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契約社員の失業保険ガイド|受給期間や退職時の注意点も詳しく解説

契約社員が退職する際、失業保険をもらえるのか不安に感じる方は多いでしょう。
結論からいえば、雇用保険に加入し、なおかつ一定の条件を満たした契約社員は失業保険を受給できます。
ただし、退職理由によって受給の条件や期間に違いがあるため、退職後の生活で困ることがないようあらかじめ理解しておくことが大切です。

本記事では、契約社員の失業保険に関する基礎情報や受給額の計算方法、退職前後に留意すべきポイントなどを詳しく解説します。

契約社員は失業保険をもらえる?受給に関する基礎情報

契約社員は失業保険をもらえる?受給に関する基礎情報

契約社員が失業保険をもらうためには、いくつかの条件が存在します。
また、退職理由により給付制限の有無や受給条件が異なるため、注意が必要です。

退職後に適切な失業手当を受け取れるよう、失業保険の受給に関する基本的な情報を身につけておきましょう。

契約社員が失業保険を受給できる条件

有期雇用の契約社員が失業保険を受給するための条件は、以下のとおりです。

  • 所定の期間雇用保険に加入している
  • 必要な在職期間を満たしている

これらの条件を理解しておけば、雇用契約の終了時にも混乱なく受給手続きを進められるでしょう。

所定の期間雇用保険に加入している

失業保険をもらうためには、雇用保険への加入が必要です。
雇用保険に加入する条件には、以下の3つがあります。

  • 所定労働時間が1週間のうち20時間以上あること
  • 31日以上の雇用の見込みがあること
  • 学生ではないこと

所定労働時間とは、企業が雇用契約書や就業規則などで定めた労働時間のことです。
また、「31日以上の雇用の見込み」とは、具体的には次の内容を指します。

  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が31日以上である場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )
    [(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]

出典:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!(厚生労働省)

必要な在職期間を満たしている

失業保険を受給するためには、必要な在職期間を満たさなければなりません。
退職理由によって、満たすべき支給条件は以下のように異なります。

退職理由 失業保険の受給に必要な条件
自己都合 離職の日以前の2年間に被保険者であった期間が12ヵ月以上ある
会社都合 特定受給資格者・特定理由離職者に該当する場合は、離職の日より前の1年間に被保険者であった期間が通算で6ヵ月以上ある

特定受給資格者は、経営難による解雇(クビ)や倒産により離職した人のことです。
特定理由離職者には、以下のようなケースが含まれます。

  • 期間の定めのある労働契約が更新されず、離職する場合
  • やむを得ない事情により自己都合退職した場合

やむを得ない事情とは、次のような離職理由が挙げられます。

  • 病気やケガ、心身の不調
  • 妊娠・出産・育児
  • 家族の介護や家庭の事情
  • 結婚や家族の転勤などで通勤困難になった

なお、任期満了とともに契約が終了する場合でも、企業側が一方的に契約を終了させる雇い止めは違法になる可能性があります。
原則として、一定期間継続して雇用している契約社員には、満了日の30日前までに雇い止めの旨を通知していなければなりません。

退職理由により受給条件・期間が異なる

契約社員の失業保険は、退職理由によって受給の条件や給付期間が異なります。

  • 契約満了で退職するとき
  • 会社都合で退職するとき
  • 自己都合で退職するとき

いずれの場合でも、失業保険を受給できる期間は原則「離職日の翌日から1年間」です。
受給可能期間を過ぎると、給付日数が残っていても失業保険を受け取ることはできません。

退職理由ごとの受給条件や期間について、以下で解説します。

契約満了で退職するとき

離職理由が契約期間満了の場合、失業保険の給付制限がなく、求職手続きが済んだあと7日経過すれば失業手当が支給されます。
契約期間満了とみなされるのは、次のようなケースです。

  • 会社の都合により契約が更新されない場合
  • 雇用期間が通算で3年以上経過した場合

年齢による支給日数の変化はなく、被保険者であった期間によって変わります。

会社都合で退職するとき

会社都合での退職の場合、離職前の1年間に被保険者期間が6ヵ月以上あれば、給付制限なしで失業手当を受給可能です。
退職理由により、特定受給資格者または特定理由資格者のどちらなのかをハローワークが判断します。
両者の違いは、次のとおりです。

特定受給資格者 倒産・解雇などにより離職した場合
特定理由資格者 契約満了後に、労働契約の更新なしで離職した場合
病気やケガ、心身の不調などにより離職した場合
妊娠・出産・育児や、家族の介護のために離職した場合

特定受給資格者と特定理由資格者の違いは退職理由のみであり、受給条件や給付日数の内容は変わりません。

自己都合で退職するとき

自己都合で退職した場合は、求職手続きが完了後に7日間待期し、さらに翌日から3ヵ月の給付制限があります。
契約社員が自己都合退職とみなされるのは、以下のようなケースです。

  • 3年以上勤務し、なおかつ双方の合意があったうえで、労働者本人が契約の更新を希望しなかったとき
  • 期間の途中で退職を申し出たとき

契約満了時に契約更新の機会があったにも関わらず、労働者本人の意思で契約更新しない場合は自己都合とみなされます。
労働者が契約期間中に退職を希望した場合も同様です。

なお、令和2年10月1日以降に自己都合退職した場合、5年のうち2回の退職までは、給付制限の期間が3ヵ月から2ヵ月へと短縮されました。

契約社員の失業保険はいくら?受給額の計算方法

契約社員の失業保険がいくらになるのかは、以下の手順で求められます。

  1. 賃金日額を計算する
  2. 基本手当日額を計算する
  3. 基本手当の総額を算出する

受給額を理解しておくことで、失業後の収支を計画しやすくなるでしょう。

1.賃金日額を計算する

最初に、賃金日額の算出が必要です。
賃金日額とは、離職直前の6ヵ月間に毎月受け取っていた給与をもとに計算できます。
賃金日額の算出方法は、以下のとおりです。

賃金日額 = 離職前6ヵ月の賃金の合計 ÷ 180

なお、賃金手当日額には上限額と下限額が設定されています。

<年齢に応じた賃金日額の上限額・下限額>

離職時の年齢 上限額 下限額(円)
29 歳以下 13,890円 2,746円
30~44 歳 15,430円
45~59 歳 16,980円
60~64 歳 16,210円

2.基本手当日額を計算する

基本手当日額は、賃金日額に定められた給付率を用いることで計算可能です。

基本手当日額 = 賃金日額 × 50~80%(60~64歳は45~80%)

基本手当日額は、年齢や賃金日額によって給付率が異なります。

【基本手当日額の給付率】

離職時の年齢 賃金日額 給付率
29歳以下 2,746円以上、5,110円未満 80%
5,110円以上、12,580円以下 80%~50%
12,580 円超、13,890 円以下 50%
13,890円超 -(上限額まで)
30~44歳 2,746円以上、5,110円未満 80%
5,110円以上、12,580円以下 80%~50%
12,580円超、15,430円以下 50%
15,430円超 -(上限額まで)
45~59歳 2,746円以上、5,110円未満 80%
5,110円以上、12,580円以下 80%~50%
12,580円超、16,980円以下 50%
16,980円超 -(上限額まで)
60~64歳 2,746円以上、5,110円未満 80%
5,110円以上、11,300円以下 80%~45%
11,300円超、16,210円以下 45%
16,210円超 -(上限額まで)

また、基本手当日額にも上限額と下限額が設定されているので注意しましょう。
年齢ごとの上限額・下限額は以下のとおりです。

【基本手当日額の上限額・下限額】

離職時の年齢 上限額(円) 下限額(円)
29 歳以下 6,945円 2,196円
30~44歳 7,715円
45~59歳 8,490円
60~64歳 7,294円

3.基本手当の総額を算出する

基本手当の総額は、基本手当日額に所定の給付日数をかけ合わせて計算します。

基本手当の総額 = 基本手当日額 × 給付日数

基本手当の給付日数は、退職理由によって異なります。
それぞれの退職理由に対する給付日数は、以下のとおりです。

【定年・契約期間満了・自己都合退職の給付日数】

定年・契約期間満了・自己都合退職の給付日数

出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数

【特定受給資格者・特定理由離職者の給付日数】

特定受給資格者・特定理由離職者の給付日数

出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数

【就職困難者の給付日数】

就職困難者の給付日数

出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数

契約社員が失業保険をもらう前後の注意点

契約社員が失業保険をもらうためには、以下3つのポイントに注意する必要があります。

  • 就業規則を確認する
  • 契約満了での退職以外は退職届を作成する
  • 退職金は受け取れないケースが多い

トラブルや混乱を避けるためにも、これらのポイントを理解したうえで退職を進めてみてください。

就業規則を確認する

退職を考えている契約社員は、事前に就業規則をきちんと確認しましょう。
労働基準法の第八十九条により、従業員が常時10人以上いる企業は、就業規則の作成が義務付けられています。
この規則には、退職に関する情報が記載されています。

退職のための通知期間や条件が規定されているケースも珍しくないため、あらかじめ目を通しておく必要があるでしょう。
円満退職をめざすためにも、定められた通知期間を守って退職の意思を伝えることが重要です。

契約満了での退職以外は退職届を作成する

契約社員が契約満了以外の理由で退職する際は、退職届を提出しましょう。
ただし、一部の企業では、期間満了時でも退職届の提出を求められる場合があります。

また、契約社員が退職届を作成する際には、退職理由の書き方に注意が必要です。
前述のとおり契約社員が失業保険を受給する場合、会社都合退職には給付制限がありません。
一方、自己都合の場合は支給まで2ヵ月〜3ヵ月の待期期間が生じます。

失業保険の支給に遅延や問題が生じないよう、退職届の内容を慎重に確認したうえで提出してください。

退職金は受け取れないケースが多い

契約社員が退職する場合、退職金の受け取りは難しいケースが多いでしょう。
退職金に関する法的な規定は存在せず、企業によって支給の有無が異なります。
正社員に対しても退職金を支給しない企業もあり、契約社員の場合はなおさら受け取りが難しいかもしれません。

一方で、企業によっては契約社員にも退職金制度を設けているため、確認してみる価値はあります。
契約社員が退職金の支給対象となるかどうか、雇用契約書や就業規則に記載がないかチェックしてみてください。

契約社員の失業保険に関するよくある質問・回答

失業保険の手続きに必要な離職票を受け取れない場合、契約社員はどのように対処すべきなのでしょうか。
また、6ヵ月や1年未満で退職する際でも失業保険を受け取れるのか、不安に感じている方もいるかもしれません。

ここでは、契約社員の失業保険にまつわるよくある質問をまとめました。

契約社員が離職票をもらえない場合の対処法は?

退職から2週間が経過しても離職票が手もとに届かない場合、まずは雇用契約を結んだ会社に問い合わせてみましょう。
何らかの理由で離職票の発行がされていないときには、ハローワークへ相談してみてください。
ハローワークが会社に連絡し、離職票の発行を催促してもらえる可能性があるためです。

なお退職から12日が経過した場合、離職票以外の退職を証明できる書類を提出すれば、失業保険の仮手続きを行えることもあります。

契約社員が1年未満で退職した場合に失業保険はもらえる?

被保険者期間が1年未満でも、正当な理由での自己都合退職、または会社都合退職のいずれかであれば失業手当を受け取ることが可能です。
退職理由が自己都合の場合には、3ヵ月の給付制限が生じる点に注意しましょう。

1年未満で退職後、1年以内に再就職し、雇用保険の被保険者期間が通算で1年を超えた場合も失業保険の受給資格が発生します。
ただし、被保険者の資格喪失から雇用保険の再加入までの期間が1年以上空いていると、被保険者期間の通算はできません。

契約社員が6ヵ月で契約期間満了となったときの失業保険は?

契約社員が6ヵ月で契約期間を終了する場合、離職日以前の被保険者期間が通算で6ヵ月以上あり、かつ特定受給資格者・特定理由離職者に該当していれば失業保険を受け取れます。
倒産や解雇が退職理由となるこのケースでは、自己都合退職と違って給付制限がありません。

なお、失業保険の受給額は、離職日の年齢や離職前の給与額に応じて異なります。

契約社員の失業保険に関する受給条件や注意点を把握しよう

契約社員も、一定の条件を満たしていれば失業保険をもらうことが可能です。
契約満了での退職の際は、退職届が不要な場合もありますが、企業によっては退職理由に関わらず提出を求められるでしょう。

退職届における退職理由は、失業保険の条件や給付までの期間に関係します。
会社都合退職であれば給付制限なく失業保険を受け取れるため、慎重に作成を進めることが大切です。

退職後の経済的な安定を確保するとともに、再就職活動に集中できるよう、契約社員の失業保険に関する情報や会社ごとの就業規則は早めに確認しておくようにしましょう。

執筆者について

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