退職は2週間前までに伝えれば良いと聞いたことがあるかもしれません。
しかし社内規定などで「退職の申し出は1ヵ月前」とされている場合も多く、非常識にはならないのかが気になります。
本記事では、退職を2週間前に伝えても問題ないのか、派遣社員や年俸制など立場ごとに解説しています。
退職を伝えてからの有給消化の扱いについても説明しているので、参考にしてみてください。
目次
退職の申入れは2週間前で大丈夫?
法律上、退職は2週間前までに申し出れば問題ないとされています。
その根拠を詳しく見てみましょう。
民法により申入れは2週間前までで良いと定められている
正社員を含めた期間の定めのない契約で働いている方が退職したい場合、その旨は2週間前までに伝えれば法律上問題ありません。
民法第627条1項において、以下のように明記されています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
このときの日数の数え方は、土日を含めた2週間(14日間)です。
例えば3月15日に退職届を出した場合は、3月29日以降であれば退職できます。
退職届を提出した当日は、2週間のうちの1日として算入できないため注意しましょう。
民法140条において、日付の数え方に関しては以下のように記載があります。
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
一方、退職日はこの期間に含むことができます。
退職したい日が決まっている場合は、退職届を提出する日にも気をつけましょう。
特定の労働契約では無効のケースも
特定の労働契約を結んでいる方は、2週間前の申入れが無効な場合があります。
特に以下の労働契約の方は、退職までに要する期間をあらかじめ確認しておきましょう。
- 派遣社員
- 年俸制
それぞれ解説します。
派遣社員の場合
労働契約のなかでも派遣社員のような有期雇用で働いている方は、原則として契約期間を満了するまでは退職することはできません。
ただし民法第628条では、やむを得ない事情がある場合は退職できる旨が記載されています。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
このときの「やむを得ない事情」は、明確な定義がありません。
しかし以下のようなケースは、やむを得ない事情として考慮される可能性があるでしょう。
- 仕事に支障を来すような体調不良
- 家庭の事情(病気や介護)
- 職場でのハラスメント
また、上記以外のケースでも退職理由として認められることはあります。
派遣契約の期間が残っている状態で退職を考えている方は、派遣元会社に相談してみてください。
年俸制の場合
年俸制の場合、法律の定めるところにより3ヵ月前までに退職の申入れが必要です。
民法第627条3項では、以下のように規定されています。
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
年俸制は給与を1年単位で決定する給与形態であるため、上記の「六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合」に該当します。
近年では年俸制を採用する企業もあるので、退職する際は自分の給与形態を再確認しておきましょう。
就業規則は「退職は1ヵ月前まで」でも法律が優先される
就業規則に「退職の申入れは1ヵ月前まで」と記載されていても、法律が優先されます。
実際に昭和51年に起こった「高野メリヤス事件」の判例では、会社の規定よりも民法が優先されるという判決が下りました。
ただし退職の際には、その後の業務を円滑に進めるためにも引き継ぎが必要です。
法律上は問題ないとしても、今後の関係性などを重んじる場合は1ヵ月〜3ヵ月前までには退職の意向を伝えたほうが良いでしょう。
退職申入れ後の2週間は有給消化できる?
退職を申入れたあとの2週間で有給消化することは可能です。
有給休暇は労働者の正当な権利であるため、退職の意向を示したあとでも問題なく取得できます。
労働基準法第三十九条第五項でも基本的に会社は従業員の有給取得を拒否できない旨が記載されており、この機会に使い切っても良いでしょう。
また労働基準法では、従業員が有給休暇を取得することで事業の正常な運営を妨げる場合は、会社側は有給休暇の時季を変更しなければならない旨が記載されています。
あなたが休むことで業務に支障が出る場合は時季変更の提案を出されることはありますが、有給休暇そのものを拒否することはできません。
有給休暇取得に際して会社と揉めないためにも、退職前の引き継ぎなどは余裕を持って行うことが大切です。
退職は2週間まででも問題ないが早めに伝えるのがベター
退職の申入れは、民法上の規定において2週間前までで問題ないとされています。
なお派遣社員や年俸制の場合、この限りではないため注意が必要です。
退職をするとなると、引き継ぎ作業やあいさつ回りで多忙になります。
退職届を出してからの人間関係も考えると、余裕を持って退職準備をするに越したことはありません。
わだかまりを残さないよう、辞めることを決意したら早めに申し出るようにしましょう。