再就職手当は、離職後早くに就職先を見つけたり、起業したりした方に支給される手当金です。
職に就く時期が早いほど受給額がアップするのが特徴ですが、再就職手当の利用はメリットばかりではありません。
いざ受け取ってみてから後悔しないために、受給のデメリットも理解しておくことが大切です。
本記事では、再就職手当のデメリットと受給できる条件を解説します。
失業手当を受け取り続けるのと再就職手当を利用するのではどちらが得なのか疑問に感じている方は、参考にしてみてください。
目次
再就職手当のデメリットとは
再就職手当とは、失業手当(基本手当)の受給資格がある離職した方のできるだけ早い再就職を促すための制度です。
このため失業手当の給付日数を3分の1以上残した状態で再就職することなど、受給条件があります。
受給するためには失業保険の受給資格があり、かつ一定の条件を満たさなければなりません。
再就職の時期が早ければ早いほど受給額が高くなるという利点がある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 失業手当が打ち切りになる
- 就職活動の方法が限定される
- 受け取れる条件が複雑
再就職手当の利用を検討している方は、これらのデメリットも念頭に置いておきましょう。
それぞれ詳しく解説します。
なお、再就職手当がどのような制度か知りたい方は、次の記事も参考にしてみてください。
失業手当が打ち切りになる
再就職手当は入社日が決まったタイミングで受給申請を行う必要があり、就職前日まで受け取れる失業手当は、給付日数が残っていても打ち切りになります。
失業手当は離職の翌日から数えて最大1年間受給できるため、再就職して打ち切りとなることで失業手当の受給総額が減ってしまうことはデメリットです。
しかし、失業手当を満額受け取るためだけに再就職を先延ばしにするのはあまりおすすめしません。
無職期間が長くなればブランクもでき、キャリア形成の点で好ましくないためです。
また、失業手当が打ち切られたとしても、再就職先からの給与と再就職手当を合算した場合、結果的には失業手当の金額を上回るケースがほとんどでしょう。
雇用の安定だけでなく収入の面でも、再就職を優先するメリットがあります。
就職活動の方法が限定される
再就職手当は、ハローワークに申請すると受給できる制度です。
支給には条件があり、以前の就職先から紹介された関連企業などで働く場合は手当の対象にならないため、注意が必要です。
また、ハローワークなどの紹介を受けずに就職すると再就職手当が支払われないケースがあります。退職理由が自己都合の場合など基本手当が支給されない給付制限がある場合、7日間の待期期間のあと1ヵ月間は、ハローワークや職業紹介事業者からの紹介でなければ再就職手当は支給されないため、注意しましょう。
受け取れる条件が複雑
再就職手当を受け取るためには、さまざまな条件を満たす必要があります。
また、失業手当の所定給付日数の残日数によって手当の計算方法が異なり、より複雑に感じてしまうかもしれません。
再就職手当の受給条件を満たすように就職活動を行うと、就職先の選択肢が狭くなってしまう可能性もあります。
再就職はそのあとのキャリア形成に大きな影響を及ぼすため、再就職手当を受け取るためだけに再就職を急ぐことがないようにしましょう。
再就職手当をもらえる条件
再就職手当のデメリットとして、受給条件が複雑だと上述しました。
しかし、早期の再就職をめざす方にとっては転職活動のモチベーションにもなるため、条件をきちんと理解したうえで賢く活用すると良いでしょう。
再就職手当を受け取るための条件は、次のとおりです。
- 雇用保険の被保険者であり失業手当の受給資格を満たしている
- 再就職のタイミングが条件を満たしている
- 失業手当の支給残日数が3分の1以上ある
- 再就職先の条件を満たしている
- 過去3年以内に所定の手当の支給を受けていない
順に詳しく見てみましょう。
雇用保険の被保険者であり失業手当の受給資格を満たしている
再就職手当を受け取るには、雇用保険の被保険者になっていることが条件です。
次の要件を満たす労働者がいる事業所は、労働者を雇用保険に加入させなければなりません。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上雇う見込みがある
短期雇用や短時間勤務など、働き方によっては対象外となることもあるため確認しておきましょう。
また、一部例外を除き学生には適用されません。
雇用保険に加入している場合は、雇用保険料が給料から差し引かれるため、給与明細で確認できるでしょう。
また加入状況は、勤めている会社や、勤めている会社を通してハローワークに確認するほか、マイナンバーカードを持っている方はマイナポータルでも確認できます。
退職時に手渡されることも多いですが、雇用保険被保険者証を会社から受け取っていれば、それが被保険者であることの証明になります。
上記の条件を満たした上でハローワークで所定の手続き(求職の申し込みなど)を行い、失業手当の受給資格を満たさなければなりません。
再就職のタイミングが条件を満たしている
再就職手当を受給するためには、再就職のタイミングにいくつか条件があります。
7日間の待期期間を終えていて、なおかつ失業保険の受給資格を得たあとでの就職でなければいけません。
7日間の待期期間が終了している
離職票を提出し、失業保険の受給資格が決定してから7日間は待期期間となります。
この待期期間中に仕事を始めた場合、失業手当の受給は認められません。
待期期間は失業状態にあることを証明する期間であるからです。
再就職手当は失業状態にあった人に支給されるものであるため、再就職手当を受けるには受給資格決定日から8日目以降に再就職する必要があります。
受給資格決定後に採用された
失業保険の受給資格決定後に採用が決定していることも、再就職手当の受給条件の一つです。
受給資格が決定する前に内定をもらった場合、再就職手当の支給対象にはなりません。
退職時点で次の就職先が見つかっている場合は、失業手当も再就職手当も受け取れないことを覚えておきましょう。
失業手当の支給残日数が3分の1以上ある
再就職時、失業手当の支給が残っている日数を支給残日数といいます。
再就職手当を受け取るには、就職日の前日までで支給残日数が支給日数全体の3分の1以上残っていなければなりません。
例えば支給日数が全部で90日の場合には、就職前日の時点で30日以上の支給残日数が必要です。
再就職のタイミングが遅くなった場合、再就職手当はもらえません。
再就職先の条件を満たしている
再就職先の企業をどのように見つけたのかも、再就職手当の受給に関係してきます。
また、雇用期間によっても受給できるか否かが変わるため、企業と契約を結ぶ前に把握しておきましょう。
再就職先と離職した会社の関わりがない
離職した企業にもう一度就職する場合や関連企業、資金・人事などの面で密接な関わりのある企業に就職する場合、再就職手当を受け取れません。
前職からの紹介で再就職先を知り、採用された場合も受け取れない可能性があります。
再就職手当を受給するためには、ハローワークへ再就職手当支給申請書の提出が必要です。
そのなかで、「関連事業主に関する証明書」を就職予定先の事業主に記入してもらわなければなりません。
支給要件の確認や調査をされるため、「ハローワークに申告しなければバレない」などと考えるのは避けましょう。
給付制限がある場合、1ヵ月はハローワークと人材紹介会社から紹介された会社のみ対象
給付制限とは、会社を自己都合で退職した場合に発生する雇用保険の基本手当(失業手当)を受給できない期間のことです。
具体的には、雇用保険の受給手続日後、7日経過した日の翌日から原則2ヵ月間です。
給付制限がある場合、待期期間満了後の1ヵ月間は、ハローワークや厚生労働省が許可した人材紹介企業が紹介した企業への再就職のみが、再就職手当の対象になります。
2ヵ月目以降は、就職先の紹介方法を問わず再就職手当を受給できるようになり、自営業などを始める場合でも再就職手当の支給対象です。
会社を自己都合で退職した方は、受給手続日と再就職の日づけ、紹介元に留意しましょう。
1年を超えて勤務する見込みがある
再就職先で1年を超えて働ける見込みがある場合、再就職手当の支給対象となります。
雇用期間が1年以下で更新の見込みがない派遣社員や、雇用期間が1年以内と明確に決まっているパート・アルバイトなどは受給できません。
過去3年以内に所定の手当の支給を受けていない
過去3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受けている方は、上記の条件を満たしていたとしても再就職手当を受け取れません。
常用就職支度手当とは、身体障害がある方など、就業の難しい方が安定した仕事に就いた場合に支給される手当です。
再就職手当で理解すべきポイント
再就職手当のデメリットを考えたとき、早く仕事を見つけて再就職手当を受け取るべきか、失業保険を満額受け取ったほうが良いのか迷う方もいるかもしれません。
ここでは、再就職手当を受給するにあたって理解しておきたいポイントを解説します。
再就職手当と失業保険はどちらが高い金額をもらえる?
再就職手当は次の式で計算できます。
- 再就職手当=基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率
基本手当日額は、離職前6ヵ月の賃金をもとに計算され、離職前の給料のおよそ50~80%となるのが原則です。
給付率は、再就職時点での失業手当の支給残日数に応じて以下のように設定されています。
- 基本手当の支給残日数が全体の2/3以上の場合:70%
- 基本手当の支給残日数が全体の1/3以上、2/3未満の場合:60%
一方の失業保険は、「基本手当日額×給付日数」で受給額を計算します。
以下の条件を想定し、再就職手当と失業手当を求めてみましょう。
- 基本手当日額:4,600円
- 所定給付日数:90日
- 再就職先の月給:23万円
失業手当
【基本手当相当額】4,600円×90日=414,000円
(30日あたり138,000円)
● 30日間失業手当を受け取ったあと再就職し再就職手当を受け取るケース
【再就職手当】4,600円×60日×70%=193,200円
【再就職手当と失業手当を合わせた金額】
193,200円+138,000円(30日分の失業手当)=331,200円
【再就職先の給料と合わせた金額】
331,200円+460,000円(再就職先の月給2ヵ月分)=791,200円
90日間の受給額を比較すると、再就職した場合のほうが手当の合計額は低くなりますが、再就職先の給料と合わせると手元に入る金額は多くなります。
また、早く再就職先を決めて、安心したいという人も多いでしょう。
正社員でなくてももらえる
再就職手当は、条件を満たせば非正規雇用の方でも受給できます。
正社員かどうかは関係なく、パート・アルバイトや派遣社員、契約社員の方でも受け取れる可能性があります。
なお、先述のとおり1年を超えて雇用される見込みがあることが条件の一つです。
よって短期のパート・アルバイトや1年以内の雇用契約を結んだ契約社員の方などは、支給対象となりません。
就業先で雇用保険の被保険者とならない場合も、再就職手当は受け取れないことを頭に入れておきましょう。
振り込まれる前に辞めるともらえない
再就職手当を受け取るには、支給決定日時点で再就職先に在職していなければなりません。
再就職手当が実際に支給されるまでには、申請から約1ヵ月の審査期間が発生します。
支給が決定する前の審査期間中に再就職先を退職した場合、原則手当は受け取れません。
ただし、再就職手当を受けなければ再就職先を退職した後に失業手当を受け取れる可能性があるため、確認してみましょう。
再就職手当のデメリットを正しく理解してから受給しよう
再就職手当は、できるだけ早い再就職を促すための手当金です。
失業手当の支給残日数が多い状態で就職先を見つけられれば、再就職手当の金額は大きくなります。
ただし、就職した日の前日で失業保険は打ち切りになること、条件が複雑なことは再就職手当のデメリットといえるかもしれません。
とはいえ、再就職を先延ばしにして失業保険を受け取り続けるより、早く再就職して再就職手当を受け取ったほうが収入・雇用が安定するという利点があります。
受給条件を確認のうえで、各種手当金は賢く活用してみてください。