ライフワークバランスの見直しや私生活の変化から、正社員のまま短い労働時間で働きたいと考えることがあるかもしれません。
このとき検討したいのが、短時間正社員という働き方です。
厚生労働省が推奨したことで短時間正社員を導入する企業は増えつつありますが、制度について詳しくは知らない方も多いでしょう。
本記事では、短時間正社員制度の概要と導入の目的、メリット・デメリットを解説します。
労働時間について悩んでいる方や短時間の勤務でもキャリアアップをめざしたい方は、参考にしてみてください。
目次
短時間正社員の制度
短時間正社員について、以下2つの観点から制度を理解していきましょう。
- 短時間正社員の定義
- 導入されている理由
それぞれ詳しく解説します。
短時間正社員の定義
短時間正社員は、フルタイム勤務で働く正社員に比べて労働時間が短い正社員です。
フルタイムで働く正社員は、一般的に1日の所定労働時間が約8時間で、週に5日勤務する期間の定めのない労働者をいいます。
ただし、単に働く時間が短ければ短時間正社員になるわけではありません。
短時間正社員の定義は、以下に当てはまることです。
- 労働契約において期間の定めがない
- 時間あたりの基本給や賞与、退職金などの算定が同種のフルタイム正社員と同等
厚生労働省が企業へ導入を推奨する「短時間正社員制度」とは、上記に当てはまる短時間正社員への転換制度や処遇制度を整えることです。
短時間正社員制度を導入すると、1事業主につき40万円(大規模事業主は30万円)が支給されます。
導入されている理由
短時間正社員はフルタイム勤務が困難、あるいは適していないライフスタイルの方に、短い時間働いてもらう制度です。
勤務時間を短くすることにより、以下のような方々も活躍できるようになります。
- 育児や介護と仕事を両立させたい人
- 定年後も仕事を続けたい人
- 決まった時間だけ働きたい人
- キャリアアップしたいパート・アルバイトの人
正社員はフルタイムでなければいけないというルールはありません。
短時間正社員制度は、多様化するライフスタイルのなかで、長い時間働けない人材を活用する目的のために導入されました。
短時間正社員とパート・アルバイトとの違い
パート・アルバイトは1週間の所定労働時間が短い労働者であり、その点は短時間正社員と共通しているといえるでしょう。
両者の大きな違いは、労働契約形態にあります。
短時間正社員の労働形態は無期労働契約、対するパート・アルバイトは有期労働契約です。
無期労働契約は期間の定めがなく、有期労働契約には期間が定められています。
また、短時間正社員と似た用語に時短勤務がありますが、この2つに違いはありません。
言い方が異なるだけで、いずれも労働時間を短く設定した正社員です。
パート・アルバイトについてより詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
短時間正社員のメリット・デメリット
短時間正社員は労働時間が短いだけで、正社員には違いありません。
また、賃金の計算方法なども正社員と同等であるため、なんら変わりがないように感じる人もいるでしょう。
では、短時間正社員として働くことにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
短時間正社員のメリットに、ライフワークバランスが取りやすいことが挙げられます。
正社員に比べて労働時間が短いため、育児や介護、持病がある方も正社員のままで無理せずに働くことが可能です。
自分の生活のために正社員で働くことを諦めなくても良いといえるでしょう。
また、仕事のキャリアを継続できることも短時間正社員のメリットです。
正社員として働いてきた人が一度仕事を辞めると、そこでキャリアが途切れてしまう可能性があります。
しかし、短時間正社員になればその期間は労働時間を短くしたとしても、ライフイベントの変化に合わせてフルタイムの正社員に戻ることも可能です。
ワークライフバランスを重視しながらも、スキルやキャリアを保って働けます。
デメリット
短時間正社員には前述のようなメリットがある一方で、デメリットも存在します。
例えば、短時間正社員は責任のある仕事を任せてもらいにくいでしょう。
補助的な業務がメインとなるため、管理職などの役職につくことは難しいかもしれません。
また、短時間正社員制度が浸透しきっていない会社では、労働時間が短くなっても作業量はあまり変わらないケースがあります。
短時間正社員は残業ができないため、ノルマをこなすことが困難に感じる方もいるでしょう。
制度に対する認知は広がりつつあるものの、従来とは異なる働き方であるために理解を得られない可能性もあります。
場合によっては、社内や取引先から受け入れられるのに時間がかかるかもしれません。
短時間正社員制度を活用してキャリアを維持しよう
短時間正社員制度は、ライフスタイルが変化しても同じ職場で働き続けたい方、プライベートと仕事を両立させたい方にメリットの大きい制度といえるでしょう。
フルタイム正社員のキャリアを維持しながら、働き方を転換できます。
一方、責任の大きい仕事は担当しにくくなる、周囲から理解を得られない可能性もあるなどのデメリットがあることも事実です。
短時間正社員という選択肢が自分にもたらすものをよく検討したうえで、上手に活用してみてください。