょう。
社内で会ったとき
朝ではない時間帯に社内ですれ違ったときなどは「おつかれさまです」と挨拶するのが適切です。
社内では基本的に「こんにちは」や「こんばんは」は使いません。
ただし、相手が忙しそうなときや他人と話しているときなどは、邪魔しないように会釈に留めましょう。
また、社内でも社外の人に会ったときは「お世話になっております」を使用します。
「おつかれさまです」は社内で働く者同士にのみ使うのがマナーなので注意しましょう。
退社するとき
退社するときはこっそり帰るのではなく「お先に失礼します」と挨拶します。
「おつかれさまでした」の一言を付け加えると良いでしょう。
「ごくろうさまでした」は目上から目下に向ける言葉なので、使わないように注意しましょう。
上司も部下もいる場合は「おつかれさまでした」に統一しておくと安心です。
退社する人に向けては「おつかれさまでした」と返しましょう。
自分が会社に残っていて大変な場合でも、気持ち良く声がけすることが大切です。
社外の人に挨拶する場合
次に、社外の人に挨拶する場合を見ていきます。
初対面のとき
初対面の相手に適切な挨拶は「はじめまして」です。
そのあと、状況に応じて名前を名乗ったり、簡単な自己紹介を行ったりします。
また、「よろしくお願いいたします」の一言を加えると印象が良くなるでしょう。
取引先の人と会ったとき
取引先の人と会ったときに適切な挨拶は「お世話になっております」です。
個人的に初対面の相手でも、会社として取引がある場合は使えます。
そのあと、予定をあけてくれたことへの感謝を伝えます。
例えば「本日はお忙しいなか、お時間をいただきましてありがとうございます」などです。
入室するとき
取引先の応接室や会議室など、打ち合わせの部屋に入るときには「失礼いたします」と声をかけ、一礼して入ります。
無言で突然入室すると、相手が驚いてしまうので注意しましょう。
相手が来訪したとき
取引先の人やお客様が来訪したときには「いらっしゃいませ」や「こんにちは」と明るく挨拶をしましょう。
また、待っていたことを伝えるために「お待ちしておりました」や「お待ち申し上げておりました」などを付け加えると好印象です。
来訪の感謝を込めて「お越しくださいましてありがとうございます」など、お礼の言葉を付け加えても良いでしょう。
久しぶりに会ったとき
社外の人と久しぶりに会った場合の挨拶は「ご無沙汰しております」です。
ただし、親しい間柄の人には「お久しぶりです」とカジュアルな言い方をする場合もあります。
取引先から帰るとき
取引先から帰るときの挨拶では、時間を作ってくれたお礼を述べるようにしましょう。
「お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございました」などです。
そして、最後に「失礼いたします」の一言も忘れずに。
お見送りをしてくれる場合は、適当な場所で「お見送りはここまででけっこうです」と申し出ましょう。
ビジネスマナーの挨拶を習得して社会人生活をスムーズに
ビジネスマナーは、社会人として働いていくためには避けて通れないルールのようなものです。
相手を敬う気持ちがあれば良いと思うかもしれませんが、ビジネスの場でそれを伝えるのは簡単なことではありません。
だからこそ、ビジネスマナーに則った行動が求められるのです。
この記事ではビジネスマナーの挨拶を基本から解説しました。
挨拶は相手や状況によって使い方が異なります。
まずは挨拶の作法を習得して、これからの社会人生活をスムーズに送れるようにしましょう。