
退職後に安心して過ごすためには、十分な貯金が欠かせません。
条件を満たせば失業保険を受け取りながら生活できますが、自己都合による退職の場合には給付制限があるなど、退職後すぐに振り込まれるわけではない点に注意が必要です。
このことをふまえると、自分の状況やライフスタイルなどを鑑みたうえで、退職までに必要な金額の貯金を準備しておくことが望ましいでしょう。
本記事では、退職に向けて確保しておくべき貯金額の目安を状況別に解説します。
退職・転職を検討している方は、貯金計画を立てる際の参考にしてみてください。
目次
退職に必要な貯金額の目安
退職に必要な貯金額は個人の状況やライフスタイルによって異なりますが、少なくとも生活費3ヵ月分の貯金は準備しておくと良いでしょう。
ただし、生活費3ヵ月分はあくまでも最低限の目安です。
転職活動が長引いた場合、3ヵ月分では不足する可能性があります。
もしものときに備えて、余裕を持たせた6ヵ月分程度の生活費を用意できるのが望ましいでしょう。
例えば、毎月の消費支出額が18万円の場合は、18万×3ヵ月=54万円が最低ラインとなります。
余裕を持った貯金額を考えるなら、18万円×6ヵ月=108万円が必要です。
転職活動中は生活費だけでなく交通費や履歴書・証明写真代などの必要経費も発生するため、できるだけ多めに確保しておくことをおすすめします。
【状況別】退職後に必要な貯金額の目安
ここからは、退職後に必要な貯金額を状況別に見ていきましょう。
なお、住んでいる地域や収入によっても必要な貯金額は大きく異なるため、あくまでも一つの目安として参考にしてみてください。
30代一人暮らしの場合
34歳以下の一人暮らしの場合、1ヵ月間の支出額は平均15万8,198円程度といわれています。
転職活動中の生活費などを3ヵ月分確保すると考えると、退職後に必要な貯金額の目安は約45万~50万円です。
余裕を持ったスケジュールで転職活動を進める場合、6ヵ月分の生活費として90万~95万円程度の貯金が必要になるでしょう。
40代ファミリー世帯(3~4人家族)の場合
40代の家族世帯の場合、月間消費支出額は31万5,9588円といわれています。
よって40代で退職する場合、3ヵ月分の生活費として確保しておくべき貯金額の目安は、90万円~100万円程度を見ておくと良いでしょう。
6ヵ月の転職期間を想定するのであれば、およそ180万~190万円の準備が必要です。
貯金が少ない場合は退職後の収入・支出を把握しておく
退職後は、これまで勤め先から受け取っていた給与による収入が途切れることになります。
新卒などで十分な貯金がない場合、退職後の収入を予想したうえで、無理のない支出計画を立てるようにしましょう。
退職後の収入
退職後に得られる主な収入として、以下が挙げられます。
- 失業手当
- 退職金
それぞれ詳しく確認していきましょう。
失業手当
失業手当は、労働者が失業した際に一定期間給付されるお金です。
新たな雇用先を見つけるまでの期間に、一時的な支援として支給されます。
失業手当の金額は、離職前給与の50〜80%です。
なお、失業手当を受け取るまでには、通常約2ヵ月かかります。
受給できる期間は雇用保険の加入期間や年齢によって異なりますが、90日から最長330日となるのが基本です。
退職金
退職金は、企業や雇用主が退職する従業員に対して支給する一時金です。
退職金の額は従業員が勤続した期間や給与に応じて算定され、退職後の生活を支援します。
ただし、退職金制度について法律上の義務はなく、導入していない会社もあるため、事前に就業規則を確認しておきましょう。
また、制度があっても受給条件を満たしていなければ受け取れないこともあります。
退職後の支出
退職後には、生活費のようにこれまでと変わらない支出と、転職活動にともなう支出が発生します。
また、国民健康保険料など、新たに負担が増える支出にも注意が必要です。
退職しても変わらない支出
退職しても変わらない支出として、住民税が挙げられます。
住民税は前年度の所得に基づいて算出されるため、退職当年の収入がなくても「前年度の収入額×10%」の税額を納めることが必要です。
また、家賃や光熱費、食費、医療費などの生活に関わる支出も退職後に変化はありません。
退職してから預貯金が不足しないように、毎月の支出額を事前に確認しておきましょう。
退職後に増える支出
退職したことで増える支出は以下の3つです。
- 国民健康保険料
退職によって社会保険から外れるため、国民健康保険に加入し保険料を支払う必要があります。
社会保険の健康保険料は労使折半として半額を会社が負担しますが、国民健康保険料は全額を自身で支払わなければなりません。
なお、保険料は自治体によって異なります。 - 国民年金保険料
在職中は、毎月の給与から国民年金2号被保険者としての厚生年金保険料が天引きされますが、退職後は自分で国民年金保険料を支払う必要があります。
厚生年金保険料は健康保険料と同様に半額が会社負担となりますが、国民年金では保険料は全額本人負担です。 - 介護保険料
40歳以降は介護保険料の負担も必要です。
介護保険料の額は、自治体や年度によって変わります。
会社員の健康保険や年金の保険料は給与から天引きされ、手取りから支払う必要がないため、あまり意識していなかった方もいるかもしれません。
しかし、退職後はこれらの保険料をすべて手持ちのお金から自分で支払う必要があります。
転職にかかる支出
転職活動では、必要経費として以下のような支出が発生します。
- 交通費
- スーツや靴などの被服費
- 履歴書代
- 書籍代 など
説明会への参加や面接が重なると、交通費は特に高額になりやすいため注意しましょう。
転職希望先が遠方になる場合、宿泊費も考慮する必要があります。
貯金なしの退職でも不安を軽減する方法
貯金なしでの退職で不安を軽減するためには、以下4つの方法が考えられます。
- 転職先を見つけてから退職する
- 退職金や賞与をもらって退職する
- 副収入を確保してから退職する
- 金銭的に頼れるところで過ごす
収入が途切れてしまうことが不安であれば、退職前に転職先や副業などの新たな収入源を確保しておくと良いでしょう。
転職先を見つけてから退職する
転職先を見つけてから退職することで、収入を得ながら転職活動が行えます。
転職先が確定していれば退職後も安定した収入が確保でき、不安が軽減されるでしょう。
ただし、現職をこなしながら転職活動をする必要があるため、面接などのスケジュール調整が難しくなるというデメリットもあります。
転職活動が長期化する可能性も考慮して、計画的に行動することがポイントです。
退職金や賞与をもらって退職する
退職金制度がある会社に勤めていて、かつ受給資格を満たしている場合は、退職金を受け取ってから転職活動をすると経済的な安心感が高まります。
十分な額の退職金があれば、退職後の生活費や転職活動費としても利用できるでしょう。
退職する日をボーナス月の月末や翌月にする、またはボーナス支給日まで有休を消化しながら在籍するのも一つの方法です。
特に6月や12月といった賞与支給月の付近で離職を検討する場合は、ボーナスを受け取ってから退職することをおすすめします。
副収入を確保してから退職する
貯金なしで退職する場合は、事前の副収入確保も検討してみましょう。
副収入があれば退職後の生活を支えられるため、経済的な不安を軽減できます。
フリーランス活動やパート・アルバイトの仕事など、自身の能力とライフスタイルに合わせた収入源を見つけてみてください。
ただし、転職活動と副収入確保の両立には時間やエネルギーを使うため、計画的な段取りとバランスの取れたアプローチを考える必要があります。
また、企業によっては副業を禁止しているケースもあるため、就業規則などを確認しておきましょう。
金銭的に頼れるところで過ごす
退職後は、金銭的に頼れるところで過ごしてみても良いでしょう。
ご家族や友人のサポートを受けることで、経済的な不安を一時的に和らげられます。
可能であれば、実家に帰るというのも選択肢の一つです。
一人暮らしよりも生活費を節約でき、経済的な負担を抑えながら転職活動を行えます。
転職活動は精神的に疲れてしまう場面もありますが、実家なら精神的な安心度も高くなるでしょう。
ただし、長期的な解決策としては限界があります。
一時的に金銭的に頼れるところで過ごしながらも、自立して生計を立てる方法を模索することが大切です。
退職するなら収入と支出から必要な貯金額を確認しよう
退職を検討する際には、これからの収入と支出をしっかりと把握したうえで、必要な貯金額を算出しておきましょう。
退職までに必要な貯金額は人によって異なりますが、約3~6ヵ月分の生活費を確保しておくのがベターです。
現在の貯金額に不安がある方は、転職先を決めてから退職する、副収入を確保する、ボーナスを受け取ってから退職する、などの方法もあります。
退職日までが近く転職活動に十分な時間を取れそうにない場合には、金銭的に頼れるところで過ごすといった選択肢も検討し、経済的な安定を図ってみてください。