ビジネスマナーは、社会人として身につけておくべき礼儀であり、一緒に仕事をする人への思いやりです。
同世代ばかりが集まっていた学生時代とは異なり、社会人のつながりは年齢・性別・業種もさまざまです。
円滑に仕事を進め、相手から信頼を得るためには、場面に見合った態度や言葉遣いが欠かせません。
ビジネスマナーを身につけておくと、仕事で付き合う人とのコミュニケーションもスムーズになり、お互いに良い信頼関係を築けます。
今回は、ビジネスマナーの基本とともに、社会人として知っておくべき作法を詳しく解説します。
目次
ビジネスマナーの基本
ビジネスマナーとは、仕事における言葉遣いや身だしなみ、仕事にふさわしい挨拶の仕方など、社会人として身につけておくべき礼儀作法の総称です。
最初は戸惑う人もいますが、基本を知っておけば理解しやすく、スムーズに実践できます。
ビジネスマナーの基本と、抑えておくべきポイントを解説します。
挨拶
仕事で行う挨拶は、相手と自分との立場や関係により、タイミング・作法を使い分けることが大切です。
ビジネスマナーの挨拶の基本をご紹介します。
自分からする
ビジネスマナーの基本ルールとして、最初に身につけるべきなのが挨拶の作法です。
目上の人はもちろんのこと、同僚やお客様など、仕事関係で付き合いがある人には、自分から挨拶しましょう。
出社や退社の挨拶はもちろんですが、「〇〇に行ってまいります」「ただいま戻りました」など、報告を兼ねた挨拶も欠かさないようにしてください。
自分から積極的に挨拶をすると、相手への印象が良くなり、円滑なコミュニケーションが生まれます。
状況に応じて使い分ける
ビジネスマナーの挨拶は、状況に応じて使い分けるようにしてください。
例えば、挨拶をするときのお辞儀には次のような種類があり、相手との距離感や立場に応じて行うべきお辞儀が変わります。
- 目礼
- 会釈
- 敬礼
- 最敬礼
- 拝礼
同僚や会社の守衛などに挨拶をする場合は、目礼や軽い会釈でも失礼になりません。
しかし、お客様や会社の重役に対して挨拶したり、謝罪やお礼をしたりするときは、敬礼以上でないと失礼になります。
挨拶の基本を覚えて、状況に応じて使い分けましょう。
言葉遣い
言葉遣いは、ビジネスマナーが身についているかどうかがわかりやすい項目です。
「です」「ます」という丁寧語で話すのはもちろんですが、尊敬語や謙譲語も正しく使い分け、ビジネス上の付き合いを円滑にしなければなりません。
例えば、お客様にお茶やお菓子を出す際、「お召し上がりください」は尊敬語なので正しいですが、「いただいてください」は謙譲語なので誤りであり、失礼になります。
言葉遣いは、ただ丁寧なだけでは十分でなく、相手にふさわしい言葉を選んで使うことが大切です。
ビジネスマナーを守った言葉遣いをもっと詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
身だしなみ
ビジネスマナーのなかでも、相手に与える最初の印象に大きく影響するのが身だしなみです。
付き合いを続けていれば人となりも判断できますが、そもそも身だしなみが整っていないと付き合いを敬遠されてしまいます。
例えば、サイズが合わないブカブカのスーツやジャケットでは、全体的にだらしがないイメージです。
派手なメイクや髪型・髪色は、ビジネスとプライベートを分けられないと思われてしまうでしょう。
汗ジミや汚れのあるシャツを着ていたり、髭や爪の手入れを怠っていたりすると、不潔な人だと判断されます。
相手に良い印象を与え、気持ち良く仕事を進めるために、清潔感のある身だしなみを心がけましょう。
理想的な身だしなみについて、下表に詳しくまとめたので参考にしてください。
【男性 】
- サイズの合ったシンプルなスーツやシャツを選ぶ
- アイロンを当て、袖ぐりや襟ぐりの汚れを確認する
- 靴もシンプルなものを選び、汚れがないように磨く
- 髭の剃り残しがないようにする
- 顔のテカリや伸びた爪は不潔感を与えるため、こまめに手入れする
- 口臭・汗臭さ・ワキガ・酒臭さなどにも注意する
【女性】
- サイズの合ったオーソドックスなデザインで質の良い服を選ぶ
- 靴は、カジュアルに見えるデザインは避け、きちんと磨く
- ストッキングは肌色で無地のものを選ぶ
- ナチュラルメイクを心がける
- 長髪は仕事を妨げたり、暗い印象を与えることのないようにまとめる
時間厳守
時間厳守は、社会人でなくても身につけておくべきマナーの一つです。
しかし、社会人の時間厳守は学生時代よりもさらに厳しく、これまで以上にしっかりと心がけなければなりません。
例えば、学生時代であれば謝罪だけで許された遅刻も、社会人になると謝罪だけでは済まない可能性があります。
取引先との約束の時間に遅れたり、連絡を無視して勝手に時間変更したりすれば、社会人としてだけではなく会社の信用度も下がることでしょう。
報連相
報連相とは、「報告」「連絡」「相談」を頭文字で表したビジネス用語です。
この3つはすべて「情報を伝える」ための行動で、ビジネスを円滑に進めるための必須マナーといえます。
例えば、自分が請け負っている作業の進捗状況を報告していなければ、上司は全体的な仕事の達成度を把握できません。
仕事の変更点を連絡しなかったり、悩みながらも相談せず勝手な判断で進めてしまうと、作業自体が間違った方向へ進んでしまいます。
つまり、情報を共有してスムーズに仕事を進めるための基本が報連相です。
報連相は、社会人になりたての新人だけでなく、仕事に慣れているベテラン社員の人も、意識していないと失念することもあります。
報告・連絡・相談、それぞれの目的は以下のとおりです。
3つのアクションの意味を理解して、報連相の徹底を心がけましょう。
報告 | 仕事の結果や進捗状況を上司や取引先に伝えること。 |
連絡 | 仕事に関する変更点や新規の情報を上司や同僚、取引先に伝えること。 |
相談 | 仕事に対する悩みや問題点をチーム内で明らかにし、上司や同僚に意見を求めたりアドバイスを受けたりすること。 |
名刺交換
名刺交換では、差し出し方・受け取り方・受け取ったあとの行動ごとにマナーがあります。
一連の流れになっていますので、スムーズに名刺交換できるよう、しっかりと身につけておきましょう。
目下の人から差し出す
名刺交換は、目下の人から目上の人へ差し出してください。
ここでいう目上・目下とは、会社での役職のことではありません。
お金を払う立場の人、つまりお客様にあたる人が目上で、仕事の依頼を受ける側が目下です。
複数の相手と名刺交換をするときは立場を考慮し、上位の相手から順に差し出すようにしてください。
なお、名刺の印字された部分に指をおくのもNGです。
余白部分に指を置いて渡しましょう。
受け取り方
名刺を受け取るときは、両手で受け取りましょう。
そのときには「頂戴いたします」と一言添え、印字の部分に指が触れないよう気をつけてください。
目上の相手から先に名刺を差し出された場合はすぐに受け取らず、「申し遅れました」と挨拶してこちらも差し出すのがマナーです。
先にこちらの名刺を受け取っていただき、そのあとで目上の相手の名刺を受け取りましょう。
受け取ったあと
受け取ったあとの名刺は、相手に失礼がないよう取り扱ってください。
話しながら名刺を握り込んだり、名刺を持った手をぶらぶらと振ってはいけません。
受け取った名刺は、着席して落ち着くまで名刺入れの上に乗せておき、お互いに腰を落ち着けてからテーブルの上に置きましょう。
複数の名刺を受け取った場合は、一番役職が高い人の名刺を名刺入れの上へ、それ以外の人の名刺をテーブルに置いてください。
名刺交換のマナーをもっと詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
電話対応
電話対応は、かけるときと受けるとき、それぞれに気をつけるべきマナーがあります。
具体的な注意点を解説しましょう。
かけるとき
電話をかけるときは、次の3つのポイントに注意します。
- 電話をかけるタイミング
- 名乗りと伝えたい内容を簡潔に話す
- 電話で話して良い内容だけ話す
仕事の電話は、相手が受け取りやすいタイミングでかけることが大切です。
昼食時間や業務時間外など、相手が席を外していると思われる時間帯は避けて電話しましょう。
仕事の電話では、まず自分が勤めている会社名と所属部署・名前を伝え、内容を簡潔に話すのがマナーです。
うまく話せないときは、事前に話したい内容を箇条書きにしておくと良いでしょう。
また、仕事関係の内容であっても、高額取引に関わる事項や守秘義務がある内容、お礼・謝罪を電話で話すのはよくありません。
もし該当する内容を話したいのであれば、電話で直接会う約束を取り付けましょう。
受けるとき
電話を受けるときは、次の点に注意してください。
- コール3回以内で取る
- コール3回以上で取った場合は「お待たせいたしました」と一言添える
- 社名と名前を伝える
- 受話器は左手に取り右手はメモの用意をする
- 相手が誰なのかを確認する
- 名乗らない場合は「失礼ですがお名前をよろしいですか?」とたずねる
- 担当者に取り次げないときは「折り返し御連絡いたしましょうか?」とフォローしておく
- 担当者不在時には「いつ」「誰から」「どのような用事で電話があったか」をメモに残し、戻り次第確実に伝える
文書作成
ビジネス文書の作成には、主に次の2つの役割があります。
- 仕事内容や出来事を伝える
- 仕事内容や出来事を記録する
ビジネス文書は口語体を避けて統一した文体で、読みやすく簡潔にまとめることが大切です。
横書きを基本とし、数字はアラビア数字で統一するのが良いでしょう。
さらに、社内文書なのか社外文書なのかによって変わる点もあり、目的に合わせた文書作成が求められます。
ビジネス文書の注意点を解説しましょう。
社内文書
社内文書は会社内で読まれることが前提なので、儀礼よりも効率性が求められます。
したがって、次のような点に注意して書くようにしましょう。
- 簡潔な文章にする
- 迅速に作成する
- 正確な内容を記載する
さらに、社内文書では提出期限・読みやすさも重要視されます。
難しい言葉をできるだけ避け、素早く正確に伝わる文書を心がけましょう。
社外文書
社外文書には実務用と儀礼用の2種類があり、目的に合わせて作成します。
実務用の社外文書は「情報を伝えること」が目的なので、正確な内容の記載に重きを置きます。
儀礼用の社外文書は「挨拶」「案内」などが目的なので、格式に合わせた形式に沿い、会社として恥ずかしくない、礼儀正しい文書を作成しましょう。
守秘義務
仕事における守秘義務とは、業務内容はもちろんのこと、会社の人間関係や重要と思われる情報を漏らさない義務のことです。
ごく当たり前のことではありますが、残念ながらうっかり重要事項を漏らしてしまう人もいるため、近年では守秘義務の教育に力を入れる会社も多く見られるようになりました。
例えば、誰かに話したつもりはなかったとしても、不特定多数の人が閲覧できるSNSに社内の写真を掲載したり、許可なく重要なデータを持ち歩くのも違反行為です。
守秘義務の重要性をしっかり認識し、会社に害を及ぼさないよう気をつけましょう。
ビジネスマナーの基本を身につけるメリット
ビジネスマナーは、ただ身につけるだけでは効果がありません。
なぜ必要なのか、どのような効果があるのかを知ったうえで、意識しながら実践することが大切です。
ビジネスマナーの基本を身につけるメリットを解説します。
信頼関係が築ける
ビジネスマナーとは、円滑に仕事を進めるためのコミュニケーションツールであり、信頼度を測る指標にもなります。
社会人になると、世代を超えてさまざまな人と交流するため、「共通の礼儀作法が行えるか」が、その人が信頼に足る人物であるかどうかの判断基準となるのです。
例えば、挨拶のときに敬語が使えなかったり、目を合わせなかったりするだけでも印象が悪くなることでしょう。
仕事で付き合う人との信頼関係を築きやすくするためにも、ビジネスマナーを身につけることは重要です。
自信がつく
ビジネスマナーが身につくと、社会人としての自信が持てるようになります。
ビジネスマナーには社会人同士のルールという一面があり、ルールに則った行動を心がけると仕事も円滑に進みます。
円滑な仕事は成果を生み、それが自信へとつながるのです。
仕事で得られた評価は確かな結果として実感できますから、社会人としての自信がつき、さらに上をめざす原動力となるでしょう。
評価が上がる
ビジネスマナーを身につけている人は、全体的な評価が上がります。
関わる業務への評価はもちろんですが、社員の姿を通して会社全体のイメージが良くなれば、業績にも貢献できることでしょう。
つまり、ビジネスマナーはあなたの評価だけではなく、勤めている会社の評価にも関わってきます。
自分の言動・行動が会社の評価につながることを意識して、ビジネスマナーを身につけましょう。
ビジネスマナーのメリットをもっと詳しく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
ビジネスマナーの基本を身につけて好印象を与える社会人をめざそう
ビジネスマナーとは、単純な礼儀作法ではありません。
仕事や人との関わりをスムーズにするコミュニケーションツールであり、信頼関係を築きやすくする手段でもあります。
また、ビジネスマナーを身につけていると好印象を持ってもらえ、高く評価されやすく、社会人としての自信にもつながります。
まずはビジネスマナーの基本をマスターして、好感が持てる社会人への第一歩を踏み出しましょう。