雇用保険の基本手当(失業保険)は、会社を辞めた人が、安心して再就職をめざすための給付金です。
しかし、失業保険は受給することで、かえって損をしてしまうこともあります。
本記事では、失業保険を受給するデメリットについて見ていきましょう。
退職後、失業保険の受給を予定している方は参考にしてください。
目次
失業保険をもらうデメリット
失業保険は、退職した際に生活の支えとなってくれますが、受給することで以下のようなデメリットがあります。
- 雇用保険への加入期間がリセットされる
- 受け取る年金が減る
- 転職期間が長くなることもある
- 社会保険の手続きが複雑になる
それぞれ見ていきましょう。
雇用保険への加入期間がリセットされる
失業保険を受給すると、雇用保険の加入日数がリセットされてしまいます。
失業保険を受給するためには、離職するまでの24ヵ月のうち、雇用保険の加入期間が12ヵ月以上必要です。
失業保険の支給日数も、雇用保険の加入期間が長いほど多くなります。
ただし、加入期間が長い場合でも、再就職した時点で給付は終了です。
支給日数が多く残っていれば、代わりに再就職手当を受け取ることが可能ですが、その額は最大でも残った支給日数の7割までとなります。
雇用保険の加入日数は、退職から再就職までの期間が1年以内であれば、複数の職場での加入日数を合算することが可能です。
しかし失業保険を受給すると、雇用保険の加入日数がリセットされ、それ以前の加入期間は再就職後に合算できません。
そのため、早期に再就職することが明らかである場合は、雇用保険を受給せず、加入期間を再就職先の雇用保険と合算した方が得になるケースがあります。
受け取る年金が減る
60歳以上で老齢年金をもらっている方が失業保険を受給した場合、年金が減額、あるいは一時停止されることがあります。
受給申請を行う前に、ハローワークや年金事務所に問い合わせると良いでしょう。
年金を繰り上げ受給している場合、失業保険をもらっている期間は年金の支給が止まってしまいます。
ただし、65歳以上の方が失業したときにもらうことができる高年齢求職者給付金は一時金扱いとなるため、年金と併用可能です。
転職活動を長引かせてしまうこともある
失業保険を受給することで、当座の収入を心配することなく、落ち着いて就職活動できます。
しかし、焦る必要がなくなったことで、かえって転職活動を長引かせてしまうケースも珍しくありません。
特に転職の場合、前職を退職してから再就職までの空白期間が長くなると、採用担当者から不信がられてしまいます。
失業保険があるからといって安心しきることなく、自分で目標期限を決めながら転職活動をすると良いでしょう。
社会保険の手続きが複雑になる
失業保険の受給中でも、社会保険料の支払いは必須です。
退職後すぐに再就職する場合は、企業が保険の手続きをしてくれるため、そこまで複雑になりません。
しかし、退職後失業保険を受給するためには、退職した会社の健康保険をそのまま継続する任意継続被保険者制度を利用するか、市町村の国民健康保険に加入する必要があります。
これらの保険の手続きをしなければなりません。
自己退職都合の場合の注意点
失業保険は、退職理由によっても、受給できる期間や金額が異なります。
自己都合退職の場合は、以下のような制限がかかることを覚えておきましょう。
- 受給まで2ヵ月以上かかる
- 再就職手当が支給されない場合がある
- 給付期間が短い
受給まで2ヵ月以上かかる
自己都合で退職した場合、失業保険の受給開始は、申請から7日間の待期期間と、さらに2ヵ月の給付制限期間を経てからになります。
この期間は支給がないため、手元の自己資金で生活をやりくりしなければなりません。
退職理由が会社都合であった場合は、給付制限期間がなく、申請から7日間の待期期間を経るだけで失業保険を受給できます。
また、自己都合退職で給付制限期間中の人でも、ハローワークからの受講指示を受けて職業訓練を受講した場合は、給付制限を解除することが可能です。
再就職手当が支給されない場合がある
自己都合で退職した場合は、再就職手当を受け取るための条件が、会社都合で退職した人よりも厳しいものになります。
再就職手当は、失業保険の受給を申請した人が、受給期間を多く残して再就職した際に、受給期間の最大70%にあたる給付を受けられる制度です。
しかし自己都合で退職した人が、7日間の待機期間満了から数えて1ヵ月以内に再就職した場合、その再就職がハローワーク、もしくは民間の職業紹介事業者の紹介によって決まったものでなければ、再就職手当を受給できません。
待機期間満了から1ヵ月以上がすぎれば、知人の紹介や、求人広告などを介して応募した求人であっても、再就職手当の対象となります。
給付期間が短い
自己都合で退職した人は、会社都合で退職した人より、失業保険を受け取るための条件が厳しく、受給期間も短くなります。
受給期間が短くなるということは、総受給額も減ることと同義です。
自己都合退職の場合、過去2年間のうち12ヵ月以上雇用保険に加入していなければ失業保険を受け取れません。
受給期間は年齢や雇用保険の加入期間に応じて、90~150日のあいだで決まります。
会社都合退職では、雇用保険の加入期間が過去1年のうち6ヵ月以上あれば、失業保険の受給が可能です。
また、受給期間は年齢や雇用保険の加入期間に応じて、90~330日までとなります。
失業保険を受給するデメリットも離職前に確認しておこう
失業保険は、退職後の経済的な不安を和らげてくれるものですが、受給するデメリットもあります。
メリットとデメリットを比較したうえで、受給するかどうかを決めましょう。
また、転職を考えている方は自分の雇用保険加入期間、必要になる最低限の生活費などを、退職前に確認しておくことをおすすめします。