面接での質問では、「尊敬する人は誰ですか?」とたずねられるケースがよくみられます。
父・母・祖父母をはじめ、学校や部活の恩師・偉人など、さまざまな人物が挙げられるでしょう。
では、もし実際に面接で尊敬する人をたずねられたら、どのような回答をするのが良いのでしょうか。
今回は、面接で尊敬する人を聞かれたときの答え方や、特に尊敬する人がいない場合の対策をくわしく解説します。
目次
面接で尊敬する人を聞かれた際の回答ポイント
面接で「尊敬する人は?」と聞かれたとき、どのように答えれば良いのか迷う方もいるのではないでしょうか。
つい難しく考えてしまいがちですが、ポイントを押さえて考えれば、面接にふさわしい回答が可能です。
面接で尊敬する人を聞かれたときのポイントを解説します。
「好き」と「尊敬」の違いを理解したうえで答える
面接で尊敬する人を答えるときは、「好き」と「尊敬」の違いを認識したうえで、尊敬に値する人物を挙げることが大切です。
混同されがちですが、「好き」と「尊敬」では向ける感情が異なります。
例えば、プロスポーツ選手の名前を挙げたとします。
もしも、好ましく思った理由が「活躍してるから」「かっこいいから(かわいいから)」「テレビでよく見るから」程度なら、尊敬しているとはいえません。
プロスポーツ選手が行う努力や、性格、行動に着目し、見習っている点があるなら、尊敬しているといえます。
「好き」と「尊敬」を区別して考え、尊敬に値する人物を伝えましょう。
エピソードを交えて具体的に伝える
尊敬する人を答えるときは、具体的に尊敬している点やエピソードなどを交えると、面接官にも気持ちが伝わります。
次の順番で話すと、内容も整理できてきれいにまとまるでしょう。
- 尊敬できる人
- 尊敬したエピソード
- そのエピソードを尊敬した理由
- 受けた影響をどう活かしていくのか、あるいは取り組んでいるのか
それぞれの項目を、以下でくわしく解説します。
1.尊敬できる人
最初に伝えるのは、尊敬できる人の簡単なプロフィールです。
著名人なら名前を、家族や友人・恩師であれば、自分からみた関係性(父・母・〇〇の先生など)を述べましょう。
最初に結論を伝えるのは、面接官の質問に対し、的確に対応できる能力があると示すためです。
できるだけシンプルな形で、尊敬できる人の名前や立場を伝えてください。
2.尊敬したエピソード
次に伝えるのは、尊敬するに至ったエピソードです。
例えば、「〇〇でお世話になった先生」とだけ伝えられても、具体性がないので面接官はピンときません。
尊敬するきっかけとなった背景や事情を掘り下げて伝え、面接官が共感できるようにしましょう。
3.そのエピソードを尊敬した理由
尊敬するきっかけとなったエピソードを伝えたら、なぜ尊敬の気持ちを持ったのか理由を話します。
わかりにくい方は、自分がどのような点に感銘を受けたのかを伝えても良いでしょう。
尊敬した理由を話すときは、自分がどのように感じたのかも伝えると、面接官の印象をより強くします。
4.受けた影響をどのように活かしていくのか、あるいは取り組んでいるのか
最後に伝えるのは、尊敬する人から受けた影響を、今後どう活かしていくのかです。
すでに何かしらの結果が出ている人は、尊敬する人からの影響によりどのような取り組みを行ったかでも良いでしょう。
過去に受けた良い影響を活かす姿は、仕事に対する前向きな姿勢につながります。
面接官に向上心を示せるので、良い影響を積極的に取り入れて、将来的に成長したい気持ちをあらわしましょう。
【例文】人物別 面接で尊敬する人を聞かれた場合の答え方
面接で尊敬する人を答える際のポイントを解説しましたが、具体的な例がないと不安な方もいることでしょう。
実際の例文を参考にすると、自分のケースにあてはめて考えやすくなります。
面接で尊敬する人を伝えるときの例文を、人物別に分けて解説します。
家族(父・母・兄弟姉妹)
母はとてもバイタリティにあふれ、行動力とコミュニケーション能力に優れています。
私が高校生になった頃からボランティア活動を始めましたが、ご近所に住む一人暮らしのお年寄りのお手伝いをしたり、小さな子どもたちを預かってお世話をしたりと、常にご近所の方から頼られている存在です。
現在は地域コミュニティを作りあげ、代表として頑張っています。
私も地域コミュニティのお手伝いをしていますが、母の行動力とコミュニケーション能力を見習い、何事にも積極的に取り組みたいと考えています。
尊敬する人に家族を挙げるケースはよくみられますが、身近な存在だけに主観も入りやすくなります。
客観的な視点から尊敬できる点をピックアップして、面接官に共感してもらえるようにしましょう。
歴史上の人物
相対性理論やブラウン運動などの物理理論で有名ですが、私が感銘を受けたのは、彼が残した「重要なのは、疑問を持ち続けること」という言葉でした。
疑問は好奇心を刺激し、「試してみよう」「やってみよう」と行動へつながります。
少しずつではありますが、私も日常生活のふとした疑問を見落とさないよう、意識しています。
積極的に調べたり、学んだりする行動を怠らないよう、努めていきたいです。
歴史上の人物は、面接官がよく知っている人物である可能性もあります。
掘り下げて質問されることもあるので、取り上げる人物の基本情報や偉業は詳細に調べておきましょう。
恩師
恩師は武道で有名な大学の出身で、仕事で忙しいときも練習を欠かしませんでした。
「休みたい気持ちに心が負けたら、負けを許すことになるから」といって、必ず道場に顔を出します。
自分の気持ちに勝つことの大切さを、恩師の言葉で学びました。
私も「自分の弱い気持ちに負けない心」を意識して、日々の努力を怠らないよう努めたいと思います。
学校や部活動でお世話になった恩師は、活動を通じて心に残るエピソードもあるので、取り上げやすい人物です。
恩師の人となりを最初に説明しておくと、面接官も話に入り込みやすくなります。
印象に残った言葉やエピソードから、今の自分に影響を及ぼした言動・行動をピックアップしてみましょう。
著名人
『鉄腕アトム』や『ブラックジャック』など、多くの作品を発表してきましたが、特に感銘を受けたのは、亡くなる直前まで原稿を描こうとしていたというエピソードです。
末期の胃がんで痛みもあるはずなのに、「原稿を描かせてくれ」と訴える強い気持ちと、痛みをかえりみず起きあがろうとする執念があったからこそ、多くの人が作品に惹きつけられるのだと思います。
勉強でも仕事でも、熱心さがなければ続かないでしょう。
私も、手塚治虫のように最後まで仕事に向き合い、結果を出し続けられるよう努力します。
著名人も、尊敬できる点があるのなら、質問の答えに最適です。
有名なエピソードが盛り込まれていれば、面接官の共感も得やすいでしょう。
ただし、著名人も歴史上の人物と同様に、面接官が深い知識を持っている可能性があります。
取り上げる著名人の情報をくわしく調べて、質問にもできる限り答えられるように準備しておきましょう。
【例文】NG編 面接で尊敬する人を聞かれた場合の答え方
面接で尊敬する人をたずねられたとき、避けたほうが良い表現や注意点があります。
具体的な例を挙げて解説するので、実際に文章を考えるときの参考にしてみましょう。
抽象的
どのような人物を取りあげる場合でも、抽象的な表現で済ませるのはNGです。
自分では抽象的だと感じなくても、次のような表現では印象がぼやけてしまい、尊敬していると伝わりにくくなります。
- すごいと思います
- 素晴らしいと思います
- みんなのために頑張りました
- いろいろな努力をしました
- 大変なのに負けませんでした
これらの表現は、決して使ってはいけないわけではありません。
しかし、具体性に欠けて抽象的になると、面接官への印象は弱くなってしまいます。
以下で悪い例文をご紹介しますので、先述した良い例文と比較して、どこが悪いのか確認してみてください。
母は毎日ボランティア活動をしていて、いろいろな人を手助けしていてすごいなと思います。
お年寄りから小さな子どもまで、困っている人のために頑張っています。
私も母のように、いろいろな人を手助けできる人になりたいです。
相対性理論やブラウン運動などの物理理論で有名ですが、私が感銘を受けたのは、彼が残した「重要なのは、疑問を持ち続けること」という言葉でした。
常に疑問を持つことはすごいことです。
私もいろいろなことに目を向けて頑張っていきたいです。
恩師は武道で有名な大学の出身で、毎日練習を欠かしませんでした。
必ず道場に顔を出すのは、すごいことです。
恩師の姿から、私はさまざまなことを学びました。
私も恩師のように、毎日頑張りたいと思います。
多くの作品を発表してきましたが、特に影響を受けたのは、亡くなる直前まで原稿を描こうとしていたことです。
病気で大変なのに、頑張って原稿を描こうとするのはすごいと思います。
私も最後まであきらめず、いろいろなことを頑張りたいです。
尊敬する人の説明が長い
尊敬する人について話すときは、人物の説明を簡潔にしましょう。
対象人物を説明するときに、ある程度の人となりを伝えることはたしかに大切です。
しかし、人物の説明が長いとそちらの印象が強くなってしまい、尊敬している部分が伝わりません。
例えば、織田信長を尊敬する人物に挙げたとします。
織田信長の没年月日や歴史上の偉業など、エピソードに関係ないことばかり説明されてしまうと、面接官も尊敬している理由がわかりません。
尊敬する人の説明は短くし、尊敬できる部分の紹介と、自分が今後どうしたいかを長めに説明しましょう。
以下で悪い例文をご紹介します。
先述した良い例文と比較してみてください。
母は今年〇歳で、私が中学校を卒業するまで食品工場に勤めていました。
高校生になった頃にボランティア活動をはじめ、ご近所に住む一人暮らしのお年寄りのお手伝いをしたり、小さな子どもたちを預かってお世話をしたりと、常にご近所の方から頼られている存在です。
現在は地域コミュニティを作りあげ、代表として頑張っています。
また、趣味をたくさん持ち、休みの日には活発に出かけています。
最近は時々一緒に出掛けることもあり、友達のような存在でもあります。
私も母を見習って、何事にも積極的に取り組みたいです。
アインシュタインはドイツで生まれ、幼い頃は上手に話せませんでした。
しかし、数学の能力に優れていて、独学で難しい数学を学びます。
26歳のときには、光量子仮説・ブラウン運動・特殊相対性理論を発表し、物理学界でも注目されるようになりました。
彼は、「重要なのは、疑問を持ち続けること」という言葉も残しています。
私も日常生活のふとした疑問を見落とさず、積極的に調べたり学んだりする行動を、怠らないよう努めていきたいです。
恩師は卒業したのは、武道で有名な〇〇大学です。
毎日剣道の練習を続け、体育学部を卒業して体育の教員になりました。
私が高校生のときに母校へ転勤してきましたが、毎日の指導は厳しいものでした。
しかし、恩師も日々独自のトレーニングを欠かさず、昇段試験のために合宿へ出向いていたのを覚えています。
「休みたい気持ちに心が負けたら、負けを許すことになるから」といって、必ず道場に顔を出す方でした。
私も「自分の弱い気持ちに負けない心」を意識して、日々の努力を怠らないよう努めたいと思います。
手塚治虫は『鉄腕アトム』や『ブラックジャック』、『火の鳥』など、多くの作品を発表した漫画家です。
医師の免許も持っており、作品でもその知識が活かされています。
兵庫県宝塚市の出身で、戦後まもない1946年から漫画家として活躍。
少年漫画から青年漫画・少女漫画など、あらゆるジャンルの漫画作品を発表しました。
漫画の神様とも呼ばれましたが、晩年には胃がんを患い、60歳で亡くなります。
私が感銘を受けたのは、亡くなる直前まで原稿を描こうとしていたエピソードです。
末期の胃がんで痛みもあるはずなのに、「原稿を描かせてくれ」と訴える強い気持ちと、痛みをかえりみず起きあがろうとする執念があったからこそ、多くの人が作品に惹きつけられているのだと思います。
勉強でも仕事でも、熱心さがなければ続かないでしょう。
私も、手塚治虫のように最後まで仕事に向き合い、結果を出し続けられるよう努力します。
尊敬する人がいない場合の面接での対策
事前に文章をまとめようと思っても、なかなか尊敬する人が思い浮かばない方もいるでしょう。
面接にふさわしい人物を探そうと思うと、焦ってしまうものです。
尊敬する人がいない場合は、面接に臨む前に対策に取り組んでおきましょう。
具体的な対策をくわしく解説します。
自分のなりたい人物像から考える
尊敬する人がいない場合は、自分がこうなりたいと思う人物像を思い浮かべるのも良いでしょう。
例えば、大変な努力で研究を成し遂げたり、苦労をして目標を達成したりした人がいるとします。
自分も同じように頑張りたいと思ったら、似たような経験がある人物を検索して、尊敬の対象にしてみましょう。
身近な人でも、有名人・著名人でも構いません。
自分の理想像をはっきりさせると、尊敬する人が見つかりやすくなるでしょう。
「誰を答えるか」よりも「尊敬できるポイント」を考える
特定の人物を探すより、尊敬できるポイントを考えると、面接で質問されても回答しやすくなります。
例えば、横断歩道で困っているお年寄りを助けてあげたり、道端のゴミを何気なく拾ってゴミ箱に捨てている人をみて、「すごいな」「良い人だな」と感じたら、それが尊敬できるポイントです。
尊敬できるポイントを持っている人物がいたら、その人を対象にしましょう。
見つからなかった場合は、最初に人物を定めてから、尊敬できるポイントを探す方法もあります。
特定の人物を挙げることが難しいときは、尊敬できるポイントからアプローチしてみましょう。
尊敬する人の回答内容は面接の合否に影響する?
厚生労働省では、公正な採用試験・面接の実施を促すため、「公正な採用選考の基本」を定めています。
採用する企業は、応募者の基本的人権を尊重し、適性や能力に基づいた選考を行わなければなりません。
面接で尊敬する人をたずねられても、その回答内容は仕事の適性や能力には関係ないので、直接的には合否にさほど影響しません。
ただし、選んだ人物やエピソードには、応募者の人柄や考え方が反映されます。
自己アピールのチャンスと考え、事前準備を行いましょう。
面接で「尊敬する人は?」の回答は選ぶ人物より選んだ理由が大切
面接で尊敬する人をたずねられたとき、企業は回答を通して、あなたの人柄や考え方をみています。
誰を選んだかよりも、選んだ理由やエピソードを通し、あなたらしさを見極めていると考えましょう。
合否に大きな影響はありませんが、まとまりのない内容を話すと、面接官に良い印象を与えられません。
ポイントを押さえた回答を考え、面接官に自己アピールできるような話し方で伝えましょう。